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ミヒャエル・ボレマンス マーク・マンダース ダブル・サイレンス @ 金沢21世紀美術館

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内藤礼展以来、今年2度目の金沢へ。
目的はミヒャエル・ボレマンスとマーク・マンダースの二人展。
マンダースは来年3月から都現美で個展やるんだけど、この組み合わせは巡回なしの金沢オリジナル。
マンダースは2013年のヴェネツィア・ビエンナーレオランダ館で初めて観て、それ以来気になってる作家の一人。
思い返せばこの時隣のベルギー館はベルリン・ド・ブリュッケレだったし、香港館のリー・キットにアメリカ館のサラ・ジー、そして日本館の田中功起と僕の好きな作家が集結した最高の展示群だった。
その後もマンダースの作品は2016年のあいトリや都現美のコレクションにもあるので気にして観てきたんだけど、ボレマンスは多分何度か観てるとは思うんだけど、そこまで注目して観たことはありませんでした。
予習がてらに、小柳でやってるボレマンス・マンダース・杉本博司という凄まじい組み合わせの展示を観てきたんだけど、ボレマンスの絵画がやばすぎました。。。
マンダースの小作もそれはそれは素敵だったんだけど、ボレマンスの絵画に打たれました。
これは期待が高まるってことで、金沢入り。
相当期待はしてましたが、その期待をはるかに凌駕する内容でした。。。
完全に打ちのめされた。。。
はるばる金沢まで来た甲斐がありました。。。

まずタイトルが素晴らしいですね。
「ダブル・サイレンス」。
絵画と彫刻の違いはあれど、通底するのは海の底のように深淵な沈黙。
この二人の作品と対峙した時に、耳をつんざくほどの沈黙を感じます。
何も物語らない、されど多弁。
この矛盾した感覚が、観客を容赦ない程に襲います。
それは二人の作品のモチーフが一見具象的な形、しかも殆どが人の形をしていることにも由来しているのかもしれません。
人は具象を見ると、そこに物語やコードを読みたがります。特にそれが人物となるとさらに。
なのに、二人の作品は何も語ってくれない。
作品と観客の相互のやりとりの不一致が、作品の強度でもあって、忘れ難い鑑賞体験を生むのです。
マンダースの彫刻は、人の顔の形をしていながら、そこに板が挟まれたり、形成される直前で終わっていたり、はたまた家具を思わせる姿をしていたり、一瞬身近なモチーフが、全く違う「何か」に変わってしまう。
特に展示室10にあった「女性の頭部の習作」は素晴らしかった。
頭部になる以前の純粋な形のまま完成されていてそれはそれは美しい。。。
ボレマンスの絵画も、人の姿をしているのに、「何か」が違う。
どの絵画もどこかおかしなシチュエーションなんだけれど、それが何か?という感じでツンとしている。
まるで物語の途中だけ切り取ったような。その過程も結果も全く提示してくれません。
そして皮膚だったり布だったりグロッシーな感じが彼のフェティッシュ全開で最高。
この「何か」というのがキーで、言い表せない不気味さが展覧会を通して通奏低音のように響いています。
夢判断で有名なジークムント・フロイトに「不気味なもの」というテキストがあるんですが、それをドイツ語で「Umheimlich」と呼んでいて、「heimlich=慣れ親しんだ」の対義語として定義しています。
Umheimlichとは、heimlichだったものが、少しだけズレることで全く知らないものになることを表しています。
まさに、マンダースとボレマンスの作品はこのUmheimlich。
さらに、彼らの作品は、伝統的な粘土やブロンズを使った彫刻(マンダース)であり、水彩や油彩の絵画(ボレマンス)という、いわば使い古された伝統のheimlichな手法を使いながら、全く観たこともないものを生み出している点で共通していて、それは加藤泉の作品にも通づるな、と思いました。
特に彼らの出自であるオランダ(マンダース)やベルギー(ボレマンス)というのは、バロックやフランドルなど、北方美術の脈があって、それを彼らは不思議な形で引き継いでいます。
この地域の現代作家には、フランシス・アリス、ベルリン・ド・ブリュッケレ、そしてちょうど冒頭の写真にも写っているヤン・ファーブルなどがいますが、彼らの作品はどこかUmheimlichを感じさせます。
伝統を引き継ぎながらも、そのズラしが絶妙なんですよね。
昨年末から今年初頭にかけて、まさにこの地域の作家を集めた展覧会が上海のTANKで開催されてましたが、これは観たかったなぁ。。。こちら
とにかく、このUmheimlichな2人に僕はとことんやられてしまいました。
さらにさらに素晴らしいのが、特に2人で一つの作品を作るようなコラボレーションもやってないのに、全く無理なく2人の作品が並存してるんですよね。これは驚異的。
2人が似ている作品を作っているのではないことは、ギャラリー9と10で別々の部屋で展示されてる様子を見れば明らか。(ボレマンスが暗い部屋でマンダースが明るい部屋の対比も素晴らしい)
なのに、全く喧嘩することなく共に在る。すごい。
この鑑賞体験は驚異的でした。2月28日までやってるので是非!こちら
行かれる際は事前予約を。当日券もありますが、あの行列は完全に復活してるので。。。

惜しむらくは、8月の時と違って、人が多すぎて、サイレンスが壊れるぐらいうるさい。。。
めちゃくちゃ静かな環境で観たかったけど、仕方ないですね。。。
プールが前回と違って下も解放されてて、1時間待ちとか。。。
同時に「スケールス」というコレクション展も開催中でしたがこちらは微妙でした。
あー、来年のマンダースの個展がますます楽しみだし、ボレマンスの個展も観たすぎる!!!
そして早くカタログ出版してください。。。
このインタビューも最高。それぞれすごい場所にアトリエありますね。。。
マンダースの作品とかどうやって運ばれてるんだろうと思ったけど少しだけ見られます。




