内藤礼 うつしあう創造 @ 金沢21世紀美術館

勝手にGoToキャンペーンラストは金沢!
内藤礼x金沢21世紀美術館!
これは見ないわけにはいかない!
この展示はコロナとは関係なく、当初から日時予約制を導入していました。
内藤さんなので然もありなんという感じなんですが、これが今後のニューノーマルになると思うと、当初から一人しか入れない等のスタイルを築いていた内藤礼はやっぱりすごい。
そして4月1日に予約スタートで早速5月に予約したんだけど、緊急事態宣言により開幕が延期。
そもそも4月の時点で5月に金沢行けると思ってた自分ってどんだけ能天気だったんだろう。。。
もうあの当時の感覚が思い出せない。。。
そして緊急事態宣言明けから1ヶ月ようやく開幕。
しかし何と最終日が変わってなかった!!
元々長い会期だったとはいえ延長しないとは。。。
改めてチケット予約をして無事確保。念願の金沢へ!
さて、この展覧会。もうね、最高でした。。。
正直近年の内藤さんの展覧会って思ったほど感動できなかったんですよね。。。
庭園美術館も水戸美術館も、何だかしっくりこなかった。
なので、今回もどうかなぁと思いつつだったんですが、これまで見た内藤礼展で一番だわ。。。
まず今回展覧会タイトルが素晴らしくて、まず内藤さんから「創造」という言葉が出るなんてという驚き。
これまで内藤さんの作品からは「制作」や「創造」という言葉から程遠いところにありました。
先日金沢に初めて内藤さんの作品を観に行くというお客様に「内藤さんの魅力って何ですか?」と聞かれたんです。
壮絶に難しい質問なんですが、あえて答えるなら、「自己表現から遠いところ」だと思います。
彼女の作品からは、そういう自我が全く感じられず、現象的に物事がただ在る。
それなのに、圧倒的にそれは内藤礼にしか実現できない世界なんです。矛盾が過ぎる!
このことを説明することほど骨の折れる作業はないですが、まあとりあえず豊島美術館に行けば全て解決すると思います笑
でもまあ、今回は美術館個展なので、とにかく作品との出会いを大切にして、無理に見つけようとしないでいいというアドバイスだけしました。
そしたら実際その通りで、この展覧会ほど「作品にお手を触れないでください」が難しい展示はないと思いますw
だって見えないんだもの!!
もうスタッフの方達から放たれるこの言葉がパワーワードすぎて、もはやネタw
中には絶対見えない作品もあります。
もう最初の部屋からそうで、むしろ一番作品の見える難度の高い部屋。
まずは窓越しに見るんですが、何のこっちゃ。
ここでこの展覧会がただ事ではないことを悟りました。
次の部屋からも衝立越しに観られるんですが、もう目がおかしくなりそう笑
当初、出品目録なしで、出会えるものだけにしておこうと思ったんですが、実際目録見たら想像を遥かに超える作品数で、これはさすがにマズイと思い、照らし合わせてましたが、大概徒労に終わりました。。。
落ちる水滴、垂れ下がる糸、鏡、、、全てが幽けき存在すぎてすごい。
この大空間の使い方として、これほど贅沢でこれほど有効な使い方。。。最高かよ。
次の部屋では垂れ下がる風船や、ガラス、紙、電気コンロで揺れる糸などで構成されており、次の部屋に移ると、ほぼシンメトリーにそれらが配置されてて、部屋の間に立つとめちゃくちゃ気持ちいいです。
このあたりからタイトルの「うつし」という言葉が沁みてきます。
「うつし」には「写し」「移し」「映し」等の言葉が含まれますが、何と言ってもこれは「現し」なんだろうなぁと思いました。
この把握しきれないもの全てが「現し」、つまり「現実」。
この不安定な世界を僕らは生きているんです。
この会場にある全ての要素が愛おしくて仕方ない。。。
人型の小さなオブジェ、見えないほど薄い色彩の紙、風にたゆたうリボン、水を湛えた瓶、無数のビーズ、、、。
言葉にすると平々凡々なものたちが、あの会場では全て慈しむべきものとなっていました。
ところで僕が行ったのは2時半からの回で、ほとんど自然光で見るのは水戸と同じなだけれど、途中であちこちに電球があることに気づき、目録見てたら「太陽」というタイトルが付いている。
これは、もしや、夜になったら灯るのでは。。。!!
やられた。。。これはもう夜も来なきゃならないパターンやないか。
しかもこれ鬼なのが再入場不可なんです。
夜間開館は金土のみで、この日は土曜日。
さすがに展示室に夕暮れまでいるには長すぎて(夏だし)、一回出て当日の最後の回を購入。。。
そもそも展覧会自体2000円と高いのに2倍の4000円。。。でもやむなし。恐るべし。
そして夜になって再訪。
ここではまったく別の「現し」となって目の前に現れました。
これは夜も来て大正解。
今から行く人、必ず金土の夜間開館時も行ってください。
全てがさらに見えなくなり、そうなればなるほど空間の質が濃くなる不思議。
こんな見えないものに4000円も払うなんて馬鹿げてるんだけど、どう考えても最高なんです。
脳科学者の茂木健一郎との対談で内藤さんが語る言葉が腑に落ちます。
「人には認知できない、もっと大きなものや違うものがそこにある。そういうもののなかにいるんだということに、私にはなぜか幸福感があるんです。」
人には限界があって、それでいい。
それは暴力的なほどに全肯定の世界。
このコロナ禍で無力感を抱いてる人も多いかもしれませんが、改めて人間が無力であることを教えてくれたのが今回のことで、これを厄災ととるかチャンスととるかは人次第です。
僕はどちらかというと楽観的な人間なので、今回のことは「人間性回復のチャンス」と捉えてますが、この展覧会に身を置いていると改めてそう思えます。
限界を知ることは決してネガティブなことではなく、そこから道が開けることもあります。
この展覧会、今まさに見てもらいたい展覧会です。8月23日まで。こちら。
ところで今回のカタログ、なんと5800(税別)もするんですよ。。。
欲しいけどちょっと高いなぁと思ってたら15000(税別)の特装版は売り切れとか!
美術館にサンプル置いてたけど、中身が白紙で、実はあれ全て「color beginning」シリーズとかだったら買ってたけど。。。
あの展示風景を畠山さんがどう撮るのかも気になるけど、出たらどこかで立ち読みしよ。
同時開催で、スポーツをテーマにした展覧会「de-sport」が開催中です。こちら。
これ、確実にオリンピックに合わせてたんだろうけど、残念ながら延期。
展示内容は明らかにアンチオリンピックで攻めすぎ笑
どこぞのスター展とは大違いですな。。。
初っ端から柳井信乃のナチスをテーマにした聖歌をめぐる映像。
他にも社会主義の銅像を持ち上げるクリスチャン・ヤンコフスキーの映像や、アローラ&カルサディーラの戦車を逆さにしてランニングマシーンにしてる作品など、明らかにスポーツの裏側に隠されている政治性を皮肉ってる作品とか、攻めてるわぁ。。。
白眉は西京人のゆるすぎるオリンピック!
フェンシングよろしくでかい筆持って相手をくすぐり合う競技とか面白すぎ笑
この展覧会は内藤礼展より少し長い9/27までやってます。
ところで、金沢も本当に人がいなかった。
ここまで人のいない21美は初めて。。。
タレルの部屋も独占だし、エルリッヒのプールなんて下に入れないからただのプールだし笑


