今村遼佑「白色と雑音」@GALLERY301
ここ一ヶ月で観た関西の展覧会をざざっと。

今週から始まった今村君の個展を観に神戸へ。
中華街を通り過ぎ、メリケンパーク近くにあるギャラリー。
オープンしたばかりのようで、その第1回が今村君。
入ったらまずギャラリーの荒々しい床と壁を占める窓に目がいく。
ギャラリーで窓があるのは中々珍しい。しかもここまでの開口。
そして、散乱したような様々なものたち。これが今村君の作品。
色鉛筆や定規、ハンマーやペンチなど身の回りに普通にある道具達。
それらのいくつかは色とりどりの糸で静かに浮き上がったり落ちたりする。
siteの時とは対照的な色の世界。
荒々しい床と窓からこぼれる光が作品と調和している。
椅子に座ってひたすらぼーっと眺めてしまう。
作品の奏でるかそやかな音も心地よくついつい長居。
今村君もいたので色々お話。作家は体力が命。
僕は今村君の作品に勝手に親近感を寄せている。特にその作品のありように。
今村君の展示はいつも低い位置に設置されていることが多い。
今回なんてほとんどが床に設置されている。
僕の作品も足下に言及したものが多く、最初はあまり意識せずに作っていたのだけど、作品を見返した時にはて、と思うことがある。
ギャラリーというのは往々にして特異な空間であるから、どうしてもそのコードを解きたいという願望があって、如何にも展示されるのを待っているかのようなあつらえられた白い壁にそのままストレートにものを掛けるのは抵抗があるというか、そこは敢えて無視して、どこともヒエラルキーを持たない床の方がどうしても僕には魅力的に映ってしまうのである。
あと、自分が日本人であるということもある程度関係してるんじゃないかなと最近は思う。ヨーロッパとかに行って大聖堂の吹き抜け空間などを体験すると、西洋人はどうも垂直方向のベクトルでものを考える文化な気がする。それに対して日本の例えば茶室の低い天井や石庭など、水平のベクトルでものを考えてるんじゃないかなという気がする。杉本さんの「海景」なんかはまさに日本人観がそのまま表れているような作品だと思う。
そういうわけで、そうしようと思ってなくても抗えない水平の感覚に敢えて身を委ねているような感じを今村君の作品にも感じるのである。
どこまで彼が考えてるのかはわからないけど勝手に推測。
ちなみに同時に開催されてる京都のneutronの「It's a small world」という展覧会にも今村君の作品が出ていて、こちらも床置きで観客はかがまなければそのディテールが見えないようになってる。
関西の方は是非2つの展覧会をチェックしてみてください。
今僕が同世代で最も注目してる作家の1人です。
今村遼佑個展 「白色と雑音」
ギャラリー301 http://gallery301.exblog.jp/
12.14ー12.27(日)12:00--18:00 水曜定休
グループ展「It's a small world」
ニュートロン京都 http://www.neutron-kyoto.com/
2009.12.8 --2009.12.30(水)11:00--23:00
今村遼佑website http://www.geocities.jp/imamura_ryosuke/
<関連記事>
今村遼佑「ノックする」@site
今村遼佑展「畔を廻る」@PANTALOON
gadget @ 京都芸術センター
睡蓮池のほとりにて-モネと須田悦弘、伊藤存@大山崎山荘美術館
山荘美所蔵のモネのコレクションと現代作家のコラボ展。
