よみがえりの(森)川

*この物語は筆者に降り掛かった災厄を描いたノンフィクションです。
*清水裕貴「よみがえりの川」とは全く関係がございません。(いや、あるかも)
***************************************
2月2日未明。
その時私はチャリで帰路についていた。
猛烈な眠気と闘いながら家まであと5分ほどになったところで凄まじい衝撃。
死んだ?
当時バカリズムの「ブラッシュアップライフ」を見ていた私は白い空間に立ってる自分を想像した。
が、直後に来る痛みで死んでないと確信した。
となると改めて何が起きたのか。
どうやら眠気に負けて眠ったままチャリに乗り、ゆるい坂道に任せてそのまま電柱に激突した模様。
痛みの元は左顔面。
どうやら流血もしている。
まずい。非常にまずい。
とりあえずチャリと共に横転していた私は、起きあがろうとするが絶妙に靴が前輪の泥除けに引っかかって立てない。
早朝なので周りには誰もおらず、独りでひっくり返った黄金虫のようにもがいていた。侘しい。
何とか抜けて、とりあえず血だらけで家に帰ることにした。
出血の元はどうやら左瞼。
友人が以前電柱にぶつかって失明した人の話をしていたのを思い出し、これは失明かもしれないと怯えた。
とりあえず右目を見開き、やや漕ぎづらくなってる自転車に乗って帰宅。
鏡を見る。
左瞼が腫れ上がり青あざになって見れたもんじゃなかった。
瞼を指で押し上げてみたら視界があった。どうやら失明はしていなくて一安心。
しかしこのままでは眠れない。
ということで人生で初めて119という番号を押した。
とりあえず左瞼と頬に冷えピタを貼って救急車の到着を待つ。
意外に早く来てくれてそのまま救急車へ。
「かかりつけの病院はありますか?」
と聞かれたので、以前急性肝炎の際にお世話になった東京医科大の診察券を渡した。
そのまま東京医科大に搬送されることとなりひとまず安心。
救急車の中では何故か警官がおり、軽い事情聴取。
「どこの電柱ですか?」と聞かれるが必死すぎてわかるわけがない。
結局ほとんど答えられなかった。お務めご苦労様です。
救急車の中で、そういえば今日美容室の予約を入れていたことを思い出す。
美容師のOさんに、事情説明とキャンセルの旨を伝える。
親より友人より誰よりも先に事故のことを伝えたのが美容師さんだった。
そんなこんなで病院に到着。
応急処置をしてもらい、レントゲンやCTを撮る。
その後診療が始まる9時まで担架の上。
眠いが痛みで眠れず数時間そこで過ごしてやっと時間となり形成外科へ。
下された診断は「左頬骨骨折」。
人生初骨折。まさかの左頬。
「手術しますか?」と聞かれる。
前日からちょうど展覧会準備のお休みだったんだけど、手術となったらさらに休むことになり展覧会の日程も変更。。。
「ちょっと考えさせてください」と一日時間をもらう。
ただし、手術するなら骨がくっつく2週間以内とのこと。つらたん。
その後眼科に行って様々な検査のち受診。
これが物凄い患者数で、待ち時間の間に気を失いそうになった。何しろこちらはほぼ寝てないのだ。
瞼が腫れて一部の検査がまともにできないので引いてからまた検査することに。
全てが終わって家に帰れたのは14時だった。
途中現場と思しき電柱に寄ると地面に血痕が。
家に着くと血痕のついた自転車があり、風呂場も血痕だらけだった。事件すぎる。
血痕を拭く元気もないままそこから各位に連絡。
疲れ果てて寝ようとベッドに横になる。
すると一つ気づいたことがあった。
私は子供の頃から片方の鼻が詰まっていたのだがなんと両方とも通っている!!
これは事故の衝撃で通ったのではないか?すごい!!
と、興奮してまた眠れなくなる。
が、やがて眠りに包まれようやく就寝。
起きたら鼻は戻っていた。
翌2月3日。
清水さんや35分の酒さんにも話し、展覧会はとりあえず延期することとし、手術を受けることに決めた。
その旨を形成外科の先生に伝え、日程を決める。
最初2月6日入院7日手術でどうかと問われるが、生憎部屋が個室しか空いてないとのこと。
値段を聞くと一泊3万6千円。。。無理!
改めて相部屋が空いていて手術可能な日を調整すると2月9日入院10日手術ということになった。
というわけで展覧会を丸々1週間延ばして2月16日から3月21日とすることに。
そのまま店へ。
とその前に伊勢丹。
この日は節分。
あまり行事に執着ないんだけど、子供の頃から恵方巻だけは欠かしたことがなかったので絶対買う。
但し医者から固いものは食べないようにと言われてるので柔らかそうな具材のものを選ぶ。
そもそも口も大きく開けられない。
ちょっとでも固いものを噛むと何故かこめかみに電気が走る。
南南東を向きながら無言で時間かけまくって何とか食う。
そうこうしてるとPGIのTさんが清水さんの作品を届けに見える。
Tさんとはこれが初対面。初対面の相手がこんな状態で本当に申し訳なかった。

2月4日。
予定通り搬入。
残りは鍵を預けて僕の入院中に清水さん自身でやってもらうことに。
清水さんに事故は神田川の呪いと言われる。
なんでワシが呪われなあかんねん。

2月5日。
実はこの日から旅行を予定していた私。
手術が被ったら諦めよう、と思っていたものの、見事に被らなかったので旅行を決行。
顔面骨折という強目の字面とは裏腹に、痛みも不思議なほどなかった。逆に不気味。
流石に誰にも言えないのでSNSにもこの旅行のことは秘密。
飛行機に乗るので気圧でどうにかなったらどうしよう、と思いつつ乗る。
「この中にドクターはいらっしゃいませんか?」
とならずに無事到着。山口県は宇部空港。
前記事のレストランにお客さんのKさんと向かって美味しくお食事。
途中大好きなクルミが出て、どうしても食べたかったのでリスのように前歯で少しずつ食うなど。
この後小倉に移動し、登山のようなものもしつつ2泊3日を過ごす。
この間に皆様から散々「お大事に」と頂いてたので若干の罪悪感否めず。
お医者さんに言ったら絶対怒られるやつ。
にしても一昨年福岡に来た時は緊急事態宣言だかまん防だかで呑めず。
今回はケガのため呑めず。
福岡に来て2回連続で酒にありついてない。。。。呪い。
もつ鍋も焼き鳥も噛む系なので食えず。つらたんたん。
旦過市場のうどんが骨身に沁みた。

