Rosas 'Golden Hours (As you like it)' @ Les Théâtres de la Ville de Luxembourg
スイス滞在も残すところあと少し。最後の欧州行脚に行ってまいりました。
まずは二つの舞台を鑑賞。
ひとつはRosasの新作「Golden Hours (As you like it)」。
今年1月にブリュッセルで初披露され、パリでも既に発表されてます。
今回はルクセンブルク。初訪問でしたが、列車トラブルに巻き込まれ、あわやルクセンブルク自体にたどり着けないのではと泣きそうでしたが、なんとか到着。これで西ヨーロッパはほとんどの国行ったことになります。
とはいえ、時間もギリギリで観光のかの時も見当たらないままルクセンブルク滞在は終了。
なにはともあれ舞台です。
舞台上にはセットと言われるものは何もなく、特徴的な大きな照明が天井にあるぐらい。
開演時間になると、タイトルでもあるBrian Enoの「Golden Hours」が流れ、奥から役者たちがゆっくりした速度と独特のステップで歩いてくる。この曲が5回ほどリピートされた後に、もう一つのタイトル、シェイクスピアの「As you like it」を元にした舞台がスタートする。
とはいえ、これ以降ほぼ音楽も皆無で、台詞もない無言劇。
台詞は奥の壁に投影され、役者たちはひたすら身体のみで「語る」。
Rosasの舞台は2月に初めて「Rosas danst Rosas」を観て以来2回目。(WIELS含めたら3回目)
舞台がスタートしてから終わるまでの緊張感は相変わらず凄まじいものがあります。
2月に初めて彼らの舞台を観た時には、あまりに言葉にならなくてここには書けませんでした。
今もほとんど言葉にならないのだけど、確実に新しい扉を発見したような歓びを見出せています。
このブログをご覧になったらわかるように、大概いろんなものを観てきた僕ですが、まだまだ扉はあるもんだなぁと思う次第で、逆にこれだけ観てると、叩かないでいい扉と叩くべき扉の見分け方みたいなのがわかってきて、このRosasは確実に後者だなと思います。うまく言い表せませんが。
その要素のひとつに、彼らの表現が自己表現に収まってないことが挙げられると思います。
オリジナルであるというのと、自己表現であるというのは僕の中で別格。
特にダンスは自身の身体を使って表現するものなので、自己表現に陥りやすいメディアだと思う。
いくつかのパフォーマンスを観てきたけど、自己表現で終わっているものの方が圧倒的に多い印象。
しかし彼らのそれは、明らかにその閾値を逸脱している。
地点もそうですが、その自己表現に陥らないひとつの手段として、他人の作品を使うというのがあります。
今回もBrian Enoとシェイクスピアを使いながら、しかしそこに決してはまらない。
身体で「語る」と言っても決して手話などのジェスチャーではなくあくまでダンス。
RosasはこれまでもSteve Reichの「Drumming」(東京公演観たかった)や、前回の作品「Vortex Temporum」など、音楽を使っています。
音楽とダンスの相性がいいのはもちろんですが、彼らのダンスは、そこと確実にズレてる。
そのズレが彼らのオリジナルなんだろうなぁと思います。
もっともっと観ていけば、きっといろんなものが見えて来るんだろうなぁと思いつつこの辺で。
そしてもうひとつはPina Bauschです。2010年にびわ湖ホールで観た「私と踊って」以来。
今回は夢であった彼女の本拠地ドイツはウッパタールで観てきました。
しかも演目は彼女の代表作とも言える「Kontakthof」!
実は3月にも観に行こうとしてたんですが、アムステルダムからの電車が謎の停電で止まってしまい、チケットまで取ってたのに行けなくなってしまったのです。この時の演目は「炎のマジョルカ(MASURCA FOGO)」でしたが、神様が「Kontakthof」を僕に観せるために仕組んだ出来事という痛い妄想に浸りながら今回は無事到着。
ウッパタールって、なんとなく地の果てみたいなイメージでしたが、デュッセルドルフからも近いし、特に田舎でもなかった。ヴェンダースの映画にも出てた街の風景が観られて感動。
そしていよいよ開演。
もう、今までドキュメンタリーとかで観てきた名場面の数々に涙しました。
全編通して笑いの絶えない舞台ですが、徹底したアイロニーがこの舞台にはあります。
舞台セットは、どこかの舞台で、舞台の上の舞台があり、しかもその舞台は最初から最後まで開くことはない。
「人はわかりあえない。」という絶望的な感覚と、それでもコンタクトせずにはいられない人間の愛おしさが伝わってきました。人間の条理と不条理をここまで見事に見せきるのはさすがです。
改めて偉大な人を僕たちは失ったんだなぁと感慨深かったです。
Rosasとピナは真反対とも言える舞台ですが、どちらも本当に素晴らしかった。
Rosasの舞台に立つ人間は、とてつもなく研ぎ澄まされたダンサーたち。
逆にピナの舞台に立ってる人間たちは、どうしようもなく人間らしくて、実際この「Kontakthof」はかつて、高校生から65歳以上のお年寄りまで、ダンス経験のない人たちにまで演じられています。
ピナの舞台の普遍性があるからこその芸ですよね。
この勢いで「CAFÉ MÜLLER」や「春の祭典」、「NELKEN」とか観てみたい!
またいつか必ず観に来たいと思います。
ちなみに今回僕が取った席はたったの10ユーロ。こんなん近くに住んでたら通いつめそう。

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