冨安 由真 影にのぞむ @ 丸木美術館

以前から気になっていた丸木美術館に行ってきました。
ここは、「原爆の図」で知られる丸木位里・俊夫妻の個人美術館です。
埼玉県は東松山市の緑溢れる場所に静かに佇む建物。
兎に角遠いので車で行ければいいのですが、公共交通機関だと東松山駅から出てるバスに乗るのが最も安く行ける方法だと思います。僕はこれで行きました。
但しバスの本数がかなり少ないので事前にチェックしてから行くべし。
バス停からは15分ぐらい歩きますが、ジブリっぽい風景に心躍ります。
間違ってもつきのわ駅から歩かないこと。こんな炎天下で30分も歩くと死にます。
あと森林公園からタクシーで12分ぐらいらしいので余裕のある方はそれもいいかと。
で、なんとか到着。遠かった。。。
現れた建物は案外大きくてびっくり。
受付で入場料を払って中へ。
まるで公民館のような佇まいですが、最初の2階には早速「原爆の図」が展示されています。
その前に位里の母スマが70歳を過ぎてから描き始めたというほのぼのした絵に癒されて心の準備を。
僕が丸木夫妻の絵を知ったのは中学の頃。
担任が美術教師だったのもあり、夫妻の作品をかなり熱心に取り上げていたのを鮮明に思い出します。
丸木夫妻はそれぞれ親戚が広島にいて、彼らは疎開していて被爆は免れたものの、多くの親戚を亡くしました。
原爆投下から数日後に広島に赴きその地獄を見た彼らは戦後、この「原爆の図」を描き始めたのです。
最初の「原爆の図 第1部 幽霊」が描かれてから1982年までの32年に渡り、全15部に及ぶ連作として制作されました。
この美術館には1部から14部までが常設で展示されていて、最後の15部は長崎原爆資料館が所蔵しています。
1部の幽霊がこの7月20日に修繕を終えて帰ってきていて、現在2部が修繕中で2025年までかかるとか。
それ以外は実物が揃っています。
中学生以来実物を観てみたいと思っていたので感慨もひとしお。
屏風のように自立するその大画面に圧倒されました。
画題もさることながら、彼らの絵のうまさもすごい。
構図も完璧だし、全部が違う表現を用いられていて観ても観ても観尽くせません。








1階に降りると、画題は戦後にまで及びます。
印象的だったのは第13部と第14部。
13部では広島の原爆で亡くなった米兵捕虜、そして14部では在日朝鮮人について取り上げていました。
日本人の被害だけではなく加害にまで及ぶ「原爆の図」にはハッとさせられるものがあります。
第9部では戦後の第5福竜丸のことも取り上げていて、その後、画題は原爆から沖縄戦、南京大虐殺、アウシュビッツ、水俣、三里塚闘争と、人類史にまで及んでいて言葉をなくします。
蝉の声が遠くで鳴り響く中、静寂に包まれて思考が研ぎ澄まされる感覚がありました。
最後は彼らのアトリエ。
急に田舎の実家感があってほっこり笑
お盆に田舎の祖父母の家に来た感満載。




さて、今回丸木に来るきっかけは冨安由真さんの個展があったから。
冨安さん、気になる作家ではあったけど実際観るのは初めて。
経歴見たら、同い年で同じ時期にロンドンのチェルシー行ってるのでどこかで会ってるかも。。。
彼女自身が被爆3世だそうで、今回初めて故郷と向き合う作品を制作しました。
会場では広い空間に白い手の型がいくつも浮いています。
それらは実際被爆者の方達に会って型取りしたものだそう。
やがて会場は暗くなって、強いスポットが当たって壁に影が落ちます。
そしてゆっくりと全体が明るくなるというインスタレーション。
ちょっと直接的なのと、まだご存命の被爆者の方たちがまるで死者のように扱われてるのが違和感ありました。
ただ、手の断面の部分が鏡面になってて、それがスポットに反射して、まるで魂が飛んでるように天井に反射してるのは面白かった。








そんなこんなで初丸木美術館体験終了。
遠かったけどとても充実した時間でした。
2025年からは建物の改修工事に入るそうで、その資金を呼びかけています。こちら。
改修前にでも一度は訪れたい美術館の一つだと思います。
冨安由真展は9月24日まで。こちら。