2月8日。
入院前日。
現在入院前のPCR検査必須で朝から病院へ。
自分の中での最難関がこれ。
お仕事柄もそうだし、これだけ動き回ってるし、正直自粛の文字は私の中にない。
にも関わらずこの3年間コロナというものになったことがない。
というか、常に無症状ぐらいに思っていた。
ああ、これで陽性だったら入院もできないのか。。。と絶望だったが何故か陰性。
ねぇ、コロナってどうやったらなるん?
無事検査もすり抜けて35分での清水裕貴展初日。
偶然お客さんのNさんに遭遇。
入院前の姿を写真撮ってもらった。

その後Coccoのライブ。初中野サンプラザ。7月には閉まるので多分最初で最後。
これも入院と被ったら諦めようと思ってたけど被らなかったため。
同じライブに来てた友達とご飯、後バー。
バーではひたすらお茶。
結局深夜までいて帰宅。

2月9日。
13時入院。
行くと結局個室しか空いてないとのこと。
え、一泊3万6千円も払えないよ?
と震えたけど、病院側が采配できなかったとのことで特別料金なしで個室へ。
以前急性肝炎で入院した時は旧病棟の相部屋だったけど、今回は新病棟の綺麗な個室!
西新宿の13階からの景色は最高。
部屋にトイレとシャワーもついてる。完全に勝ち組。
しかもwifiも完備。最高かよ。
4人部屋が空き次第移動とのことなので、どうか退院まで空かないように願う。
9階にローソンもあるのでスイーツ買って優雅に過ごす。
病院食は硬いもの食べられないってことで全てみじん切り。
もはや何を食べてるのかもわからない味気ない食事。。。
そんなこんなで次の日の手術に向けて就寝。


2月10日。
手術当日。今冬東京初雪。
食事も水分も取ってはならず、手術の時間もわからないのでとりあえずシャワーを浴びる。
相部屋だとシャワーも決められた時間しか入れないので個室最高すぎる。
12時過ぎに呼ばれて手術室へ。
初の全身麻酔。
肩のあたりから麻酔を入れられて気づいたら手術も終わっていて病室だった。
意識が戻ってきて、最初に自覚したのは股間の痛み。
そう、下に管が通っていたのだ。。。
噂には聞いていたけど、まさか自分もやることになるなんて。。。
これが猛烈に痛い。
看護師さんに「後生だから抜いてください」と頼んで抜いてもらったけど抜くのも痛すぎる。
事故より痛かった。
その後も尿道がヒリヒリしておしっこもままならず。。。
そして喉がとにかく痛い。
気管に直接酸素を送り込んでたのでそりゃ痛いわけだ。
あと、エコノミー症候群対策としてつけてたストッキングみたいなのも痛かった。
吐き気も若干する。
全身麻酔、完全に舐めてた。出来る限り2度とやりたくない。
それはともかく、時間を見ると22時となってた。
ん????
当初手術は2時間ぐらいと言ってたので辻褄が合わない。。。
どうやら手術は6時間にも及ぶ大手術だった模様。
手術開始したら骨折の具合が予想よりも酷かったらしい。
尽力いただいた医療者の皆様本当に感謝しかない。
左頬骨にプレートを埋め込む手術だったんだけど、このプレート、なんと溶けるらしい。
もうわけがわからなすぎて質問もできずに「はあ、そうですか」としか言えなかった。
そんな大手術にも関わらずメスの後は瞼と目の直下と口の中だけ。
どうやってそんなことができるのだろう。。。すごいとしか言いようがない。
ちなみに、看護師さん達も去った後に何か荷物取ろうと、点滴持ちながら荷物漁ってたら看護師さん戻ってきて「森川さん!」って驚いてたから何かと思ったら、「全身麻酔の後こんなに動ける人初めて見ました」と言われたw
元気だけが取り柄。
次の日の朝は久々の食事が出たけどまだ若干吐き気もあり食べられなかった。
昼からは少しずつ回復してご飯も食べられるようになった。
そんなこんなで病室も移ることなく、積読だった「百年の孤独」読了したり、動画見たりして過ごし、予定より少し早い2月14日のバレンタインに退院。
結果5泊6日、全身麻酔と病院食以外は心地よく過ごせた。


その後16日にお店もオープンし、「三文オペラ」が流れる店内で眼帯した男が立ってるのはコンセプチュアル過ぎたw
配達の方がめちゃくちゃビビってて申し訳なかった。
翌17日には抜糸も済んで、相変わらず待ち時間の長い眼科でもほぼ問題なし。
まだ完治ではないものの、展覧会も無事終えることができ、4月1日はお店4周年!
その前にこんな機会もそうそうない(はず)なので記録に留めた次第。
ご拝読どうもありがとうございました。
***************************************
今回、単独事故だったのは本当に不幸中の幸いだった。
車にぶつかってたら顔面骨折では済まない、どころか死んでたかもしれない。
人にぶつかってたら賠償責任とその人のその後の人生も巻き込んでいたかもしれない。
物も壊してないし、自転車も買ったばかりだったので無料で直してもらった。
保険も3つも入ってた。
特に東京来てから入ってた自転車用の保険は診断書とかも出さずにすごいスピードで入金してくれて助かった。
月々550円しか払ってないのに、この5年弱の累積よりも多く支払われた。
左頬と左瞼以外は擦り傷もなく、鼻も歯も折らず。
顔のことなので、めちゃくちゃに腫れそうと思ってたけどそこまで腫れずに済んだ。
あわよくばどうせ顔にメス入れるんだしイケメンにして欲しかったよね。嘘です。反省してます。
今後気をつけて生きてまいります。
そう、今年は前厄。これで厄落ちたと信じたい。
ご心配いただいた皆様どうもありがとうございました。
2月はその反省もあり酒を呑まなかったんだけど、呑まないでいるとマジでお金使わずに済むんだよな。。。不条理。
旅行に行ったKさんから快気祝いにと福岡で食べられなかったもつ鍋セットを送られ美味しく頂きました。
そして事故の日に予約していた美容室も展覧会後無事行ってきてバッチリ髪も染まり再出発。
美容師のOさんに会えた時は感慨深かったなぁ。
まだ腫れも少しはあるんだけど、ほぼ日常を取り戻しました。
明日はお店も4周年。心機一転頑張ります!

