fc2ブログ

藤田貴大「書を捨てよ町へ出よう」 @ 東京芸術劇場



マームとジプシー代表の藤田貴大による「書を捨てよ町へ出よう」を観に行きました。
まだ始まったばかりなのでネタバレ防止で以下は見たい人だけどうぞ。



藤田さんと芸術劇場は蜜月なのか今年で3度目。
前回の「BOAT」はプレイハウスでとても大きな会場だったけど、今回は小さいシアターイースト。
前のは観てないんですが、言わずと知れた寺山修司の代表作の再演。
藤田貴大と寺山修司。どんな化学反応が起きるのかとても楽しみでした。
今年は没後35年ということで、寺山の舞台がいくつかやってます。
実は夏に一つ別の劇団の寺山作品を観たのだけどひどかった。。。観なかったことにしたい。。。
寺山はまんまやろうと思ったら今の時代に通用しません。
正直彼の映画作品とかも、時代を越えられてないと思います。今見ても見てられない。
ただ彼の精神というのはやはり時代を超越してると思うので、そこをうまく引き継げば面白いものができるはず。
そして実際藤田版「書を捨てよ町へ出よう」は素晴らしかった。
僕は映画でこの作品を観てるのである程度筋は知ってるのですが、藤田さんはやはり編集能力が高いなと思いました。
映画のいらない部分をうまく抜いて、「美味しいとこどり」が実に巧み。
初っ端から牛の目の解剖から始まってゲッてなりましたが、そこからあの有名な映画の冒頭のシーンを主人公が語り始めるのにはゾクゾクしました。
あと問題のレイプシーンも抽象化してダンスのように美しく見せてた。
こういうマームのサラっとした部分に物足りないという人も多いかもしれませんが、僕は今の時代によく合ってるな、と思います。
綺麗な中にも毒があるのが僕は好きです。
あと「美味しいとこどり」の極みはやはり映画の冒頭で客を煽ってたかの青年が現在の姿で同じ台詞を口ずさむ映像と、実際の演者がシンクロする様はとてもドキドキした!
もちろんこの舞台の良さはその「美味しいとこ」以外にも。
今回もマームお馴染みの演者が舞台美術を組んでいく様も秀逸。
今回は足場を組んでいくんだけど、相変わらずハードボイルド笑
リフレインはあまりなかったけれど、又吉が作ったコントまで出てくるし、よくもこんなごちゃごちゃしたものをサラっと見せられるな、と感心してしまう。
音楽も生演奏で、ミナ・ペルホネンの衣装もよかった。(途中で謎のキャットウォーク!)
最後は足場が乱暴に解体されて、嵐の後のようになって終わる様も美しかった。
二つの才能が時代を越えて交わるとてもエキサイティングな舞台でした。
10月21日まで東京芸術劇場で上演の後、上田、三沢、札幌、パリと巡回します。こちら


8月にはVACANTでやられてた「BEACH」も観に行きました。
シューブランドtrippenとのコラボで、trippenのサンダルを履いた演者がそのサンダルの名前で演じてる。
ある夏のビーチでの出来事。
そこに絡む過去の出来事。
それらが至極曖昧に演じられていって、最後まで曖昧。たまらん。
小さな箱なので場面転換こそ限られてるものの、リフレインが効いててよかった。
公演後にVACANT代表の方(藤田さんと同い年!若!)とトークがあったのだけど、マームがストーリーではなくナラティブをやってるって話は何と無くわかる。
ナラティブをどうとるかだけど、僕が藤田さんの作る舞台が好きなのは、彼が「物語そのもの」ではなく「物語性」を届けてくれるところだと思う。
正直物語そのものなら映画の方が断然適したメディアだと思う。
演劇は、ストーリーというよりも、目の前で生身の人間たちが「演じる」という行為を観に行くと言う感覚。
そこには映画よりも多くのノイズがあって、生という緊張感がある。
なので、あくまでストーリーは副産物というのが僕の感覚。
マームも地点も、ちゃんとそこを踏まえてくれてる感じがあって僕は好きなんです。
年末には姉妹作品「BOOTS」の上演もあるみたい。常に新作発表してるエネルギーがすごすぎる。。。


