'Il Palazzo Enciclopedico' by Massimiliano Gioni

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今回の行脚を決行させるきっかけになったのは、なんといってもマッシミリアーノ・ジオーニのヴェネツィア・ビエンナーレ総合ディレクター決定でした。
彼は1973年イタリア生まれ。現在はNew Museum of Contemporary ArtのキュレーターとしてNYをベースに活動していますが、世界中から最も熱い視線を浴びているキュレーターの一人でしょう。
ヴェネツィア・ビエンナーレ総合ディレクターとしては最年少。
しかしそれだけの実力を彼は持っています。
これまでも自身の職場ニューミュージアムで2009年に開催された33歳以下の若手作家50名を集めた'Younger Than Jesus’をはじめ、床をぶち抜いて滑り台を投入したCarsten Höllerの回顧展等画期的な展示を実現させ、またMaurizio Cattelanと’Wrong Gallery’なるギャラリーを始めたり、村上隆とカタールでの大規模な個展を成功させたり、アーティストと共犯関係を結ぶような活動も行っています。
そしてなんといっても僕が彼の名を最初に知ったのは2010年の光州ビエンナーレ。
民主化運動によって多大な犠牲を払った光州事件からちょうど30年のこの年に開催されたこのビエンナーレには、その歴史を踏まえ、詩人高銀がその犠牲を嘆き綴った30巻にもわたる叙事詩「一万の命」をタイトルに、一万のイメージが展示されました。
このコンセプトを見た時、これはただ事ではないと思いました。
ビエンナーレというとどうしても祝祭的なムードが漂いますが、このビエンナーレはカタログや会場写真を見るだけでそことは一線を画していることは明らか。
なんせカタログの表紙はアーティストでもない市井の男の写真。この男は毎年自分の誕生日に違う衣装で自分の写真を撮り続けていたという謎の人物。それを正面に据えてきて、一堂に展示している時点で普通の展覧会ではありません。
この展覧会、行かなかったことがこれほどまでに後悔を生むなんて。。。
この後悔を2度も繰り返すわけにはいかないので、はるばるヴェネツィアまで飛んでいきました。

結果からして、本当に素晴らしい展覧会でした。来てよかった。。。
これまでのビエンナーレとは全く違う、ひとつの総体としてのあらゆる知を結集した展覧会。
作家数も100をゆうに超えるこれほど大きな規模でも揺るがないジオーニの美学。
一貫したコンセプトで、最初から最後まで飽きさせません。
そして、これを見れば光州ビエンナーレの後悔は払拭されると思いきや、倍増しました泣
改めてあの展示は見ておくべきだったと思いましたね。
というのも、今回の展示は、ジオーニもインタビューで応えていますが、光州と対をなすものだったからです。

光州との類似を挙げると大きく2点。

まずは、展覧会の契機となる作品の存在。
光州の場合は詩人高銀の詩でしたが、今回はMarino Auritiというイタリアから亡命してアメリカに移った人物が作り上げた、人類の知(タイヤから人工衛星まで)を結集させた博物館、'Il Palazzo Enciclopedico'(Encycropedic Palace/百科事典宮殿)を契機にしています。
彼がこれを制作したのは1955年。そして彼はアーティストでもなんでもなく車の整備士でした。
その再制作された模型からこの展覧会はスタートしますが、もうこの時点でこれまでのビエンナーレとは違うのは明らか。
まず作品が現代の作品ではない。
しかしこの知を結集させるCo-Intelligenceな考え方は、まさに現代の我々の考え方に近い。
Wikipediaとかまさにその考えに基づいて作られてますよね。
そして、展覧会という制度自体も色んなものが1つの場所に集められて、それらひとつひとつに生きる術や発見が備わっている。
考え抜かれたコンセプトには本当舌を巻きますね。
そしてさらにその宮殿の作者が作家ではない。
これは光州の冒頭に置かれた写真群にも共通します。
一気に持って行かれるこの世界感の構築は本当にうまい。
具体的イメージとキャッチーなタイトル。
'Younger Than Jesus’とか'10000 Lives'とか、タイトルだけでドキドキします。
Encyclopedic Palace。何度も唱えてみたくなる言葉の響きです。

