Late Turner – Painting Set Free @ Tate Britain

ロンドンに行ってきました。
5年ぶりのロンドン。
感慨にふける暇もないぐらい駆け足の滞在でしたが…。
行けたのは二つのテートのみ。
その二つ行った中で断トツでよかったのがテートブリテンでやってる後期ターナー展。
正直時間もなかったので観るか迷ったのですが、結果的にメインの目的だったターナー賞展の数百倍よかった。
しかし、イギリス美術の父ターナーとその孫たちとも言えるターナー賞展が同時期に同会場でやってるのは美しいですね。
さて、その後期ターナー展の何が素晴らしかったかというと、なんといってもキュレーションの明確さ。
後期とある通り、ターナーが60歳を迎えた1835年以降に出品作品が絞られていて、彼が晩年に取り組んだ主題に非常に丁寧な研究を重ねている。
とはいえ時間もなかったので、そこまで読み込むほどじっくりは見れてないんですが、それでも十分に伝わる企画者たちのターナー作品に対する敬意と、研究に対する誠意。これはもう泣けるぐらい伝わりました。
そして、彼の抽象化を極めていくこの後期こそターナーの真髄ありと言わんばかりの迫力。
実際この抽象化過程は目覚ましくて、衝撃の連続でした。
彼の作品のすばらしさはささっと彩色されたような水彩のスケッチと厚く塗り込められたカンヴァスに描かれた油彩のクオリティが遜色ないぐらい高い。
スケッチだからと舐めてかかるとダメです。打ちのめされます。
その理由は多分彼の油彩が水彩に近い感度がある点にあると思います。
彼の作品からは水の存在を大いに感じる。
それは字義通り川や海をモチーフにしたのが多いというのだけでなくて、空気に含まれている粒子レベルの水の存在をあの筆致の中から感じることができる。
それにしても、もう抽象画としか言えないあれらの絵を観て当時の人はどう思ったんだろう。
今から観ても気違い染みている。
印象派も生まれるずっと前からここまで辿り着いてる、どころかモネの晩年すら超えたこれらの抽象化は観ていて本当に痛快。
特に最後に展示されていた薄いピンクの絵画2点は、もう何かモチーフがあるとは思えないぐらいの画面。あれはすごかった。
欧米ではこれら巨匠の作品たちを再検証するようなキュレーションが続いている。
歴史を何度も振り返ることで、新たな美を発見していく、まさに温故知新な展覧会たち。
こないだまでテートモダンで開催されてたマティスの切り絵に的を絞った展覧会なんかまさにそう。あれは観てみたかった。(現在MoMAに巡回中)
去年ヴェニスでやってたマネ展なんかも素晴らしかった。
日本だと、これら巨匠の展覧会となると、どこどこからこんな有名な作品が来ますとかいう売り文句だけのキュレーションのキュの字も見当たらないのが情けない。
ちなみにテートブリテンで常設のターナーギャラリーの後期コーナーにはオラファー・エリアソンがターナー作品の色彩を分解した作品を発表してます。
これらの展示は来年1月25日まで。こちら
で、メインだったはずのターナー賞展ですが、正直何の刺激もなかった。
最初の二人、James RichrdsとTris Vonna-Michellは、フィクションとノンフィクションのあわいを表現した作品で、最近よく見る部類(乱暴)
三人目のCiara Phillipsは、ウォーホル?って感じの部屋でよくわかってません。
唯一ひっかかったのは最後のDuncan Campbell。
アニメーションとも言えない、本当になんとも言えない世界観が観ていて飽きなかった。
ターナー賞の発表12月1日。
今年でちょうど30周年を迎えるターナー賞。
外の壁にはこれまでのターナー賞のパネルが年ごとに展示されてて、2011年以降自分が全くフォローしてなかったことに気づいた。
今年のは実際観た分少し思いやりもできたので賞の発表楽しみに待ちます。
Duncan Campbellに一票で!1月4日まで。こちら
お次はテートモダン。
着いたらまず目に入るのが、着々と進行しているヘルツォーグ&ド・ムーロンによる新館。竣工は再来年ぐらいか。
以前に公開されていたTankという新スペース観たかったんだけど、ただ仮お披露目しただけで新館の公開までクローズとのこと。残念。
多分新館へはタービンホールの真ん中からつながるのかと。







そのタービンホールでは現在リチャード・タトルの「 I don't know」が展示中。
実際観た感想は、「ちゃちい…」でした(死)
やっぱどうしてもこれまでのタービンホールプロジェクトと比べてしまう。
まあ、今やスポンサーだったユニリーバも撤退しちゃったし、かかってる予算は違うんですが。
そもそもタトルの作品あまり好みじゃない。
タトルは現在ホワイトチャペルギャラリーでも個展開催中。
来年からはユニリーバに変わってヒュンダイがスポンサーになりタービンホールプロジェクト再スタート。韓国やりよる。
まずは来年誰がやるのか楽しみ。ヒュンダイとは2015年から2025年までの11年計画です。


今テートモダンではポルケの回顧展が開催中。
でもこちらも時間と気力の問題で観てません。
ポルケ大好きですが、彼の作品のエネルギーがすごすぎて、気力のない時に観ると持って行かれそうで怖い。グループ展で1点2点ぐらいならいいけど個展となるととんでもない。
ということで常設のみ。
結構もの派の作品が入ってたのが印象的。
でもなんといっても観たかったのはロスコルームでした。
一昨年アーティストと名乗る輩によって無残にも落書きされたロスコの絵画。
世界中に衝撃と悲しみと怒りが走りました。
もう二度とロスコルームは見られないかもしれない。
そんな危惧を跳ね除けるように、テートは気の遠くなるような懸命の修復を施しこの春再び公開に至りました。
まずあれだけのダメージを修復してのけたのも本当にすごいですが、それをあんなことがあったあともガラスケースに入れるでもなく元の状態のまま公開しているテートの志に感服するばかりです。
ロスコは生前世界の数ある美術館の中からこれらの絵画の寄贈先にテートを選びました。
その信頼を決して裏切らないテートの姿勢は本当にすごい。
やはりテートは世界一の美術館だと改めて思いました。
帰りのミレニアムブリッジからレンゾ・ピアノのロンドンタワーが見えました。ロンドンで外国人建築家が建てることって稀なのにほとんど話題になってませんね…。

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