あと舞台関連は横浜のKAATで「バレエ・ロレーヌ」を鑑賞。
フランスの国立バレエ団と、コンテンポラリー・ダンスのコラボ。
特に巨匠マース・カニンガムとフォーサイスのコレオグラフが楽しみで観に行ったのだけど、期待してなかったベンゴレア/シェニョーの作品はダンサーに試練を与えるようなダンスで観ていて不快感しかなく、その期待通りの作品。
期待してたカニンガムは古臭くて期待はずれ。
唯一フォーサイスの作品はとっても美しくて見ていてキュンキュンした。
特に男性同士で踊る場面は最高でした。
全体としてはあまり満足の行くものではなかった。




それと新国立劇場でやってたオペラ「魔笛」。
ウィリアム・ケントリッジが初めて手がけたオペラということで観に行きました。
「魔笛」自体は以前ピーター・ブルックのを観てたのでなんとなくわかってたので観やすかった。
最初の5分ぐらい、ひたすらケントリッジのアニメーションが繰り広げられてどうなることかと思ったら、そのあとはアニメーション抑え気味になっちゃって途中ちょっとだけ寝てしまった。。。
途中でなぜかサイが出てくるのがとてもシュールでした笑
夜の女王の歌唱は本当にすさまじく、これ聞くだけでも「魔笛」の価値あるよなぁという感じ。
それにしてもこの話、前半と後半で善悪が逆転するのがすごい。
あとオペラっていつも人間の感情の描き方が雑でなかなか入れない。。。王子と姫が恋するの早すぎる。。。
まあ、そんなこんなでオペラ自体はやっぱりハマれないんだけどケントリッジ。
最後の結婚式の場面はなぜか背景が目。この辺の発想が謎すぎてツボ。
ケントリッジのオペラ処女作ということもあり、演出のダイナミズムに欠ける部分も多く大満足ではなかったけれど、家から徒歩15分のところで観られるのはとても贅沢。
その次の「鼻」が観たい!
にしてもバレエにオペラに我ながらとても優雅な生活。。。




あとついでに映画。特に書くことないんだけど濱口竜一監督と三宅唱監督のことだけ。
濱口監督といえば僕の中では何と言っても「ハッピーアワー」
僕の人生ナンバーワン映画かも。
そんな監督の最新作「寝ても覚めても」はとっても楽しみにしてたのだけど、とっても期待はずれでした。。。
なんか色々ツッコミどころ多すぎるし、何と言っても主人公の行動が。。。
それよかこの映画の効果で濱口竜一特集が組まれてたことの価値が大きい。
特に以前から観たかった東北三部作が観られたのはよかった。
と言いつつ最後の「うたうひと」は観られなかったんだけど、最初の「なみのおと」と「なみのこえ」は観られました。合計5時間強。。。映画館に引きこもりました。。。
この映画の面白いところは、もちろん「震災」という悲劇を当事者本人たちに語ってもらうというメインの主題はあるのだけれど、映像の撮り方が明らかに別のところを向いていて、それは人と人が向き合って対話することをとても重視している。
必ず話者は一度に二人以上いて、一人で語りっぱなしにするってことはない。
勝手知ったる者同士でもちゃんとお互いに自己紹介から始めさせて、そこから震災を語り始める。
一人の場合は監督自らが対話相手となって画面に登場する。
この人と人が向き合って話す場面というのはお互いの関係性が如実に出るので不思議な緊張感がある。
特に夫婦の対話場面は特に面白くて、一番近い他人というのがすごくわかる。
あととっても不思議だったのが、カメラが話者の正面に回り込んで、小津映画よろしくカメラに向かって話すところが必ずどの対話にもあるんだけど、あれをどうやって撮ったのかが全くわからない。
おかげで観客も対話に巻き込まれる形になるんだけど、とっても不思議でした。
「うたうひと」もまた機会があれば観てみたいです。




それから三宅唱監督の「きみの鳥はうたえる」。
佐藤泰志原作ものは「海炭市叙景」「そこのみにて光輝く」「オーバーフェンス」と続々と映像化されてて、どれも監督が違うんだけど、全て不思議なぐらいいい。
今回の「きみの鳥はうたえる」も本当に素晴らしかった。
特にカメラワーク。全部を見せない観客の想像を掻き立てる映像が最高だった。
そして主演の三人も最高。演技が自然すぎて引き込まれた。
柄本佑と染谷将太はもちろん知ってたけど、石橋静河は初見かも。いい女優さん。
と思ったら「夜空はいつでも最高密度の青だ」の人なんですね。あれもいい演技だった。映画は微妙だったけど。
こういう青春ものって一歩間違うと本当に観てて辟易するけど、いつまでも観てられる感覚。
今年観た新作映画では今の所一番です。


