PUBLIC DEVICE -彫刻の象徴性と恒久性- @ 東京藝術大学大学美術館 陳列館
最近観た展覧会をざざっと。
多分今年最後の展覧投稿。
PUBLIC DEVICE -彫刻の象徴性と恒久性- @ 東京藝術大学大学美術館 陳列館









藝大の陳列館の最近の展示がことごとく面白くて困る。
前回の「日比野克彦を保存する」やその前の「彼女たちは歌う」など。
今回は「公共彫刻」を問う展示で物凄く興味深かった。タイトルもいい。
入り口からロダンの彫刻があったんだけど、これ前からあったっけ?まさに今回のテーマにぴったり。
そして出ている作家陣がものすごく豪華!
その中でも問題とされている戦後の公共彫刻を担ってきた菊池一雄、北村西望、本郷新の3名と、現代の作家を対比させているのはとても刺激的だった。
会田誠の「モニュメントには何らかの罪深さがある」「美術家としてモニュメントを作りたくなる誘惑への自省、自戒」を込めて近年取り組んでいる「MONUMENT FOR NOTHING」の展示は特に今回の展示の大きなテーマになっているように思う。
公共彫刻(モニュメント)を見る度に浮かぶ胡散臭さはどこから来るのか。
改めてそのことを考えられた素晴らしい展覧会だった。
特にサイドコアの灯台に目をつけたり、お台場の自由の女神に黒い布を掛けたりするプロジェクトはとても示唆に富んでいて、改めてこのユニットの存在感を示していた。
今回陳列館だけでなく、絵画棟の大石膏室も使われていて、とっても嫌いなんだけど、椿昇のアキラのようなバルーン彫刻は悔しいが良かった。
周りのクラシックな石膏像をのみ込まんばかりの姿は神々しさすらあった。
最後に公共彫刻と聞くと思い出すのが、2011年に大阪の御堂筋の彫刻に何者かが赤い服を着せた事件。
http://www.asahi.com/fashion/column/at/TKY201108100203.html
それまで全然気に留めていなかったけれど、この事件を機にこの彫刻たちに目がいくようになった。
戦後の公共彫刻には裸の女性像が多く、それらが街中に蔓延っているのはよく考えると不気味。
これだけ公序良俗とかいいながら、彫刻たちは裸でいいのか。
この事件は、そのことをとてもウィットに富んだ方法で示してくれた気がする。
犯人は今もわからないままだけれど、素敵な作品だった。
今回の展覧会は12/25まで。来年4月出版予定のカタログはこちら。
男性彫刻 @ 東京国立近代美術館






奇しくも藝大と同じ問題系の展示をしているのが東近美。
メイン企画は「眠り展」なんだけど、こちらは正直そんなに面白くない。。。
同じ眠りを扱った展覧会で、2004年に豊田市美術館で開催された「IN BED」が物凄く面白かっただけに、それと比べてしまって。
ゴヤの版画「ロス・カプリチョス」を基底にしていたり、一章丸々河原温っていう面白い点もいくつかあるんだけれど。
そして近美あるあるなのが、それよかコレクション展の方が面白いっていうパターン。
この「男性彫刻」展は2階の小展示室でやってるんだけど、ここの展示も毎回面白い。
ここにも藝大同様ちょうど常設のゴームリーの「男性彫刻」があったりしてリンクがすごい。
そして、人体彫刻は圧倒的に女性の印象が強い中、あえて男性彫刻をテーマにしてるのがさすが。
これらの彫刻を通して「男らしさ」のバイアスを読んでいく。
大きく3つのテーマに分かれていて、それぞれ「強い男」「賢い男」「弱い男」
「強い男」では藝大でも問題になっている北村西望の「怒涛」がまさにそれ。
大波を前に余裕ぶっこいて口笛吹いてるたくましい男性像はもはやギャグw
そして男性像、特に裸体像で問題になるのが局部。
木下直之の「股間若衆」に詳しいけれど、展示に際して切断されたり悲しい憂き目にあった作品が戦前は多く、そこに注目するのも男性彫刻の醍醐味かも。
「賢い男」では藝大の始祖岡倉天心を彫刻した平櫛田中の「鶴氅」も笑えるぐらいの威厳。
最後の「弱い男」では関谷充の「伝五郎老人」が素晴らしかった。
パンフレットもめっちゃ凝ってた。
「男性彫刻展」を出て、他のコレクションも素晴らしかった。
今回は特にコロナパンデミックをテーマにしていて、どのテーマも興味深い。
まさかの先月のアートの溜まり場で取り上げたFAPの展示に出くわすとは思わなかった。
ソル・ルウィットのドローイングが鋭意制作中だったけれど、完成したらまた見たい。
今の近美の展示はどれも2月23日まで。
大山エンリコイサム展 夜光雲 @ 神奈川県民ホールギャラリー








