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伊庭靖子 SENSE OF TOUCH @ eN arts


最近京都のアートシーンがめまぐるしく変わりつつある。
今まで貸し画廊がほとんどだった京都に新らたに商業ギャラリーが続々と進出しているのだ。
今月にはあの小山登美夫とタカイシイもやってくる。
これが吉と出るか凶と出るか。楽しみ半分不安半分である。

さて、今回紹介するeN artsもこの1年で進出した商業ギャラリーのひとつ。
ここはなんとあの龍馬像も立つ円山公園内にあるギャラリー。
こんなとこどうやって借り受けたんだ?と疑問を抱かざるを得ない。
そして初めて訪れたそのギャラリーの外観は上の写真の通り・・・すごすぎる。
オーナーはロウ・ナオミさんというコレクター。
コレクターのギャラリーというと高橋コレクションが有名だが、まだまだ希有な存在だ。
一体どういう経営をしているんだろう。ホントに謎だらけである。
で、今回訪れたのは、伊庭靖子さんの展示があると聞いてのこと。
伊庭さんの作品は、写真を元に描いたフォトペインティングである。
フォトペインティングと言えば、まずリヒターを思い浮かべるが、彼と彼女の差異はその眼差しの温度や湿度にあると思う。
リヒター絵画におけるフォトペインティングはとても冷たく乾いた印象を受ける。
それがたとえ仲睦まじい家族写真であっても、戦闘機の写真であっても、その印象は変わらない。
それはリヒターが、その写真に写っているものを描いているのではなく、写真そのものを描いているからであろう。ある程度の写真像に選別はあるにせよ、基本的に彼はその写真という物質を描いているようなのだ。まるで顕微鏡をのぞき、対象を冷静に観察する科学者のよう。
一方伊庭さんの場合、人間には見ることのできない像を、カメラの力を借りて描いているように思える。
具体的にはモチーフに間近まで迫り接写することでに起こるピントのボケ。
これが、そのモチーフの魅力をより引き出させる効果を発揮しているようである。
それは果物の瑞々しさであったり、枕の柔らかさであったりする。
そのどれもが、慈愛に満ちたように温かでしっとりしているのだ。
今回新作として登場していた陶器の柄の接写ペインティングは素晴らしかった。
今回のタイトルにもあるように、本当に陶器のツルッとした感触まで伝わるような力強い絵だった。
パステルのものもあったがそちらも素晴らしかった。
このギャラリーは1階がホワイトキューブで地下にはなんとブラックキューブがある。
とても小さい空間だが、真っ黒のその空間は緊張感いっぱい。
そこには2枚の小作品が展示されていた。
また、茶室なんかもあって、もうわけがわかんなかった笑
そんなこんなで、伊庭さんの素晴らしい絵画と不思議空間を同時に味わえて、とても良き展覧会でございました。おすすめです。金土日しか開いてないのでご注意を。

伊庭靖子 SENSE OF TOUCH @ eN arts
2008.11.1(土)-11.31(日)
12時~18時 (金土日のみオープン。その他アポイント制)

垣谷智樹「うそつきとわからずや」@児玉画廊

小山、タカイシイと並んで話題のギャラリー児玉画廊が、その2つに先駆け大阪から京都十条へ移転。
展覧会自体は興味がないけど、どんなスペースかと思い見に行ってきました。
まずこの外観・・・看板もなくて、ホントにここなん?と焦りました。
中をのぞいても、車があって、町工場そのもの。
んー・・・と思いつつ恐る恐る中へ。
すると蘭が置いてあって、ここに間違いない!と威を決して飛び込みました。
案の定受付があって、そこが児玉画廊だったのです。
にしても広い!これは京都には今までなかったスペース。
今回は映像でしたが、インスタレーションやらも見がいがありそう。
というか、何故今東京でやってる坂川守氏をこっちでやらなかったのか。
彼は京都出身の作家で、ていうか僕の先輩なんですが、どうせなら京都の作家を見せるべきや。
などと、スペースを見ながら色々思いを巡らせたのであります。
ちなみに展覧会に関してはノーコメントで。
同じ建物に小山とタカイシイが来るという噂がありましたが、どうやら違うようです。
この2つは今月20日オープン予定。こっちも時間あったら観に行きたいです。

