あいちトリエンナーレ2019 ④ 豊田市、まとめ

最終日は豊田市。
僕はのんびり名古屋でモーニングを食べたかったのだけど、一緒だった友人が「ホー・ツーニェンの作品が9時から並ばないと観れない」ということで9時から豊田へ。(ちなみにモーニングは6時半に起きて7時から無理やり食べに行きました。美味。)
このツーニェンの作品が展示されているのが「喜楽亭」という元旅館。
着いたらすでに10人ほど並んでいました。ツワモノ。。。
もうずっと喜楽亭がすごいという話を聞いていたのでこの作品は見逃すわけにはいかなかった。
10時になって開場。なんと津田さんも様子を見に来られてました。
後ろを振り向くと長蛇の列。。。朝早く並んでおいて良かった。。。
中では全部で6つの映像を見るんだけど、それぞれ12分ずつなので、終わる度に次に行く感じでよくできた構成だなぁと思いました。
内容はこの旅館に泊まっていた特攻隊の若者から、「神風」という言葉、そして軍歌など、映像ごとに通底したテーマがあるのだけれど、ベースになる映像は小津安二郎と横山隆一。彼らが国家の求めに応じ戦意高揚を目的とした映画やアニメを作ったことが語られ、京都学派の言説なんかも出てくるとても複雑な物語がこの旅館全体で綴られます。
詳しい説明はREAL KYOTOの記事に任せます。こちら。
旅館全体を使って物語化していく様はとてもうまいなぁと思いつつ、期待してたほどではなかったかな。。。
まあ、観られて良かったとは思います。
外に出たらさらにすごい行列で、こんなのに並んでたら他のが観られない。。。
行列を後にして豊田市美術館へ。

豊田市美術館も名古屋市美術館同様あまり観るべきものがなかった。。。
同時にやってるクリムト展の最終日と重なって館内は大混乱でした。
まあ、唯一面白いと思ったのは社会主義彫刻、絵画を扱ったレニエール・レイバ・ノボぐらい。
30分もいなかった気がするけど次へ。。。

高嶺格さんのこれ。もうすごすぎ笑
有無を言わさぬインパクトでやられました。
高嶺さんって美術館の外から出ると急に面白くなるよね。
この旧豊田東高校はこの後取り壊され、坂茂による建築ができるとのこと。
後、街中はいくつかあるけどこれといって感動できるものはなかった。
小田原のどかの作品は少し期待してたけど、ものとしての説得力がない。
今回コンテキストベースの作品が多いけれど、それに見合うビジュアルを獲得できてない作品がいくつか見受けられて少し残念だった。
さてさて、やっとまとめ。ってまとめられないけどつらつらと思うこと。
今回のあいちトリエンナーレ、展覧会として総じてよかった。とても良かった。
騒動抜きにして本当に素晴らしいテーマとキュレーション。
このトリエンナーレ、始まった当初は1回で終わると思ってたけど、もう4回目。
そして今回津田さんがディレクターに決まった時点で絶対面白くなる!と大きく期待してました。
その期待はもうすでに開幕前から叶えられてて、それは何と言ってもまず彼が今回の展覧会をジェンダーフリーにすると宣言して、作家の男女比を半分半分にしたこと。
とっても情けない話だけど、これだけのことが今まで実現できてなかった美術界。
このことで、なんと美術業界から「女に高下駄を履かせるのか」とか「質が落ちる」なんて馬鹿げた発言もあって、それを津田さんは「今まで男が履いてた高下駄を脱いでもらいます」と一蹴。格好良すぎる。
リベラルなはずの美術業界ですら男中心の古すぎる世界。うんざりです。
この一石のおかげで美術手帖でも「ジェンダーフリーは可能か?」という特集も組まれて、今までなんとなくわかってはいたけど、改めて向き合うきっかけになりました。
このことで美術業界から「一生分の罵倒」を浴びたそうですが、美術界の外の人だからこそできたことかもしれません。情けないですが。
しかしその後一生どころか何十生分の罵倒を浴びることになろうとは。。。
開幕後の騒動はいうまでもなく、何と言っても展覧会は終わりましたが、まだ文化庁の助成金不交付問題はまだ終わっていません。
これは本当にまずい事態だと思います。
案の定その後、文化庁は「公益性の観点で不適当なら助成金は不交付」という条件をつけ、映画「宮本から君へ」にピエール瀧が出てたという理由だけで不交付を決定しました。
文科省外郭団体「公益性の観点で不適当なら助成金は不交付」
映画『宮本から君へ』の助成取り消し、交付要綱も改正。プロデューサーは「文化芸術にとって由々しき事態」と怒り
この国は本当に地に堕ちましたね。
これでは文化が死んでしまいます。
国家にとって都合のいい作品だけが残る。
まさにツーニェンの作品の世界。
にしても文化庁長官の宮田良平自身が作家であり元東京藝大の学長ってのがもう皮肉しかない。
まあ、彼の作品観てたら然もありなんで、失望も何もないけど本当にゴミ。
この展覧会は、大きな功罪を残しました。パンドラの箱を開けたという言い方もできましょう。
ここまで社会と美術が激突したのは「千円札裁判」以来かもしれません。事態はさらに深刻ですが。
この「不自由」と闘うためにも是非とも記録に残して欲しい。
今回不交付となったことで、カタログを作れないという話を聞きました。
クラウドファンディングでもなんでもいいから絶対に作って欲しい。見返りはいりません。
それだけ時代のマイルストーンとなる展覧会の枠を超えた出来事として残さなくては。
そして、大村県知事も最後に宣言してくれましたが、なんとしてでも次回のあいちトリエンナーレ2022を実現して欲しい。
課題は山積み。
何ができるか表現に関わる全ての人々が考えなければなりません。
この展覧会を通して、本当にいろんなことを考えました。
ひとまず会期を全うし、最終日には全ての作品を見られる状態に戻してくれたこと、関係者の方々には感謝しかありません。
お疲れ様でした。そしてありがとう。
最後に大村県知事の会見を貼っておきます。素晴らしい演説。一生忘れたくない。
この騒動で唯一の救いでした。