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佐藤雅晴 尾行 存在の不在/不在の存在 @ 大分県立美術館

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この旅最大の目的、2019年に亡くなった佐藤雅晴さんの展覧会です。
水戸芸術館にも回ってくるんですが、磯崎新より坂茂の空間で観たかったし、大分は佐藤さんの故郷なので、距離とか考えてもどうしても大分県立美術館で観たかったのです。

入っていきなり彼の代表作でもある「東京尾行」(2015-16) からスタート。
冒頭からやられました。
2015年の原美術館での個展で発表され、今年になってその歴史に幕を下ろした原美術館の最後の展覧会にも出品されていました。
光ー呼吸 時をすくう5人 @ 原美術館
無人のピアノの奏でるドビュッシーの「月の光」が会場に響き渡ります。
12のモニターには一部だけがアニメーションになった東京の日常が映されています。
この展覧会のタイトルにもなってる、「存在」と「不在」がまっすぐ届く作品です。
それまでの佐藤さんの作品は、これ以降も出てきますが、ロトスコープという実写映像をトレースするという方法を用いて、全てアニメーション化されていました。
しかしこの作品では一部のみがアニメーション化されることによって、より「実在の不在化」を実現しています。
例えばアイスクリームをほうばる女性のアイスクリームの部分だけがアニメになることによって、それまで映っていたであろうアイスの触感や味覚はアニメのフラットさに変換されることにより消失します。
面白いのが、それが「生命を与える」という意味のanimateからくるアニメーションによって、生命感を奪っているのが印象的です。(さらに遡るとanimateの語源であるラテン語のanimaには生命や魂という意味があります)

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次の部屋ではドイツ時代の初期作品が並びます。
個人的にはフォトデジタルペインティングを用いた平面作品群は初めて観ました。
平面作品はシュールレアリズムが色濃く出ていて興味深かったです。

「Call」(2009) /「I touch Dream #1」(1999) /「Coffee」(2009)
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「Clearman」(2009) /「TRAUM」 (2004-7) / 「Hair」(2009)
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「Silent」(2010) / 「Reading」(2010) / 「Flower」(2010)
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続く「アバター11」(2009) は、11のモニターにそれぞれ人の顔が振り向くというだけのアニメーションがループで流れるんだけれど、これが非常に怖い。
首は昔から魂の在り処と考えられていて、武将が首をとるのは魂を奪うという意味もあったそうなのだけど、その魂の在り処である首だけが動いている映像群は魂があるのかないのか、実在と不在をこれまた行き来しているようで不気味でした。

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続く「バインド・ドライブ」(2010-2011) の車と体育館、「9 holes」(2012-13) のエレベーターが、代表作でもある「Calling」(2009-10/2014)にも出てくることが見られたのは面白かった。
佐藤さんの場合、活動期間が20年弱しかないので、こうして通して見た時に作品の発展が非常にわかりやすく見られて印象的でした。
そして改めて「Calling」はすごい作品だなぁと。
電話というのは、電話を取る人とかける人がいるわけだけれど、どちらも可視化されず、電話が鳴るところだけ見せられると、その不在に観客は想像力を掻き立てられる生理みたいなものを非常に巧みに作品化されてる。
それは後に続く「ダテマキ」(2013) もそうで、機械でダテマキが作られる7つの工程をアニメーション化されてるわけだけれど、周到に最後の人間の手がそれを巻く8つ目の工程は省かれていて、人間不在のまま機械だけがただただ動く様を、しかもアニメーションで見せられる。
充実ではなく不足がいかに想像力の着火点になりうるのかを思い知らされる作品たちです。
その究極が「東京尾行」の姉妹作品とも言える「福島尾行」(2018) で、人間は作業員以外ほとんど出てきません。
さらにそこに音の鳴らないピアノが奏でる「月の光」が加わることで、「非在」まで極まる。
この展覧会は冒頭の「東京尾行」の「月の光」から「バインド・ドライブ」の演歌「絆」など、所々で音が鳴り響いていて、会場中でその音が混ざるんですが、最後の最後にその音まで消えてしまうなんて。
最後は遺作となった初の絵画作品「死神先生」(2018) で展覧会が終わる。
最後の最後には、数字が剥がされ最早時を刻まない時計「now」(2018) が掲げられてエピローグ。
この流れは出来過ぎなぐらい美しかった。
ぜひ彼の故郷大分で観られる人は観て欲しいです。6月27日までなんと無休!こちら
大分まで行けない人は11月30日からの水戸芸術館で。こちら

「バインド・ドライブ」(2010-2011)
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「Calling」(ドイツ編 2009-10 / 日本編 2014)
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「ダテマキ」(2013)
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「福島尾行」(2018)
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「死神先生」(2018)
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「now」(2018)
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