伊藤さんは、実際山荘美に何度も訪れスケッチを繰り返し出来上がったまったくの新作を数点展示。今までは心象風景に近かったものが、今回初めて具体的な風景を元にして刺繍している。面白いのが、それにも関わらず今までより画面がより抽象性を帯びているということ。多分言われなければそれが実際の風景を基にしたなんて分からないと思う。ここに来て新たなステージに移行している気がする。
ただ、僕は伊藤さんの作品がそこまで好きではなくて、その抽象的な画面を観ながら特に感じるものがなかったのが正直な感想。これがどう発展していくのかは楽しみ。
一方須田さんは安藤忠雄の別館での展示。
室内にある睡蓮はの彫刻はあまり好きではない。残念ながらここまでそれ単体を見せようとする展示ではフェイクなのがまるわかりだし、だからといって、そこまで本物に近づけるのが須田さんのコンセプトだとは思わない。
やはり本領を発揮してるのが外の展示。枯れた蓮の葉の彫刻は素晴らしかった。こういう崩した表現こそ須田さんの見せ場だと思う。
モネは相変わらずモネ。
会期が2月一杯まで延びたそうです。あまりおすすめではないですが。。
「この世界とのつながりかた」@ボーダレス・アートミュージアムNO-MA
近江八幡にある町家を改装したギャラリー。
改装したといってもほとんど加工はされていない。
ここはいわゆるアートサイダーと言われる障害者の方などが作られる表現を扱った日本では比較的珍しいギャラリー。
用事で寄ったついでにちら見。
というか内容全然知らなかったので、川内倫子さんの「Cui Cui」だけ見て出てっちゃいました。。。他にも展示があったのですね。すいません。
この川内さんの作品は家族の思い出を綴ったドキュメンタリーの様なスライドショー形式の作品。一点一点見せるのではなく、そのストーリーすべてがひとつの作品というわけ。僕は何度か観てますが、ロンドンで観た時のあの感動がまた蘇りました。
しかもおもしろいのが、近江八幡が川内さんの故郷であるということ。写っている風景と実際展示されている土地が密接に関わってるのです。
中々写真作品において、サイトスペシフィックなんて言葉使わないけど、今回の展示に関してはぴったりあてはまるような気がしました。まあ、展示方法がちょっと残念。普通に土壁に投影するのでは駄目だったんでしょうか?暗幕がいかにもって感じでせっかくの空間の魅力が無視されてました。
なんにせよ川内さんの写真は素晴らしい。川内作品の魅力って何なのかを一緒に観た人と喋ってたんですが、それはモチーフに対する思い入れの希薄さではないかという結論に至りました。これは悪い意味にとらわれそうですが、そうではなく、その世界に向ける視線のフラットさこそが彼女の作品の魅力だと思います。赤ん坊を撮っていても両親を撮っていても花を撮っていてもすべてが均一で、目に映っている風景と写真がものすごい感度で一致している感じがする。
だからこの「Cui Cui」のスライドショーという形式は川内さんの作品にすごくフィットしていて、人や風景がすべて均質に移り変わっていく様はまるで電車の中でうたた寝を繰り返しているかのよう。すごく心地いい。
そんな感じで思いがけず「Cui Cui」と再会したのでありました。3月7日まで。
以下終わってしまった展覧会
佐川晃司展「-半面性の樹塊ー」@ムロマチアートコート
恩師の2年ぶりの個展。
行ったら最初気づいてくれなかった。痩せ過ぎたようだ。
本当に久々に彼の作品を観たけれど、新作が滅茶苦茶よかった。
正直これまで菱形の抽象画は得意ではありませんでしたが、それが崩れた今回の新作はものすごくよかった!
