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風景ルルル@静岡県立美術館


風景をテーマにしたグループ展。内海さんが出てたので観てきました。
まず、入口に今回の展覧会のグループ展のPVが放映されてた。
PVまで作ってる展覧会なんて初めてかも。
しかも、製作陣がすごい豪華で、今回の広告やこのPV全般を手がけてるのは、ミスチルの最近のジャケットをほとんど手がけてる森本千絵さん。もちろんこないだ出た「SUPERMARKET FANTASY」も彼女の仕事。音楽のボーカルも坂本龍一の娘さん坂本美雨やし。
考えたら、こういう展覧会チラシっとかって、出品者の作品の中から最もキャッチーなものを選んで、っていう方法がほとんどやのに、こういう改めて広告単体で作るってのは中々新鮮ですね。

で、展覧会自体は、予想通りというか、内海聖史、鈴木理策、照屋勇賢の3人のみで良かった。
あとは柳澤顕が悪くなかったけど、上の3人が凄すぎた。
まず、受付のアトリウムに展示されてたのが内海さんのでっかい作品。
横10mもある・・・アトリエでどうやって制作してはるんやろ。
展示室内では、様々な大きさのキャンバスが、ガラス展示室にランダムに掛けられていて、色の氾濫が気持ちよかった。真ん中のソファに座りながらぼーっと色に囲まれてるのは至福の瞬間。
ただ、やっぱ内海さんの場合は、あのでかい作品を最後の小西真奈の展示室とかでどどーんと見せてほしかったかも。もう空間をイメージ(色)で埋め尽くすあの内海さんのスペクタクルは体験したら病み付きになる。昔アートコートで体験した緑色は一生忘れられないでしょう。
ってことで、少し物足りなさもあったけど、でもやっぱ内海さんの作品が好きだ。

照屋さんのは、一番最初の展示室に展示されてた。横トリ2005でも出品されてた、マクドナルドやバーガーキングなどの紙袋を切り取って中で木を作り上げるとっても繊細な彫刻。本当気の遠くなるような作業や。覗き込むと、くり抜かれた穴から光が差し込んで木漏れ日さながら。
トイレットペーパーの芯のやつも素晴らしいですね。
同行した連れが、欲しい欲しいと言ってた。一個ぐらい持って帰ってもわかるまい(ぉ
ただ、デザートで作られたランドスケープはがっかりやった。
なんで?って感じ。キッチュ過ぎる。
でも女性陣が寄ってたかって興味深そうに見てたのはおもしろかった笑
女性の甘い物好きはこんなとこで如実にわかりますね。

今回最も衝撃だったのは鈴木さんの写真だったかもしれない。
展示作品は、彼の故郷熊野の自然を写したシリーズ。
写真集とか雑誌とかで何度か見た事はあったけど、何がすごいのかよくわからず、今回初めてオリジナルプリントを見たら、もう本当に衝撃の連続やった。
彼の写真には光が鮮明に写っている。
それは川内倫子のような淡い光でもなければ、杉本博司の様な深い光でもない。
彼の写し出す光は粒状の光の集まりなのです。
それを如実に表してるのが、最初の海の写真。
もう、海に反射する光の粒1つ1つが克明に写されていて、かなり驚いた。
その光の粒のひとつひとつがこの画面を構成している。
川を写した写真には、岩に反射するこれまた光の粒と、光を浴びる蜘蛛の巣。
そして、一番すごかったのは、滝の写真。
なぜかこの写真は図録に掲載されてないのだけれど、滝壷の水面には、無限の色が広がっている。ここまで細部が際立つ写真というのは一体どういうことなんだろう。撮っている時に、これらの光が彼には写っているのだろうか。本当にすごい写真だ。
改めて、いかに写真というのが作品集にしにくいメディアかということも痛感。
絵画や彫刻などの場合、あくまで記録という形で割り切れちゃうんやけど、写真の場合って、作品集にした際にも写真という形が守られちゃう分、ただの記録として割り切れない部分がある。今回みたいにオリジナルプリントを見ちゃうと、あのクオリティに追いつくのは不可能なわけで。。。
そういう意味では、ベンヤミンの「複製技術時代の芸術」でいう「アウラ」はその複製技術の産物である写真作品のオリジナルプリントにもちゃんと備わってるんやろうね。
あー、でもちょっと鈴木さんの写真集欲しくなった。
その前に川内倫子のもいつか買わなあかんのやけど。のあー。
ってか、これ観るまで鈴木さん男やって知らんかった。写真があまりに柔らかくて、野口里佳とか川内倫子さんっぽいから絶対女やと思ってた・・・。

