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アンドレアス・グルスキー展@国立新美術館

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東京に行ってきました。
今回は展覧会目的ではなかったですが、ちゃっかりいくつか観てきました。
まずはグルスキー。
と、その前に皆さんに覚えておいていただきたいことがあります。

国立新美術館は火曜休館です。

まんまとやられました。。。着いたら休館の文字。あれ、早く着きすぎたかな?と思ったら違った。
普通月曜休館ですよね。なんなんでしょうか。
ちなみに横浜美術館は木曜休館です。

それはさておきグルスキー展。
大阪にも巡回してくるからいいかとも思ったんですが、観れなかったので余計観たくなって次の日リベンジ。
これが予想を遥かに超えてよかった!
まず、この展覧会の何がすごいって出品作品数が尋常じゃない。
海外作家の名前を掲げながら、ここまでの作品数を集めた展覧会って意外にないんですよね。
結構観た後に次の展示室へ続くってなってて、あと数点かと思ったら、数十点待ち構えててビビった。

そして、僕はグルスキーが正直そこまで好きじゃありませんでした。
あんなのただのイメージでしょ、と鷹をくくってました。
その「ただのイメージ」であることの凄さが、今回これだけ一気に見せられると恐ろしい程の説得力で持ってせまってきます。(僕は今まで最大でも5点ぐらいしか一度に観たことはありませんでした)
よく彼の写真は、絵画に例えられるけれど、僕は彼の作品を絵画的とは全く思いません。
実際、カタログに収録されてる3名のテキストすべてに、グルスキー作品の絵画性が取り上げられててげんなりでした。
じゃあ、なぜ彼の作品は絵画的ではないのか。
それは単純に、彼の作品のものとしての物質性のなさです。
グルスキーの作品は、徹底して平面です。
その平面性のラディカルさが、「ただのイメージ」であることを強化している。
例えば絵画はどれだけ平面性を謳っても、絵の具という物質を表面に載せている限り平面になり得ない。
でも、グルスキーの写真は、アクリルによって、出て来るものを押し込めているような印象すらある。
彼のポロックの作品を撮った作品(「無題VI」1997)は、絵画に対する彼なりの挑戦状にすら見えました。
ある意味ポロックは、絵画に置ける平面の嘘を暴いた人と言えるかもしれません。
彼の作品を実際に観ると、表面に絵の具という素材がそのまま張り付き凹凸がすごいです。
そんな絵画ですら、写真にしたら、ちゃんと平面になる。
そうグルスキーは問いかけているような印象すら受けました。
そして、その平面性を徹底することで、イメージから重力も奪い取る。
特に地面を俯瞰するような作品群(「メットマン、高速道路」1993、「マドンナI」2001、「ニャチャン」2004、「福山」2004、「ベーリッツ」2007等々)は、まるで今にも画面から下に滑り落ちそうな気にすらなるんですが、それを表面のアクリルが押し付けてるような見え方ができておもしろかった。
最新作の「バンコク」シリーズもまさにそうですね。川の水面が垂直に立てられているわけですから。
(これをカタログ論考ではニューマンのイメージと重ねてましたが、そういう見方は個人的にあまりおもしろくないです)

あと、グルスキーがベーコンよろしく、作品作りに新聞やテレビからイメージをもらってきてるっていう話は非常におもしろいですね。
1990年の「東京証券取引所」は、日本の新聞の写真を見て思いついたそうです。
ベーコンと違って、彼の場合、写真から写真と同メディアを行き来しているわけですからね。
同じように、飛行機に乗っている際に見る上空映像から着想を得た2010年のシリーズもそうなんですが、この作品に関しては、これまでの平面性から相当逸脱しているように見えて非常に興味深かったです。
特に「南極」は、浮き上がってすら見えるんですよ。
これまでの平面さからは全く違う感じでびっくりしました。
このシリーズからはグルスキーの変化を感じられて、今後も楽しみになりました。

