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ロニ・ホーン:水の中にあなたを見るとき、あなたの中に水を感じる? @ ポーラ美術館

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昨年9月から始まったロニ・ホーン展。
もう開催決定時から楽しみで、いつ行こうかと計画しておりました。
ロニの作品を初めて観たのは2003年にまだ万博公園内にあった国立国際美術館で開催された「連続と侵犯」という展覧会に出品されてた「あなたは天気」。
この展覧会は僕が現代美術よくわからない時期に受けた洗礼的な展覧会で、すべての作品に衝撃を受けました。
それからギャラリー等で何度か観たことはあるものの、写真作品が主で、こうして彼女の作品を通覧する機会は本当になくって、よくぞ取り上げてくれた!という気持ちでした。
ちょうど友人らも行きたいとのことだったので、だったらGoTo始まり次第いい宿とって行こうぜ!と言っておりましたらそんなもの始まる気配もなく年を越してようやく。。。
途中コロナも多くなってきたり、雪で閉館したりしてて、どうにか!と祈るような気持ちで無事参ってきました。


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前回観たケリス・ウィン・エヴァンスの作品も健在。これずっとあるのかな?
この人の名前一生覚えられない。。。
会場入り口にあるロニの写真作品に映り込んでるのいい感じ。
入ってすぐは写真作品メイン。
僕はほぼ職業病で、作品がどういう風に展示されてるのか見ちゃうんですが、彼女の写真作品の額装の仕方がちょっと特殊なんですよ。これまた後で述べます。


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この展覧会の中でも最もビジュアルとして映えてる作品群。
てっきり水が張ってるものだと思ってたら全てガラスで出来てた!
目の前の大きなガラスの向こう側の景色が映り込んで素晴らしかった。
このリフレクションという要素は彼女の作品でとても重要な要素。
それぞれ不思議なタイトルがついてます。
例えば、
『無題(「必要なニュースはすべて天気予報から手に入れる。」)』
とか
『無題(「魔女は山雨の中で想像していたよりもずっと素敵だ。」)』
等々。
もっと長いものもいくつかあります。
全体のインスタレーションとしては
『無題(「私の社会的な意識は、ほんの数十年前までは未開拓だった土地で形成された。寂寥感、なにもない土地、広々とした空、どこまでも続く地平線、そして、ほんのわずかな人々。これらが私の最初の事実であり、長い間、支配的なものであった。」』(2018-2020)
長ッ!
こういう文学的な面もロニの真骨頂の一つです。


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次の部屋では棒のような作品が立てかけられてます。
側面から見ると模様にしか見えないんだけど、正面から見るとテキストになってるっていう。
このテキストはエミリ・ディキンスンの手紙から引用された言葉らしい。
これもロニの文学的な作品の一つ。
ショップでこれが箸になってて笑った。天才。
そして何よりこの部屋では、僕がこの展覧会で最も観たかった「ゴールド・フィールド」(1980/1994)が展示されてます。
薄い金箔が床に置かれてるだけの作品なんだけど、この作品に纏わる素敵過ぎるエピソードがあるんです。
このお話はミヤギフトシさんの文章の中で知ったんだけど、ロニのこの作品に感動したフェリックス・ゴンザレス=トレスが、「Untitled (Placebo – Landscape – for Roni) 」という金色の包み紙に包まれたキャンディを床にしきつめた作品を作るんです。その後トレスはエイズで亡くなり、ロニはトレスと彼の恋人に捧げる「Gold Mats, Paired for Ross and Felix」(1994)という金箔を2枚重ねた作品を制作するんです。
何なんだこのオシャレすぎるやりとり。。。
このエピソード知らなくても勿論素敵な作品なんだけど、知ると余計見方が変わります。
で、この話調べてたら今年の4月から昨年行ったパリのブルス・ドゥ・コメルスでロニとトレスの2人展がやるのを知ってしまった。。。オープニングでやれや!!めちゃ観たい。。。こちら
この作品も前の風景が映し出されていて、まるで水面のよう。
かなり初期の作品だけれど、彼女の通底する「水」という要素がここにも顕れていてびっくり。
ゴールドは色であって色でないのも素晴らしいですね。
これ観れただけでも来た甲斐があったよ。。。泣