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そしてここからジオーニワールドに突入です。
誰が作家で誰が作家でないとか、もうその垣根は取っ払われて平地に置かれます。
アウトサイダーとかインサイダーとか、とてもじゃないけど判断できる間を与えず次から次へと現れる奇妙な作品群にただただ圧倒されます。とてもじゃないけど見きれない。
そのオブセッションもどんどんハマっていきます。
あと展示が圧倒的にうまい。
マンガをずらーっと額装して並べてるのとか気持ちよかった。

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美術展というより、博物館に来てしまったような印象すら受けます。
すごいな、と思ったのは、確かにどこからアーティストでどこからそうじゃないかという垣根は取っ払っているものの、作品の質、つまり、どこからが作品かどこからがそうじゃないかという垣根はしっかり守られている印象を受けました。
どれも一定の質を備えていて、作品としてしっかりそこに存在している。
ただただアーティストとそうじゃない人たちの作品を並べただけではアンデパンダンになってしまいます。
そうじゃなくて、キュレーターがしっかりひとつひとつに目を配り、その質を見極めた上で、その作品にあった展示がなされている。これは並のことじゃないです。考えるだけで恐ろしい労力。
よくぞここまでリサーチし揃えることができたなと。

そして、さらにジャルディーニにあるイタリア館での展示に移動するわけですが、ここでアルセナーレでのテンションを全く落とさせない為の導入がすごい。
このイタリア館の最初の部屋は、教会のように高い天井で上がドームになっていて、無駄に厳かな空気が流れているんですが、その空気に全く馴染んで、精神学者ユングのドローイングが宗教画のように厳かに展示されていました。この導入でまた移動でほぐれたテンションが一気に戻ります。
中に入ると、今回金獅子賞をとったティノ・セーガルのパフォーマンスが繰り広げられていて、奥には大竹新郎の本がずらっと並べられた展示や、リチャード・セラなど、アルセナーレと比べるとアートっぽくはなってきましたね。

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そんなこんなで、圧倒的な量と、圧倒的なリサーチと、圧倒的なコンセプトで見せきったジオーニのビエンナーレ。これは完全にジオーニの「作品」。さすがにキュレーション勝ち過ぎやろ、と思わなくもないけれど、(実際作家の名前とかほとんど覚えられませんでした。。。)これだけ圧倒されるキュレーションも稀です。
この展覧会は間違いなくビエンナーレの歴史に大きな足跡を残しましたね。
彼は今後ますます伝説を作って、ハロルド・ゼーマンやオブリストのような偉大な先輩たちと肩を並べる日も近いことでしょう。てかヴェニスやっちゃったらもうあとドクメンタぐらいしか残ってないけど。。。
そういえば、ヴェニスではそのゼーマンの伝説的な展覧会'When Attitudes Become Form'(態度が形になる時)展が開催中です。こちら。ゼーマンが辞職にまで追いやられた凄まじい展覧会の再現。
僕はギリギリ間に合わず涙をのみました。。。前まで行ったんですがタイムアウト。
ヴェネツィアを1日で回るのが無茶過ぎました。。。Marc Quinの展覧会や、ピノー財団とかもあるし、2日はかけましょう。
ビエンナーレは11月24日まで。無理してでも行く価値はあると思います。

La Biennale di Venezia 2013

カタログはまさに百科事典級の太さと重さで帰り死んでました。。。

写真


最後にビエンナーレに出品中で、先日お亡くなりになったウォルター・デ・マリアの作品。
この作品見た直後にその訃報を聞いてびっくりしました。
ご冥福をお祈りします。

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