関連記事

コメントの投稿

非公開コメント

カレンダー
02 | 2024/03 | 04
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31 - - - - - -
最新記事
カテゴリ
検索フォーム
月別アーカイブ
プロフィール

もりかわみのる

森川穣
現代美術作家。
森川穣 website
A'holicオーナー
A'holic website
instagram

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

管理者用
カウンター
To See List
・2024.02.14-05.27
「マティス 自由なフォルム」@ 国立新美術館

・2024.03.06-06.03
遠距離現在 Universal / Remote @ 国立新美術館

・2024.03.02-04.14
『シュルレアリスム宣言』100年 シュルレアリスムと日本 @ 板橋区立美術館

・2024.03.09-06.30
カール・アンドレ 彫刻と詩、その間 @ DIC川村記念美術館

・2024.03.12-05.12
ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?——国立西洋美術館65年目の自問|現代美術家たちへの問いかけ @ 国立西洋美術館

・2024.03.15-06.09
第8回横浜トリエンナーレ「野草:いま、ここで⽣きてる」@ 横浜美術館・旧第⼀銀⾏横浜⽀店・BankART KAIKO

・2024.03.30-07.07
ブランクーシ 本質を象る @ アーティゾン美術館

・2024.04.06-07.07
ホー・ツーニェン エージェントのA @ 東京都現代美術館

・2024.04.27-08.29
デ・キリコ展 @ 東京都美術館

・2024.04.24-09.01
シアスター・ゲイツ展:アフロ民藝 @ 森美術館

・2024.05.23-08.04
魚谷繁礼展 @ ギャラリー間

・2024.06.06-16
劇団チョコレートケーキ「白き山」 @ 下北沢・駅前劇場

・2024.06.08-12.01
フィリップ・パレーノ展(仮)@ ポーラ美術館

・2024.06.25-09.23
内藤礼 生まれておいで 生きておいで @ 東京国立博物館 平成館企画展示室、本館特別5室、本館1階ラウンジ

・2024.06.29-09.16
ポール・ケアホルム展 時代を超えたミニマリズム @ パナソニック汐留美術館

・2024.07.13-09.29
鴻池朋子展:メディシン・インフラ(仮称)@ 青森県立美術館

・2024.07.20-09.23
平田晃久―人間の波打ちぎわ @ 練馬区立美術館

・2024.09.04-11.24
大西麻貴+百田有希 / o+h展 @ ギャラリー間

・2024.09.07-2025.01.13
内藤礼 生まれておいで 生きておいで @ 銀座メゾンエルメス フォーラム

・2024.09.25-2025.01.19
ルイーズ・ブルジョワ展 @ 森美術館

・2024.03.27-09.22
アイザック・ジュリアン - Ten Thousand Waves @ エスパス ルイ・ヴィトン大阪

・2024.09.14-12.01
塩田千春 つながる私(アイ) @ 大阪中之島美術館

・2024.09.21-10.06
地点「知恵の悲しみ」@ アンダースロー

・2024.10.03-12.17
松谷武判 Matsutani Takesada(仮称) @ オペラシティアートギャラリー

・2024.10.30-12.16
絵のアティテューズ―― 荒川ナッシュ医(仮) @ 国立新美術館

・2024.11.02-2025.02.09
ジャム・セッション 石橋財団コレクション×毛利悠子 ―ピュシスについて @ アーティゾン美術館

・2024.11.23-2025.01.26
「再開館記念―トゥールーズ=ロートレックとソフィ・カル」展(仮称) @ 三菱一号館美術館

・2024.11.30-2025.02.02
須田悦弘展 @ 渋谷区立松濤美術館

・2024.10.24-2025.02.25
Bangkok Art Biennale 2024: Nurture Gaia @ BACC他

・2025.01.18-2025.05.18
玉山拓郎 @ 豊田市美術館

・2025.02.15-06.01
フェリックス・ゴンザレス=トレス(仮)@ 国立国際美術館

・2025.09.13-11.30
あいち2025 @ 愛知芸術文化センター、愛知県陶磁美術館、瀬戸市のまちなか

・2025.09.26-11.24
岡山芸術交流2025 @岡山市内各所

QRコード
QR