高野台Z邸 by htmn







(写真提供:中畑昌之)
ロンドンからの友人であり、コンペのパートナーでもある建築家中畑昌之氏の作品。
靍田博章氏とhtmnを設立して行ったリフォーム。
二世帯住宅の若い夫婦が住まう2階をリノベーションしました。
西武池袋線の駅から徒歩15分ほど。
閑静な住宅街で、目印がほとんどなくほんまに着けるのか不安になりつつなんとか到着。
内装のリフォームなので、外見は普通の一軒家と全く同じ。
2階に上がると中畑氏が出迎えてくれる。
まず、全体を占める白の割合に目が行く。とにかく白い印象。
そして天井を見上げると、三角屋根に違和感を覚える。
外の外観と一致しない天井の三角屋根。
これは、屋根裏の空間を利用したトップルーフで、さらに別のしかけも。
屋根の空間と他の空間のあまりの違和感に不思議な気持ちになる。
普通、1つの部屋に1つのトップといった感じだけれど、ここではあえてずらされている。
合計で4つあるその三角のトップは、空間を横断して突き出ている。
これは、住宅という、何年も住み続けるという特徴を踏まえて、あえて何かをズラすことで、飽きの来ないデザインを目指したものということ。
そしてさらに、このトップにはツヤのある白が塗られている。
ここに床の色が反射して、部屋がオレンジに染まる。
方角としては、階段をあがるとまず手前にキッチンがありリビングがあるのだが、こちらが東。
奥には寝室と子供部屋があり、そちらは西。
朝は階段の手前側に太陽の光が入りオレンジになり、奥は青っぽい空間になる。夕方はその逆。
一枚目の写真がまさにその様子を捉えている。
こうして、先に白い空間だと言ったが、時間によって様々な彩りを添えてくれる。
また屋根以外にも領域の横断が随所に見られる。
例えばリビングと、子供部屋を突っ切る机。
リビングと子供部屋の間には旦那さんの書斎があり、リビングでお母さんがテレビを見て、旦那さんが仕事をし、お子さんが遊ぶという三者三様の行動がつながれているような感覚。
また子供部屋と寝室の間の壁には、三角屋根によって出来た隙間があり、お互いのプライバシーは守りながら、お互いの気配を感じることができる。
お子さんの成長に合わせて机も取り外し可能で、ちゃんと間地切ることも可能。
また、書斎は、机を取り払うことで廊下にもなり、空間の柔軟性も確保されている。
こうして見ていくと、繊細な配慮に驚くばかり。
住宅というものは、先にも触れたが、どうしても長い付き合いになるし、時の変化によって空間の使い方も変わってくる。それにちゃんと対応していかなければならないのはすごく難しい。
けれど、逆に、住宅には、手取り足取りしてやらなくても住む人がなんとかしてやっていくといったような、他の建築にはない面白みもあるのかもしれない。
安藤忠雄が「住むことは戦いである」と言っていたり、先日のU-30の講演で大西麻貴さんが、「住宅は、それを使う人も努力してなんとか自分の住みやすい環境づくりに切磋琢磨する必死さのようなものがある」と言っていた。
公共建築とかだと、使用目的も最初から最後まで決められていて、不便さは完全に敵である。
けれど、住宅には何かそれらも抱擁するような柔らかさみたいなものがあって、だから住宅はおもしろいのかもしれない。
こうして、実際に人が住んでる空間に佇んでみて色々考えられました。
ひとつ難をいうなら、既存の梁の色をなんとか残せなかったのかな、ということ。
この梁も白く塗られていたので、聞いてみたら実際ギリギリまで悩まれたとのこと。
ただあまりに汚くて、そのまま残すには難有りだったみたい。
昔の家みたいな丸太のような梁だったら確かにかっこよかったのかもしれない。
いやはや、いい経験させていただきました。
htmnはまだまだ進行中のプロジェクトを抱えているとのこと。楽しみです。
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