「片袖の魚」by 東海林毅
文月悠光の同題の詩を元に、トランスジェンダーの女性を描いた34分の短編映画。
東海林監督とは僕が上京してすぐに知り合って、そこから作品を拝見させてもらってます。
特に僕が初めて観た東海林監督の「老ナルキソス」は大好きな作品でして、主演の田村泰二郎さんがこの「片袖の魚」でもチラッと出てて観ながらニヤッとなりました。
そんなことより、この映画の1番の注目は、やはりトランスジェンダー女性を当事者である、モデルのイシヅカユウさんが演じてらっしゃる点でしょうね。
インタビューでも、日本でトランスジェンダーを描くと喜劇か悲劇に偏ったり、マジョリティの人たちの為の娯楽の一環にしかなってない現状と、当事者が演じることの重要さを語ってらっしゃいます。
「なぜ日本ではまだ早いと思うのだろうと考えていたら、やらないから『早い』ままなのだと気が付きました。自分はそれを実現できる立場にある」という監督の言葉は重いですね。
なぜ「トランスジェンダー役は当事者俳優に」なのか?実現した日本映画『片袖の魚』が変えていくこと
(ThinkGender)トランスジェンダー役を当事者に 世界中で動き、日本でも短編映画公開
「片袖の魚」主演イシヅカユウに聞く映画界のトランスジェンダー描写
実際観てみると、周囲からの偏見が生々しくて途中苦しくもあるんですが、最後はハッピーエンドでもないのに爽快な気分になれました。
僕自身ゲイなので、ストレートの無神経さに辟易させられてきたこととか色々思い出しちゃいましたw
特にあの居酒屋のシーン。。。気まづくて何度もグラスに口つけるのとかリアル過ぎる。。。
先日も店に来たお客さんで、飲み仲間にトランス女性がいらっしゃるらしく、聞くともなしに聞いてたら、そのうちの一人の男が「彼女がカミングアウトしてないのはおかしい。そういう生き方を選んだんだからはっきり言えばいいのに」って言い出したところでプチンときてしまって「テメェは女を好きなヘテロのシスジェンダーという生き方選んだんか?選んでないだろ?彼女も選んだんじゃなくてただそうだっただけなの!知らんけど!」と説教してしまいましたww
未だに性的嗜好と趣味を勘違いしてしまってる人も多いし、本当に辟易しますが、こうやって映画や文化が先を見せることで少しでも進めばいいんだけど、やっぱこういう映画も意識のある人しか来ないんだよなぁ。。。
いくら「ホモソーシャルがー」みたいな本が出たって、当事者はまず読まないしね。
難しいですが、やっぱり発信することは大事だな、と改めて思います。
昨年のアカデミー賞取っちゃったなんとかスワンも対比として観たくなりましたw
私の敬愛するCocco様の歌詞の一節をこの映画に捧げます。
Sleeping in the water
また明日
上手く笑えるから
わがままも知らない
深い海の底
(Cocco「コスモロジー」より)
僕が観た日は監督とイシヅカさんのトークもあり満員御礼。
イシヅカさん、大分天然っぽくて面白かった笑
彼女が直前になって切って欲しいとカットしてもらったセリフが気になりました。
ちなみにこの映画はスマホで撮られたそう。すごい時代だ。。。
