MONEY TALK @ 広島市現代美術館


気になっていた展覧会があった。
広島市現代美術館で行われている「マネートーク」展である。
今回別の件で広島に寄る機会があったので、いわばそのついでに見て来たのだけど、それが半端なくよかったって話。文句なしにはなまる展覧会の登場です。

ゲストキュレーターによる同館の収蔵品を使ったコレクション展。
過去にも同館は椹木野衣などの批評家にもゲストキュレーションを頼んでいる。
今回のキュレーターは窪田研二氏。
彼は特定の美術館に属さないインディペンデントキュレーターである。
彼の今まで企画した展覧会の中に僕が行きたくて行けなかった、2004年水戸芸術館で行われた「孤独な惑星-lonely planet-」展などがあり、実力派キュレーターをまた発見した感じで思わずにやっとしてしまった<キモイ
今までのどのコレクション展とも違うのがタイトル通り美術と金の問題を正面から扱っている点。
普通作品は時代別、コンセプト別、またはテーマ別なんてのもあるだろう。そういった順番で展示されている。しかし今回なんと、美術館が買い上げた値段順で展示されているのだ。
寄贈(0円)から始まり、最後は5千万以上のマンモス級に至るまで。
今まで美術とお金の問題はタブー視してほとんど扱われることがなかった。
どこか美術は崇高なもので、美術家は霞を食って生きてるなんて妄想も。
しかしお金なくして人間生きていけない。アーティストもまた然りである。
そのタブーに敢えて真っ向勝負を挑んだ窪田さんに拍手を送りたい。
そしてそれを受け入れたこの美術館も素晴らしい。
今回の企画は、館の外部の人間だからこそできたものだ。
しかしこうして具体的な値段や館の財政を示すことで、税金を払って間接的ながらもこの美術館を支えている市民の人々にも、活動内容を示すいい機会になったのではないだろうか。

さて具体的な展覧会内容。
まず、挨拶文の横に、館の作品購入に関する予算年表が示されている。
衝撃なのが、88年の開館時には7億円以上もあった購入予算が次の年には4分の1に激減。ついには2000年で0になっている。つまり21世紀に入ってから同館は作品を購入できていないという事実がここで浮かび上がる。現在の所蔵作品数が1400点なのに対し、開館前に集めた作品数は970展。つまり開館前の収集で、現在の収集作品数の約7割を収集しているという事実。またその前後から宝くじ収益金の助成を受けて受注制作という方法で作品を購入している。つまりギャラリーを通すのではなく、作家に直接制作を依頼して、少しでも安く購入するという試みである。工場に直接買い付けにいくみたいな感じ。しかしそれも2005年でストップしている。ここまで美術館が悲惨な状況になっているとは・・・。
たくさん予算を持っている私立美術館と違って、公立美術館は市の財政に大きく左右される。
この美術館だけではなく、全国の公立美術館はこれと似た様なものだろう。
バブルがはじけて以降、不景気の波は美術館をも襲っているのである。

次に目の前の壁にいくつかのテキストが書かれている。
今回の展覧会でもうひとつ特筆すべき点は、このテキストたちである。
様々な人々の芸術に関する言説がところどころに盛り込まれていて、「アートって何だろう?」ということもお金の問題と並行して考えられる仕組みになっている。
このテキスト群がすばらしくて、全部メモをとっておけばよかったと今更後悔している。
例えばボイスの作品の上に「芸術は理解される為に存在するのではない」というボイス自身の言葉や、村上隆の「お金をかせげなきゃ意味がない」的な発言の下に「妻や子、老いた母を苦労させても芸術を続けなければならない」的な言葉も。ドビュッシーの「芸術は美しい嘘である」というロマンチックなものから、「最大の敵は、彼の才能を褒め讃える友人である」といった深い言葉まで、もう名言の数々が作品の合間合間に絶妙なタイミングで入ってくる。あー、これテキスト集として売ってほしいです。

そして、このお金順というのがとてもおもしろい。
作品のキャプションに実際の購入金額が書かれているのがおかしくてたまらない。
寄贈のところにキース・ヘリングの遺作が展示されていた。学芸員さんのお話によると、これはオノヨーコが持っていたもので、ヘリングが生前、広島に壁画を描きたいと言い残していたことを受け、彼女の持っていたヘリングの遺作をこの美術館に寄贈していたのだとか。色んな裏話があるものです。
また、これはあくまで購入時の値段なので、今と全く違ってたりするのも妙。
例えば一番すごかったのが、杉本博司の劇場シリーズ。
5点で250万ほどで購入していたが、今や彼の作品は1枚数千万クラスである。
こないだのオークションではついに1億なんて金額も出た。良い買物しましたね。
あとウォーホールのマリリンモンローの作品。
10点組で1080万円。しかしこれも今や1枚1000万もするとか。
おもしろいのが、色によって人気不人気があって値段も違うとか。
ちなみに一番高かったのがステラの巨大ペインティングで7000万強。太っ腹です。
これらの値段表時が得た効果っていうのが、観客の真剣なまなざし。
値段を見て、また見方が変わるという下世話な感じがおもしろい。
美術がわからない人でも、お金の問題となると、いきなり身近に感じるよう。
前にテレビ関係者の方とお話する機会があって、その時ある番組で、普段美術を見ない様な人を美術館につれていって、まず普通に見てもらい、次にあるリクエストをしてもう一度見てもらったら、見る眼差しがより真剣になったとか。そのリクエストとは「あなたならどれを買いますか?」というもの。美術鑑賞ってどこか、自分の生活と関係ないって感じで離して見てしまうと思うんですよ。それがいきなり購入という現実を渡されて一気に身近になる感覚。美術も所詮商品ですからね。
海外では普通の人が花を買う様な感じでアート作品を買ったりする。学生の卒業展ではわりかし安価で購入できるので、ここぞとばかりにやってくる。日本にも早くこんな状況がくるといいなぁ。

こうした日本の公立美術館恐慌と裏腹に世界はアートバブルである。
昨年はデミアン・ハーストの作品が120億円で購入されたり、オークション史上最高額、アートフェアの総売上最高額更新など、お金のニュースが飛び交って、ちょっと食傷気味だったけど、この展覧会は本当におもしろかった。
予算はなくなったが、今持っている収蔵品でこれだけの展覧会ができる。
収蔵だけが美術館の役割ではないので、これからもいいもの見せ続けていってもらいたいです。
他の美術館でもこのような機会があれば是非やって欲しいものである。
今月29日まで。機会があれば是非!!

ちなみに同時にカバコフ展と西野達展が開催中。
カバコフは絵本展だし、西野さんのもイマイチやけど・・・。

ちなみに、同館は昨年の蔡國強のヒロシマ賞受賞を受け、今年末に彼の個展が開かれるという情報をキャッチしました。これは要チェックです
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