fc2ブログ

杉本博司「光の自然」@IZU PHOTO MUSEUM


昨年末オープンした杉本博司が設計も手がけた美術館IZU PHOTO MUSEUMに行ってきました。
静岡県は三島駅からシャトルバスで約20分。
クレマチスの丘というところにあり、ここにはヴァンジ彫刻庭園美術館やベルナール・ビュッフェ美術館なんかも近くにあります。
写真専門に扱う美術館として、今回の杉本氏の展覧会は�落としとしてぴったりでした。
発表されていたのは、「放電場」の新作とタルボットのネガを起こした「光子的素描」。
写真の創世記に迫るすごい展示でした。
「放電場」は近年杉本氏が力を入れている新しいシリーズで、ギャラリーコヤナギで見た水中放電を使ったすさまじい像を見せ付けてくれてます。
フラクタルという言葉ではもはや言い表せられない美しさ。
まるで狼の毛皮のような肌理と、嵐の風景を思わせるような全体像。
ホントこの人どこまでいっちゃうんでしょうね。。。
これは写真の産みの親タルボットが実験していたものらしく、それを杉本氏が受け継いで形にしてるとのこと。
さらに新作「光子的素描」は、タルボットの現存している貴重なネガを、独特の技法で現在に蘇らせた作品。タルボットの作品が杉本さんの作品に生まれ変わってる!
この「放電場」も「光子的素描」もドイツのK20で最初に見たのだけれど、確実に進化していて、特に「光子的素描」はK20で見たときの印象とまったく違うのにびっくり。
杉本氏はすっかりタルボットの意思を現代につないでいます。
この「つなぐ」というのが、今回の展覧会の根底だと思う。
特にアートの世界において、この「つなぐ」という意識は本当に少ないと思う。
やはりアートにおけるオリジナル信奉は根強く、常に新しいものではないといけないという強迫観念のようなものが渦巻いていて、それが表現の幅を狭めている要因のように思える。
アートもひとつの伝統芸能として、後世につなぐ必要があると思う。
自分も作家として、誰の意思を継ぐかというのを最近考え始めている。
それをパクりと呼んでしまうのは本当に残念な発想だと思う。
そのアイディアを如何に自分のフィルターに通して昇華するかが、後世に残された作家の腕の見せ所なんだと思う。
そもそも実際まったくのオリジナルなんて今更存在するとも思えない。
そこに対して正々堂々と挑んでるのが杉本博司という作家のすごいところ。
今回の展示で改めて思い知らされました。

ところで建物に関してははっきり言ってだめでした。
杉本さんの趣味全開といった感じで、すごく食傷気味。
今後どういう展示が来るのかわからないけれど、遊びもすくないのである程度の幅でしか見せられないのではないかと思う。
美術作家が下手に他の分野に手を出すのはいけませんね。
そこは尊敬できません。


ちなみにこんだけ書いておいてなんですが、今回の鑑賞時間わずか15分です。
というのも、18切符で大阪から始発に乗ってやってきたわけですが、この後東京で用事があり、一時間に一本のシャトルバスを待ってるわけにはいかない。かといってタクシーに乗るのも金がかかりすぎて何のために18切符で来てるのかわからん。
そう思いながら見てたら、美術館自体が小さかったため、なんと折り返してきたシャトルバスに乗れたのです。運転手さんに怪訝な顔で見られました・・・。
ホントはヴァンジのアイラン・カンの展示も見たかったのだけど・・・。
貧乏暇なし。これにて!


<関連記事>
杉本博司「Lightning Fields」@ギャラリー小柳
杉本博司「歴史の歴史」@国立国際美術館
杉本博司「歴史の歴史」@金沢21世紀美術館
Hiroshi Sugimoto @ K20
棚田康司展「十一の少年、一の少女」@ヴァンジ彫刻庭園美術館
関連記事

コメントの投稿

非公開コメント

カレンダー
11 | 2023/12 | 01
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31 - - - - - -
最新記事
カテゴリ
検索フォーム
月別アーカイブ
プロフィール

もりかわみのる

森川穣
現代美術作家。
森川穣 website
A'holicオーナー
A'holic website
instagram

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

管理者用
カウンター
To See List
・2023.12.02-2024.02.04
「前衛」写真の精神:なんでもないものの変容 瀧口修造、阿部展也、大辻清司、牛腸茂雄 @ 渋谷区立松濤美術館

・2023.11.24-2024.03.31
「オラファー・エリアソン展:相互に繋がりあう瞬間が協和する周期」 @ 麻布台ヒルズギャラリー

・2023.12.09-2024.02.25
キース・ヘリング展 アートをストリートへ @ 森アーツセンターギャラリー

・2023.12.01-2024.01.28
梅田哲也展 wait this is my favorite part 待ってここ好きなとこなんだ @ ワタリウム美術館

・2023.11.09-2024.03.31
第14回上海ビエンナーレ @ 上海当代芸術博物館

・2023.12.17-2024.01.27
味/処 @ 神奈川県民ホールギャラリー

・2024.01.11-03.10
フランク・ロイド・ライト世界を結ぶ建築 @ パナソニック汐留美術館

・2023.12.16-2024.02.18
久門剛史「Dear Future Person, 」 @ @KCUA

・2024.01.12-02.25
牡丹靖佳展 月にのぼり、地にもぐる @ 市立伊丹ミュージアム

・2024.02.06-04.07
中平卓馬 火―氾濫 @ 東京国立近代美術館

・2024.01.18-03.24
能作文徳+常山未央展:都市菌(としきのこ)――複数種の網目としての建築 @ ギャラリー間

・2024.02.23-04.14
生誕120年 安井仲治 僕の大切な写真 @ 東京ステーションギャラリー

・2024.02.14-05.27
「マティス 自由なフォルム」@ 国立新美術館

・2024.03.06-06.03
遠距離現在 Universal / Remote @ 国立新美術館

・2024.03.09-06.30
カール・アンドレ 彫刻と詩、その間 @ DIC川村記念美術館

・2024.03.12-05.12
ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?——国立西洋美術館65年目の自問|現代美術家たちへの問いかけ @ 国立西洋美術館

・2024.03.15-06.09
横浜トリエンナーレ2023 @ 横浜美術館ほか

・2024.03.30-07.07
ブランクーシ 本質を象る @ アーティゾン美術館

・2024.04.06-07.07
ホー・ツーニェン エージェントのA @ 東京都現代美術館

・2024.04.24-09.01
シアスター・ゲイツ展 @ 森美術館

・2024.04.27-08.29
デ・キリコ展 @ 東京都美術館

・2024.05.23-08.04
魚谷繁礼展 @ ギャラリー間

・2024.09.04-11.24
大西麻貴+百田有希 / o+h展 @ ギャラリー間

・2024.09.14-12.01
塩田千春 つながる私(アイ) @ 大阪中之島美術館

・2024.09.25-2025.01.19
ルイーズ・ブルジョワ展 @ 森美術館

・2024.11.02-2025.02.09
ジャム・セッション 石橋財団コレクション×毛利悠子 ―ピュシスについて @ アーティゾン美術館

・2024.11.23-2025.01.26
「再開館記念―トゥールーズ=ロートレックとソフィ・カル」展(仮称) @ 三菱一号館美術館

・2025.09.13-11.30
あいち2025 @愛知芸術文化センター、愛知県陶磁美術館、瀬戸市のまちなか

QRコード
QR