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クリスト&ジャンヌ・クロード講演会@京都造形大学


世界を代表するアーティスト、クリスト&ジャンヌ・クロード。
そんな彼らがなんと京都にやってきた!7年ぶりの来日。
以前講演会の予約取れなかったという記事を書きましたが、この機会逃すと一生ないかもしれないので駄目元で現場まで行ってきた。
やはり会場前では受付が立ちはだかる。
歩を止めれば負け。前進あるのみ!
ってことで超自然体で受付を・・・突破成功!!
なんと侵入成功しちゃいました・・・。
ごめんなさい。本当にごめんなさい。でもこんな貴重な機会逃すわけにはいかないんです・・・ごめんなさいでした。でも後で知ったんだけど普通に当日券あったらしいですね。友達それで入ってきやがりました。何だったんだ・・・。

クリスト&ジャンヌ・クロードは今年で71歳を迎える夫婦(生年月日が共に全く一緒!)。この人たちの作品は美術館とかに飾られるのではなく、公共空間を使った壮大な作品。ドイツの国会議事堂を布で包んだり、マイアミの島を布で囲ったり、とにかく大規模。最初僕も彼らの作品写真を見た時、そのイメージと現実ってのが結びつかなくて焦ったのを覚えてます。はい?って(笑) 詳しくは彼らのHPにて。
そんな彼らが去年の冬、NYのセントラル・パークにて7503本ものサフラン色の布がはためく鳥居のようなものを遊歩道に立てた「The Gate」はニュースや新聞でも取り上げられてたので知ってる人もいるかも。あのプロジェクトの特集を某美術番組で観て、僕は思わず泣いてしまったのです。というのも、その頃「アートに何ができるのか」って悩んでた時期で、こんなこと続けてなんか意味があんのかなぁって思ってたのです。そんな折、その番組内で、手伝ってる人たちが一様に本当にいい顔をしてらっしゃって、それを観た時にそれまでの悩みが吹っ飛んでしまったんです・・・。そんな彼らの講演会。聞かないわけにはいかんでしょう。しかもわざわざ僕の帰国してる時に日本、しかも京都でやるだなんて!これはまさに運命<マタカ

そんなわけで彼らの講演会を無事聞くことが出来ました。
前半はスライドで彼らの作品を堪能。クリスト本人の解説つき!贅沢・・・。ちょっとドイツ語訛り(ブルガリア出身だけど)の英語で、でも物凄く力強かったです。
メインは次のプロジェクトであるコロラド州の川の上空を覆うプロジェクト「Over The River」。これまた壮大なプランです・・・。でもやっぱ実寸大でテストしてる写真とかで見る限り本当に綺麗。特殊な布で覆うため、上から川を覗くとただの白い布なんだけど、岸まで下りて布を見上げるとその布を通して空が透けて見えるという仕組み。あぁ、観に行きたい・・・が遠いよ・・・。鴨川でやってくれたらいいのに(死)
にしても、本当にクリストの描くドローイングは完璧ですね。ドローイングとその実寸大テストの写真を見せてたんだけど寸分の狂いもなく、途中これはドローイング?写真?と混乱してしまった。
あとアラブ首長国連邦でやろうとしてるプランもすさまじまった・・・ドラム缶40万個でピラミッド作ろうとしてます、この人たち・・・恐ろしい・・・。
でもやっぱこの人たちの凄さは不可能を実現させてしまうということ。そんな彼らの原動力の一端を知ることが出来たのが後半。

