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日本の中のマネ ―出会い、120年のイメージ― @ 練馬区立美術館

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「近代で好きな画家は誰ですか?」

と聞かれたら僕はすかさず

「マネとマティスです!」

と答えます。

マネ、皆さんお好きですか?

多分あまりいないんじゃないかな、と推測します。
マティス好きな人はいてもマネ好きって人はあまり聞かない。
少なくとも一般受けするタイプの画家じゃないと思います。
じゃあなんでそんな人気ないのか?
それを紐解く展覧会が本展です。
やや自虐的とも言える内容ですが、まあそれもマネっぽくて僕は最高に好きな展覧会でした。
マネファンもやはりひねくれてる人が多いのかもしれません笑

さて、日本におけるマネの人気のなさを証明するのが、コレクションの少なさと展覧会の少なさです。
まずコレクション。
僕もこれにはびっくりしたんですが、なんと国内に公式に発表されてるだけで版画を除くと17点しかありません。。。
17点ですよ、17点!
モネとかルノワールなんてそれぞれ100点超えると思うんだけど。。。
先日国立西洋美術館で2点観たし、アーティゾンでも行く度に観るのでまさかそこまで少ないとは思ってませんでした。。。
今後は心して食い入るように観なくては。。。
そして国内で開催された「マネ展」に関してはさらに驚くべき数字。。。
なんと3回しか開催されてません。。。
没後百年以上経過した1986年に初のマネ展が国内巡回した後、2001年に府中と奈良で2回目、そして2015年に三菱一号館美術館で開催された「マネとモダン・パリ」展が最後。
この2015年の展覧会は観に行きましたが結構見ごたえのある内容だったと記憶していて、これもまたそんなに貴重な機会だったとは。。。って感じでもっとしっかり観るべきだったと後悔しております。。。

なぜそんなに少ないのか。
まず、51歳で亡くなってるのでそもそも作品数が少ない、というのはあります。
なので世界中見渡してもむしろ17点もある、と言っても良いのかもしれません。
そして、代表作と言える作品はほぼパリにあり、それらはほぼ動くことはありません。
これらの代表作が国外にほとんど出ないので、日本にいる限り、モネの睡蓮のように「これぞマネ!」と言える作品に出会うことができないのもマネ人気のなさに繋がっているのかもしれません。
例えば「オランビア」が日本に来たら流石に行列が出来るぐらいの人気はあると思うんです。
でもそれがほぼ叶わない。
昔ヴェネツィアで「オランピア」と、その元となったティッツィアーノの「ウルビーノのヴィーナス」を並べて展示するというとんでも企画を観ましたが、あれもかなり貴重な国外での展示でした。こちら
フランスでは本当に大切にされてる画家です。
とはいえ当時はめちゃくちゃスキャンダラスな画家だったのは周知の事実。
前述の「オランピア」は言うまでもなく、「草上の昼食」や「笛を吹く少年」も争論を巻き起こしました。
後年はサロン審査免除されたり、レジオン・ドヌール・シュヴァリエ章を受章したりするものの、彼の死後、モネ達が必死でフランス政府にマネの作品群がルーブルに入るよう働きかけても、中々実現しなかったことを思うとなんだかなぁとなります。
そんなスキャンダラスなマネでしたが、本人は至って真面目に絵を描いていただけ。
カタログの中で森村さんも仰ってますが、彼は本当に「天然」の人だったと思います。
これだけのものを描いておいて、本人はあくまでサロンに通りたかった。
見ようによってはおちょくってるのではと思われそうですが、本人は大真面目。
そんなキャラクターも僕が彼を愛する理由の1つです。
まあ、こんなことができたのも、父親のおかげかも。
父のオーギュストは法務官僚、司法官としてパリの法曹界の重鎮。
上流階級に生まれたからこそ、こうやってゆとりを持って絵を描けたのかもなぁとも思います。
だって彼の経歴見ててもどうやって生活してたの??って疑問しかないんだもの笑

