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安喜万佐子展 「時の海・明日の地層」 @ FEI ART MUSEUM YOKOHAMA

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大学の先輩であり大尊敬する作家の一人、安喜万佐子さんの展覧会に行ってきました。
相変わらずの圧倒的な仕事量で凄過ぎた。。。

まず会場入って左手に現れる東北の森を描いたという作品「カオス・フロム・オーダー、オーダー・フロム・カオス (北の森)」(2019-2020)。
光の粒子が立ち昇っているかのように樹々を茫漠と浮かび上がらせています。
彼女の作品の特徴である、「風景」の「景」。
「景」とは本来影のことです。
英語では「Scape」と訳されますが、この言葉では到底測れない射程のある言葉なのです。
彼女はこの「景」をこれまでのキャリアで描き続けてきました。
この森の「景」は眩暈を覚えるほど鑑賞者を眩ませます。
今回東北の森を描いた作品がもう一点出ているので見比べるのも興味深いです。

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上記の絵画はテンペラという古典技法で描かれているのですが、同じ技法で都市を鳥瞰図のように眺めた作品群「Obliterated Ground」も彼女の代表シリーズの一つ。
こちらは光というより雪のイメージに近い気がします。
これも近くで観るのと遠くで観るのとで印象がとてつもなく変化する作品。
ただただ都市を俯瞰するのではなく、この絵画の元となるのは地面を擦って描くプロッタージュ。
このプロッタージュを元にして、都市を形成していくのですが、現在の景色もあれば、今はもうない過去の景色をコラージュのようにしてはめていくのだそうです。
時間や記憶といったものもこの作品には込められています。

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そして今回新作として出品されていた新作には本当に驚かされました。
コヴェントリーというイギリスの都市を描いた作品なのですが、なんと上部には大聖堂が唐突に描かれていたり、戦争の頃の写真を元にした人々の顔のようなものが挿し込まれていたりと、もはや「風景画」とも言えない不思議な画面となっていました。
特に近代以降、「絵画の死」という言葉が浮き沈みを繰り返していますが、この絵を観る限り絵画は死んでいないと言わざるを得ません。
この作品はどうやっても絵画にしかでません。
遠近法を消失させ、別の時間や空間が同時多発的に一つの画面に発生していて、観れば観るほど大混乱に陥りますが、とても心地いいカオスを形成しています。
ちょっとまだまだ整理つきませんが今はこんなところかな。。。

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それからこの10年程取り組んでいる金箔を用いた絵画たち。
これらの作品群は彼女の一つの到達点と言っても過言ではありません。
本来絵画には図と地という概念があるのですが、この絵にはそれらは逆転しています。
ボローニャ石膏で施された地と、金箔で覆われた部分が、従来の絵とは逆転しているのです。
つまり本来図のはずのモチーフ(樹々や烏)が地の部分になり、本来地(背景)の部分が金箔で覆われています。
しかも、モチーフが白い「景」と化すことによって、それらの遠近も失われています。
どちらが前にありどちらが後ろにあるかというのはこの絵の中では大きさで推測するしかなく、しかし実際のモチーフ部分は真っ平らの白い地なのです。
しかも今回の目玉の一つとも言える13枚のパネルで作られた「沈黙の水鏡、暁の烏」(2020) に至っては天地すら逆転しています。
タイトルの水鏡からするとこの場合逆転すらしてるのは水鏡に映った像であって絵画ではないのもさらに混乱を招く仕掛けがあるのが凄い。。。
そして、本来天も地もないはずの烏が舞っている空すら、この絵を観ていると天地逆転している気がするのがもうわけがわかりません。。。。
ずっと彼女の作品は観てきていますが、ここまで来たか。。。という驚きを隠せませんでした。
それにしても烏がカッコよすぎて泣いた。。。
以前シアトル美術館にある「鴉屏風」を指して、こんな絵が描きたいと仰ってたけど完全に自分のモチーフに落とし込んでいました。
金箔ではないけれど、青い画面の「暁の烏」(2020)もカッコよすぎた。。。

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最後の部屋には、近年映像作家の前田真二郎氏とコラボレーションしている、金箔の松林図に映像が投射されている作品。
また英語の「Landscacpe」と日本語の「風景」の話に戻ると、この言葉の「Land」と「風」にも大きな違いが現れています。
「Land」。つまり大地は動かないものと「風」、常に動くもの。
「風景」という言葉には常に変化し続けるものという意味も込められているように思います。
なんだったら日本にはおいては大地だって揺れ動いてしまうんですが。
この松林図には、映像が投射されることで「風景」という言葉に込められた動きも加えられています。
ちなみに松林図と聞くと長谷川等伯の作品を思い浮かべますが、あの屏風絵も水墨画によって見事に動きが取り入れられています。

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最後に、今回ロックダウン直前にロンドンで制作されたプロッタージュも展示されていました。
一つは木炭で和紙に擦られたロンドンの地面ですが、もう一つは顔料を和紙に着けて、ロンドンの雨によって「描かれた」作品。
なんとここに来て手すら使わない作品が登場しました。
この作品には安喜さんの新たな一手の予兆のようなものを感じてしまって、まだまだ進めるんだ!と震えました。
今後も楽しみで仕方ありません。

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この展覧会は4月28日まで。是非!こちら
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