再開のお知らせ。
清水裕貴個展「よみがえりの川」終了しました。
レオポルド美術館 エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才 @ 東京都美術館
最近観た展示まとめ。
レオポルド美術館 エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才 @ 東京都美術館 (-4/9)





めちゃくちゃ楽しみにしていた展覧会。
都美はこの後マティス展も控えてるし凄すぎる。
ユリイカのシーレ特集もバッチリ読んで予習万端で行ってきました。
結果としては正直物足りなさは否めないなぁという感じ。
出口付近でおじさんがぼやいてた「これは『エゴン・シーレ展』じゃなく『エゴン・シーレとその時代展』だな」って言葉がその通りだと思います。
エゴン・シーレだけを目的にして行くと作品数から言ってどうしても物足りなさは残ります。
油彩・ドローイング含めてシーレ作品は50点ですからね。
とはいえ28年の短い人生の中で彼の作品は200数点程度だと言われるとその1/4集まってるんだから立派なものとは言えます。
ただ謳い文句の「30年ぶり」とか言われちゃうと期待しちゃうってもんでしょう。
エゴン・シーレは第一世界大戦を経験し、その後スペイン風邪で28年という短い人生を終えます。
1914年、大戦開戦の年に妹ゲルティに宛てた手紙の中の一節です。
「ぼくらは世界がかつて見たいちばん暴力的な時代に生きているんだ。ーぼくらはありとあらゆる不自由に慣れてしまったー何十万という人間が哀れにも破滅して行くー誰もが自分の運命を、生きながらあるいは死につつ耐えなければならないーぼくらは残酷になり恐怖を失っている。」
今回、頭についてるレオポルト美術館の所蔵品展ってところが大きいと思います。
それ関係なければもうちょっとやりようがあったでしょう。
昨今のパンデミックや戦争といった僕らの現在ともの凄く近い時代を体現した画家として、それらをテーマに昨年の金沢のイヴ・クライン展のように現代作家たちとのコラボレーションも可能だったと思うし、同時代の「世紀末ウィーン」と言われた時代を彩った美術以外の活動ももっと紹介されて然るべきだったのではないでしょうか。
アドルフ・ロース、フロイト、ウィトゲンシュタインといった歴史的巨人がこの時代に続々とウィーンから生まれました。
先日まで庭園美術館で開催されてた「交歓するモダン」展でも大きく取り上げられてたウィーン工房もこの時代ですね。
今回は分離派の紹介はもちろんあるものの、それらの包括的な視点がほとんどなかったのは残念でした。
とは言え、それらの素晴らしい作品が来てたのも事実。
分離派のポスターは今見ても本当にオシャレ。
今回初めて知ったコロマン・モーザーの絵も素晴らしかったです。ホドラーっぽさは多分にありましたが。
しかし何と言ってもシーレです。
画像とかで見ると薄塗りっぽく見えるんだけど、実際に観るとめちゃくちゃ厚塗り。
ルシアン・フロイドも彷彿とさせるグロテスクなまでの塗り方です。
なぜ画像でその辺が見えなくなるのかと思ったんですが、どうも輪郭線に秘訣がありそう。
シーレの中でも輪郭線がそこまでない作品と強調されてる作品に分かれるんですよね。
「自分を見つめる人II(死と男)」(1911)や、「母と子」(1912)なんかは、輪郭線がほぼないので、絵の具感がやや強いです。
対して最晩年の「横たわる女」(1917)なんかは輪郭線が強調されて、塗りの厚さはそこまで気にならないのです。
あと後期になると判子のような四角いサインになるんですが、これらはもしかしたら日本の影響がありそうです。
この時代日本の浮世絵がヨーロッパを席巻していて、輪郭線やサインは明らかにその辺りの影響でしょうね。
輪郭線が強調されることで塗り絵のような見え方をして面白かったです。
あと写真が唯一撮れた風景や静物画のコーナーの絵も面白かった。
どうやったら世界がこんな風に見えるんだろう、と不思議で仕方ないですね。
特に「冬の木」(1912)の異常さが凄い。観れば観るほど狂ってます。
もう少し長生きしていればどんな絵を描いてたんだろうと偲ばざるを得ない天才っぷり。
前半で文句たらたら書いちゃったけど、中々ない機会なので是非行ってみて下さい。
おかしなポーズの連続だったりもするのでジョジョ好きも是非w
シーレ関連でいうと、カスヤの森現代美術館で始まった宮崎郁子展も合わせて行くといいと思います。
彼女はシーレの作品に惚れて、彼の絵画を立体化する作品をひたすら作り続けています。
カスヤの森自体が凄まじいのでお時間ある方は是非。5月21日まで。こちら。
第59回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館展示帰国展 ダムタイプ|2022: remap / アートを楽しむ ー見る、感じる、学ぶ / 画家の手紙 @ アーティゾン美術館 (-5/14)













昨年のヴェネツィアビエンナーレにおけるダムタイプの日本館凱旋展示。
毎回ここでやってくれるの行けない人にとって助かりますね。
それにしても昨年の日本館、何の評判も聞こえてこなかったので 、危惧はしていたけどやっぱりダメだった。。。
この人たち、悪い意味で変わってない。
2022というタイトルがまた皮肉というか、1992と言われても何も驚かない。
技術的なマイナーチェンジはもちろんたくさんあるんだけど、作品が更新されてない。
やっぱり「S/N」を一生超えられないのかも。というかあれが異色過ぎた。
どこかであれを求める自分がどうしてもいるのでどうしようもない。
今回映えないどころか暗過ぎてほとんど何も映らないのは良かった笑
それよかここはコレクション。
コレクションだけで「アートを楽しむ」という企画展ができるんだからすごい。
内容はアート初心者のためのラーニングプログラムってとこだけど、物がいちいち凄い。
小出楢重のアトリエ再現したりしてるのも凄い。
コレクション展の方の「画家の手紙」は面白かった。
古賀春江が恋人に送った自画像ハガキすごすぎる。。。
また古賀の額縁の依頼してる手紙とかもマニアック過ぎて好き。
安井曾太郎の静物画と、それに描かれてる皿の貸し借りのやりとりと実際の皿の展示とか面白すぎる。
この皿まで所蔵してる石橋財団頭おかしい(褒めてる)
次回の抽象画の展覧会もほとんどコレクションからっぽいし本当に凄い美術館だ。
しかもそのうち95点が新収蔵ってどういうこと。。。楽しみです。
「インターフェアレンス」@ 銀座メゾンエルメス Le Forum (-6/4)










エルメスらしいエレガントな展覧会。
白眉はスザンナ・フリッチャーの振動で音が奏でられる吹き抜けのインスタレーション。
音も見た目も心地よくていつまでもいられる。
今回の展覧会のタイトルの元にもなってるフランシス真悟の作品も見る角度によって色が変わって美しかった。
壁に直接描いてるのすごすぎる。
宮永さんのインスタレーションは今回よく分からず。
ブルーノ・ボテラの作品も今回の中では浮いてた。
引き寄せられた気配 @ TOKAS (-3/26)
















