Magic Numbers: 会場風景










Photos by Frédéric Weigel
「1990」
小学生に上がるまで自分のことを「みのる」と呼んでいた。
やがて周りの友達からそれはおかしいとからかわれ、やむなく「みのる」は自分のことを「僕」と名乗ることになった。
日本語にはフランス語と違って一人称がいくつかある。
その中から皆知らないうちに自分の一人称を選ぶのだが、「みのる」は自身を名乗る一人称を見つけられなかった。
それ以来四半世紀経った今でもしっくりくる一人称を見つけられずにいる。
一人称を選択できなかったことで、自分なんてものはそもそもいなくて、自分は空っぽの存在なのではと思い至るようになった。
しかし、最近ではむしろ「みのる」は、無意識ながら「僕」でも「俺」でもない確固たる自分を既に見つけていたのかもしれないと思い直し、「みのる」のことをよく思い出している。
森川穣