ピーター・ドイグ展 @ 東京国立近代美術館

新型コロナウイルスの影響で次々と休館してしまう美術館たち。。。
国立に始まり、今やほとんどが休館状態。
行きたかったイベントも中止や延期で悲しい限り。
会田誠さんじゃないけど、「現代美術の展覧会なんて混むわけないだろ‼︎」。
そんな展覧会の一つ、ピーター・ドイグ展です(オイ
2/26に始まり6月まで会期があるのでいつでもよかったんですが、後述の工芸館にも行きたかったので、休館前日の28日に行ってきました。
ドイグのトークもあったのに中止とか残念すぎますね。
さて、ドイグですが、そもそもそこまでちゃんと見たことないし、正直そこまで興味なかったんですが、実際に見てみると凄まじい絵画でした。これは真似できない。
世代的にはデミアン・ハーストらと同じYBA世代。
同時期にロンドンにいながら、彼らの活動には与せず、独自の道を歩んできました。
カタログや画像では再現不可能な絵画。
画家自身「絵を描く過程で、わたしは自分自身を失っていくのです。」と語るように、我々観客も、彼の絵の中に埋没し、迷子になり漂流する。
絵の中に例え人物が描かれていても、それが主体とは限らず、どこをも起点にできず、観客の視線はただひたすら画面上を滑り続けます。
見ても見ても見尽くせない不思議すぎる絵画たち。
特にそのディテールにやられました。
写真撮りまくったのでいくつかアップします。






もうどういうプロセスで描かれてるのかもわからないし、絵の具の乗せ方が絶妙。
これだけたくさんの色を使っていながら、決して画面がうるさくならないバランス感。
作品を前にすると物凄い没入感です。
水辺を描いたものが多いのも特徴で、丸山直文さんとかも影響受けてるんだろうなぁ。
そしてモチーフの選び方や描き方も面白い。
なぜかコルビュジエが現れたり、人が溶けてたり、ビール箱が抽象化されてたり。
このコルビュジエの「コンクリートキャビンII」(1992)を描くために、ドイグは写真ではなく、ビデオを使って木々の中からユニテを撮影してそれを元に描いたというエピソードがとても興味深いです。
「目は決して『静止画』を見ることはないのです。」
そう、絵や写真は確かに静止しているかもしれないけれど、僕らには身体があり思考があり視線があるので、どうしても眼に映る像は動画になってしまう。当たり前だけれどまさに目からウロコでした。
ドイグの絵を見ている時のこの止めどなさはまさにそのことを証明しているようです。



近年はトリニダード・トバゴに移住していて、以前の絵とは明らかに何かが違ってます。
同じくトリニダード・トバゴ在住のクリス・オフィリとも親友ってのがアツイ。
いつか二人展見たいです。
それはともかく、驚きなのがこの展覧会に何点か2019年、去年の作品も出品されてること。
本当に過去から現在まで辿れる充実した展覧会。
そして面白かったのが最後の、映画の上映会のために描いたポスターたち。
一枚一枚の絵の面白さももちろんですが、映画を思い浮かべながら見れるので楽しかった。
ゴダールから小津、たけしまで。


とっても充実した展覧会で超オススメ。
ひとまずは3/15まで休館で、開館後は6/14まで。こちら。
そしてこの美術館はコレクション展も充実してるので全部見ると本当に疲れる。。。
今やってる北脇昇とバウハウスの展示は本当に必見。
北脇昇は以前蔵屋美香さんのトークの中で、最も戦時中の空気を的確に描いた作家と称してたので、まさに今、オリンピックを目前に控えたタイミングで開催されてるのは示唆的でした。
そしてそのトークの中で挙げてらっしゃった1937年の作品「空港」は、楓の種子を飛行機になぞらえた作品で、まるで戦闘機のように漂う様はとても不穏。実際の楓の種子と展示する力の入れよう。
他にもここまで北脇昇の作品を通覧することがなかったので新鮮でした。

