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ダムタイプ―アクション+リフレクション @ 東京都現代美術館

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今年都内で開かれる展覧会で最も楽しみにしていた展覧会。
今年最後の締めはこれ!と決めてました。
都現美のダムタイプ―アクション+リフレクション展です。

ほぼ伝説と化したマルチメディア集団。今風に言うとアートコレクティブ。
リーダーの古橋悌二に、高谷史郎、池田亮司、高嶺格。
今やそれぞれが大活躍ですが、元々は1984年に京都芸大の仲間で結成されたグループ。
実際今もダムタイプは活動中で、来年には18年ぶりの新作も発表されるらしい。こちら
もはや伝説化してしまっているのは、やはり1995年にAIDSの合併症によって35歳の若さでこの世を去った古橋悌二の不在があまりにも大きい。
今回彼の遺作である「LOVERS」と言う映像インスタレーションも展示されてます。
この作品は会期中の1月19日までしか展示されないそうなので、是非行く方はそれまでに行ってください。
これが観られるのと観られないとで大違いだと思う。
19日以降何を展示するんだろう。。。
裸の男女が壁面を駆け抜けていく映像を体感するような作品なのだけど、「LOVERS」と題されながら、決して交じり合う事なくそれぞれ一人一人でしかなくて、最後には闇に消えていってしまう。
映像というメディアの儚さも相まって、胸が締め付けられるような気持ちになります。
昔京都芸術センターでも観たんだけど、改めて美しい作品だなぁと。
そして今回改めてこの作品の構造に注目。
1995年制作なのに、どうやってこんなにシームレスに映像が繋がってるんだろうと思ってたらなんとプロジェクターごと回してることがわかってほう、となった。
古橋さん自身と思しき裸の男性が後ろに倒れて闇に消えていく様は、ダムタイプ最後の出演となり、ダムタイプの伝説的代表作となった「S/N」に通づるものがあります。

この展覧会が始まってすぐぐらいに神田でダムタイプの作品の上映会があったので事前勉強として行ってきました。こちら
流石に1週間で6本観るのはきつかった。。。
僕が見たのは「036-Pleasure Life」(1987)、「Pleasure Life」(1988)、「pH」(1990)、「S/N」(1994)、「OR」(1997)、「memorandum」(1999)。
ちなみにICCでは1/18-3/1までダムタイプ作品が上映されるので見逃した方は是非。
特にやはり「S/N」は必見。泣きます。こちら
この「S/N」は都現美でも1/13に特別上映があって、THE OK GIRLS SHOWもあるみたい。
1月6日から受付開始だそうだけどすぐ埋まっちゃうだろうなぁ。。。こちら

「036-Pleasure Life」はまだ方向性も曖昧で、荒削りなんだけど、次の年の「Pleasure Life」でいきなり今のダムタイプらしくなるのにびっくりした。
今回の展覧会では、当時のセットになってた「Playback」が観られます。
といっても当時とは違って、今回のは台に置かれてるのが全てが透明のレコードになっています。
当時はブラウン管テレビとかが置かれてたし、6x6の36台あったのが今回は5x5の25台。
グリッド状に並んだ台の間をすり抜けるようにしてパフォーマーが演じます。
このセットがそのままアート作品になっちゃうのがまたダムタイプのすごいところ。
IMG_6886.jpg

そして「Pleasure Life」の翌年には「pH」が上演されます。
これまた「S/N」に次ぐ代表作だと思う。
観客は舞台を上から見下ろすような形で鑑賞するのだけど、舞台では二つのバーがコピー機やスキャナーのように動いてて、演者はそれを避けながら上演するんだけど、こんな演出どうやったら思い浮かぶのか、、、。
今回そのスキャナーみたい装置を実際見ることができます。
よく観たら床に文字が書かれていたりして。
バーを追いかけるように進んでたら戻りが案外早くて逃げるように退散笑
IMG_6888.jpg

「S/N」はこれまでの作品と違ってセリフが多いのが特徴的。
古橋悌二のAIDSの告白がやはり注目されがちだけど、本当に素晴らしいセリフがたくさんあって困る。

私はあなたの愛に依存しない。
あなたとの愛を発明するのだ。

私はあなたの性に依存しない。
あなたとの性を発明するのだ。

私はあなたの死に依存しない。
自分の死を発明するのだ。

私はあなたの生に依存しない。
自分の生を発明するのだ。

あなたの眼にかなう抽象的な存在にしないで。
わたしたちを繋ぎ合わせるイマジネーションを、ちょうだい。



私は夢見る、私の性別が消えることを

私は夢見る、私の国籍が消えることを

私は夢見る、私の血が消えることを

私は夢見る、私の権利が消えることを

私は夢見る、私の価値が消えることを

私は夢見る、私の偏見が消えることを

私は夢見る、私の人種が消えることを

私は夢見る、私の財産が消えることを

私は夢見る、私の様式が消えることを

私は夢見る、私の恐怖が消えることを

私は夢見る、私の義務が消えることを

私は夢見る、私の権威が消えることを

私は夢見る、私の権力が消えることを



先述の台詞は聴覚障害を持つ石橋健二郎さんが発するんだけど、そのたどたどしさがこの台詞にさらに強度を与えていて、聞きながら胸に突き刺さる思いになります。
後述のはあまりに有名ですが、本当にすごいと思う。
実際の上演では拡声器で発せられるんだけど、この場面は圧巻。
パフォーマーたちがそれぞれ服を脱いで真っ裸になって後ろに倒れて消えていく様は「消えること」を体現していて本当に美しすぎる。。。
生で観れなかったのが悔しすぎるなぁ、と改めて。。。。


「OR」以降はポスト古橋悌二なんだけど、ここで池田亮司の音が入ってきて、高谷史郎の映像も強度を増して、高嶺さんのコレオグラフィーも素晴らしく、リーダーの不在を乗り越えて強度を増していく作品群に度肝を抜かれます。
展覧会では「MEMORANDUM OR VOYAGE」と題して3つの作品をつないだ映像と音のインスタレーションがあって、これも圧巻。。。すごすぎる。
古橋さんがいないのは本当に残念だとは思うんだけど、やっぱりダムタイプの核となる部分は全然揺らいでなくて、今も若いメンバーとか入ったりして流動しつつもダムタイプクオリティを保ってるのは本当にすごい。
この辺のことは長谷川祐子と高谷史郎の対談が詳しいのでぜひご一読を。

長谷川祐子と高谷史郎が語る「ダムタイプ」のこれまでとこれから


とまあ、ダムタイプ、僕にとっても本当に大事な存在だし、80年代からいまだに時代の先端をいってると思う。
それだけに展覧会、ちょっと期待しすぎたってのはあるんだけど、それにしても規模が小さすぎた。
もう少し大きな規模でやってほしかったなぁ。。。
パフォーマンスとかも、あんなブラウン管じゃなくて、ちゃんと都現美がプログラム作って上映すべき。
今回アーカイブブックが展示されてて、ここにはアイディア出しのメモから舞台セットの設計図まで全部が詰まってて、これぞ出版してほしかった。。。
とまあ、不満も色々あるんですが、観るべき展覧会であることは間違い無いので、ぜひ。
前にも書いてますが、展覧会自体は2/16までですが、古橋悌二の「LOVERS」が観られるのは1/19までなのでお見逃しなく!!!こちら


ちなみにゆっくりしすぎて時間がなく、同時開催のミナペルホネン展とMOTアニュアルは観てません。。。



今年ラスト記事です!
皆さま良いお年を!
明日から極寒の北京へ逝ってきます。。。
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