もう佐川さん60近くやと思うんですが、ここにきてこの変化はすごい。
多分家の近くの風景が関係していて、作家の身体性が作品に滲み出ている。
特に小作品に描かれたネイビーブルーの作品はかっこよすぎた。
奥にかかってた崩れた菱形の作品もすばらしい。
遠くから観ていてはわからないけど、近づくと凄まじい種類の色が使われている。それが今回の新作では顕著で、遠景も近景も楽しめた。
いやー、見習わんと。がんばります。
伊庭靖子展 - resonance 共鳴・余韻- imura art gallery

会期終了間際に滑り込み。
特に真新しい作品はなかったけど、陶を描いたパステルは相変わらずヤバい。
とりあえず観ておいて損はない作家さんですね。
<関連記事>
伊庭靖子展「まばゆさの在処」@神奈川県立近代美術館
伊庭靖子 SENSE OF TOUCH @ eN arts
京都、兵庫、滋賀と意外に動いてますね・・・。我ながら感心。
次回は今年ラストの更新。大阪の展覧会も紹介できれば。。。

今週から始まった今村君の個展を観に神戸へ。
中華街を通り過ぎ、メリケンパーク近くにあるギャラリー。
オープンしたばかりのようで、その第1回が今村君。
入ったらまずギャラリーの荒々しい床と壁を占める窓に目がいく。
ギャラリーで窓があるのは中々珍しい。しかもここまでの開口。
そして、散乱したような様々なものたち。これが今村君の作品。
色鉛筆や定規、ハンマーやペンチなど身の回りに普通にある道具達。
それらのいくつかは色とりどりの糸で静かに浮き上がったり落ちたりする。
siteの時とは対照的な色の世界。
荒々しい床と窓からこぼれる光が作品と調和している。
椅子に座ってひたすらぼーっと眺めてしまう。
作品の奏でるかそやかな音も心地よくついつい長居。
今村君もいたので色々お話。作家は体力が命。
僕は今村君の作品に勝手に親近感を寄せている。特にその作品のありように。
今村君の展示はいつも低い位置に設置されていることが多い。
今回なんてほとんどが床に設置されている。
僕の作品も足下に言及したものが多く、最初はあまり意識せずに作っていたのだけど、作品を見返した時にはて、と思うことがある。
ギャラリーというのは往々にして特異な空間であるから、どうしてもそのコードを解きたいという願望があって、如何にも展示されるのを待っているかのようなあつらえられた白い壁にそのままストレートにものを掛けるのは抵抗があるというか、そこは敢えて無視して、どこともヒエラルキーを持たない床の方がどうしても僕には魅力的に映ってしまうのである。
あと、自分が日本人であるということもある程度関係してるんじゃないかなと最近は思う。ヨーロッパとかに行って大聖堂の吹き抜け空間などを体験すると、西洋人はどうも垂直方向のベクトルでものを考える文化な気がする。それに対して日本の例えば茶室の低い天井や石庭など、水平のベクトルでものを考えてるんじゃないかなという気がする。杉本さんの「海景」なんかはまさに日本人観がそのまま表れているような作品だと思う。
そういうわけで、そうしようと思ってなくても抗えない水平の感覚に敢えて身を委ねているような感じを今村君の作品にも感じるのである。
どこまで彼が考えてるのかはわからないけど勝手に推測。
ちなみに同時に開催されてる京都のneutronの「It's a small world」という展覧会にも今村君の作品が出ていて、こちらも床置きで観客はかがまなければそのディテールが見えないようになってる。
関西の方は是非2つの展覧会をチェックしてみてください。
今僕が同世代で最も注目してる作家の1人です。
今村遼佑個展 「白色と雑音」
ギャラリー301 http://gallery301.exblog.jp/
12.14ー12.27(日)12:00--18:00 水曜定休
グループ展「It's a small world」
ニュートロン京都 http://www.neutron-kyoto.com/
2009.12.8 --2009.12.30(水)11:00--23:00
今村遼佑website http://www.geocities.jp/imamura_ryosuke/
<関連記事>
今村遼佑「ノックする」@site
今村遼佑展「畔を廻る」@PANTALOON
gadget @ 京都芸術センター
睡蓮池のほとりにて-モネと須田悦弘、伊藤存@大山崎山荘美術館
山荘美所蔵のモネのコレクションと現代作家のコラボ展。