相当期待していた展覧会だったけれど少々肩透かしだった。。。
個人的にもっと暴れて欲しかったし、作品数も小品をもっと入れてマキシマムな展示を勝手に期待していた。
や、もちろんどの展示もかっこよかったのだけれど、ちょっとそつなくこなしすぎ感が。。。
作品数も多くはなく、かなり洗練された展示。
とはいえ、普通のペインティングとは違うスプレイ缶から噴出される独特のマチエルが面白く観られた。
来年1月23日まで。
内藤礼 @ タカ・イシイギャラリー



リー・キット(Screenshot) @ ShugoArts




六本木で内藤礼とリー・キットが同時観られる幸福。。。
ギャラリーだからと少し舐めてたけどどちらも最高によかった。
内藤礼の展示は、金沢の延長とはいえ「color begining」の椅子に座って自然光で対峙する体験は素晴らしい。
というか、この作品何度も観ているけれど、この展示が最高解な気がする。
座ることでゆっくり見られてまさに色彩が始まる瞬間をまじまじと見目撃することができた。
まあ、人が多く来る美術館では中々難しいだろうけど。。。
にしても、糸が80万円だったり電球が35万円だったりプライスリスト凄すぎた。。。
リー・キットはリモートでの展示と聞いていたので、ただ壁にイメージがかかってる程度の展示かと思ったらがっつりインスタレーションしていて衝撃だった。
ものすごい密度で最高のリー・キット体験。
特に奥の部屋の、実際の展示を写真に撮って壁紙にしてさらにそこにプロジェクションしてるのとか素晴らしすぎる。。。
それにしても絵の中にあった「Takamatsu」という文字は一体。。。次郎か??
ちなみにお隣のピラミテビルのWAKOのティルマンスも観たかったけれど、最終日まで予約でいっぱいで観られず。。。ギャラリーの予約制は入れる人数が少なすぎるだけに酷すぎる。。。
内藤礼は12/26まで。リー・キットは来年は1/30まで。
他に観た展示>>
塩田千春 消えた展覧会 - この気持ちをどこに - @ KENJI TAKI GALLERY
ダグ・エイケン「New Ocean: thaw」@ エスパス・ルイ・ヴィトン東京
「素材―その形と心 」@ gallery de kasuga
名和晃平「Oracle」@ GYRE GALLERY
池袋モンパルナス2.0@ TURNER GALLERY
舟越 桂 私の中にある泉 @ 松濤美術館
エリック·スワーズ「kuchisabishii」@ KEN NAKAHASHI
伊東宣明「されど、死ぬのはいつも他人ばかり」@ THE 5TH FLOOR
Sustainable Sculpture @ KOMAGOME SOKO
カール・アンドレ @ TARO NASU
Matthew Barney, Carolee Schneemann, Kazuo Shiraga, and Min Tanaka @ Fergus McCaffrey
多分今年最後の展覧投稿。
PUBLIC DEVICE -彫刻の象徴性と恒久性- @ 東京藝術大学大学美術館 陳列館









藝大の陳列館の最近の展示がことごとく面白くて困る。
前回の「日比野克彦を保存する」やその前の「彼女たちは歌う」など。
今回は「公共彫刻」を問う展示で物凄く興味深かった。タイトルもいい。
入り口からロダンの彫刻があったんだけど、これ前からあったっけ?まさに今回のテーマにぴったり。
そして出ている作家陣がものすごく豪華!
その中でも問題とされている戦後の公共彫刻を担ってきた菊池一雄、北村西望、本郷新の3名と、現代の作家を対比させているのはとても刺激的だった。
会田誠の「モニュメントには何らかの罪深さがある」「美術家としてモニュメントを作りたくなる誘惑への自省、自戒」を込めて近年取り組んでいる「MONUMENT FOR NOTHING」の展示は特に今回の展示の大きなテーマになっているように思う。
公共彫刻(モニュメント)を見る度に浮かぶ胡散臭さはどこから来るのか。
改めてそのことを考えられた素晴らしい展覧会だった。
特にサイドコアの灯台に目をつけたり、お台場の自由の女神に黒い布を掛けたりするプロジェクトはとても示唆に富んでいて、改めてこのユニットの存在感を示していた。
今回陳列館だけでなく、絵画棟の大石膏室も使われていて、とっても嫌いなんだけど、椿昇のアキラのようなバルーン彫刻は悔しいが良かった。
周りのクラシックな石膏像をのみ込まんばかりの姿は神々しさすらあった。
最後に公共彫刻と聞くと思い出すのが、2011年に大阪の御堂筋の彫刻に何者かが赤い服を着せた事件。
http://www.asahi.com/fashion/column/at/TKY201108100203.html
それまで全然気に留めていなかったけれど、この事件を機にこの彫刻たちに目がいくようになった。
戦後の公共彫刻には裸の女性像が多く、それらが街中に蔓延っているのはよく考えると不気味。
これだけ公序良俗とかいいながら、彫刻たちは裸でいいのか。
この事件は、そのことをとてもウィットに富んだ方法で示してくれた気がする。
犯人は今もわからないままだけれど、素敵な作品だった。
今回の展覧会は12/25まで。来年4月出版予定のカタログはこちら。
男性彫刻 @ 東京国立近代美術館






