大垣美穂子「immortal moment」@ KEN NAKAHASHI / 手塚愛子「Dear Oblivion 親愛なる忘却へ」@ スパイラルガーデン

昨年東京に出てきてすぐに初めて行ったKEN NAKAHASHI。
真っ暗な中にプラネタリウムのように光る空間。
光源は床に転がった人型の中から発せられてて、それが大垣美穂子の彫刻でした。
そこからこのギャラリーは展示が変わる度にほぼ通わせてもらってるお気に入りのギャラリー。
そんな大垣美穂子の個展がまた開催中です。
正直前述の彫刻にはあまり感心しませんでした。
その光の演出に心打たれることがなかったんですよね。
今回はどうだろうと思いつつ行ったのですが、今回は彫刻ではなくペインティング。
これがものすごく良かった。泣きそうになった。
去る3月、大垣さんのパートナーで、当時KEN NAKAHASHIで個展を開催中だった佐藤雅晴さんがこの世を去りました。
ずっと闘病生活を共にした大垣さん。
その個展の為に佐藤さんが絵を描き始める同じタイミングで大垣さんも絵を描き始めたそうです。
アクリル絵具で打たれた無数の点。
前回の彫刻と通づる部分はあるのですが、この点の一つ一つが物凄い覚悟を持って打たれてるように感じられて、心が動きました。
まるであらゆる感情をその点に込めてるような。
祈りのようでもあり、写経のようでもあり、瞑想のようでもあり、とても神聖なものを感じました。
あまり作家の背景と作品をごっちゃにしてしまうのは良くないと思いつつも、こうした繰り返しの作業を続けることで、大垣さんは自分を保っていたのではないかな、と想像してしまいました。
これまでも生と死をテーマに作品を作ってきた大垣さんだからこそ、この作業は本当に重い。
しかし出来上がった作品が悲しいほど美しいんですよ。
特に上の写真の馬の作品。崇高でした。
他にも手を描いた2点もものすごく感動させるものがありました。
線ではなく点で描かれたそれらのモチーフは、まるで生と死のあわいを描いているようでもあります。
そのまま点が解けて輪郭を失ってしまいそうな危ういモチーフたち。
それでも踏ん張って輪郭を保っている。
途方もないエネルギーを持った作品群です。ぜひ。9/21まで。詳しくはこちら。

続いてベルリン在住の手塚愛子さんの展覧会。
現在東京2箇所とドイツで同時開催中。
そのうちスパイラルの個展とMA2ギャラリーの個展に行ってきました。
スパイラルは2007年の展示以来で、当時の作品は実際には観てないのですが、吹き抜け空間をフルに使った大きな作品で、写真で見てとても印象的でした。
またあの大空間をどう使うのか楽しみにしていました。
行ったらちょうどアーティストトーク中で手塚さんが今回の展覧会の解説をされてました。
今回の展覧会は二つ大きなテーマがあって、一つはレンブラントの「夜警」をテーマにしたものと、もう一つは日本の近代化に着目したもの。
説明はこちらを読んでください。
正直これらの新作で僕はほとんど感動できませんでした。
あまりに背景を重視しすぎているというか、これまでの手塚さんの仕事が孕んでいた普遍性が失われている気がしてとても残念でした。
今回他にもこれまでのように織を解体したものがいくつか展示されてましたが、これがとてもいい。
無名の織物が解体されることで新たな生命を吹き込まれる様はとても美しく、今回のように改めて布を一から製作して解体するのとはコンテキストが全く違ってくると思います。
MA2の方もほとんどスパイラルと変わりないですが、オーガンジーの作品は良かったです。
とはいえ日本で手塚さんのこれほど大きな展示があるのは稀なので、ぜひ足を運んでみてください。
スパイラルは9/18まで。MA2は9/27までです。
この日はさらにスパイラルの近所の渋谷ストリームとワタリウムへ。
店のお客様でジュエリー作家のお二人がそれぞれ展示販売をされていました。
一人は「ててて」という展示会にて、itiitiというブランドを展開している田中典子さん。
下の写真のジュエリーなのですが、なんとい草でできてます!
熊本で製作されていて、熊本ならではのジュエリー。
もう一人はMalaNocheというブランドを展開している中田チサさん。
ワタリウムのon sundaysにて販売中です。
お二方ともそれぞれずっと憧れていた場所での展示だったそうです。
こういう瞬間に立ち会えるのは本当に嬉しい。
お二人ともおめでとうございました。今後のご活躍も楽しみにしております!
itiiti https://www.itiitiitiiti.com
MalaNoche http://malanoche.g.dgdg.jp

あとついでに、ワタリウム裏にあるpejite青山さんで展示台を購入してしまいました。
以前買った地球儀を置く台をずっと探していたのですが巡り合ってしまった。。。
少し値は張りましたが、こういうのはご縁なので一度逃すと中々出会えないのです。
実際地球儀置いてみると、マジでぴったりサイズでびっくり。
脚の造形が面白いんです。ぜひお店で見てみてください。


- 関連記事
-
- あいちトリエンナーレ2019 ① 名古屋市美術館、四街道・円頓寺エリア (2019/10/24)
- バスキア「MADE IN JAPAN」@ 森アーツセンター (2019/10/04)
- 大垣美穂子「immortal moment」@ KEN NAKAHASHI / 手塚愛子「Dear Oblivion 親愛なる忘却へ」@ スパイラルガーデン (2019/09/13)
- 「話しているのは誰? 現代美術に潜む文学」/ クリスチャン・ボルタンスキー展 - Lifetime @ 国立新美術館 (2019/09/04)
- 「美学校クロニクル1969-2019 51年目の現在」 @ 美学校 (2019/08/25)