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TURNER PRIZE 2007 @ Tate Liverpool


今年もターナー賞展が始まりました。
今年は例年と違い、23年の賞の歴史上初めてロンドンを出てリバプールでの開催。
最近イマイチぱっとしない賞に刺激を与えるチャンスとなるのでしょうか。
ってことでロンドンを離れリバプールまで出張してきました。

まず会場に入って左の部屋のMike Nelsonの展示。
そこには薪が組んであって、火を燃した赤い紙が貼られた安っぽい作品が。
なんじゃこりゃと思いながら次の部屋へ行くと、白い大きなボックスというか柱が4つどどんと部屋を占領していて、穴が開いてるのでそれを覗くと、砂とライトが中にしかれていて、それが鏡張りでいつまでも続くというもの。すべての穴が全部同じ風景。
そこにマダムがやってきて「これはどうなってるの?ここがどこだかあなたわかる?」と不可解な質問をしてくるので、「わからん」と即答してやった。
んで、次の部屋に入るとなんとまたあの薪の作品が。
いつの間に元の部屋に戻ってきたんだ?と思ったけど、これぞネルソンの罠。
部屋をシンメトリーの構成にして観客を狭い迷路に入ったような感覚にさせるという。
まあ、普通に考えたらわかるんだけど、一瞬あれ?ってなる。
去年こっち着た頃、寮の近くのギャラリーで彼の展覧会がやってて、そん時も迷路みたいな作品を作ってた。ステートメントには「フラッシュバック」という言葉が使われていた。むぅ。
続いては、Mark Wallingerの映像。
この作品前のヴェニス・ビエンナーレで見たやつで、彼自身が熊の着ぐるみ着て、ベルリンのミースによる全面ガラス張りの新国立美術館で、まるで動物園さながらに通りすがる人々に見せ物にされるというもの。なんで今更この作品なんだろ。
お次はNathan Coleyの作品。
彼の場合色んなことやってるので、展示を1つのシリーズでまとめておいてもらえたら見やすかったのにな、といった印象。家のミニチュアや「THERE WILL BE NO MIRACLES HERE」というネオンの作品。中でも写真作品が気になった。白黒写真が額に入れられてるんやけど、肝心の像は額のガラスの上に黒いスプレイが吹き付けられて見れない。これはちょっと好きだった。
最後はZarina Bhimjiによる写真と映像。
ウガンダ生まれの彼女は、インドや東アフリカなどの元イギリス領の傷跡みたいなものを写真や映像に収めるドキュメンタリー系、またはジャーナリズム系アーティスト。ちょっと最近こういう人多くないですか。まあ、彼女の場合、自分の国がイギリス領で、その侵略国だったイギリスに住んでいるという背景があってのことだけど。写真はともかく映像は印象的。シザル麻を紡ぐ工場の風景を映したもので、音も合わさって、何か恐ろしいものを見ているような気になった。ちょっと演出過剰気味だったけど、まあよかった。

こんな感じの今年のターナー賞展。ちょっと保守的かな、というのが率直な感想。
例えば過去のノミネート者が2人もいるのも考えもの。
とくにウォリンジャーなんて、今更?って感じ。前のノミネート1995年ですよ。
まあ、今回は去年よりマシ。可もなく不可もなくって感じだった。
賞の歴史上女性が3人しかとってないってのもあって、ザリナの賞獲得の可能性もあるけど、昨年も女性だったのであざとすぎる感じがする。個人的にはネルソンだけど、誰がとってもまあおかしくはなさそう。12月3日発表。その模様はチャンネル4で放送予定。あー、見れねー。


RICHARD LONG @ SCOTTISH NATIONAL GALLERY OF MODERN ART
エジンバラでやってるリチャードロングの展覧会にも出張してきました。
去年のロン・ミュエクといい、ここは中々いいのがやる。いい学芸員がいるに違いない。
にしても、昨年と同じとこかと思ってたら、小さい方のモダンアート館で少しがっかり。
入ると最初はドローイングや写真ばかりで大丈夫かないな、と思ったけど、後半の部屋ではロングお得意の壁の土の壁画や、石を整然と並べた作品はさすがやった。庭にもXの形に置かれた薄い石のインスタレーションもあって、なんとかロングの展覧会にはなっていたものの、やはりダイナミックさから言うと少し欠けていたし、特に目新しさもなかった。
ところで今回この展覧会に行ったのは、僕自身の作品のリサーチでもある。彼の作品と僕の作品が酷似していて、何度もチュートリアルで彼の名前を出されてうんざりだったのでどんなもんかいな、と帰る前に見ておこうということで。まあやっぱ素材もやり方も色んな点で似てるのでそれは否めないんやけど、やはり決定的な違いというものも確認できたので色々勉強になった。あー、このおっさん絶対超えたる。
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