後半は質疑応答コーナー。
もう71歳とは思えない元気っぷりで1時間半ほとんど座ることなく質問に答えっぱなし。特にジャンヌ・クロードはもう独壇場って感じでした(笑) クリストはあんまりマイク持ちたがらなくて、でもそわそわと奥さんにこれは言っておきなさい、それは言うんじゃないみたいなことを耳元で囁いてた。いいコンビです(笑)
まず質問したのが小さな外国の男の子。「なんで包むの?」って(笑)
ジャンヌは「私達は全部を包むことだけをしてきたわけじゃない。そこだけは理解して欲しい。去年の'The Gate'だって今度の'Over The River'だって包んではいないはず」とのこと。どうやら彼らは「梱包のアーティスト」と括られるのが非常に嫌みたいで、そこんとこは強調してました。
肝心のなぜそういう表現をするのかっていうのは、「美しいものがみたいから」というシンプルな回答でした。彼らの作品って何かしら色んな解釈をされるんだけど、本人達としてはただ「美」のためなのだそう。もしそれらに意味が含まれているとするなら、その「場」そのものに意味があるのであって、我々の作品が意味を付け足したのではないという答えも。でもやっぱそこに注目させるのは作品の持つ力だと僕は思います。
あと強調してたことと言えばやはりお金の問題。なんと言ってもこの人たちの凄さは、作品を作るのにスポンサーなどを一切介入させず、全て実費でやるという点。「去年の'The Gate'は24億円かかりました」とサラッと言ってましたが、24億円を実費で出せるってのがありえん・・・すべてクリストの描くドローイングを売ることで作品につなげていってるって。スポンサーとかをつけると、そちらの言うことを聞かないといけなくなるからだそう。あとこの人たちボランティアも一切使わず、全ての人とちゃんと雇用契約を結んでる。その理由は単純に「解雇できるから」って言ってはった(笑) 完全に自分達のやりたいようにやる。これが彼らのモットーです。
作品が自分達の子供のようなものだと言ってたのがすごい印象的でした。
「今までで1番気に入ってる作品はどれですか?」という質問にも、「あなたは誰かのお父さんお母さんに向かって、どの子が1番好きですか?と聞いてるのと同じ質問をしているのよ。私達は今までやってきたすべての作品が好きです」との答え。
「次の作品の予算はどれくらいですか?」という質問にも「あなたは子供が生まれた時予算を立てますか?それにかかるお金。それが予算なんです。あるとすれば私達の全財産と銀行から借りられるお金の分でしょうか」とのこと。すごい・・・。
「作品製作のための交渉がいつもとても長いですが、いやになったりはしませんか?」との質問には、「私達の子供ですからどんな努力も厭いません」と。実際彼らの作品は公共空間を使うので交渉がかなりてこずってます。実際ドイツの国会議事堂を包んだ作品では、交渉に25年もかかってやっとこぎつけたプロジェクトだった。3回もNOと言われたけどくじけなかったとのこと。去年のNYのプロジェクトは26年。ジュリアーニ市長の時にサポートしてくれた人がいたんだけど、それでも叶わず諦めかけた時に、なんとそのサポートしてくれた人が市長になったんだとか!すごい話ですね。で、そのままプロジェクトはとんとん拍子に進み、最初の発案から26年経った去年2005年に実現したという・・・。

彼らの作品に対する愛は本当に計り知れません。彼らが言ってた「私達の人生は作品集を観ていただければそれですべてがわかります」と言ってたけど、本当にアートにすべてをかけた一生。またしても彼らの生き方に感銘を受けたレクチャーでした・・・。自分もアートにこの身を捧げて一生を全うしたいです。くさいけど、真実。

他に印象的だったのは「海外に行く時は絶対2人別々の飛行機」と決めてるそうです。1人が事故で死んでも、もう1人が進行中のプロジェクトを進められるように、だとか・・・。
「2人の意見が食い違うことはないのか?」との質問には「しょっちゅう」とのこと。こんなに怒鳴り散らし合う夫婦もこの世界中に私達以外いない、と断言してた(笑)
今までのプロジェクトのエピソードとかも色々聞けてよかった。「去年のNYのプロジェクトは鉄を5000tも買わなきゃいけなかったんだけど」とサラっと言ってたのは恐怖すら感じた・・・鉄5000tってのはエッフェル塔で使われたそれの約3分の2だそうですよ、ははは。
あと日本人に捕鯨はやめてと訴えかけてた・・・息子さんが環境保護団体の人らしい。でも捕鯨ってそんなに悪いことなんかな・・・快楽のために獲ってるわけでもないんだから別に反対する理由は・・・だったら牛を大量に使うマクドナルドのやり方とかどうやねんって思っちゃうんですがね・・・。
あと、桂離宮は美しいから絶対行きなさいと(笑)
でも「Who's next?」と怒鳴ってたジャンヌ・クロードが1番印象的(笑)

講演会後、先着80名様にサイン会ってのがあって、急いで本買ったんやけど、その時には既に遅しでサインは逃しました・・・でもクリストが普通にジャンヌ・クロードがトイレ行ってるの待ってて、その間に握手してもらっちゃいました!とってもいい人だった・・・。京都まで来てくれてありがとうございました。またあなたたちに大事なものもらっちゃった気がします。これからも元気に大きなプロジェクト進めちゃってください!
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