伊藤さんは、実際山荘美に何度も訪れスケッチを繰り返し出来上がったまったくの新作を数点展示。今までは心象風景に近かったものが、今回初めて具体的な風景を元にして刺繍している。面白いのが、それにも関わらず今までより画面がより抽象性を帯びているということ。多分言われなければそれが実際の風景を基にしたなんて分からないと思う。ここに来て新たなステージに移行している気がする。
ただ、僕は伊藤さんの作品がそこまで好きではなくて、その抽象的な画面を観ながら特に感じるものがなかったのが正直な感想。これがどう発展していくのかは楽しみ。
一方須田さんは安藤忠雄の別館での展示。
室内にある睡蓮はの彫刻はあまり好きではない。残念ながらここまでそれ単体を見せようとする展示ではフェイクなのがまるわかりだし、だからといって、そこまで本物に近づけるのが須田さんのコンセプトだとは思わない。
やはり本領を発揮してるのが外の展示。枯れた蓮の葉の彫刻は素晴らしかった。こういう崩した表現こそ須田さんの見せ場だと思う。
モネは相変わらずモネ。
会期が2月一杯まで延びたそうです。あまりおすすめではないですが。。
「この世界とのつながりかた」@ボーダレス・アートミュージアムNO-MA
近江八幡にある町家を改装したギャラリー。
改装したといってもほとんど加工はされていない。
ここはいわゆるアートサイダーと言われる障害者の方などが作られる表現を扱った日本では比較的珍しいギャラリー。
用事で寄ったついでにちら見。
というか内容全然知らなかったので、川内倫子さんの「Cui Cui」だけ見て出てっちゃいました。。。他にも展示があったのですね。すいません。
この川内さんの作品は家族の思い出を綴ったドキュメンタリーの様なスライドショー形式の作品。一点一点見せるのではなく、そのストーリーすべてがひとつの作品というわけ。僕は何度か観てますが、ロンドンで観た時のあの感動がまた蘇りました。
しかもおもしろいのが、近江八幡が川内さんの故郷であるということ。写っている風景と実際展示されている土地が密接に関わってるのです。
中々写真作品において、サイトスペシフィックなんて言葉使わないけど、今回の展示に関してはぴったりあてはまるような気がしました。まあ、展示方法がちょっと残念。普通に土壁に投影するのでは駄目だったんでしょうか?暗幕がいかにもって感じでせっかくの空間の魅力が無視されてました。
なんにせよ川内さんの写真は素晴らしい。川内作品の魅力って何なのかを一緒に観た人と喋ってたんですが、それはモチーフに対する思い入れの希薄さではないかという結論に至りました。これは悪い意味にとらわれそうですが、そうではなく、その世界に向ける視線のフラットさこそが彼女の作品の魅力だと思います。赤ん坊を撮っていても両親を撮っていても花を撮っていてもすべてが均一で、目に映っている風景と写真がものすごい感度で一致している感じがする。
だからこの「Cui Cui」のスライドショーという形式は川内さんの作品にすごくフィットしていて、人や風景がすべて均質に移り変わっていく様はまるで電車の中でうたた寝を繰り返しているかのよう。すごく心地いい。
そんな感じで思いがけず「Cui Cui」と再会したのでありました。3月7日まで。
以下終わってしまった展覧会
佐川晃司展「-半面性の樹塊ー」@ムロマチアートコート
恩師の2年ぶりの個展。
行ったら最初気づいてくれなかった。痩せ過ぎたようだ。
本当に久々に彼の作品を観たけれど、新作が滅茶苦茶よかった。
正直これまで菱形の抽象画は得意ではありませんでしたが、それが崩れた今回の新作はものすごくよかった!
もう佐川さん60近くやと思うんですが、ここにきてこの変化はすごい。
多分家の近くの風景が関係していて、作家の身体性が作品に滲み出ている。
特に小作品に描かれたネイビーブルーの作品はかっこよすぎた。
奥にかかってた崩れた菱形の作品もすばらしい。
遠くから観ていてはわからないけど、近づくと凄まじい種類の色が使われている。それが今回の新作では顕著で、遠景も近景も楽しめた。
いやー、見習わんと。がんばります。
伊庭靖子展 - resonance 共鳴・余韻- imura art gallery

会期終了間際に滑り込み。
特に真新しい作品はなかったけど、陶を描いたパステルは相変わらずヤバい。
とりあえず観ておいて損はない作家さんですね。
<関連記事>
伊庭靖子展「まばゆさの在処」@神奈川県立近代美術館
伊庭靖子 SENSE OF TOUCH @ eN arts
京都、兵庫、滋賀と意外に動いてますね・・・。我ながら感心。
次回は今年ラストの更新。大阪の展覧会も紹介できれば。。。
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