ちなみに常設展では、今回の企画展の出品メンバーの作品とコレクションに絡ませたユニークな展示やった。なんかプロモ作ったり色々面白いですね。やっぱ美術館は地方が良い。
ところでこの美術館ロダンの作品収集もすごくて、ロダン館なる空間がとてつもなく広くてびっくりした。ヨーロッパで見た博物館を思い出した。なんでこんな金あるんやろ・・・不思議すぎ。


松井冬子展@平野美術館

ちょうど静岡浜松でやってたので最終日に行ってきました。
最終日とあってか、中々行きにくい場所にも関わらず、たくさんの人が来てました。
彼女の作品はもう雑誌等で何度も取り上げられてたし、4月にNHKで放送されたETV特集も観てたので、1度は生で観んとなぁ、と思ってたらこの展覧会。
実際今回の展覧会はその番組がDVD化したのと、彼女の故郷である静岡から今年、静岡県文化奨励賞を受賞したってのが大きいんでしょうね。
それにしても彼女の代表作30点が一堂に会するこの展覧会は、松井冬子ファンにはたまらない展覧会だったでしょうねー。実際僕も別にファンでもないのにちょっと興奮してしまいましたから笑 なんか、人気漫画家の原画展を見てるようなそんな感じ。今までイメージは散々メディアで流されてましたから、本当「おなじみの」って感じでした。
有名なのでなかったのは「夜盲症」と「切断された長期の実験」くらいで、彼女の大学院の卒業作品「世界中の子と友達になれる」や「浄相の持続」、「終局にある異体の散在」、そして、ETV特集でもメインになってた「陰刻された四肢の祭壇」も展示されてて、本当豪華絢爛って感じでした。
普段はこんな現代の作家を取り上げるような美術館ではないため、メイン展示室はほとんどガラス張り。その細部を見たかっただけにややがっかり。でもいつの時代の絵やねん、みたいな崇高さがあってそれはそれでいい展示でした。
松井さんの絵って昔の日本画の技術を忠実に再現しながら、描かれている女性とかは、完全に西洋のデッサンに基づいたプロポーションなので、そのギャップがやはり現代の作家なんやなって思い出させる。ダ・ヴィンチやボティッチェリみたいやもんね。
でも、一番すごいな、と思ったのは下書きの展示。
もう何度も何度も描いては、サイズを変えてみたりの繰り返し。
その痕跡も辿れるし、まあなんといってもあの技術力。凄いです。
行ってよかった展覧会でした。
ただ、また観たいかって言われるとちょっとな、って感じ。
数年後、もっと大きな展覧会があれば観に行ってみたい。
ちょっとそうコンスタントに観る絵ではない気がしますね。

棚田康司展「十一の少年、一の少女」@ヴァンジ彫刻庭園美術館
夏に恩師が、ここを訪れ「万事休す美術館」と命名してた。。。親父ギャグっていやだ。
とにかく酷評の嵐だったので、どんなとこやろ、と行ってみました。
まあ、やってる展覧会はなんだって良かったんだけど、これも案外良かった。
棚田さん自体は、この展覧会観るまで知らなかったけど、一本の木から人形を彫るというシンプルな作品は好感が持てた。まるで昔の仏像の彫り師でもあり、シュテファン・バルケンホールのようでもありつつ、あれほど荒くもなく、どちらかと言えば舟越桂に近い感じ。
彼の作品のどれもが少年少女たち。(そう見えるだけかもしれないが)
それも思春期のような青臭さが漂う、何とも言えない不安定感が漂う。
地肌には肌理までちゃんと表現しようと、何度も色を塗り重ねられて、うっとりするぐらい綺麗。
ヴァンジさんの彫刻とも自然に馴染んでいてとてもいい展示だった。
恩師がこき下ろしてたヴァンジさんの作品群も、野外のはんー、って感じやったけど、屋内のは、壁のコンクリ打ち放しと非常に合ってて、決して悪くはないと、僕は思いました。良くもないとは思うけどね。
諸事情により早足で観ないといけなかったので、また今度ゆっくり来たいです。
前回の川内倫子の展覧会観たかったなー。
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