楊福東「将軍的微笑」@原美術館


今回の遠征では映像をかなりたくさん見た。
その中でも特に印象深かったのは、原美の楊福東の展示。
そもそも彼の作品は以前まで得意ではなかった。
その最も苦手としてた理由はなんせ長いこと。
1時間なんてザラで、2007年のヴェネツィア・ビエンナーレで発表された「竹林の七賢人」なんかはなんと5時間にも及ぶ大作である。
確かにアルセナ-レの会場のど真ん中に大きなシアターを構えて上映していたのを覚えているが、当時誰がこんな長いこと見続けられんねんといった感想で、パッと覗いて出て行ってしまった。
映像はパッと見て評価を下せないメディアだ。
ある一定の時間半強制的に拘束される。
見出したらキリがないので、いつも1分ぐらいで評価を下して見続けるか否かを決めてしまう。
楊の作品の特徴は白黒の無声映画ということである。
映し出されるのも誰かの日常のシーンばかり。
至極退屈でスペクタクルもない、おそろしく単調な映像なのだ。
そんなイメージを覆したのが、一昨年に見た、「アヴァンギャルド・チャイナ」での映像だった。
会場の最後に投影されていたそれは、とても感動させられた。
意味から解放されるというのか、観客が各々ストーリーを紡いでいける、とても豊かな映像だと気づいたからだ。
それから楊の作品を見るのが苦にならなくなったので、今回の展示は結構楽しみにしていた。
中でも前述した「竹林の七賢人」の第三弾となる映像はすばらしかった。
連れがいたので気を使って途中で出てしまったけれど、最後まで見たかった。
確か50分以上あったと思うけれど、まったく苦にならない。
5月まで会期が延長されてるので、もしかしたらまた観にいくかも。
あとその隣の「半馬索」もよかった。荒涼とした大地をスーツ姿の青年がひたすら旅をしていく。
今資料を見て驚いたが、カラーの映像だったんですね。記憶の中ではこれも白黒のイメージだったのだけど。こういう記憶違いも楽しい。
これまでの楊のイメージを変えてきたのが、2階の奥の部屋に展示されていた「青麒麟 Part1」と、今回のタイトルにもなっている「将軍的微笑」である。
どちらもインスタレーションの形式をとっていて、これまでがっつり映像として見せてきた楊のイメージからは程遠い感じだ。
まだ「青麒麟」は、これまでの主題、すなわち発展から遠ざかっていく風景を、労働者と共に見せるスティールとムービーの中間を成す作品だけど、「将軍的微笑」に関しては完全に束芋的な映像インスタレーションだった。
「将軍的微笑」は、この美術館の前のダイニングルームを使った、サイトスペシフィックとも言える作品で、でも今回の為に作られたものではないという不思議な符号を持った力強い作品。
長い机の上に、食事をとる人々の手が映し出されていて、わいわいがやがや様々な音が流れている。
上にもいくつかのTVモニターが設置されていたり、両端には二人の将軍の姿。
一人は昔をひたすら回顧していて、一人はピアノを弾いている。
テーブルの世界とかけ離れたどこかさびしい風景。
この作品をどう解釈するのか、僕の中でまだ釈然としていないけど、これから楊がどのように進んでいくのかが楽しみ。
ちなみに一番最初の部屋の「バックヤード-ほら、陽が昇るよ!」はわけがわからず、初っ端から不安に陥れられました笑
毎週日曜日には映写技師さんが流してくれるんやって。
あと、2階の階段のところで流されている楊のインタビューは必見。
思慮深く、一言一言が重く響きます。
5月23日まで。
<関連記事>
アヴァンギャルド・チャイナ@国立国際美術館
52 la Biennale di Venezia ♯1


