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「第58回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館展示帰国展 Cosmo-Eggs| 宇宙の卵」@ アーティゾン美術館

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正直あまり期待してなかった展示でしたが、めちゃくちゃ良かった展示。
タイトル通り昨年のヴェネツィアビエンナーレ日本館の帰国報告展。
当時もあまりピンとこなかったんですが、改めて丁寧に観ていくとめちゃくちゃいい企画やないか!と。
昨今は映えるものばかりが先行してて、こういう一見映えない展示こそ大事にしていくべきだと改めて。

この展示でもっとも興味深かったのは「共異体」という言葉です。
共同体とは違って、みんなが別の方向向いていながらも共に在るという思考。
今のコレクティブという考え方はこれに近いと思います。
特にアートやってる人って個性的な人が多いので中々一致団結できないんですよね。。。
かくいう僕もみんなで同じ方向向いてるのが本当に苦手で、学生時代とか集団行動が苦痛でした。
デモとかも賛同はできたりしてもそこに加わることに違和感を覚えたり。
なんで皆で同じ言葉を繰り返さなあかんの?とか思っちゃう。
その点Twitterのデモとかは敷居が低くて入りやすい。やっぱり体があるのとないので大きな違い。

話は逸れましたが、とにかくこの「在り方」が本当に面白かった。
今回のプロジェクトにはキュレーター(服部裕之)、美術家(下道基行)、音楽家(安野太郎)、人類学者(石倉敏明)、建築家(能作文徳)、装丁家(田中義久)が加わっていて、ほとんどヒエラルキーなく水平にそれぞれが動いていて、本当に奇跡的なコレクティブの在り方を見せてくれています。
本来ならキュレーターが音頭を取って、トップダウンで決めていくのが楽なんでしょうけど、服部さんはそうはせず、まず人を決めて、それぞれ何がしたいかを丁寧にヒアリングした上で調整する能力がめちゃくちゃ長けてるんだろうなぁと思いました。
特にヴェネツィア日本館の準備って過酷で、キュレーターが選ばれてプロジェクトを決めるのに約2ヶ月、そこから一年足らずで展示まで持っていかなくてはならなくて、今回のような各々のやりたいことを丁寧に汲み取っていきながら、調査、制作、展示まで漕ぎ着けたなんて本当にすごい。

この展示の肝でありきっかけになったのは下道さんが4年ほど撮りためていた「津波石」と呼ばれる巨石。
下道さんといえば日本が植民地時代に残した鳥居の写真が有名ですが、それと対となるような作品。
残された鳥居は戦争という人災の名残ですが、津波石は津波によって運ばれた自然災害の痕跡。
しかしどちらも時を経て在り方が変わっているのが共通しています。
今回下道さんが作品にしているのは日本の南の島々で数百数千年前に運ばれてきた津波石たち。
それらは海鳥の生息地になっていたり、聖域になっていたり、様々な道を辿っています。
岩自体はほとんど変化することのないまま在り方だけが時間を経て変わっている。
そのことを下道さんは鳥居の時のような写真ではなく映像で残していました。
興味深いことにほとんどの岩に名前が付けられているんです。
そのことを背景に人類学者である石倉敏明が神話を新たに作り上げできたのが「宇宙の卵」です。
さらに安野の自動演奏するリコーダーと、吉阪隆正による日本館の特性を生かした能作文徳による空間構成が加わっていて、それぞれがしっかりと自分の作品と見つめ合いながら、結果的に一つの空間になるというのは本当に見事で泣きそうになりました。

今回アーティゾンでは、そのままは再現できないので日本館を90%のサイズで書割りを作って空間を作っていたり、その周囲にはここに至るまでのプロセスを丁寧に資料や関連作品を並べられていて、実際の日本館ではないものの、さらにエクストラな要素が付け加わっているので、実際日本館に足を運んだ人でも満足できる内容になってました。
こういう再現展って中々難しいとは思うんだけど、今回はその再現できなさを敢えて開き直ることで面白い空間になってたと思います。
さらに、アーティゾンの石橋財団は、ヴェネツィア日本館を建てる際に出資したのでも有名で、下の階のコレクション展の一部では、これまでヴェネツィア日本館で展示したことのある収蔵作品が並べられていたりして、この美術館でしかできない展示だと改めて思いました。熱い。

田中義久によるカタログも昨年日本館で販売されてたバージョンと、今回の帰国展でのカタログがあって、僕は後者を買ったけれど、どっちも欲しい。。。
両者で補い合うようなカタログの在り方ってのも面白いですよね。
僕が買った帰国展のカタログには、それぞれのエッセイや対談など凄まじい情報量。
服部さんとルアルンパのアデ・ダルマワンとの対談でのこれからの展覧会の在り方の話とかとても興味深かった。
ルアルンパはインドネシアのコレクティブで、次回のドクメンタの総合ディレクターでもあり、先日その内容が公開されたけど、訳がわかんなくてめちゃくちゃ面白いものになりそう!こちら
今月から始まる横浜トリエンナーレのラクスメディアコレクティブによるディレクションも、一つのテーマに絞るのではなく、そこから派生する「ソース」によって振り分ける在り方とか、コレクティブな思考が今後もっと展開していきそうで本当に面白いです。
あとフーコーによる「ヘテロトピア」やダナ・ハラウェイによる「Sympoiesis(共制作)」、「人新世」という言葉など、本当に刺激的な内容。
読み物としてもとても優れたものになっています。

展覧会は10/25まで。こちら。めちゃくちゃオススメ!
ちなみに上の階では鴻池朋子展がやってますが、こちらはノーコメント。
僕の中で彼女は2009年にオペラシティでやった「インタートラベラー」展がピークですね。。。


他に行った展示。
デイヴィッド・シュリグリー / 金氏徹平 @ Yumiko Chiba Associates
「展覧美術」@ eitoeiko
「フル・フロンタル 裸のサーキュレーター」@ 日本橋三越コンテンポラリーギャラリー
杉本博司「Past Presence」@ Gallery Koyanagi
青柳龍太「懐かしい骨董市」@ CUPSULE
広瀬陽「PULL」@ DOUGUYA

ちょっとどれもパッといい言葉が浮かばない。。。(杉本博司に至っては写真だけで済ませばいいのにもはや悪趣味が過ぎる演出。。。ドッグフード。。。)
素晴らしかったのは、アートじゃないけど広瀬陽の展示。
行ったら会場に古いキャビネットしかなくて、やってる?と焦りましたが、彼の七宝焼がこの中に全部収まってて、引き戸を開けながら見ていくスタイル。
これだと自ずと一度で見られる人数も限られるので、今回のコロナ禍で密にならない優れたアイディア。
一個一個引き戸もカスタマイズされてて衝撃。
僕は赤い花器を買いました。
工芸の展示って買われるとその場で作品がなくなるんだけど、今回はあくまで展示品として出してるので、商品が届くのは約1ヶ月後とのこと。楽しみ!
広瀬くんは怒涛の展示ラッシュが続くので楽しみです。

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