中橋健一さんのこと。

オンラインストアにてギャラリストの中橋健一さんとのインタビュー動画の販売を開始します!
https://aholic.stores.jp
KEN NAKAHASHI: https://kennakahashi.net

中橋さんとの出会いは、東京に出てきたばかりの僕を当時バイトしていたブックカフェのオーナーがKEN NAKAHASHIに連れて行ってくださったのがきっかけでした。
新宿にアートが好きな人の集まるお店を出したい!と思ってはいたものの、正直今の新宿はそういう文化のある街ではなく、多少心細さもあった僕にとって、このギャラリーの存在は小さなものではありませんでした。
今の新宿に現代美術をしっかり扱ったギャラリーがあるのは本当に心強いんですよね。
しかもオーナーの中橋さんは僕と同年代。
この初訪問以来、近くということもあって、展示が変わる度に訪れました。
毎回質の高い内容を開催されていて、ここに至るまでどういう経緯があったのか一度腰を据えてお話を聞きたいと思っていました。
作家の経歴とかはよく聞きますがギャラリストのそれは中々聞く機会もないので。
今回で一応インタビューシリーズはラストなんですが、この中橋さんとのインタビューは、僕が最も聞きたかった内容になった気がします。
それは肩書きとか抜きにした人の「人生」というものです。
これまでインタビューしてきた皆さんそれぞれが、今立っている場所までの軌跡があって、本当に興味深かったのですが、中橋さんの場合は並大抵の苦労ではないというのがこのインタビューを通してお分りいただけると思います。
それは子供時代から始まる「生きづらさ」と、大人になって抱えた差別、大きな病、そして身近な人たちの死。
まず「生きづらさ」に関していうと、子供時代に抱えたマイノリティというのは本当に重い十字架です。
僕も中橋さん同様そのマイナーな部分を子供時代に自覚してしまったので、今思い返してもどうそれを乗り越えたのかわからないほど大変でした。
そしてそういう子供は概して「アダルトチルドレン」になってしまう。
僕の場合は周りが馬鹿に見えて仕方なかったし、1秒でも早く大人になりたかった。
中橋さんが高校に上がる時に従兄弟の結婚を機に陶芸家の道を諦めますが、その気持ち痛いほど分ります。
「普通」と言われる状態がいかに尊いものなのか。
スピッツの楓という歌の中の歌詞に「人と同じような幸せを信じていたのに」という歌詞があるんですが、そのことをもう子供の頃に経験しちゃってるんですよね。
なんか暗くなっちゃったけど(笑)、中橋さんの場合その後も続く差別に病に苦しめられます。
病を気にギャラリストへの道を選んだ中橋さんですが、その道を選べたことは本当に良かった。
ギャラリーをやっていく中で出会った人や作品は中橋さんにとってかけがえのないものだし、その中心に彼がいるのは本当に素晴らしいことです。
今回インタビューする中で最も悩んだのが「死」にまつわる質問です。
中橋さん自身一度死の淵に立っていて、さらにギャラリー作家を二人も亡くしている。
このことに関して僕もどう尋ねていいかわからなくて中途半端な質問になってしまいました。
それでも真摯に答えてくれました。
撮影後、その部分をカットするか二人で話し合いました。
しかし改めて聞くと僕としてはどうしても入れたくて、中橋さんも了承してくれました。
「作品は生きている」
「展覧会として蘇らせたい」
そのことは、中橋さん自身が行動で示しているし、とても説得力のある言葉でした。
ギャラリーと作家の関係って、本当に微妙で、本当に作家のことを思ってくれる志のあるギャラリーって全体の2割ぐらいしかないんじゃないかという印象です。
その2割にKEN NAKAHASHIは確実に入っていると思います。
ギャラリストと作家が手を取り合って展覧会を作っていく様は毎度感動させられます。
特に先日クラウドファンディングを立ち上げた森栄喜さんの「Letter to My Son」の書籍化プロジェクトは素晴らしいものがありました。
前の投稿でも触れてますが、こうして共に作品を作っていく様は本当にすごい。
毎回刺激的な展開で、こんなギャラリーが近所にあってとても幸せです。
是非、彼の「人生」立ち会ってみてください。
online BAR "A'live" vol.10 中橋健一 (KEN NAKAHASHI ギャラリスト)
【収録日2020.05.29】86分
新宿三丁目にあるアートライブラリーカフェバーA'holicよりお送りするonline BAR。
vol.10ではKEN NAKAHASHIギャラリストの中橋健一さんとのインタビューをお送りします。
子供時代から就職、闘病を経て現在のギャラリストに至るまでの軌跡、クラウドファンディングで出版した本の話、これからの展開等お話ししていただきました。