TOKASの参加作家の紹介企画ACTの第5段。昨年の第4弾も気づいたら観てた。
去年もそうだったけど、3人のまとまりがイマイチないのが気になります。
なんとなくテーマはあるものの、作家集めただけって感じが否めない。
とは言え今年は何と言っても海老原さん。
KEN NAKAHASHI等で何度も観てるけど、今回は最大規模でした。
2019年にKEN NAKAHSHIで発表してた「sing」が、中二階の会議室みたいなところに展示されてるのがめっちゃ良かった。
この作品当時は正直ピンと来てなかったんだけど、今回この作品の発展形とも言える作品が続いて行くことでめちゃくちゃ生きてた。
絵画て僕らが見てるのはあくまで絵の具であったり筆致であったりでしかないってことを改めて教えられます。
特に大作のひまわりの絵は近くで見るとモアレや模様のようにしか見えないのに、ちょっと離れただけでひまわりの絵にしか見えなくなる。
さらには現在のウクライナのことまで思考が飛んでいく。
絵画って凄いジャンプ力があるよな、って改めて思い出させてくれる作品でした。
2階の須藤美沙さんの作品も、紙に穴を開けただけでここまでの物質になるのかって驚き。
今回このために床打った?ってぐらい作品の惑星感と合ってて良かった。
唯一一階の鮫島ゆいさんの作品が理解できなかった。。。同じ大学なんだけどなぁ。ごめんなさい。
中村裕太|ユアサエボシ 耽奇展覧 @ Gallery Koyanagi (-3/31)















中村裕太とユアサエボシ。
この組み合わせは天才的。
陶と絵画というジャンルの違いはともあれ、少し不思議な作品を作る2人。
しかも2人は1983年生まれの同い年。(ユアサ氏の設定では1924年生まれだけど)
ちなみに僕も同い年。
(中村さんは精華大学の同級生で、友人の友人で知ってたけどしばらく先輩だと思ってた。)
それはさておき、実際会場の異常な空気感は素晴らしかった。
どちらも気持ちいいほどわけがわからない。
今回のタイトルにもなってる「耽奇(たんき)」という言葉は、江戸時代(1824-25)に曲亭馬琴らによって結成された「耽奇会」が彼らの自慢の珍品たちを収めた書「耽奇漫録」から。
この本を発見したところから2人の創作が始まり、それを元に今回の作品は創られてる模様。
中村さんの作品には本もセットになって余計わけがわからない。
解説読んでると、さらにユクスキュルの「生物から見た世界」も重要な要素らしい。
まさに「耽奇」な展覧会。最高でした。
光岡幸一展 「ぶっちぎりのゼッテー120%」@ ガーディアン・ガーデン (-3/18)








オペラシティで真ん中が空洞になってる枠だけの凄いフライヤーを見つけて何じゃこりゃ!となって行ってきました。
ガーディアン・ガーデンは、リクルートが運営してて写真のコンペ「1_Wall」の展示で有名なギャラリー。
今年の8月でその活動を終えるとのことで、一度行ってみたかったのでちょうど良かった。
光岡さんは恥ずかしながら存じ上げてなかったんだけど、「1_Wall」や「写真新世紀」などの賞を受賞してるみたいで、写真家なのか?と思ったけどそうでもないっぽく、とにかく全く未知数で行ってみた次第。
入ると2つ空間があって、最初の空間では例のフライヤーと、手の込んだ冊子みたいなものが無料で配られてた!
で、もう1つの空間には、人1人通れるぐらいの穴が空いててそこをくぐるとまさにカオス空間。。。
映像がいくつか流れてるんだけど、どうも物にアテレコを吹き込んでる様子。
クッションがあったのでそこに座ってしばらく眺めてたら突然スタッフルームの扉が開いて人が出てきたと思ったら、作品の1つをグルグル凄い勢いで回してまた違う扉から出て今度は入口からまた入ってきてスタッフルームに帰っていった。。。
どうも彼が光岡さん本人だったようなんだけど、これ毎日やってるのかな。。。
マジでカオス。これが銀座の地下で密やかに行われてるの面白すぎる。
無料で配布されてた冊子帰ってきて読んでみたけど中々面白い活動されてるので今後も注目します。
平野泰子個展「Two eyes」@ 銀座 蔦屋書店 アートウォール (会期終了)







大学時代の後輩平野さんの展覧会。
彼女の作品は年々深度が増してる気がする。
絵の中に近さと遠さがあって、絵の具を重ねてるだけなのにこれだけ「距離」を表現できるの凄い。
実際キャンバスのサイドを除くと色とりどりの色が重ねられてることがわかります。
今後も楽しみです。
レオポルド美術館 エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才 @ 東京都美術館 (-4/9)