奇しくも藝大と同じ問題系の展示をしているのが東近美。
メイン企画は「眠り展」なんだけど、こちらは正直そんなに面白くない。。。
同じ眠りを扱った展覧会で、2004年に豊田市美術館で開催された「IN BED」が物凄く面白かっただけに、それと比べてしまって。
ゴヤの版画「ロス・カプリチョス」を基底にしていたり、一章丸々河原温っていう面白い点もいくつかあるんだけれど。
そして近美あるあるなのが、それよかコレクション展の方が面白いっていうパターン。
この「男性彫刻」展は2階の小展示室でやってるんだけど、ここの展示も毎回面白い。
ここにも藝大同様ちょうど常設のゴームリーの「男性彫刻」があったりしてリンクがすごい。
そして、人体彫刻は圧倒的に女性の印象が強い中、あえて男性彫刻をテーマにしてるのがさすが。
これらの彫刻を通して「男らしさ」のバイアスを読んでいく。
大きく3つのテーマに分かれていて、それぞれ「強い男」「賢い男」「弱い男」
「強い男」では藝大でも問題になっている北村西望の「怒涛」がまさにそれ。
大波を前に余裕ぶっこいて口笛吹いてるたくましい男性像はもはやギャグw
そして男性像、特に裸体像で問題になるのが局部。
木下直之の「股間若衆」に詳しいけれど、展示に際して切断されたり悲しい憂き目にあった作品が戦前は多く、そこに注目するのも男性彫刻の醍醐味かも。
「賢い男」では藝大の始祖岡倉天心を彫刻した平櫛田中の「鶴氅」も笑えるぐらいの威厳。
最後の「弱い男」では関谷充の「伝五郎老人」が素晴らしかった。
パンフレットもめっちゃ凝ってた。
「男性彫刻展」を出て、他のコレクションも素晴らしかった。
今回は特にコロナパンデミックをテーマにしていて、どのテーマも興味深い。
まさかの先月のアートの溜まり場で取り上げたFAPの展示に出くわすとは思わなかった。
ソル・ルウィットのドローイングが鋭意制作中だったけれど、完成したらまた見たい。
今の近美の展示はどれも2月23日まで。
大山エンリコイサム展 夜光雲 @ 神奈川県民ホールギャラリー








相当期待していた展覧会だったけれど少々肩透かしだった。。。
個人的にもっと暴れて欲しかったし、作品数も小品をもっと入れてマキシマムな展示を勝手に期待していた。
や、もちろんどの展示もかっこよかったのだけれど、ちょっとそつなくこなしすぎ感が。。。
作品数も多くはなく、かなり洗練された展示。
とはいえ、普通のペインティングとは違うスプレイ缶から噴出される独特のマチエルが面白く観られた。
来年1月23日まで。
内藤礼 @ タカ・イシイギャラリー



リー・キット(Screenshot) @ ShugoArts




六本木で内藤礼とリー・キットが同時観られる幸福。。。
ギャラリーだからと少し舐めてたけどどちらも最高によかった。
内藤礼の展示は、金沢の延長とはいえ「color begining」の椅子に座って自然光で対峙する体験は素晴らしい。
というか、この作品何度も観ているけれど、この展示が最高解な気がする。
座ることでゆっくり見られてまさに色彩が始まる瞬間をまじまじと見目撃することができた。
まあ、人が多く来る美術館では中々難しいだろうけど。。。
にしても、糸が80万円だったり電球が35万円だったりプライスリスト凄すぎた。。。
リー・キットはリモートでの展示と聞いていたので、ただ壁にイメージがかかってる程度の展示かと思ったらがっつりインスタレーションしていて衝撃だった。
ものすごい密度で最高のリー・キット体験。
特に奥の部屋の、実際の展示を写真に撮って壁紙にしてさらにそこにプロジェクションしてるのとか素晴らしすぎる。。。
それにしても絵の中にあった「Takamatsu」という文字は一体。。。次郎か??
ちなみにお隣のピラミテビルのWAKOのティルマンスも観たかったけれど、最終日まで予約でいっぱいで観られず。。。ギャラリーの予約制は入れる人数が少なすぎるだけに酷すぎる。。。
内藤礼は12/26まで。リー・キットは来年は1/30まで。
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