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第11回ヒロシマ賞受賞記念 アルフレド・ジャー展 @ 広島市現代美術館

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リニューアル後の広島現美へ。
広島現美は2020年から今年の3月まで大規模な改修工事が行われてました。
見事にコロナと被っててラッキーといえばラッキーな期間。
休館期間中も「どこかで?ゲンビ」と称して、広島市内の各所で展示をやってて面白い活動だな、と思っていました。
館内にはリニューアル以前のサインやらが展示されてて面白かった。

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とはいえ今回のヒロシマ賞受賞記念展も本当は2020年に開催予定だったのが持ち越されてようやく開幕。
本来ヒロシマ賞は3年に一度なんですが、6年越しの開催となってしまいました。
ヒロシマ賞とは、美術の分野で人類の平和に貢献した作家の業績を顕彰し、世界の恒久平和を希求する「ヒロシマの心」を現代美術を通して広く世界へとアピールすることを目的として、広島市が1989年に創設したものです。
日本にもいくつか現代美術の賞はありますが、これほど意義深いものはないと思います。
そして日本ではあまり紹介されない作家が選ばれるのもあってとても貴重。
過去にはクシュトフ・ウディチコやドリス・サルセドが受賞していて、僕も受賞記念展は結構行ってます。
第7回ヒロシマ賞受賞記念 蔡國強展@広島市現代美術館
第8回ヒロシマ賞受賞記念 オノ・ヨーコ展「希望の路」@広島市現代美術館
第9回ヒロシマ賞受賞記念 ドリス・サルセド展@広島市現代美術館
第10回のモナ・ハトゥムはその直前にテートモダンの個展見ちゃったんでパスしました。
今回も、以前フィンランドのKIASMAで回顧展観てたのでいいかとも思ったんだけどやっぱり気になって行ってしまいました。
随分久々に来たな、とは思ったけど、ブログ見たら2014年のドリス・サルセド以来だった!!
もう10年近く来てなかったのか。。。
一時期は年に何度か行ってたんだけど、いつの間にか行かなくなってた。
やっぱり以前の学芸担当課長だった神谷幸江さんがいなくなったのはでかい。
彼女がいた時は本当にマニアックな展覧会がバンバンやってて、マーティン・クリードとかサイモン・スターリングとか、尖った企画にしびれました。
特にサイモン・スターリングの展覧会は、奇しくも震災の前日に観てて、しかも内容がヘンリー・ムーアと核について扱ってて、その後に起きた原発のことと重なって一生忘れられない展覧会になってしまいました。

前置きが例のごとく長くなってしまいましたが、アルフレッド・ジャー。
彼はハッセルブラッド国際写真賞も受賞するなど、写真を主なメディアとしていますが、様々なメディアを横断しながら社会的な作品を作ることで知られています。
今回もまず入口前に登場するのは「われらの狂気を生き延びる道を教えよ」というネオン管。
日本語版と英語版がありますが、この言葉は詩人W.H.オーデンの英語の詩句の一節を翻訳した、小説家・大江健三郎による短編集の表題から。
1995年に同館で開催された、被爆50周年記念展「ヒロシマ以後」でこの作品を発表していて、2015年にこの作品からコレクション展のタイトルになっています。こちら
今回前半はヒロシマ賞の為に作られた新作がほとんどで、迷ったけど来てよかったです。
但し、正直ちょっと安易じゃない?って作品が多かったのも事実。
広島長崎福島の原爆投下、地震発生時の時刻で止まった時計とか、原爆ドームの映像から暴風が吹き付けてくるやら。。。
むしろ後半の過去作の方が、よっぽどヒロシマ賞に合った作品が多かったように思います。
特に「音楽(私の知るすべてを、私は息子が生まれた日に学んだ)」は、広島市内の病院で生まれた子供たちの産声がその子たちの出生時刻に鳴り出すサウンドインスタレーション。
コロナ禍の3年で集められた産声なだけに、命というものをより考えさせられます。
また、ケビン・カーターの半生を扱った「サウンド・オブ・サイレンス」も以前も観たことあるけど、このヒロシマ賞で観ると非常に意義深い作品。
きっと多くの人が見たことのある、ハゲワシが飢餓の少女を襲おうとしている写真でピューリッツァー賞を受賞し、その後「なんで少女を救わなかったんだ」と非難を浴びた末に自殺したケビン・カーター。
そんな彼の人生を見せながら、最後強いフラッシュが焚かれます。
このフラッシュがどうしても原爆の「ピカ」を連想してしまいました。
また、最後に展示されてた「シャドウズ」も、オランダの写真家のコーエン・ウェッシングが撮影した、ひとりの農夫の殺害事件後の一連の写真を中心に構成されていて、最後はその死を嘆き悲しむふたりの娘のシルエットが強い光に変わって、しばらくそのシルエットが網膜に焼き付きます。
これも広島の原爆で影になった人のことを思い出させます。
別に広島の為に作ったわけではないのに、広島のことを想起させる作品たち。
それはひとえにそれらの作品が普遍性を帯びている結果だと思います。
改めてこの広島でこれらの作品が観られてよかったです。
この展示は10月15日まで。こちら
3年後のヒロシマ賞も今から楽しみ。ケントリッジか坂茂あたりかなぁ。

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続いてコレクション展。
ほとんど写真撮れなかったけど、ANBで知り合った加藤立さんの作品がよかった。
同館のコレクションから横尾忠則の「Y字路」をチョイスして、その模写したキャンバスを背負ってクールベよろしく比治山を散歩してる映像と写真と実際の模写。
他は巨匠の作品が並ぶベタな展示だったので流し見。
今回後半のメインとなってるコレクション・リレーションズ[村上友重+黒田大スケ:広島を視る]という企画も意欲的。
特に黒田の「広島の平和記念公園周辺などに設置される彫刻を題材とし、その作者や制作の背景に関する調査をすすめます。こうして得られた情報をもとに、それら彫刻家達に成り代わり、ユーモラスに心情を吐露する演技を映像におさめ」た映像は流石でした。
これらは前述した休館中の「どこかで?ゲンビ」でも展開していて、その延長線上の展示。
休館中も動きを止めなかったこの美術館の底力を感じました。
それ故に先日発表されたヒスロムの展覧会の中止は本当に悲しい。。。こちら

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最後外に出たらここにも新宮さんの作品あった。。。凄すぎ。。。

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