めちゃくちゃ楽しみにしていた展覧会。
都美はこの後マティス展も控えてるし凄すぎる。
ユリイカのシーレ特集もバッチリ読んで予習万端で行ってきました。
結果としては正直物足りなさは否めないなぁという感じ。
出口付近でおじさんがぼやいてた「これは『エゴン・シーレ展』じゃなく『エゴン・シーレとその時代展』だな」って言葉がその通りだと思います。
エゴン・シーレだけを目的にして行くと作品数から言ってどうしても物足りなさは残ります。
油彩・ドローイング含めてシーレ作品は50点ですからね。
とはいえ28年の短い人生の中で彼の作品は200数点程度だと言われるとその1/4集まってるんだから立派なものとは言えます。
ただ謳い文句の「30年ぶり」とか言われちゃうと期待しちゃうってもんでしょう。
エゴン・シーレは第一世界大戦を経験し、その後スペイン風邪で28年という短い人生を終えます。
1914年、大戦開戦の年に妹ゲルティに宛てた手紙の中の一節です。
「ぼくらは世界がかつて見たいちばん暴力的な時代に生きているんだ。ーぼくらはありとあらゆる不自由に慣れてしまったー何十万という人間が哀れにも破滅して行くー誰もが自分の運命を、生きながらあるいは死につつ耐えなければならないーぼくらは残酷になり恐怖を失っている。」
今回、頭についてるレオポルト美術館の所蔵品展ってところが大きいと思います。
それ関係なければもうちょっとやりようがあったでしょう。
昨今のパンデミックや戦争といった僕らの現在ともの凄く近い時代を体現した画家として、それらをテーマに昨年の金沢のイヴ・クライン展のように現代作家たちとのコラボレーションも可能だったと思うし、同時代の「世紀末ウィーン」と言われた時代を彩った美術以外の活動ももっと紹介されて然るべきだったのではないでしょうか。
アドルフ・ロース、フロイト、ウィトゲンシュタインといった歴史的巨人がこの時代に続々とウィーンから生まれました。
先日まで庭園美術館で開催されてた「交歓するモダン」展でも大きく取り上げられてたウィーン工房もこの時代ですね。
今回は分離派の紹介はもちろんあるものの、それらの包括的な視点がほとんどなかったのは残念でした。
とは言え、それらの素晴らしい作品が来てたのも事実。
分離派のポスターは今見ても本当にオシャレ。
今回初めて知ったコロマン・モーザーの絵も素晴らしかったです。ホドラーっぽさは多分にありましたが。
しかし何と言ってもシーレです。
画像とかで見ると薄塗りっぽく見えるんだけど、実際に観るとめちゃくちゃ厚塗り。
ルシアン・フロイドも彷彿とさせるグロテスクなまでの塗り方です。
なぜ画像でその辺が見えなくなるのかと思ったんですが、どうも輪郭線に秘訣がありそう。
シーレの中でも輪郭線がそこまでない作品と強調されてる作品に分かれるんですよね。
「自分を見つめる人II(死と男)」(1911)や、「母と子」(1912)なんかは、輪郭線がほぼないので、絵の具感がやや強いです。
対して最晩年の「横たわる女」(1917)なんかは輪郭線が強調されて、塗りの厚さはそこまで気にならないのです。
あと後期になると判子のような四角いサインになるんですが、これらはもしかしたら日本の影響がありそうです。
この時代日本の浮世絵がヨーロッパを席巻していて、輪郭線やサインは明らかにその辺りの影響でしょうね。
輪郭線が強調されることで塗り絵のような見え方をして面白かったです。
あと写真が唯一撮れた風景や静物画のコーナーの絵も面白かった。
どうやったら世界がこんな風に見えるんだろう、と不思議で仕方ないですね。
特に「冬の木」(1912)の異常さが凄い。観れば観るほど狂ってます。
もう少し長生きしていればどんな絵を描いてたんだろうと偲ばざるを得ない天才っぷり。
前半で文句たらたら書いちゃったけど、中々ない機会なので是非行ってみて下さい。
おかしなポーズの連続だったりもするのでジョジョ好きも是非w
シーレ関連でいうと、カスヤの森現代美術館で始まった宮崎郁子展も合わせて行くといいと思います。
彼女はシーレの作品に惚れて、彼の絵画を立体化する作品をひたすら作り続けています。
カスヤの森自体が凄まじいのでお時間ある方は是非。5月21日まで。こちら。
第59回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館展示帰国展 ダムタイプ|2022: remap / アートを楽しむ ー見る、感じる、学ぶ / 画家の手紙 @ アーティゾン美術館 (-5/14)













昨年のヴェネツィアビエンナーレにおけるダムタイプの日本館凱旋展示。
毎回ここでやってくれるの行けない人にとって助かりますね。
それにしても昨年の日本館、何の評判も聞こえてこなかったので 、危惧はしていたけどやっぱりダメだった。。。
この人たち、悪い意味で変わってない。
2022というタイトルがまた皮肉というか、1992と言われても何も驚かない。
技術的なマイナーチェンジはもちろんたくさんあるんだけど、作品が更新されてない。
やっぱり「S/N」を一生超えられないのかも。というかあれが異色過ぎた。
どこかであれを求める自分がどうしてもいるのでどうしようもない。
今回映えないどころか暗過ぎてほとんど何も映らないのは良かった笑
それよかここはコレクション。
コレクションだけで「アートを楽しむ」という企画展ができるんだからすごい。
内容はアート初心者のためのラーニングプログラムってとこだけど、物がいちいち凄い。
小出楢重のアトリエ再現したりしてるのも凄い。
コレクション展の方の「画家の手紙」は面白かった。
古賀春江が恋人に送った自画像ハガキすごすぎる。。。
また古賀の額縁の依頼してる手紙とかもマニアック過ぎて好き。
安井曾太郎の静物画と、それに描かれてる皿の貸し借りのやりとりと実際の皿の展示とか面白すぎる。
この皿まで所蔵してる石橋財団頭おかしい(褒めてる)
次回の抽象画の展覧会もほとんどコレクションからっぽいし本当に凄い美術館だ。
しかもそのうち95点が新収蔵ってどういうこと。。。楽しみです。
「インターフェアレンス」@ 銀座メゾンエルメス Le Forum (-6/4)










エルメスらしいエレガントな展覧会。
白眉はスザンナ・フリッチャーの振動で音が奏でられる吹き抜けのインスタレーション。
音も見た目も心地よくていつまでもいられる。
今回の展覧会のタイトルの元にもなってるフランシス真悟の作品も見る角度によって色が変わって美しかった。
壁に直接描いてるのすごすぎる。
宮永さんのインスタレーションは今回よく分からず。
ブルーノ・ボテラの作品も今回の中では浮いてた。
引き寄せられた気配 @ TOKAS (-3/26)
















TOKASの参加作家の紹介企画ACTの第5段。昨年の第4弾も気づいたら観てた。
去年もそうだったけど、3人のまとまりがイマイチないのが気になります。
なんとなくテーマはあるものの、作家集めただけって感じが否めない。
とは言え今年は何と言っても海老原さん。
KEN NAKAHASHI等で何度も観てるけど、今回は最大規模でした。
2019年にKEN NAKAHSHIで発表してた「sing」が、中二階の会議室みたいなところに展示されてるのがめっちゃ良かった。
この作品当時は正直ピンと来てなかったんだけど、今回この作品の発展形とも言える作品が続いて行くことでめちゃくちゃ生きてた。
絵画て僕らが見てるのはあくまで絵の具であったり筆致であったりでしかないってことを改めて教えられます。
特に大作のひまわりの絵は近くで見るとモアレや模様のようにしか見えないのに、ちょっと離れただけでひまわりの絵にしか見えなくなる。
さらには現在のウクライナのことまで思考が飛んでいく。
絵画って凄いジャンプ力があるよな、って改めて思い出させてくれる作品でした。
2階の須藤美沙さんの作品も、紙に穴を開けただけでここまでの物質になるのかって驚き。
今回このために床打った?ってぐらい作品の惑星感と合ってて良かった。
唯一一階の鮫島ゆいさんの作品が理解できなかった。。。同じ大学なんだけどなぁ。ごめんなさい。
中村裕太|ユアサエボシ 耽奇展覧 @ Gallery Koyanagi (-3/31)















