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ゴードン・マッタ=クラーク展 @ 東京国立近代美術館

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先月から始まったゴードン・マッタ=クラーク展に行ってきました。
今年度一二を争う期待度の展覧会でしたが、それを遥かに凌駕する素晴らしい展覧会でした。

まず何が素晴らしいかというとその会場構成。
彼の展覧会をする上で最も難しいのが、作品そのものがほとんど現存していないこと。
ほとんどが一過性の出来事なので、展示となるとその大半が記録になります。
建築の展覧会とかもそうだけど、それそのものが持ち込めない展覧会ってしばしば退屈になりがち。
しかし今回はそこを飽きさせない為に会場構成で観客のテンションを高めていました。
会場構成を担当した元OMAの小林恵吾さんがカタログ内でもおっしゃったように、展示会場というより「広場」という印象の様々な建築的マテリアルで織り成す会場風景は爽快。
青木淳の「原っぱと遊園地」を思い出させる、伸び伸びとした原っぱに観客が各々好きなように過ごしているのが印象的。
小林さんの「現代の日本では都市の方が窮屈」という話も印象的。

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そして展示構成もわかりやすい。
「Museum」「Dwellings」「Streets」「Port」「Market」の5つにテーマがわかれています。
今回全体通して、改めて自分がいかに彼の活動を知らなかったかを思い知りました。
(彼の名付け親がデュシャンだったなんてことも!)
ここまで広範に展開していたとは本当に驚き。しかも彼の作家活動期間はたった10年なのです!
やはりゴードン・マッタ=クラークといえば「ビルディング・カット」。
中でも1974年の最初のカット「Splitting」は単純に建物を半分に割るという衝撃的な作品。
以降いくつか建築を切ってますが、やはりこのシンプルさには敵いません。
そしてここでも知らなかったのが、実は真ん中を切るだけじゃなくて、屋根の四隅も切っていたこと。
その四隅がなんと今回展示されているのです。これはアツい。

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あと、他の活動も本当に興味深いし、改めて彼の先駆者性を発見しました。
例えばその屋根の横に展示してあった、壁をプリントした紙。その名も「壁=紙」。
どこかのアノニマスな壁のプリントが壁に貼っているという二重性の時点で面白いのに、なんと1972年当時に観客に配っていたというのがさらに驚き。
これってフェリックス・ゴンザレス=トレスの先の先をいってますよね。
今回も持って帰れるので僕もちゃっかりお持ち帰りしました。

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それと、初期の食物を使って行っていたプロジェクト、特に「FOOD」という名のレストランをしてたのはなんとなく知っていたのだけど、それが地元アーティストの臨時の職場になっていたりしていて、今のソーシャルアートやリレーショナルアートのこれまた先の先をいっちゃってます。

カタログの中で沢山遼さんも指摘していますが、これまた初期の仲間内でやってた「アナーキテクチャー」の活動も、都市を「観察」する赤瀬川原平の活動にリンクします。
ただし赤瀬川さんはゴードンたちと全く同じ時期にやってるのがまたすごいんだけど。

他にもいらない土地を買っちゃってアートプロジェクト用に使うとか、木の上で生活するとか、ゴミで作品作って最後またゴミにしちゃうとか、本当に面白いことを短い期間に散々やっちゃってます。
彼の10年の活動の中に、近現代美術の歴史がかなり内包されちゃってます。
彼の多様でありながらも一貫した姿勢って、やっぱりコンセプト云々よりも、純粋に面白いと思ったことにまっすぐ突っ走った結果なんだと思う。
色々読んでると、どれもコンセプトは後付けな感じがしてそれがまた面白い。
彼が活動の中心に置いていたグリーン通り112番地のジェフリー・ルウの言葉が全てを物語っています。


アートはコミュニティだよ。でもそんなことを、考えてさえいなかったんだ。みんなその真っ只中にいたんだ。コンセプトのことを考えてる暇なんてなかった。生み出すのに忙しくてね。コンセプトというのはそうやって出来上がるものだと私は信じている。知的な思考じゃなく、実践によってだ。だからグリーン通り112番地は・・・グリーン通り112番地は、経験そのものだったんだ。



展覧会は9月7日まで。僕は最低もう一回は行こうと思います。超おすすめ。こちら

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