バウハウス展は、去年が開校100周年というのもあって、色んなところでバウハウス関連展示がやってましたが、今回見た展示はその中でも最も面白かったかも。
日本におけるバウハウスの需要のされ方にスポットを当ててるんですが、驚いたのが吉岡堅二が1931年の作品「椅子による女」で既にミースのカンティレバーの椅子と思しき椅子に座った洋服を着た女性を描いてる!
他にも古賀春江とパウル・クレーの対比や、マルセル・ブロイヤーのワシリー・チェアーの後ろにカンディンスキーの絵を掛けるとかもう最高すぎる。



そして常設展も毎回発見があるんだけど、めちゃくちゃ驚いたのが下の作品。
誰の作品かと思いきやソル・ルウィットだった!こんな作品あるんや!
あとはロバート・スミッソンのスパイラルジェティのドキュメンタリーとかも興味深かった。

「パッション20 今みておきたい工芸の想い」@ 東京国立近代美術館工芸館

この夏金沢に移転してしまう工芸館。
これまであるのは知ってたけど一度も立ち寄ったことがなく、移転前に行っておきたいなーとギリギリまで引き延ばしてたら、今回のコロナ騒動で閉館が早まってしまい、最終日駆け込みで行ってまいりました。
いやぁ、本当に美しい建物ですね。今後どうなってしまうんでしょうか。。。



そして今回の展示の間違いなく白眉は鈴木長吉による「十二の鷹」(1893)でしょう。
同年のシカゴ万博に工芸ではなく美術部門で出されるべく作られた超力作。すごい。


あとは、今はなき新宿三越のポスターや四谷シモンまであるのが驚き。
基本的に美術的オブジェっぽい工芸に興味がないので他はほぼスルーでした。
あと展示品ではなく調度品として柳宗理のバタフライチェアやアールトまで名作椅子が何気なく置かれてるのにもびっくり。
夏の金沢にできる予定の国立工芸館も楽しみです。



それからこちらも休館となってしまった東京都美術館でやってる「ハマスホイとデンマーク絵画」にも行ってきました。写真撮るの忘れてた。。。
日曜美術館で紹介されたので混んでるかと思ったけどそうでもなかった。
まだコロナ休館のアナウンスもなかった平日だったからよかったのかな。
2008年に西洋美術館で開催された際行けなくて悔しい思いをしたのを思い出します。
ちなみに当時は「ハンマースホイ」という表記だったのが今回「ハマスホイ」となってます。
よりデンマーク語に近い発音なのかな。
中身は、前半が同時代のデンマーク絵画で、後半がハマスホイ40点という構成。
それにしても、ハマスホイもそうなんだけど、全体的にこんな絵誰が買うの?という謎な絵のオンパレード。
漁師の絵とかはなんとなくわかるんだけど、警報に戸惑う主婦の絵とかマニアックすぎるw
全体的にトーンも暗め。北欧の薄明の影響が如実に出てるのが面白い。
ハマスホイの絵画も、実際に見てみると不思議な筆致でどこかボナールを連想させる。
似たような筆致なのに、後者の彩りを考えると、ハマスホイのくすみは異常。
どこかノイズのある映像というか、リングの貞子の映像に近い不気味さを漂わせてます。
今回のポスターにもなってる妻イーダの後ろ姿を捉えた作品がやはり華なんだろうけど、僕は誰も描かれてない、ただ無人の部屋を描いた作品がとてつもなく好き。
無人→有人→無人というプロセスを辿っていて、最初の無人はただただ部屋のポートレートなんだけど、有人を経た無人の部屋は、どこか人の気配が漂っていて、本当に引き込まれます。
特に全てのドアが開いていて、開いた先にどんどん視線が誘導させるような作品は凄すぎた。
休館は3/16までで、とりあえず会期は3/26まで。まだ間に合います。ぜひ。