中村裕太とユアサエボシ。
この組み合わせは天才的。
陶と絵画というジャンルの違いはともあれ、少し不思議な作品を作る2人。
しかも2人は1983年生まれの同い年。(ユアサ氏の設定では1924年生まれだけど)
ちなみに僕も同い年。
(中村さんは精華大学の同級生で、友人の友人で知ってたけどしばらく先輩だと思ってた。)
それはさておき、実際会場の異常な空気感は素晴らしかった。
どちらも気持ちいいほどわけがわからない。
今回のタイトルにもなってる「耽奇(たんき)」という言葉は、江戸時代(1824-25)に曲亭馬琴らによって結成された「耽奇会」が彼らの自慢の珍品たちを収めた書「耽奇漫録」から。
この本を発見したところから2人の創作が始まり、それを元に今回の作品は創られてる模様。
中村さんの作品には本もセットになって余計わけがわからない。
解説読んでると、さらにユクスキュルの「生物から見た世界」も重要な要素らしい。
まさに「耽奇」な展覧会。最高でした。
光岡幸一展 「ぶっちぎりのゼッテー120%」@ ガーディアン・ガーデン (-3/18)








オペラシティで真ん中が空洞になってる枠だけの凄いフライヤーを見つけて何じゃこりゃ!となって行ってきました。
ガーディアン・ガーデンは、リクルートが運営してて写真のコンペ「1_Wall」の展示で有名なギャラリー。
今年の8月でその活動を終えるとのことで、一度行ってみたかったのでちょうど良かった。
光岡さんは恥ずかしながら存じ上げてなかったんだけど、「1_Wall」や「写真新世紀」などの賞を受賞してるみたいで、写真家なのか?と思ったけどそうでもないっぽく、とにかく全く未知数で行ってみた次第。
入ると2つ空間があって、最初の空間では例のフライヤーと、手の込んだ冊子みたいなものが無料で配られてた!
で、もう1つの空間には、人1人通れるぐらいの穴が空いててそこをくぐるとまさにカオス空間。。。
映像がいくつか流れてるんだけど、どうも物にアテレコを吹き込んでる様子。
クッションがあったのでそこに座ってしばらく眺めてたら突然スタッフルームの扉が開いて人が出てきたと思ったら、作品の1つをグルグル凄い勢いで回してまた違う扉から出て今度は入口からまた入ってきてスタッフルームに帰っていった。。。
どうも彼が光岡さん本人だったようなんだけど、これ毎日やってるのかな。。。
マジでカオス。これが銀座の地下で密やかに行われてるの面白すぎる。
無料で配布されてた冊子帰ってきて読んでみたけど中々面白い活動されてるので今後も注目します。
平野泰子個展「Two eyes」@ 銀座 蔦屋書店 アートウォール (会期終了)







大学時代の後輩平野さんの展覧会。
彼女の作品は年々深度が増してる気がする。
絵の中に近さと遠さがあって、絵の具を重ねてるだけなのにこれだけ「距離」を表現できるの凄い。
実際キャンバスのサイドを除くと色とりどりの色が重ねられてることがわかります。
今後も楽しみです。
戸谷成雄 彫刻 @ 埼玉県立近代美術館







































楽しみにしていた戸谷成雄展。
勢い余って開幕してすぐ行っちゃいました。
戸谷成雄に限らず、60年、70年代の「○○派」や「〇〇イズム」に回収されなかった作家が好きなんです。
彫刻だと遠藤利克や村岡三郎に河口龍夫。絵画だと桑山忠明や村上友晴。
今の時代からしたら「重い」作品めっちゃ好きです。
戸谷さんももちろんその1人。
そもそも今回のタイトル「戸谷成雄 彫刻」ですよ。重過ぎ笑
戸谷さんや遠藤さんが活動を始めた70年代というのは何といっても日本だと「もの派」。
1970年の「人間と物質」を観て2人ともショックを受けたと仰ってますが、当時はとにかく「作らない」という姿勢が重要でした。その後出てくる「コンセプチュアルアート」や「概念派」はその極地。
そんな中でいかに「作る」か。
戸谷さん自身も遠藤さんとの対談の中で、
「70年代半ばには、彫刻という言葉を使うこと自体が、相当にひんしゅくを買ったものです。」
と仰ってるその「彫刻」という言葉を、今回衒いもなくタイトルに堂々と使ってるあたり並並ならぬ覚悟を感じます。
実際そこには「彫刻」としか言いようのない作品が勢ぞろいでした。
まず、エレベーターで会場の2階に昇ってドアが開いた瞬間から目に飛び込んでくる「≪境界≫からVI」(1998)。
早速重いよー!最高!
戸谷さんの真骨頂とも言えるチェンソーを使った木の塊は、見れば見るほど複雑で、どこかヘンリー・ムーアの彫刻を思わせる捻りもあったりで観てて飽きません。
そして会場に向かうとまず学生時代の初期作品が並んでました。
最初は人体像から始まったのは興味深かった。
そこから初期の代表作となった「POMPEII・・79 Part1」。
ポンペイをテーマにした墓のような作品で、学生時代の作品を並べるとここに至る経緯がなんとなく掴めました。
今回、いつもならそのまま通れるところを塞いで、ここで一部屋にしてしまってるのはとても効果的でした。
一旦外に出ることで、意識を切って、その後の流れに自然に観られる。
レリーフや、遠藤さんやんっていう炎のパフォーマンスなんかもあったけど、やっぱり白眉は代表作「森」シリーズが始まる大展示室。
ずらっと並んだ「森」は圧巻。
木々の間をクネクネと歩き回ったり遠くから眺めたり、どれも全く違う表情なのでこれまた観ていて飽きない。
戸谷さんの作品は前述した通りチェンソーを使ってそれこそ「彫刻」してるわけだけど、その暴力性がほとんど感じられないんですよね。
下手すればその表面はトゲトゲしてたりするので痛々しくも見えそうなのに不思議。
その秘訣は、表面に灰を塗ってるところにあると思います。
灰を塗る行為について戸谷さんのインタビューで
「灰を塗り込めてやることで薬を塗ってやるというような気持ちも最初はありました。」
と語っています。
壁に展示されてあった森のドローイングも素晴らしかった。一枚欲しい。。。
これらの森のイメージってエルンストの森のイメージにも通じるんだけど影響とかあるのかな?
森の奥には「地霊III-a」と題された正方形の木を様々にくり抜いたものが並んでガラスケースに入ってる作品があって、これもまたかっこいい。。。カプーアも彷彿とさせてたまりません。
次の展示室では、小屋のような作品があって、ちょっと不気味でした。
この作品が制作されたのは1995年から96年にかけてで、ちょうど阪神大震災と地下鉄サリン事件があったり、不穏な社会情勢を珍しく反映してるそうです。
こういう背景があるものより、戸谷さんの作品はともすればドメスティックに彫刻自体に向き合ってる作品の方が魅力的だな、と思います。
この部屋の他の作品はめちゃくちゃ「彫刻」してる作品群で素晴らしかった。
壁のように立つ長方形の4つの作品群「洞穴体III」はその表面に地形のイメージが彫られてるんだけど、問題はその裏側。
謎の突起のようなもので支えられてて、作品の裏表で印象がガラッと変わるのが面白い。
最後は、「視線体ー連」。
視線体は、近年新たに進められてるシリーズで、そもそも作品の制作過程で出てくる木片そのものが作品になるのでは、ということで始まったんですが、その最初の展示が2019年にShugoArtsで展示されてて、それ僕も観たんですが、ここに来てこんな展開があるんだ!!!と感動したのを覚えてます。
その時は「視線体」の中でも「散」と名付けられたもので、正直今回もそれが観たかったんだけど、今回展示されてる「連」は「散」を元に大きさを変えてつなぎ合わせたような形を改めて彫刻されたもの。
床にゴロンと置かれてる様は、学生時代の「横たわる男」を思わせて、ここで円環が閉じてるのは素晴らしいキュレーションだな、と思わせてくれたのでまあ良きでした。
埼玉近美の展示はいくつも観てるけど、今回一番素晴らしかったかも。
と、満足で見終わったんですが、今見たら地下にも作品あったの見逃してたのに気づきました。。。ショック。。。
3月からコレクション展にも一点新たに出るそうだしもう一回行こうかな。。。
この展覧会は5月14日まで。こちら。
この美術館はコレクション展もちゃんと面白いので素晴らしいです。
前半は古賀春江の初めて見るキュビズム的抽象画や丸山直文の絵画と一対一で対峙する「対話する部屋」なるものがあったり面白かったのですが、すごかったのが後半の「まるく/まわる」と題された展示。
円や丸といったモチーフの作品を集めて、いつもと全く違う展示室の使い方で度肝抜かれました。
特にガラスの展示室の使い方が端から覗き込んでみるというスタイルで秀逸。
中央には戸谷さんとも馴染み深い遠藤利克の彫刻がデデンと置かれてたり、デュシャンのロト・レリーフの展示などすごすぎる。。。
この展示は2月26日までだったので、これ観れただけでも会期最初に来た甲斐があったというもの。
次も気になるのでやっぱりもう一回来ようかな。。。
埼玉近美、近いとは決して言い難いんだけどこんな展示観れちゃうから来ちゃうんだよな。
黒川紀章の建物は結構終わってるけど、学芸員さんたちの見せる工夫が凝ってる素晴らしい美術館です。










