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大崎のぶゆき「Meltdown」/宮永愛子「漕法」@京都芸術センター


公募により展示プランを集め、その中から2つ選ばれる京都芸術センターの企画。
今回は108点の中から国立国際美術館館長建畠?氏により先行。
実は小生もこの公募に応募したけど見事落選。最初選出された2人の名前を聞いた時、既に名の知られている作家が選ばれたことに「おいおいできレースやんけ」と思いつつも、どんなもんかいな、という感じで観に行きました。

まずはギャラリー南の大崎のぶゆき氏の展示。
大崎さんは学生の頃写真技法の授業で教えていただきました。
これまで皮膚をテーマに写真やドローイングなどの作品を発表されてましたが、今回はそれらとは違い、水性フィルムに水性ペンで描かれた像が水に溶ける様を映し出した映像。そしてロウソクでシャンデリアをかたどった様な彫刻。
イマイチ映像と彫刻の関連性がわからなかった。どちらとも「崩壊の美」という点では関連してそうやけど。それに映像は2つ投影しなくても正面の壁にひとつでっかく投影するだけでよかったのでは?とも思った。その方がシンプルに見せられると思うし。でも展示の仕方はスマートやなぁという部分もいくつか。床や壁を黒い布で覆っていて、映像が綺麗に映し出されるという効果と、ギャラリーの汚さを隠す効果もあったに違いない。

続いてギャラリー北の宮永愛子の作品。
彼女はタンスに置いたりする防虫剤に使われているナフタリンを使った彫刻で一躍有名になった作家です。それらの彫刻は、防虫剤を思い出していただければわかるように、時が経てば気化してなくなってしまうのです。その時だけに存在する作品ということで、日本人が桜の散るを愛でるような感覚をとても繊細に表現した作品。
しかし、こうした、いわゆる「代表作」となるような作品を作った作家にとって苦しいのがその「代表作」を超えるということ。宮永さんの場合も、ナフタリンの作品を発表して以降やはり「ナフタリンの作家」として有名になってしまい、後に発表した焼き物が焼いた直後に温度が冷めることによる収縮のかすかな音の作品も、正直「代表作」を超えるには至らなかったように思います。
そして昨年から彼女は新たな作品に取り組むことになります。それが今回にも発表された、海の塩を結晶化して作られた作品です。今回は魚網にその塩を付着させたインスタレーション。その美しさには心から感動させられました。網をくぐり抜けながら近くで見る塩の結晶は、光を通してまるでダイヤモンドのような輝きを発していて、全体を通して見ても、その網が会場全体にたゆたう姿は壮観。
日本に帰ってきたからというもの、良い作品を見ても、展示会場の汚さに辟易したりしていたのですが、今回の作品はそれらも気にならない程すばらしい作品でした。これは108点の中から選ばれて当然です。完敗。
個人的には、宮永さんの今回の作品は彼女の代表作ナフタリンを超えた美しさを持っていたように思えます。見事その呪縛から脱却した彼女のこれからが楽しみでなりません。今回日本に帰ってきて最も素晴らしい作品を見た様な気すらして、興奮しながら会場を後にしました。
会期は残念ながら明日までとなっております。お時間がある方は是非是非!
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