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次の部屋は暗い中ガラスケースに本の作品とコラージュ作品。
彼女が魅了されたアイスランドをテーマに作られたシリーズ。
そしてお次は人の身長より高い位置に配置された、北アイルランドで撮影された45点の写真。
「野生の鴨の巣跡から手作業で羽毛を集めることを生業とするビョルン村夫妻を中心に」
って、どんな生業やねんww
それはともかく、展示の緩急のつけ方が上手すぎる。。。
どの展示室も全く飽きさせない工夫がすごい。
そしてこの写真作品、絶対伝わらないと思うんだけど、額装の仕方が変すぎ。
何というのかな。。。写真の下の部分が額の中で浮いてるんですよ。
もしかしたら上の角2点で留めてるのかもしれない。
よく見ると写真もヨレてるし、何なんだこの有様は。。。
このあと出てくる写真もそんな感じ。まるでポスターのよう。
ほとんどの人が気づかないと思うけど、この感じ凄く謎でした。


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そして映像。
2012年にデンマークのルイジアナ近代美術館で行ったロニ本人による「水と言う」という詩の朗読。
40分もあるけれど最後まで見入ってしまった。。。
黄昏の明るい空が最後には真っ暗になっててとてもドラマチック。
今回の展覧会タイトルの「水の中にあなたを見るとき、あなたの中に水を感じる?」という言葉もこの詩の中に登場します。
他にも印象的な言葉が並びます。

「水について考えることは、その未来について考えること、あるいはただ未来を。わたしの未来、あなたの未来。それは個人的なこと、特に今は。」

「あなたがそれを川と言う。わたしはそれを信じる。でもあなたがそれを水と言うなら、わたしはそれを疑う。」

「あなたが水と言うとき、それは天気について話しているの?それともあなた自身?
水の中にあなたを見るとき、あなたの中に水を感じる?」

「水はセクシーだ。近づくとその官能性がわたしをじらす。」

「あなたは自分がどんな風に川沿いを歩いているのかを知っている?あなたは歩き、川は流れる。あなたは川の流れとか反射とか、なにかしらを見ている。水の中に何かを見るのではないかと考えながら。あなたはじっと見る。何かが現れてくるのを待ちながら。ただ、もしそこが湖ならば、あなたは腰を下ろしただろう。もしそこが湖ならば、こうした予感は生まれないだろう。今にも何かを見つけるのではないかという予感。おそらくは何か気分の悪くなるもの、あるいは価値のあるもの。」

「水はユートピア的な物質だ。水の間とは?水は複数形?たとえ一本の川でも、単数形だなんてことがありえるだろうか?その水はどこから来たのか?」

「アンハイドロニーは水なき水、水とは正反対にあるものだ。形態は液体のまま、その物質が変わる。もう一つのアイデンティティに置き換えられる。アンハイドロニーは乾いた水だ。
アンハイドロニーはまだ認知されていない言葉だ。存在しないということが、その意味を受け入れることの難しさを指摘している。」

「テムズ川にはアイデンティティを溶かす力がある。」

「水が水らしく見えることなんて滅多にないことに気づいたことはある?」

「果たして川に終わりはあるのか?そう、川はただ流れつづけ、また別の名前となって流れていく。」


と、挙げていくとキリがないぐらい印象的な言葉たち。
そしてそのまま次の作品へと流れていきます。。。


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ロンドンのテムズ川の水面を映した写真作品群。
前の詩の朗読にもテムズ川はしばしば登場していて、そのままの流れでこの展示はにくい。
この写真も前の写真同様額の中でペラペラしています。
そしてよく見ると、水面の中に番号が振られていて、下にその番号に合わせて言葉が綴られています。
まるで水面が話しかけているよう。
その言葉は先ほどの詩だと思うんだけど、こっちの方が年代的に先に制作されているのですね。
僕もロンドンにいたのでわかりますが、テムズ川って常に茶色でめちゃ汚いんですよ。。。
その濁りが余計色んなものを誘発するのかもしれません。


