ヤン・ファーブル「Another Sleepy Dusty Delta Day」@AI HALL

ヤン・ファーブル関西初上陸の舞台を観に伊丹へ。
まさかこんな狭いところでやるなんて・・・。
実際客席と舞台が相当近くて、演者の息遣いが生で聞こえてました。
そもそもヤン・ファーブルの美術作家としての顔は好きじゃない。
作品はゴテゴテしてるし派手だし素材感とか全然好きになれない。
だからこないだの金沢の展覧会も全然興味を抱けなかった。
でもそれは、美術館に展示されているからそう感じるんじゃないかと思う。
あるべき場所にないという感覚。
それが彼の作品に対する違和感や嫌悪感を生んでいたように思えて仕方なかった。
だからそれらが、もうひとつのコレオグラファーとしての顔で発揮されているんじゃないだろうか。
そんな期待も込めて、いつか彼の舞台表現は見てみたいと思っていました。
そしてやはりそれは当たっていたようで、今回の舞台はとても素晴らしかった。
なんといっても、演じているギリシャ人のアルテミスが過ごすぎる。
舞台上には彼女しかいなくて、あとはカナリヤの入った鳥かごが10個宙にぶら下がってて、石炭の小山がいくつかと、その周りを走るおもちゃの電車。
このタイトルは、ボビー・ジェントリーの「ビリー・ジョーの歌」からの一説。
歌の内容は、橋から飛び降りて自殺するビリー・ジョーの話を食卓を囲みながら話す家族の話。
実際この舞台の中でもアルテミスが歌っているのだけど、かなり変な歌。
教訓めいたものもないし、特に結末もない。
ただわかるのは「ビリー・ジョー」なる人物が自殺したこと。
そこからストーリーを膨らませていったのが今回の舞台。
最初に演じられたのは2008年で、当時の演者はクロアチア人のイヴァナ・ヨゼク。
彼女がこの歌を紹介し、共に創り上げた物語。
それを今回は300人の中からオーディションで選ばれたアルテミスが演じる。
決してその再演ではなく、アルテミスが演じるに当たって大幅な変更があった模様。
そのあたりは舞台後のトークで明かされたのだけど、最初はアルテミスにとって、他人が演じていたものをなぞるのはストレスだったそうだが、ヤンは、アルテミスにあわせて全く作り替えて、話し合いながら作っていったんだとか。
アルテミスはトークの際は本当に普通の女の子なんだけど、演じているとまるで別人のよう。
ビリー・ジョーを失い取り乱す女を見事に体現していた。
その動きは凄まじくて、ちょっとどう書いたらいいかわからない。
この舞台はアルテミス一人に掛かっているような緊張感があって、演出とかは最小限。
その潔さが見ていて気持よかった。
最後炭を全身に塗りたくって踊るアルテミスは、まるで人間ではなかった。
こんなに生命のエネルギーを如実に感じ取れた舞台は初めて。
途中ヤン・ファーブルお得意の下品で過激なシーンもあったけれど(トップレスになったり、ビール瓶をパンツの中に突っ込んだり)、概して素晴らしかった。
ホンマは観に行けないはずだったんだが、予定変更で観にいけてよかった。
この後高知、金沢と巡回するようなので、機会があればぜひ。
dots「nowhere」@京都精華大学
つい数日前にメールがあって、なんと精華大学で発表するとのこと!
こないだの「カカメ」で完全に虜になったので、もう行くっきゃないということで、行ってきました。
行ったら校内のギャラリー前でなにやらパーティーがやってたので、何かいな?と思ったら「LIFE with ART ~受けとめ、そして、渡す人~」展のオープニングでした。
これはダムタイプ周辺のパフォーマンスを改めて再考するという企画で京都で少し話題になってます。
僕も気になってはいたんですが、まあ精華まで行くことはあるまいと思ってたので、今日がオープニングだったのは行って初めて知りました。というかこのdotsの舞台もこのオープニングイベント関連だったみたい。
展覧会自体は、やはりアーカイブ的な内容で時間もなかったし特におもしろくなかった。
古橋悌二の「LOVERS」も以前京都芸術センターで見たようにガッツリインスタレーションをしてるわけじゃなくて、そのインスタレーションの様子を写した映像みたいな、よくわからないものになってました。
あとは古橋悌二をめぐる周囲のインタビューとか、エイズ関連の話題とか。
2階は高嶺格さんの展示で、またも「ベイビー・インサドン」。
今年に入って何回見たかわかんないぐらい見てるな・・・ひっぱりだこな作品。
展覧会自体はそんな感じ。
また、常設展示室では、イギリスのキングストン大学との連携で、学生たちがパフォーマンスを披露していた。ガラスケースの中に人がいるのはシュール。
さて、肝心のdotsのパフォーマンスは19時スタート。
こちらも2008年の初演からの再演。
これまた狭いスペースで舞台と客席が同じ地平。
真っ暗な中、ヘリウム入りの風船を付けたパフォーマーが登場。
風船と彼女の両手にだけ赤いライトが付いていて、かすかなシルエットが浮かぶ。
そしてスモークが焚かれ、プロジェクター三台による演出。
dotsは演出に長けたカンパニーだと思う。
普段はどうしようもなく汚い大学の施設が別世界になってた。
特に光と音の使い方が絶妙で、アドレナリンが放出。
それに対してパフォーマンスが少し劣る気がする。
前述のヤン・ファーブルの舞台を見たばかりというのもあって、やや物足りない感じ。
dotsにはやはりスペクタクルのある舞台を期待したいと思う。
また何かあったら絶対見に行きます。
久々に食ったれあた(食堂)の飯は最高でした。
ここの昼限定の豚のしょうが焼き定食は世界で一番うまいと思う。
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