Damien Hirst @ GAGOSIAN GALLERY
ついに・・・ついにこの日が来た!!
今や英国ではrubish(ゴミ)と言われて久しい彼ですが、やはり僕にとっては僕がこの国に来ようと思ったきっかけなわけです。
初めて彼の作品を(本か何かで)見た時の衝撃を忘れられません。「Mother and Child deveided」。「引き裂かれた母子」というタイトルのこの作品はまさに母牛と子牛の体が真っ二つに切断されホルマリン漬けされているという衝撃的な作品。彼はこの作品でターナー賞をものにするわけですが、当事の賛否両論っぷりは想像に難くないでしょう。以前書いた僕のショボエッセイでも触れてるのでよかったらそちらもどうぞ。
まあ、とにかくそれから彼の作品にどんどん魅かれていってそれを窓口にしてイギリス芸術にハマっていったわけです。
それから彼のホルマリンの作品をちゃんと生で観たい!と思ってたのに、中々お目にかかれず・・・。多分その内容からして日本では展示がむずかしいと思う。金沢にある蝶がキャンバスに張り付けにされてる作品で精一杯でしょう。なので昨夏観れると思って来たロンドンでもやはりお目にかかれずじまいで終わってたのです。
で、今回。前置きが長すぎましたが3度目の正直でついに・・・・・・!
しかもガゴーシアンのでっかいスペースに置かれたそれはホントすごかった
まずはなんといってもびっくりしたのが彼の代表作の1つ「A Thousand Years」が展示されてたこと。これはホントに嬉しい驚き。この作品は彼がまだ学生の頃に企画した「Freeze」という展覧会で発表して、それをみたチャールズ・サーチという蒐集家が学生の作品にも関わらず数百万で購入したといういわくつきの作品(今や数億単位の作品ですが・・・) でっかいアクリルケースが2つ並んでて片一方には白い箱が、もう片一方には牛の頭が置いてあって、その白い箱の中身はなんとウジを培養してて、そっから出るわ出るわ蝿の大群が・・・!!そうです、このアクリルケースの中は蝿が所狭しと飛び回ってるのですよ・・・。そんでもって牛の頭の入ったケースには同時に虫取り用の電気がついててそれに触れて死んだ蝿たちがこれまたその床にところせましと転がってるわけです。それでも蝿たちはその牛の屍をついばみ卵を産みまたそれが返って・・・とタイトルの通り千年続く営みなわけです。そのケースの中で繰り返される生と死は世界の縮図のようですな。
他はすべて新作
まずは「No Arts;No Letters;No Society」と題された薬箱の作品。なんか単純なんやけどびっしりケースの中に薬箱が並んでるのは普通にきれい。
それから3連絵画の蝶がくっついたバージョンと、蝿がびっしりくっついたバージョン。蝶はじっくりみるとやっぱ生々しいですね・・・。蝿のやつは写真で観た事あるけど写真だと単純に真っ黒にしか見えなくて、今回生で見て気持ち悪さを実感。ホントびっしりくっついてるんすよ・・・
で、多分今回のメインのホルマリン作品。rubishといえど、やはりこの人の注目度は未だに衰えないのか地下鉄新聞METROでもデカデカと取り上げられてました。作品自体はちょっと恣意的かなとは思うけど、やっぱり初めて観たってのもあり感動!それもまた3つのホルマリン液で満たされたケースの中に羊がトイレに座ってるのと、キリストよろしく洗面所の上で磔にされてるのと、これまたトイレでドラッグやってるみたいなやつ。内容はともかく普通に綺麗なんですよね。360度見渡してもやっぱ美しい。それから羊がこれまた生々しい・・・舌出して死んでますからね・・・。
おもしろかったのが、観客が中に入った途端顔をしかめる(笑) そりゃあんな蝿の大群だの羊の死骸だのを見せられてもね・・・。知ってる人はいいけど、ロンドンって結構美術知らなさそうな近所のおっちゃんとかも入ってくるから結構びっくりしてた。でもギャラリーにそういう人たちが来るってのもやっぱ素敵ですよね。
それにしても、最近のハーストの作品は確かに昔のような輝きがなく、彫刻作品や絵画作品なんてホントrubishといわれても仕方がない感じなんやけど、でもやっぱホルマリンとかの作品は魅力がある。でも作家的には昔のスタイルを望まれ続けるってのはいやなんかな。でもあの衝撃を超えるものって中々作れないだろうから大変だぁね。
あと、やっぱYBA世代の作品は僕の胸を強く打つ。YBAって正直こっちの学生や若手作家からすると目の上のこぶみたいな存在で、口に出すのもいや、みたいな空気なんやけど、実際YBA以降悪くはないけど大して良くもないみたいな傾向が続いてて英国アートは元気がないと僕は思う。あの頃はよかったなんて言いたくないけどそれでもやっぱ少し言いたくもなる。
ところでこのハーストの展覧会は同時にフランシス・ベーコンの展覧会と合同企画されてて、ガゴーシアンは今すごい濃い空間になってます。そもそもデミアンの新作はベーコンのオマージュ的なノリで制作されたようで、蝶と蝿に関しては、ベーコンお得意の3連絵画形式を用いてるし、ホルマリンに関しても、どこかベーコンの絵画と相通じるところがある。ベーコンの絵画にもたまに牛の屍みたいなのが出てきますしね。
ってことでベーコン展。
Francis Bacon @ GAGOSIAN GALLERY
ベーコンの作品群の中でも3連絵画に焦点を当てた展覧会。
こんだけの量のベーコンを一気に観れるなんて幸せすぎます。
ってかもうここ美術館って言っちゃっていいと思う。広すぎです・・・。
僕は彼の独特な色使いが好きで、絵画自体は本当に毒々しいんだけど、背景がオレンジだったり、エメラルドグリーンだったりとポップな色使いなので、でもそれがまた毒々しさを増してる感じが凄く好き。それにしてもどういう感覚で描いてはんねやろか・・・。人体の解体の仕方とかがホントにありえん。筆のストロークとかも何ひとつとっても魅力的だし本当に好きな作家です。キャンバスの裏地に描いてるってのもまたいい。
今回驚きなのが彼の代表作の「Potrait of Pope」が展示されてたこと!しかもそれだけならまだしもそのドローイング絵画も一緒に展示されてて中々観れないような作品をこれでもかってくらいプレゼンしてる・・・ガゴーシアン恐るべし・・・多分これだけの量テートのコレクションでも観れないっす。
あぁ、にしてもハーストとベーコン・・・どう考えてもすごい。会期中数回再訪予定。
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