REFLECTION 映像が見せる"もうひとつの世界"@水戸芸術館

先日の小生の展覧会を見てくださった学芸員さんにご挨拶をと思って朝一で水戸。
にしても遠い・・・。いつもここはいい展覧会がやってるけど距離が邪魔をする。
そのついでとばかり見た展覧会だったけど結構よかった。
前半は政治的なテーマを扱ったものが多かった。
マティアス・ヴェルムカ&ミーシャ・ラインカウフのベルリン統合前の東から西へ脱走する人々を再現した映像や、藤井光の若いホームレスを取材した映像。Chim↑Pomやジェレミー・デラーもいうにあらず、八幡亜紀の河川敷で一人でサーカス小屋をやってるおっさんに当局が出て行くように要請するみたいなドキュメントまで。
こういった作品を見るたびに考えてしまう。
つまり、アートでこれをやる意義がどこまであるのだろう?と。
もちろんないとは言えない。観に来た人は多かれ少なかれその問題を考える。
しかし、この「観に来た人は」というのが問題で、わざわざ美術館までやってきて、こういった映像を見る人がどれだけいるのかという話である。
こういった問題はマジョリティに訴えかけてなんぼみたいなところがあるので、アートみたいなマイノリティの世界でやるより、よっぽどテレビ番組とかにしてしまう方が効率がいい。
もちろん一人一人に訴えかける深度はまったく違うが、それでも、である。
むしろ前半のおもしろさはその展示の仕方にある。
得てしてそうなってるのかはわからないけれど、ひとつの映像を見ているときに視界の端にすでに別の作品が見えていたり、音がこちらまで聞こえてくるといった侵犯がなされている。
その状態がとてもおもしろかった。どうなんかな。
後半は宇川さんからがらっと印象が変わる。
宇川さんの作品はなんと「目を瞑って見る映像」。
他のしかけは特におもしろくもなんともなかったが、こういう映像の見せ方は面白いと思う。あと何を見せるかというのにもいろいろ可能性がありそう。今回のはただの刺激でしかなかったが、もっと豊かな像を見せられる隙間があるんじゃないだろうか。
あと以降の作品はどうってことないけど、ラストのさわさんは必見。
正直これ観るだけでも水戸に来る価値はあると思う。
もう泣きそうになった。2周分ぐらいその場から動けなかった。
やはりさわひらきはすごい。感動した!
さわさんは「インシデンタル・アフェアーズ」の時もそうやったけど、グループ展の最後を飾るのに相応しい作家。映画のエンディングを見ているよう。音楽も素敵。完璧。
水戸は展覧会ごとにかなり空間を変えてきていて、その精度がどの美術館より高い!
美術館自体は正直どうしようもないけれど、そこはキュレーターの腕の見せ所なのだろう。
今回のクリテリオムの高田安規子・政子の展示もよかった。
地図を切り取るすさまじい手仕事。すばらしい。
あー、前回のボイス展も見たかった!
<関連記事>
Hiraki Sawa @ Chisenhale Gallery
インシデンタル・アフェアーズ@サントリーミュージアム


束芋「断面の世界」@横浜美術館

とても楽しみにしていたのだけど、残念ながら期待を上回るものではなかった。
もちろん各々の作品はすばらしかったのだけど、全体の印象が薄すぎる。
何でかな?原美術館の展示がよすぎてそれとどうしても比べてしまう。
多分「よかった」と思える展覧会って、数ある出品作品の中でも突出したものがひとつでもあれば「いい展覧会」という印象になるんじゃないかと推測する。今回のは平均して良くて、だからといってこれがよかったと後に語り継げるものもなかったのが痛いところ。難しいね。
逆に原の時はあの波の映像が未だに忘れられないのです。
楊福東のカタログは買ったけど、束芋のカタログは買えなかった。
大阪の国立国際にも巡回するみたいやけどどうしようかなー。安かったら行こう。
常設は石内都の写真の保存状態の悪さに驚愕。大丈夫か?
夜にはチェルフィッチュの舞台を見た。ちょうど会場も横浜美術館やったし。
客席に俳優のMM氏がいた。完全に浮き足立ってしまった。オーラが違う。
内容は格差社会に言及するものだったけど、動きもほとんどないので難しかった。
隣に座ってた連れは完全に眠りの世界に没してらっしゃった笑
いろんな舞台が見たい今日この頃。

横浜美術館ではちょっとした個人的事件がありました。
なんと館長の逢坂さんにお会いすることが叶ったのです。
彼女は僕の憧れのキュレーターさんで、ここでも何度か言ってる水戸芸の「人間の未来へ-ダークサイドからの逃走」という展覧会を企画されて、僕はその展覧会で初めてキュレーションの重要さに気づかされたし、初めて展覧会見て泣いてしまったのです。
そんな逢坂さんがなんとこないだの小生の展覧会を観に来てくれてて、そのときはお会いできず芳名録で確認して一人で飛び上がったんですが、今回だめもとでアポもなしに受付で挨拶できないかと言ったらわざわざ出てきてくれて名刺までいただいちゃいました。
あの展覧会の感動も伝えられたので、束芋やチェルフィッチュそっちのけで大感動。
いつか一緒にお仕事したいっす!

<関連記事>
人間の未来へ-ダークサイドからの逃走@水戸芸術館
束芋「ヨロヨロン」@原美術館
束芋@カルティエ財団
チェルフィッチュ「クーラー」@AI・HALL
「タトゥー」@新国立劇場
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No title

すっかり報告忘れてました!すいません。
楊はよかったですねー。また行きたいです。
松谷さんはもう少し大きな箱ならもっとお勧めなんですが。
さわさんはすばらしいです。ちょうどオーストラリアで開催中のアジア=パシフィック・トライエニアルに出品中の新作が!すばらしいです。

No title

ヤン・フードンはOKで、束芋はイマイチ、松谷さんはまずまずなのですね。
竹林の七賢人を最後まで見たけど、あれこそ実力なのかな。
私は将軍の両脇の映像も好きでした。
水戸のリフレクションでのさわひらきさんの作品に期待してしまうなぁ。
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