あと最近出来たと言えば、円通寺近くのsuper window project
円通寺というと、精華大学の近く。つまり超山奥・・・。
何故あんなところに?と思ったら、なんでもオーナーはフランス人で、別荘の駐車場を利用してギャラリーを始めたのだとか・・・なんて優雅な。
日本語をほとんど喋らないそうで、ウェブも英語のみという大胆なギャラリー。
しかし紹介されてる作家は、フランスではそこそこの作家がラインナップ。
こないだまでやってたMathieu Mercierは東京現美のパラレルワールドにも出してた作家。
で、実際観に行ったんですが、さすがはフランス人。開廊時間に行ったにも関わらず閉まってました・・・orz
もうギャラリーのガラス扉ぶち破ってやろうかと思いましたが、もうそういうのもロンドンで何度かあったので、ケセラセラと笑い過ごすことにしました。もう多分2度と行きません、あんなとこ。車がないとホント大変です。興味のある方はどうぞ。


そんでもって、この8月清水寺の近くに出来た、京都極楽堂書店にも挑戦したんですが、イマイチ見つかりませんでした。内装はgrafが手がけ、オープニングには蜷川実花展が開催されたり中々華やかそうなんですが、どこにあったんだろうか・・・。

KYOTO ART WALK 2008 @ 二条城、清水寺、東福寺
京都の歴史的建物で行われる現代美術の展覧会。
非公開の空間が公開されるこの時期に合わせて全3会場で行われました。
本来これがメインで京都に行ったのだけど、結果的に全くの期待はずれ。
3年前に行われた同企画は、本当に素晴らしくて、どれも場に負けない作品ばかりでした。前回の記事。
それだけに、今回川俣正や昨年のターナー賞受賞者マーク・ウォリンジャーなども出品するとあって、余計期待してたんですが・・・。
まずは二条城。前述のウォリンジャーと、マット・ゴールデンの映像2作品。
ウォリンジャーはロンドンの地下鉄の車掌室から見える風景(といってもほとんど暗闇)を延々と映した映像。ゴールデンは、通風口に結びつけたリボンがなびく写真をショートフィルムのようにつないだ16mmフィルム。
ここでやる必要あるのか?といった感じ。暗さも足りず、映像が霞んで見えた。。。
続いて清水寺。人大過ぎ。金閣寺と並んで嫌いな寺。
成就院では西川勝人の彫刻が、わざわざ畳の上に白い紙を敷き詰めて展示されてた。
なんで畳の上に直接置かんねん。意味が分からんかった。庭が美しすぎ。
経堂のジャンリュック・ヴィルムートに至ってはなぜか会場に入れなかったばかりか、外から見るに、その経堂のミニチュア模型を展示してるだけっぽかった。あほらしすぎる。
最後に東福寺。川俣正。通天台と呼ばれる、建築からせり出た空中に浮かぶ舞台に座布団1枚。ザッツオール。
その座布団1枚を巡って長蛇の列・・・ため息も出ない。
ここまで来たしってことでしばらく並ぶ。
番が来て座る。通天台の斜めに傾いてる床を感じながら風景を見る。
そりゃええに決まってるやろ!通天台そのものが素晴らしいんやから。。。
東福寺の石庭や苔庭は本当に素晴らしかった。むむむ・・・。
川俣さんは、前に直島スタンダード2に参加してた時も、島に住民登録しただけで、実際の作品らしいものは作ってなかったし、日本でのグループ展にやる気がないんじゃないか?と思わざるを得ない・・・悲しい。
今回川俣さんと西川さん以外はロンドン在住作家。
今年は日英修好通商条約調印150周年にあたりUK-JAPANという企画が行われているので、その目論見と今回の企画がなんとか結びついて実現したんだと思う。それにしてもこの企画は本当にお粗末なものだった・・・前回のあの素晴らしい展示は何処へ・・・残念でならない。
どうやら今回のキュレーションは前回にも出してたロンドン在住作家の白石由子さん。
やっぱ作家がキュレーションすることには限界があるんだろうか、とまた考えてしまった・・・。
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