地点「騒音。見ているのに見えない。見えなくても見ている!」 @ KAAT
昨年末の「ノー・ライト」に続きKAATでのイェリネク作品です。
今回は完全新作。
「光のない|ノー・ライト」「スポーツ劇」に続き舞台美術に木津潤平、音楽に三輪眞弘、衣装にコレット・ウシャール。
地点としてはイェリネク作品は「汝、気にすることなかれ」を含めると4作目。
それぞれ時事ネタを扱うイェリネクですが、本作はなんと新型コロナを扱っています。
2021年夏にハンブルクで初演とのことですが、イェリネクという人は速度のある人なんだな、と感心します。
2020年から始まったこのパンデミックをその一年半後には戯曲として完成してしまってるんだから凄いとしか言いようがない。
東日本大震災及び原発事故を扱った「光のない」にしても翌年の2012年にはもう完成していたし。
まあ、普段アートという「遅い」メディアにいるので、テキストの世界はそりゃそれと比べたら格段に「速い」のかもしれませんね。
そして今回もホメロス『オデュッセイア』や、ハイデガーの『存在と時間』が引用され、例の如く難解至極なテキスト。。。
そんな作品を如何に地点が料理するのか。
まず木津さんの舞台美術ですが、円形の舞台がバランスボールによって支えられてて、演者が乗ると揺れる舞台装置。
揺れに合わせて円形舞台の周りの豆電球も明滅します。
さらに、ビニールの幕が周りを覆っていて、これまた飛沫防止シートのよう。
三輪さんによる舞台の揺れに併せて流れる呼吸音もとても不穏。
最初バランスボールの空気が抜けてる音かと思ったけど違った。
そして今回はガムランによる生演奏とビデオ投影による録音演奏が合わさります。
それにしても今回ほど緩慢な舞台は初めてでした。
これは別に貶してるわけではなく、やはりイェリネクの戯曲が全て反映された結果だと思います。
終始テンションも一定だし、クライマックスもない。
そして何と言っても演者達の役名もない、ただの「声」を演じてるのが凄い。
「私たち」とか指示代名詞は使っているものの、その「私たち」とは誰のことなのかわからない。
もはや演じるとは何か、という根源的な問いにも触れています。
これどうやって終わるんだろう?と後半は不安にすらなりました。
ガムランの安定したリズムも合わさって、隣の人完全に寝てた笑
舞台の周りで演者が「コロナキタ」と謎の踊りを踊ってるんだけど、これは踊念仏を意識してるのかな?と思ったり。
踊念仏も疫病や災害を鎮めるべく始まったという説もあるし、のちの盆踊りの起源とも言われていて、今回オリジナルは西洋なので明らかに神を意識してるけど、この地点の舞台は仏を意識しているようで面白かった。
あと、マスクやワクチンの陰謀論めいた台詞もあったり、中々ヒヤヒヤさせられる内容でした。
終演後の三浦さんのお話でも、やはりピークを作るのが大変だった、というか無理だったという話をされてて、イェリネクの一筋縄では行かない感じに手こずりながらも、それに果敢に挑んじゃう地点が凄い。
そもそもパンデミックは終息気味とはいえ、2023年の現時点でも渦中。
3年経っても結局コロナって何なの?という疑問は据え置き状態。
将来再演があったらまた違った見方ができるのかな、と思いました。
<関連記事>
地点「ノー・ライト」 @ KAAT
地点「ギャンブラー」@ KAAT
地点「君の庭」@ KAAT
地点「罪と罰」@ 神奈川県立青少年センター
地点「三人姉妹」「シベリアへ!シベリアへ!シベリアへ!」 @ KAAT
「やっぱり悲劇だった」by 三浦基
地点「だれか、来る」@ アンダースロー
地点「グッド・バイ」@吉祥寺シアター
地点「正面に気をつけろ」@ アンダースロー
地点「汝、気にすることなかれ」@アンダースロー
地点「ロミオとジュリエット」@ 早稲田大学大隈講堂
地点「みちゆき」 @愛知県芸術劇場
地点「スポーツ劇」@ロームシアター京都
地点「光のない。」
地点「悪霊」@ KAAT
地点「CHITENの近未来語」@アンダースロー
地点「かもめ」@ Cafe Montage
地点「コリオレイナス」@京都府立府民ホールアルティ
地点「――ところでアルトーさん、」@京都芸術センター
ちなみにKAATのアトリウムでは山内祥太さんの映像が流れてました。
森美術館でも展示されてたり最近よく名前見かけます。明日13日まで。こちら。こちら。

