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「老ナルキソス」by 東海林毅 / 「怪物」by 是枝裕和

最近観た映画まとめ。















まずは「老ナルキソス」
実は当方、この映画に少しながらご協力させて頂きました。
劇映画のエンディングで「A'holic」の名前が流れた時は嬉しかったなぁ。
それはともかくこの映画、元々同題の短編からスタートしました。
僕が上京した2018年の夏に開催されたレインボーリール東京で初鑑賞。
その前の、上京後すぐに東海林監督とはお会いしてたのもあり、最初から「老ナルキソス」目当てであったものの、ゲイの老人のMを描いた内容はとても衝撃的で映像も美しく、グランプリを獲得されたのも納得な内容でした。
その数年後に長編化の話を聞いた時、もう既に期待しかなかったのです。
実際その期待を裏切らない見事な内容。
元々短編で完成してたものを膨らませたと仰ってたけど、まるで元の短編がこの長編の為の予告編であったかの如く自然すぎる展開。
冒頭に短編で描いた内容を残しつつ、今と昔を巡る家族やセックスというテーマを見事に描ききってました。
人によっては詰め込みすぎ、と思われるかもしれないけど、むしろこれまでこれらのことを正面から切り込んだ映画がなかったので仕方ないと思います。
今後ゲイを描く上でロールモデルになるような内容でした。
特に家族の問題は、人それぞれなので、本当に考えさせられました。
短編ではあまり描かれなかったウリ専のレオくんの葛藤が長編ではよく描かれていて共感もてました。
僕も家族ってものをうまく描けないので、パートナーシップや同性婚にはかなり懐疑的です。
区役所のシーンはやや皮肉的で笑いましたw あんなこと本当にあるの??
とはいえ未だにマイノリティへの権利がここまで認められていないのも不自然すぎる。
同性カップルが2019年に全国5か所で起こした集団訴訟は、先週の福岡地裁で全ての判決が出そろいました。
裁判所の判断の内訳は「憲法違反」が2件(北海道・名古屋)、「違憲状態」が2件(東京・福岡)、「合憲」が1件(大阪)となりました。少しずつではあるけど一歩ずつ進んでます。
それもこれも、先人が築いてきたものがあってこそ。
それこそ映画の中でもエイズに少し触れる場面がありますが、今では考えられないぐらいの差別と戦ってきた歴史がちゃんとあるんですよね。
老人のゲイというあまり描かれない主題を選んだからこそ見えてくるものがあったように思います。
あえて残念な点を挙げるなら、レオくんも若山崎も前の短編の時の方がよかったなぁと。
田村さんがとにかく素晴らしいので、彼は代わってなくて良かった。
そして日出郎さんが本当に良かった。ゲイバーママリアルすぎw
寧ろストレートの方にこそ観て欲しい映画だったりするので是非!!
パンフもパンフの範囲超えてます。
表紙が海老原さんだし、なぜか監督のヌードもあるし、昭和ゲイ雑誌の悪ノリもあるしw


続いて「怪物」
是枝裕和x坂元裕二x安藤サクラx坂本龍一って時点で無敵すぎる。
予告もほとんど内容がわからないのが強気の印。
唯一カンヌで「クィア・パルム賞」なる賞をとってたのがややネタバレというか、え、そんな内容なの!?と思いつつ初日から駆けつけました。
中身は言わば「羅生門スタイル」で、3つの視点から描かれます。
母親、教師、子供の順で見る側面によって全然印象が変わる内容ですが、やはり最後の子供の視点は痛烈。
もう涙が淀みなく流れちゃいました。。。
「普通」という言葉に傷ついてきた人にはぶっ刺さる内容だと思います。
人によってはトラウマが蘇ってしまうかも。。。
前述の「老ナルキソス」とは逆に子供時代のあの葛藤をこれほど危ういまでに描いた作品初めて出会った気がします。
母親の愛ゆえの「結婚して家族ができるまで」って言葉が車から飛び降りさせるほど息子を傷つけてしまうシーンとか、おねぇタレント真似して笑い取るとか、観ていて本当に心が痛みました。
先生の何気ないホモソーシャルな台詞も難しいところですね。。。
会見でも触れてたけど、坂元さんは「Mother」以降「それでも、生きてゆく」や「anone」でも加害性をテーマに脚本を紡いできました。
その一つの到達点としてこの映画がある気がします。
具体的に言葉には出さずとも、伝わってしまう心情の描き方がすごい。
田中裕子も流石すぎるし、彼女にこの映画の肝となる台詞言わせる坂元裕二も最高すぎる。
「誰かにしか手に入らないものなんて幸せじゃない。しょうもない。誰にでも手に入るものを幸せって言うんだよ。」
この台詞に全て集約される気がします。
坂元さん、脚本賞本当におめでとうございました。
また、是枝監督もこれまでネグレクトや疑似家族等、坂元さんも描いてきた題材を真摯に描いてきた方なので、2人の親和性ははじめから約束されていたようなもの。
そして是枝監督の子供の撮り方がやはりうますぎる。
特に柊木陽太くんの演技凄すぎる。
要所要所で流れる故・坂本龍一の音楽も印象的。
観終わった後もしばらく尾を引く映画です。


続いてソクーロフの久々の新作、「独裁者たちのとき」
ソクーロフファンとしては待ってました!って感じなのだけど、前半静かすぎて寝てしまったw
ヒトラーやスターリン、ムッソリーニにチャーチルと、歴史的人物のアーカイブ映像をつなぎ合わせて作ったとのことだけど本当??ってぐらい自然に共演しちゃってる。。。
冒頭で「ディープフェイクやAIは一切使用してない」って出るんだけど、不思議すぎて最後まで馴染めませんでした。。。
以前にも昭和天皇やレーニンを描いた「権力の四部作」を製作していたソクーロフの到達地点ではありました。
それにしてもロシアウクライナ戦争真っ只中でこんなものを発表しちゃうなんて大丈夫なのだろうか。。。
ソクーロフには実験的なものよりしっかり美しい映像撮って欲しいなと個人的には思います。


「sio/100年続く、店の始まり」は代々木上原にある予約困難店sioを作った鳥羽シェフの激動の時間を追ったもので、めちゃくちゃ撮れ高ある内容。。。
鳥羽さんの飽くなき挑戦に周囲が振り回されてる感じとかがうまく撮れててドキュメンタリー映画としてはかなりの出来だと思いました。
僕はsioとo/sioに行ったことあるけど、他の店舗も改めて行ってみたい。
それにしても例の報道後、この映画に家族全員出演してたこと思うとすごい闇あるな。。。


あとの3本はほぼ惰性。
「ヴィレッジ」はひたすら横浜流星がイケメン過ぎて、村にいるのが不自然過ぎた。。。
途中からのキャラ変も不自然過ぎて全然入っていけず。
黒木華が能面っぽいのは良き。
「岸辺露伴 ルーブルへ行く」「サイコパス PROVIDENCE」は、既に世界観構築され過ぎてて可もなく不可もなくだった。
若露伴役の長尾くん素敵過ぎた。
昨日葉山に行ったので岸辺露伴邸としてロケ地になった加地邸見てきました。
宿泊可能で一泊30万だそうです合掌。

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