日本に受容されにくかった理由は上記だけではなく、やはり美術史上の立ち位置も関係がありそうです。
「近代絵画の父」とか「印象派の祖」とか言われますが、マネはマネでしかないのです。
彼は先達のクールベのようなリアリズムでもなく、後陣の印象派にも与することは決してありませんでした。
実際マネは印象派展に一度も参加していません。
カテゴライズが難しい宙ぶらりんな存在。それがマネです。
しかし彼を美術史から外すと後の印象派もセザンヌも登場しにくかったのは事実なんです。

この展覧会では、前半でマネとその周辺の作品を展望し、中盤で明治から昭和初期のマネの影響を辿り、最後に現代の森村泰昌と福田美蘭で終わります。
前半では日本にあるマネの作品17点中の7点が揃いました。
そのうち、小品でほとんどの人が通り過ぎそうなチョークで描かれた裸婦(アーティゾン美術館所蔵)は超貴重な一品。
これは、明治からパリで美術商をしていた林忠正が日本に初めてもたらしたマネの作品。
彼は生前のマネと交流した唯一の日本人でもあります。
僕は彼のことを今回初めて知りましたが、世界に浮世絵を広め、日本に印象派をもたらしためちゃくちゃ重要人物なんです。
あの黒田清輝も彼の影響で絵画の道を志しました。
1900年のパリ万博では日本事務局の事務官長を務めたり、フランスからも「教育文化功労章1級」と「レジオン・ドヌール3等章」が贈られています。
パリでは貧しかった印象派の画家から浮世絵と引き換えに作品を受け取ったり、彼らの手助けもしていたりして、最終的に彼が日本に持ち帰ったコレクションは500点にも及びました。
帰国後そのコレクションを自身の美術館で見せたいという野心がありましたが翌年に死亡した為叶わぬまま、コレクションも散逸してしまったのです。
そんな中残った貴重な一点が今回出ているマネの裸婦像。
他にも油彩画は相変わらずとんでもないタッチで驚きます。
「イザベル・ルモニエ嬢の肖像」のドレスの描き方が異常すぎる。。。
あとはマラルメがフランス語訳したポーの「大鴉」に寄せた挿絵がかっこよすぎた。
マネのあの荒々しい、しかし華のある筆致が好きすぎるんです。。。

中盤でのマネ受容に関して、最も最初に紹介したのが森鴎外というのが意外でした。
それはゾラの紹介の中に出てきたぐらいで、偏りはあるものの、1911年の「白樺」でマネ特集が組まれるまでに至ります。
作品としては1904年の石井柏亭の「草上の小憩」が最も早いマネの影響と言われています。
作品タイトルから明らかに「草上の昼食」を連想させるし、画中の人物の配置も明らか。
ただ、ここにはマネが込めたシニカルな視点が全くなく、むしろ牧歌的な風景だと言えるでしょう。
その後も主に「草上の昼食」を模した作品が多く登場します。
とはいえ、むしろセザンヌが「草上の食卓」を意識した「水浴」の影響の方が強そうに感じますが。
印象的だったのは山本鼎のスケッチを元に従兄弟の村山槐多が描いた「日曜の遊び」が衝撃。
そんなことある??って感じなんだけど不思議でした。
他に印象的だったのは片岡銀蔵の「融和」。
1934年の日本の帝国主義前夜を思わせる、「オランピア」の構図(左右反転)に、白い肌の日本人と黒い肌の南洋の人物。。。
タイトルが「融和」ってのも皮肉すぎる。。。
あと小磯良平がマネ好きだったのも意外でした。
卒業制作の作品に思いっきりマネの画集が描かれている!
最後の森村福田コーナーは、まあ、はいって感じでした笑
福田さんの日展への挑戦は面白いですね。どうなったんだろうか。

マネ好きにはたまらない展示です。11月3日まで。こちら
因みに練馬区立美術館初めて行ったんだけど、新宿三丁目から一本で行けることに気づいたのも収穫。
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