Antony Gormley 'ONE & OTHER' @ Trafalger Square






80年代90年代にかけて、確実にスクラプターの巨匠としての地位を築いてきたゴームリー。
ここに来て彼はさらに次のフェーズに向かっている気がする。
それは今月14日までトラファルガー広場の「4番目の台座」で行われていた100日間の作品「ONE & OTHER」を見ればわかる。
これは一日一時間代わる代わる人々が入れ替わり立ち替わりでその人のやりたいことをして台座の上で過ごしてもらうという途方もないプロジェクトで、100日間×24時間=2400人もの人々がこの期間中に立ち続けた。
ある人は詩を読んだり、ある人はキャンペーンの宣伝をしたり、ある人は好きな人に告白したり、ある人はフラれて赤っ恥をかいたり。
そんな、人間味溢れる「作品」。
そもそも人間そのものが「作品」なんだから人間味溢れて当然なわけだけど。
もうどうしようもない頭の薄くなったオヤジでもこの台座の上に立つと不思議と美しく見えるし、愛くるしく見えてしまう。人が人を愛さずにはいられない人間の生理みたいなものまで感じさせてくれるようなとても温かい作品。
ゴームリーは、人間の身体におけるphysicalな部分だけでなくpsychologicalな部分にも言及し始めたのではないだろうか。
この作品をどう評価するかは別としても、僕はその新たなゴームリーのスタートを予感させる萌芽として後々記念碑的な作品になるんじゃないかと思っている。
そもそも僕は彼のオブジェクトオブジェクトした作品がそんなに好きじゃなかったわけだけど、2年前のヘイワードギャラリーで彼への評価を一変させられたのである。
そこに出品されていた「BLIND LIGHT」は、もはや彼の彫刻概念が、まさに観客自身の身体の中に染み渡ってくるような作品で、様々な感情がわき起こってきて、あの時の体験は未だに忘れることができないでいる。
そこでも、観客の内面へと浸食する、何かザワッとしたものを感じたのだけど、今回の作品で改めてゴームリーの向かう先にドキドキさせられてしまった。
これからどういう作品を作っていくのかとても楽しみな作家。
ちなみに今回エジンバラからロンドンに向かう列車の都中で彼の代表作である「Angel of the North」が見えるかもしれないと思って外をガン見していたのだけど、見えるはずもなく。。。いつか観に行きたいけど遠いなー・・・。
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ちなみにこのほんのすぐ近くのNational Portrait Galleryにて何気にマーク・クィンの名作である、自分の血液で出来た自画像彫刻が展示されてます。是非ご覧あれ。
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