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「ストーリーはいつも不完全……色を想像する ライアン・ガンダーが選ぶ収蔵品展」@ 東京オペラシティアートギャラリー

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昨年から続くコロナ禍で、美術館は改めてそのあり方を問われることになりました。
これまでのように人も物も自由に行き来するのが困難な中、海外から作品や作家を呼ぶことも、ブロックバスター展のように観客を展示室に詰め込むことも中々難しくなったのがこの1年でした。
そんな中、コレクションがいかに大切かを改めて気づかされた1年でもあったように思います。
これまでのように企画展ばかりに集中して、おまけのように常設展があるのではなく、むしろ常設展の方が面白いぐらいの勢いが欲しい。
今回紹介する3つの美術館の展示はまさにそのことを教えてくれてます。

まずは東京オペラシティアートギャラリー。
今回まさにコロナの影響でライアン・ガンダーの展示が延期になりましたが、それを逆手にとって、ガンダーキュレーションによるコレクション展を開催するという転換。
ガンダーは国立国際でもコレクションをキュレーションしてたのでならではですね。
ここは企画展のおまけぐらいで常設展が上の階で静かにやってるイメージですが、今回は全展示室コレクションっていう中々ない機会ではないでしょうか。

まずは4階へ。
このフロアでは「色を想像する」と題されて、なんと白黒の作品のみを集めた展示室。
しかも何段がけにもなってて、対する壁にキャプションが貼られてるという。
そして途中で気づいたのだけど、シンメトリーに展示されてる!
こんな遊びまくりな展示、在館のキュレーターには流石にできないですよね笑
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そして「ストーリーはいつも不完全……」と題された3階。こっちはさらに攻めてて、なんと照明がなく、暗闇の中を観客自身がライトを当てながら観るという展示方法。これも無茶だ笑
小山穂太郎の洞窟の写真からスタートしてるのもいいですね。
文字通り作品に「光を当てる」ことでディテールも観えます。
「探検」「注視」「視点」「パノラマ」「ヴィジョン」とテーマに分けられてます。
が、流石に3階は作品数が多すぎて後半から飽きちゃいました。。。
4階の2室ぐらいがちょうどいいですね。
そもそもあんまり好みのコレクションではないので。。。
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アーティストならではのキュレーションでした。他のアーティストでも観てみたい。
こうやってコレクションを外部の人にどんどんイジらせたら面白いと思います。
以前広島現美で開催された「マネートーク」というコレクション展では、ゲストキュレーターに窪田研二さんを招いて、コレクションを買った時の値段順にするという恐ろしい展示があって、それがめちゃくちゃ面白すぎて10年以上経った今でも記憶に残っています。こちら
キュレーション次第でいくらでも面白いものになることを見せつけられた展覧会でした。
今回そんなことを思い出させてくれた展示でした。6月20日まで。こちら


続いてアーティゾン美術館。
今回「STEPS AHEAD」と題して、新収蔵作品を中心としたコレクション展が開催中です。
開館記念展とは少し違う近現代美術寄りの展示。
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最初に感動したのが作家の肖像写真を集めた展示室。
特に安斎重男の写真は素晴らしくて、こういった記録ともとれるものをしっかり収集し見せるのは素晴らしい。
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次に倉俣史郎と田中信太朗の展示室。
二人の友情が滲み出るようなエモい展示。
コレクションでこういう血の通った温かい展示を作れるのが素晴らしい。
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後、コレクションに現在の世界の動向がしっかり反映されてるのもすごい。
今回のコレクション展を見ながら明らかにジェンダー平等が意識されてるのがわかります。
決して声高には謳ってませんが、最初の方の印象派の展示でもほとんど紹介されることのない女性作家の作品も展示されてるし、特に抽象表現主義の展示室はすごかった。
ジョアン・ミッチェル、リー・クラズナー、エレイン・デ・クーニング、サラ・フランケンサーラーが並んでるのにはたまげました。。。こんな展示世界的に見ても中々類を見ないんじゃないでしょうか。
特にリー(ポロックのパートナー)とエレイン(デ・クーニングの奥様)が並んでるのはすごい。
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そしてその後の瀧口修造と実験工房の展示もアツい!!
最近瀧口修造の本を読んだのもあって、すごくエモかった。
そのままデュシャンの展示に流れていくのもうますぎ。。。
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コーネルのコラージュも素敵すぎる。。。
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具体もこれでもかってくらいあって。。。
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最後はマティスで締め。。。
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アーティゾン半端ねえって!!!
胸がいっぱいになって見終わってヘトヘトになりました。。。
これはぜひ観に行くべき。9月5日まで。こちら


そして最後に、毎度のことですが東京国立近代美術館です。
企画展の「あやしい絵」展は前回の「眠り」展同様面白くなかった。。。ほぼ素通り。。。
むしろこの美術館はコレクション展。
とはいえ4階と3階はほとんど変わってなかった。。。
4階と3階の間にある「建物を思う部屋」に描かれたソル・ルウィットの壁画やっと見られた。
前回はまだ作業中だったので、今回は堪能しました。
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2階では毎度小企画展が面白いですが、今回の「幻視するレンズ」も良かった。
アジェに中山岩太に川田喜久治に小さい部屋でも見ごたえ抜群の作品群でしたが、特に新収蔵の深瀬昌久の「鴉」シリーズが半端なく格好良かった。。。見惚れすぎて写真撮るの忘れてた。。。
新収蔵といえば畠山直哉の「tsunami trees」があったのも良かった。。。
やはりここのコレクションは間違いありません。
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