展覧会としては、作品数多くてよかったんですが、やっぱり新作を混ぜこぜにするというやり方はいまいち効果がよくわかりませんでした。
その点カタログは年代順に並んでるのでわかりやすくおすすめです。ちょっと高いですが。
あと、会場でちょっとでも近づくとブザーが鳴るのあれ完全にアウトでしょ。。。
ただでも近づいて見たくなる作品なので、あちこちでブザーなりまくってましたw
それはともかく、本当にいい展覧会なので、是非ご覧下さい。
東京は9月16日まで、大阪は来年の2月14日からです。
http://gursky.jp/

去年のデマンドからドイツ写真家が続くので、今度はThomas Ruffが観たいです。


秘密の湖 @ ミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクション
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人に勧められて行ってきました。都現美やアートコンプレックスのある清澄白河の次の駅、水天宮前駅の出口からすぐ。
ここは普段版画家浜口陽三の版画コレクションがメインらしいです。
今回の企画展は、詩人のたかはしむつお氏が企画し、浜口陽三のコレクションに加え、池内晶子、福田尚代、三宅沙織の3名の女性作家を集めて企画されました。
タイトル「秘密の湖」は彼の詩の中からの抜粋みたいです。
個人的には、池内晶子さんの作品が観たくて行きましたが、どれも作品としてのクオリティが高く、規模としては大きくない展覧会でしたがとても見応えがありました。
一人一人の作品が単純によかったですね。
三宅さんのフォトグラムの作品は、技法が気になってしまって、ちゃんと彼女の物語には入れ込めなかったです。でも美しい世界観でしたね。
福田さんの作品は、恐るべき手仕事に圧倒されました。。。
そして池内さんの作品。版画とインスタレーションですが、地下の暗がりに浮かぶ赤い絹糸の様は凄まじく美しかったです。
ただ、ひとつの展覧会というより、そこまで4人の作家が一緒にやってる必然性は見受けられなかったかな。
8月11日まで。作品はどれもすごくいいです。


あとは、都現美のフランシス・アリス展 ジブラルタル海峡編
2008年に行われた「川を渡る前に橋を渡るな」という作品のプロジェクトをひたすら見せるという感じで、メキシコ編と比べるとそこまでおもしろくなかったですね。2階の、キューバとアメリカを船で結ぶプロジェクトのドキュメント映像の方がおもしろかったな。
それよか、コレクションの泉さんの作品反則です。笑い転げそうになった。。。

それから、ミヅマでやってた宮永愛子展にも行ってきました。
いつの間にかミヅマギャラリー場所移って立派な感じになってた!
展示自体は昨年の国立国際で展示した椅子がメイン。
あとは靴や時計など、おなじみの日常品をナフタリンで作り、それを樹脂で閉じ込めた作品。穴が開いてて、そこにはシールでふたがされてます。購入者のみが開けることができ、開けるとそこからナフタリンが気化し、いずれナフタリンがなくなって樹脂には日常品の抜け殻だけが残るというもの。開けたい!


アートじゃないけどワタリウムでやってる寺山修司展もよかった。
行ったら前回のJR展の名残でボッタの建築がJR仕様だった。あれはいいのか?
それよか寺山修司ですが、最初に彼が小学校時代に作った学級新聞や通知表など、ちょっとやめてあげて!ってなるようなプライベートが晒されてるんですが、彼子供時代から尋常じゃないです。中学校のテストの答案とか、応え方がいちいち文学的w
19歳で病気を患い入院生活を余儀なくするも、その時に作家としてデビューしてるってどういうこと。
ラジオドラマ等を経て、30歳ぐらいで天井桟敷を結成。同い年とは思えない。。。
それから46歳で死ぬまでの間、様々なメディアを駆使して表現を研ぎすませていく。
映画は今でも観れますが、演劇は観れないので、今回の展示はかなり貴重。
特に、展覧会タイトルになってる「ノック」は、街に飛び出して行った超実験演劇で、これは実際体験してみたかったな。。。実際にパフォーマンスを行った場所の地図もらえます。10月27日まで。
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