そのエルリッヒの新作が見られる施設がつい最近できました。
21美からすぐの場所にできた「KAMU」です。
なんと建てたのは若干32歳のコレクター。
しかもこの10年内にあと10個は施設を建てるという野心。。。すごい。。。
9月にはもう一館できると聞いてますが、やー、どうなってるのか。。。
アートが集う“磁場”をつくる。/私設美術館「KAMU kanazawa」館長・林田堅太郎さん
試みとしても面白いんだけど、実際行ってみて正直中身がなぁ、という感じでした。
エルリッヒの作品は相変わらずトリックアートだし。
今後どういう展開になっていくのか、期待してます。
一応やっておきましたw

内藤礼展に行くならず是非行って欲しいのが石川県立美術館で開催中の「鴨居玲展」です!
鴨居玲の作品をここまで網羅して見られる機会って中々ありません。
実際今年は鴨居玲没後35年らしく、5年おきにやってる回顧展だそう。
初期から絶筆まで、本当に壮絶な絵画人生でした。
なんでここまで暗いんだろう笑
日本のベーコンと言っていいぐらいのダークな絵画群。
ベーコンが荒々しいタッチで人間の負を描いてるとしたら、鴨居は静謐なタッチで暗部を描く画家。
どこまでも自分の絵に満足できなかったんだろうなぁ、と思うのが、初期に特徴的だった手の描写を封印して、戦争で腕を失った人を描いたり、手をポケットに入れてたり、あえて自分の得意技を封じているのが面白かった。
それほど彼の描く手は素晴らしかったし、もっと追求できたろうにと僕なんかは思います。
改めて映画になりそうなほどの絵の内容と人生。これは必見。8月31日まで。こちら。
常設の方も、思いがけず久隅守景の屏風とかあってテンション上がった!
特に花鳥画。。。めっちゃ欲しい。。。ぼーっと目の前の椅子に座って眺めてました。至福。
そして、この美術館、何度も金沢来てる割に初訪問なんだけど、前からここのスイーツを食べたかった!
いつもなら並ぶそうですが、ほぼ並ばず入れた!
念願のル ミュゼ ドゥ アッシュ!超絶うまかった!ごちそうさん!


そして近くにはこの秋開館予定の工芸館が!
金沢ポテンシャル高すぎ。。。
秋にはまた21尾でミヒャエル・ボレマンスとマーク・マンダースの二人展があるのでまた来なければ。。。

そして今回前から気になってた山鬼文庫にも行くことができました!
中心部から少し離れるんですが、街中で自転車借りて一走り。
想像以上に最高の場所でした。。。
今二階では「美術雑誌の時代 1892-1945」展という超マニアックで超大好物な俺得な展示がやってて、案の定すごかった。。。なんでこんな場所にこんなものが。。。
こちらは9月6日まで。おすすめ!








最後に泊まってたホテルをご紹介。
先ほどのKAMUならぬKUMUというホテルで、内装は若手建築家のYUSUKE SEKIで、グラフィックにNerholの田中義久を起用したり、何かとデザインコンシャスなオサレホテル。
THE SHARE HOTELSというグループで全国にいくつかこのオサレホテルがあり、東京だと清澄白河のLYUROや、最近オープンしたアート収蔵庫と一体化になった浅草のKAIKAなんかがあります。
「KAIKA 東京 by THE SHARE HOTELS」が7月15日にグランドオープン。アートストレージとホテルの融合とは?
他にも金沢にもう一軒と北海道、京都、広島にあるみたいですね。
個人的には屋上テラスがあったのがポイント高かった。青空酒場しました。



追記:
旅の最後の最後でiPhoneを落として画面が極彩色となりご臨終しました。。。合掌。

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