さて、金沢。
8月に来たばかりなのに、秋には新しい動きが。
その一つが10/25に東京から移転開館した国立工芸館。
東京の時と同様、建物が素晴らしい。。。
そして同じく展示室が小さすぎて見応えに欠ける。。。残念。
こちらも予約制ですが当日券もあって結構余裕ありました。

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あまりにあっさり見終わったので、お隣の石川県美で前回に続きカフェタイム。
此処は有名なパティシエがやってるル・ミュゼ・ドゥ・アッシュが入ってるのです。おすすめ。
展示も観ずにケーキタイム。毎回選ぶの苦労する。。。

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そして、これまた8月に訪れたKAMUがさらに2会場増えてパワーアップ。
本館は前回観てるしまた観たいとも思えないのでパス。
とはいえチケットはここでしか買えない。。。
まずは竪町商店街にあるKAMU BlackBlackへ。
ここで展示されてる黒川良一の作品がすごかった。。。
幅3メートル、高さ7メートル、奥行き20メートルという細長い形の展示空間で、今後は企画展示として利用されるらしいけど、この作品ずっと展示しててほしい。。。
さらに、香林坊東急スクエアの屋上のKAMU skyも行ったけど、ショボすぎたので割愛。。。





ちなみに今回GoToで香林坊のビジホが2600円で取れた上に、地域クーポン1000円分ついてるから実質1600円という破格。。。最高がすぎる。
地域クーポンでサクッと回転寿司食って、前から行きたかったバーへ。
東京の飲み屋で知り合った某有名デザイナーの息子さんに教えられたエスト高橋。
マスターが元々京都で日本画をやってらした方で、なぜか金沢でバーを開業。あれ聞いたことあるなw
ここは開店から42年と大先輩。いろいろお話聞けて最高でした。
お客さんにも作家が多いらしく、知り合いが出してた展覧会といってカタログ渡されたんだけど、それがまさかの僕も出してた宇部ビエンナーレでした!世界は狭いなぁ。。。
金沢行ったらまた来よう。

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佐賀町エキジビット・スペース 1983–2000 -現代美術の定点観測- @ 群馬県立近代美術館
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行きの北陸新幹線を高崎で途中下車して群馬近美へ。
ついでに寄るレベルではなかったぐらい遠かった。。。
田中功起展の時来たけどどうやって来たか覚えてない。。。
でもまあとにかく行って来ました。
今群馬近美では「佐賀町エギジビット・スペース」を回顧する展覧会が開催中です。
そもそも、美術館が他のアートスペースの回顧展をやるというのがあまり前例がなく、その時点で気になってました。
しかもあの伝説の佐賀町エギジビット・スペース。
僕が現代美術に目覚めた頃には終わっていて、一度も行けたことがないんだけれど、そこここで聞く「佐賀町エギジビット・スペース」という場所。
ここはなんと言っても内藤礼を一躍有名にした場所として僕の中にはあるのだけれど、展覧会チラシ見たら彼女の名前がなかったので行かなくていいやと思いつつやはり気になって来ちゃいました。
最初の展示室では佐賀町エギジビット・スペースの模型とこれまでやって来た展覧会の写真。
このスペースは東京都江東区佐賀町にあった食糧ビル(1927年竣工)の3階講堂を修復したもの。
開設した1983年(僕の生まれた年)というのは、バブル期目前で、ハコモノ行政真っ只中。
スクラップアンドビルトを繰り返していた東京で、リノベーションというのは画期的でした。
さらに美術館でもギャラリーでもない「オルタナティブ・スペース」というのも新しかったのです。
仕掛けたのは、パルコなどの企画広告ディレクターであり、「無印良品」の立ち上げなどに関わった小池一子。
1983年から2000年の17年間のうちに106の展覧会を開催して、その中には森村泰昌や大竹伸朗、そしてまだまだ知る人ぞ知る人だった杉本博司などを早いうちから紹介。内藤礼もそのうちの1人。
見ていて驚いたのが、1998年にトレイシー・エミンの展覧会をしていること。
しかもその翌年のターナー賞展で話題になったベッドがすでにここで展示されてる!!!
まさかこの作品が日本で展示されていたなんて。。。
とまあ、色々発見はあったのですが、次の部屋の当時出品された作品の展示は正直どうでもよかった。。。
佐賀町という場所に展示されてたから意味があったのであって、別の場所で展示されてもそれはただただ作品ですからねぇ。。。
唯一岡部昌生の作品が、佐賀町エギジビット・スペースの床をプロッタージュした作品で、当時の場所の記憶を刻んでいてよかった。
最後の通路では当時のパンフレットやDMなどの資料が展示されてたけど、まあ、カタログがあればいいかな。。。
というわけでカタログも買ったんだけど、もう少し色んな人のインタビューやテキスト載せて欲しかった。。。
ギャラリー小柳の小柳さんとかも関わってたんだし。。。
色々消化不良でしたが、まあ気になってたので仕方ない。
展覧会は12月13日まで。こちら
カタログもネットで買えるし、特にオススメはしませんが。。。
そもそもなんで群馬やねん、っていうね。

帰りに高崎名物のパスタをシャンゴで。
食べるのにめっちゃエネルギーいったし、夜まで全然お腹空かなかった。。。

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