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もう既にお腹いっぱいなんだけどさらに下階に続きます。
大きな地図を思わせるドローイングの展示は圧巻。
言葉を切りはりしたコラージュもかわいい。
そして最後の最後に彼女の代表作とも言える「あなたは天気」が並びます。すごい。。。
しかもパート2となってて、80年代に作ったものとは違う、同じ女性を約30年後のアイスランドで撮ったもの。
30年前とほとんど変わってない姿にびっくりなのと、ポートレートなのにほとんど景色のように見せてるの流石すぎる。。。
その周りにある湿った大気まで感じさせるインスタレーション。
外にはロニの本が並んでていくつか欲しいものができてしまった。。。


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最後は遊歩道の森に設置された「鳥葬」と言う彫刻。
森の中で白い光を帯びた姿は神々しかった。。。
これもガラスでできてて、上には水が溜まってます。

これで以上なんだけど、改めてロニ・ホーンのすごさを思い知れたし、何と言っても箱根でやってるのはでかい。
この展示を観ながら箱根で浸かったお湯のことをずっと思い出してました。
日本とロニのモチーフとなってるアイスランドは有数の温泉大国です。
これほど水と親和性の高い民族は中々いないと思う。
ほぼ毎日湯船に浸かってるなんて海外の人からしたら驚き。
温泉に浸かって無になって溶けていく感覚がこの展覧会に通底していました。
いやはや本当にいい展覧会だった。。。
3月30日までなのでまだの方は必見です!こちら


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さらに見逃してはいけないのがコレクション展。
特に「水の風景」と題された展示はやられた。
こういう企画展と連動したコレクション展は大好物です。
そしてモネ!
これほどロニ・ホーン からの流れをくむ作品があっただろうか。。。やられた。。。
さらに「モネ-光のなかに」では、建築家の中山英之が展示構成をしています。
これとっくに終わってると思ってたからやっててラッキー。
「外光派」と呼ばれたモネの絵を外光のように照らすというもの。
でも外光ってこんなに均質じゃないよね。。。ってのが僕の感想。
特にルーアン大聖堂の絵は移りゆく光を捉えようと試行錯誤した絵なので、光も時間で変わるとかだったら面白かったかも。
あとは「ラファエル・コランと黒田清輝―120年目の邂逅」
こちらも豪華過ぎ。黒田の師匠だったコランの「眠り」とそれを模したであろう黒田の近年まで行方不明だった幻の作品「野辺」が並んで展示されてた。。。すごい。。。
ポーラ、次回もコロナ禍の中で30億で買ったリヒターがついにお目見えするコレクション展やるので必見。また来なくては。。。こちら


さて、箱根。
結局目当ての宿は高過ぎて無理だったけど、憧れの宿元湯環翠楼さまに宿泊しました。
小田急百貨店デパ地下で弁当と酒を買ってロマンスカーで酒盛りから始まり。
箱根着いてやることないのでとりあえず喫茶店で時間潰して宿へ。
創業400年、築100年越えの建築は圧巻。。。広すぎてほぼ迷宮。凄過ぎた。。。
映え過ぎる風呂場に謎の大広間。温泉も最高でした。。。
BAR閉まったけど行きたかったな。。。
夜はUNOと人生ゲームで中年修学旅行気分。夜も朝もお食事素晴らしかった。
書いてたらまた行きたくなってきた!箱根、最高ですよね。。。

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