闇

外苑前にあるDIALOG IN THE DARK(以下DITD)に行ってきました。
DITDとは、視覚障害者の方が先導してある物語に沿って暗闇を探検するというもの。
予約がいつも満杯で、この日は平日なのでどうにか当日予約で行けた。
紹介してくださったYさんと一緒にLet's get into the dark!
8人位のグループになって進んでいくのだけれど、知らないもの同士でも暗闇の中ではすぐに仲良くなれちゃう。協力しないと前に進めないですから。最終的に暗闇の中で皆ではないちもんめしたりして遊んだ笑
最初は恐ろしくて前になんて進めないと思ったけど、段々楽しくなってくる。
まず入ったら土や枯葉の匂いが嗅覚を刺激する。
棒で辺りをかき混ぜながら互いに何があったかを報告しあっていく。
中には植木鉢があったりブランコがあったり、まるで公園。
ものすごく広く感じたのだけれど実際はどれぐらいの広さなのだろう。
暗闇の中では視覚以外の感覚が研ぎ澄まされる。
途中「雷親父」の家を通り抜けて秘密基地へ。
「雷親父」の家に勝手に上がりこんで色々物色。
靴を脱いだら一生取り戻せないんじゃないかと思いつつ、皆で自分の隣に誰が脱いだかを確認しながら脱げば解決することがわかる。
「雷親父」が帰ってきたので、急いで、でも慎重に逃げる。
途中橋を渡るのがものすごく怖かったけどなんとか秘密基地へ。
秘密基地には色んなおもちゃが隠されていた。
闇の中では皆が無邪気な子供になれる。
AがAであることがわかるだけで興奮できるなんて。
お次は闇の中のカフェへ。
飲み物を注文。ここはあえてホットココアで。こぼしたらアウト。
200円を払うんだけど、ここがまた至難の業、かと思いきや意外と手触りで硬貨の種類がわかる。
1円は軽いし、10円は大きい、5円と50円には穴が開いてるし、500円は最もでかい。
無事払い終えてあったかいココアとクッキー。しあわせ。
どういう机でどういう配置で皆が座ってるのか話し合う。
そんなこんなで楽しい時間はアッという間。
闇ともお別れの時間。
なんと90分も闇の中にいたらしい!
再び光の世界に戻るとなんだかとても味気ない感じがした。
最近視覚にとても興味があります。
特に暗順応や明順応といったことに。
美術はどこまで言っても視覚芸術なので、作品の見え方、見せ方を考えつくさなければなりません。
そこでこのDITDの話を聞いた瞬間からいてもたってもいられなくなって早速体験してきたわけです。
そして、僕の至った結論は、やはり闇のままでは芸術になりえないということでした。
実際闇の中で膨らむ想像力というのは偉大で、感覚が研ぎ澄まされます。
それでもなんだか、やはりあの感覚は遊園地のアトラクションに近い一過性のものを感じました。
作家は作品を作って誰かに見せるという時に想定する観客は圧倒的に健常者と言われる人々です。
そのことに僕はある種の罪悪感を背負っていました。今も背負っています。
芸術センターの展示ではさらに見えにくさやスリットの高さに関して、お年を召した方々からはある程度の反感も聞かれましたし、それは仕方ないと思っていました。
そんな折、弱視の方が来られて僕はどうしようかと考えあぐねていたのですが、その方がものすごく自然にスリットの中に指を入れ始めたのです。
どうするのかとしばらく見守っていたら、スリットに沿って指を入れながら歩き始めて、中の石に当たる度に立ち止まり、その石の感触を全身で感じておられました。
僕はその瞬間なんだか救われた気持ちになって、とても感動しました。
こういう作品の鑑賞の仕方があるのか!と
僕は美術という視覚芸術から逃げないようにしようと誓いました。
そして今回の体験を通して、やはり「見えない」と「見えにくい」では違うのだと確信しました。
闇の世界と光の世界の大きな違いはずばり陰影の存在です。
闇と陰影は違います。
陰影とは我々が視覚で世界を認識する際の絶対的要素です。
僕はこの闇と光の間に存在する陰影を見せたいのではないかと思っています。
まだまだまとまりませんが、今回のDITDの体験は改めて自分の中の核心に触れた気がしました。
いい体験をありがとうございました。
ところで、この8人の中ですごい出会いがありました。
世界は狭い!
DIALOG IN THE DARK>>http://www.dialoginthedark.com/
普段は90分5000円ですが、3月20日から22日は60分のショートバージョンが3000円で体験できるみたい。お試しにいかがでしょうか。ネットではいっぱいでも駄目もとで電話してみたらキャンセルが出てることもありますので是非トライしてみてください。
内容が季節によって異なるみたいなのでしばらくしたらまた行ってみたい。くせになります。
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