「嘆きのピエタ」by キム・ギドク



ご無沙汰しております。6月はついに一回も更新せずに終わってしまった。。。
気を取り直して、7月は怒濤の更新劇が待ってるとか待ってないとか。

さて、久々の更新はキム・ギドクの新作です。
前作、カンヌである視点賞を受賞した「アリラン」以来。
長編物語ものとしては2008年の「悲夢」以来です。
その沈黙を破った今作は、韓国初のヴェネツィア映画祭金獅子賞に輝き、本国であまり人気のなかった監督の作品の中でも異例の大ヒットを記録しました。(しかし監督の意向でたった4週で上映打ち切り)
そりゃ期待も増すってもんです。
以下ネタばれ含むんで、見たい人だけどうぞ。
タイトルの「ピエタ」は、このブログ観にきてる人ならほぼ説明不要ですよね。
ミケランジェロに代表される、キリスト教美術においてよく制作された主題です。
マリアが屍となったキリストを抱いているあの像です。
サム・テイラー=ウッドもこれを元に映像を作っていました。こちら
それにしてもなんでいちいち「嘆きの」とかつけちゃうんでしょうか。原題の「ピエタ」だけでよかろう。日本人にはわからないとの判断なのか?ハネケの「愛、アムール」とかもそうやけど。
ということで、僕はてっきりキリスト教的な物語なのかと思ったら、むしろ韓国の家族の絆を綴る儒教的な物語だったと思います。(もちろんキリスト教的なテーマも含んでますが。贖罪とか。)
前売り券には涙を拭くタオルをプレゼント!とかなってるけど、正直泣けません。
しかしやっぱりギドク映画は、心をえぐられますね。強すぎる。
冒頭から主人公の自慰(夢精?)行為で始まり、それ以降怒濤の暴力、カニバリズム、レイプ。。。(主人公が女に食わせたものは結局なんだったの?足から血が滴ってたのでもしやアレかと思ったら違ってて、足をえぐったにしても引きずる様子もなく。。。)
目を覆うような凄惨な場面が続きます。これは日本映画では作れないかも。。。
実際、この映画なんと1000万円以下の製作費で、撮影期間も10日。
スポンサーをほとんどつけずに、ギドク自身のコントロールで作られています。
故に、これだけ凄惨な場面が撮れるわけです。
そして、この凄惨な場面が後半になってものすごく効いてくる。
主人公の前に突然母と名乗る女が現れて、主人公も次第に受け入れていく設定が、普通ではありえんと一蹴するような筋も、ギドク映画ではストンと腑に落ちてしまう。
天涯孤独で生きてきた主人公だけに、その心が溶け始めると止まらないんでしょうね。
そしてその母と名乗る女、ミソン役のチョ・ミンスの演技がものすごかった。この映画がこれだけ成功しているのは、彼女の影響が相当でかいと思う。ギドク映画は、台詞が少ないだけに、相当な演技力が俳優たちに求められるけれど、彼女の演技はずば抜けてた。
特に冷蔵庫の中の本当の息子にセーターを着せて泣きわめく場面は白眉。あの泣き方は尋常じゃない。
この映画はともすれば「復讐劇」とも呼べるかもしれないけれど、監督もインタビューで言っていた通り、単なる「復讐劇」には終えられていない。ミソンのした復讐は、諸刃の剣として彼女に突き刺さり、最後息子を死に追いやったはずの主人公のことを思って泣く場面なんかはなんとも言えない気持ちになってしまった。
それから、追いやられる工業地帯の風景を舐めるように撮っているのも印象的。監督なりの資本主義の軋轢に対するメッセージなのだと思う。
こうした現実的なメッセージをこれだけ直接的に投げかけるのは、今までのギドク映画にはなかった。
これまではどちらかというと、「悲夢」や「うつせみ」に顕著なように、夢と現をたゆたうような、幻想的な淡い映像美でもって見せてたところもあったと思う。
しかしこの映画は驚く程ビビッドに撮られている。
これまでのギドク映画が好きな人にとっては、戸惑いもあると思う。僕もそうでした。
やはり、前作「アリラン」で見せたような、監督の苦悩が、この映画を徹底して現実に向けさせたのだと思うし、そのことによって、この映画を金獅子賞にまで導いたのだと思う。
最後は、ギドクらしい美しい、そして残酷な映像で終わるのだけど、観た後じわじわ効いてくるこの感じは、やはりギドク作品らしい効果。やっぱりまた観たくなります。
先日同じく韓国の監督パク・チャヌクのハリウッドデビュー作「イノセント・ガーデン」を観て、やっぱり韓国映画は強いなーと思ったけれど、ギドク映画を観て、日本映画どんどん取り残されてる気がして怖かったです。
「イノセント・ガーデン」は映像も内容も美しかったけど、やっぱりギドク作品と比べると強さの点で劣りますね。
ポン・ジュノも次回作はハリウッドで映画を撮ったみたいで、これはこれでとても楽しみだけど、やっぱりギドクや、河瀬さんのように、地元にこだわって製作している人の作品は真に迫ります。
あ、でもこの作品かわからないけど、日本で撮ろうとしたことがあって、ロケ代があまりに高過ぎてやめたという話もあるので、ギドクの場合単純に安く撮れるってので地元に撮ってるのかも笑

関連記事

テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

コメントの投稿

非公開コメント

カレンダー
04 | 2017/05 | 06
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -
最新記事
月別アーカイブ
カテゴリ
プロフィール

もりかわみのる

森川穣
現代美術作家。
森川穣 website

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

管理者用
カウンター
検索フォーム
To See List
RSSリンクの表示
QRコード
QR