2月、3月は映画三昧。毎週観ないと追いつかない。。。
というわけで今年入って観た映画たち。
「とべない風船」
「シャドウプレイ」
「夢の裏側」
「エゴイスト」
「別れる決心」
「逆転のトライアングル」
「日の丸 寺山修司40年目の挑発」
「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」
「Winny」
「ひとりぼっちじゃない」
ロウ・イエ監督の「シャドウプレイ」は2020年の公開のはずだったんだけど延びに延びてようやく公開。
延期の理由はコロナだの中国当局からの圧力だの色々あったんだろうけど無事公開されて一安心。
プレミアの時は一部削除されてだけど、公開されたのはそこもちゃんと収められたバージョン。
てっきりロウ・イエ監督のことなので、お国の危険な部分に触れっちゃったのかと思いきや、カットを指示されたのはエディソン・チャンの出演部分。
以前のハ○撮りスキャンダルを当局はひきづってる模様。
それにしても、めちゃくちゃ予算のかかった映画だった。
ここは逆にセーフなの!?と思える部分もあって、そこはロウ・イエ監督っぽかったけど、個人的にはもう少し静謐な映画を期待してたので、こういうダイナミックな映画はやや食傷気味。
主演のジン・ポーランもイケメンだけど、あまりにそつなく描かれ過ぎてるのもあって感情移入もそこまでできず。
ただ、中国のこの30年ほどの発展の裏で置き去りにされてきたものを描かれていて、そこはさすが。
また、ロウ・イエの奥様のマー・インリーが監督した「シャドウプレイ」の裏側を撮ったドキュメンタリー「夢の裏側」も公開されてて、こっちは検閲やらを乗り越えて製作される過程が描かれていて生々しさが面白かった。
ここまで大変な思いで作る監督は凄いとしか言いようがない。
「タルコフスキー日記」を読んでも、ソ連当局からの嫌がらせの愚痴が大半を占めてるけれど、あれだけの傑作を生み出したように、中国でも圧力に耐えながらも傑作が生み出されている。
そんな監督にこれだけの予算が出るのも不思議なんだけど、今後も頑張ってほしいです。
カンヌ勢からは監督賞のパク・チャヌク監督「別れる決心」と2作連続パルムドールのリューベン・オストルンド監督「逆転のトライアングル」。
「別れる決心」は138分あるんだけど、ここまで長い必要ある?って感じだった。
警察と容疑者が恋に落ちるってベタと言えばベタな設定でユーモアも交えつつここまで魅せるのは流石だけど、最初の夫の殺人を免れたのもわからないし、最後もあんな詩的な終わり方しなくても。。。と思っちゃった。
逆に「逆転のトライアングル」は、148分もあるんだけど、もっと観たい!と思った。
テンポがとにかく良くて、展開も全く読めないし、皮肉も効きまくってて最後まであっという間。
最後の最後にもうひと展開あったのに敢えて切っちゃうのも凄い。
個人的に前回の「ザ・スクエア」より良かった。
どうでもいいけど、前回がスクエアで今回はトライアングル。次回はサークルかな?
米アカデミー賞最有力候補の「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」。
前作の「スイス・アーミー・マン」もぶっ飛ん出たけど、今回はさらにぶっ飛びまくり。
こんな作品がアカデミー賞最有力だなんて凄い。。。
要約すると「納税うぜーー」ってことでいいのかしら笑
そこからあそこまで世界観が膨らんじゃうのは凄いけど、ちょっとついていけない部分も多々あり。
確定申告の時期なので、イラついてる人は見てもいいかもw
個人的にはgleeに出てたハリー・シャム・Jrが出てて嬉しかった。
主人公の父役のジェームズ・ホンさん94歳って凄すぎる。。。
米アカデミー賞の発表は明日!どうなることやら。
邦画だと、やっぱり「エゴイスト」。
もう、引きづりまくった映画だった。
他人のためにっていうのは最大のエゴかもしれない。
逆に最後の阿川佐和子が放った一言は、純粋に自分のわがままで、それはエゴじゃないんだよな。
宇多田ヒカルの「誰かの願いが叶う頃」を思い出した。
それにしても阿川佐和子がすご過ぎた。
鈴木亮平もすっかりゲイになり切ってくれたし、宮沢氷魚くんが可愛過ぎて悶えた。
2人のベッドシーンはちょっと一家言ありました。
末廣亭近くを鈴木亮平が歩いてるシーンがあって、いつの間に撮影してたんだろうと思った。
「ひとりぼっちじゃない」は井口君出てるから観てみた。
あんま覚えてないけどなんとなく昔観た「贅沢な骨」っぽい空気感だなぁと思ってたらプロデューサーが行定さんだった。
この映画もまた店の近くで撮影してた。。。会いたかった。。。
井口君を主演にしながら音楽がほとんど出ないところは好感が持てたけど、終始雰囲気で誤魔化してる感があって映画としては低評価。
何故か東出昌大が出てる2作、「とべない風船」と「Winny」。
前者は三浦透子目当て、後者はテーマが気になって。
両作品とも一生大根役者だと思ってた東出くんが何故か演技上手くなっててびびった。。
特にWinnyは開発者の金子さんを見事に演じきってた。
それにしても吹越満凄すぎる。
Winnyは実際利用してないけど、この事件はその後の日本のソフト開発に大きな影響を及ぼしたのは間違い無いですね。
金子さんの技術はその後ブロックチェーン等に応用されてて今も生きてます。
あんなことさえなければ、と悔しい気持ちしかないです。
以上!
「Kunisaki House」by レイチェル・ホワイトリード /「ANOTHER TIME XX」by アントニー・ゴームリー

















ある日お店でお客さんとイギリスアートについて話していた時のこと。
レイチェル・ホワイトリードの彫刻について熱く語っていたらお客さんが調べ始めて、
「日本にもあるんですね」
とか言い出して、いやいやあるわけないだろ?と見せてもらったらなんとあった。。。
それは去年大分県は国東半島にこっそりできてたガチガチのホワイトリード作品。。。
えええええええええええええええええええええええええええええええええ
となって、いてもたってもいられず観に行っちゃいました・・・。
ホワイトリードの作品は、普段我々が暮らしている空間というものを改めて目の前に示してくれます。
彼女の作品は、キャスティング(鋳造)という方法でヴォイドをボリュームに替えるのです。(不在を実在に替えるとも言える)
1993年、彼女はArtAngelの協力で、ロンドンにあった空き家にコンクリートを流し込み(正確には内側に吹き付け)、外壁を外すことで家の虚実を反転させてしまいました。
この作品は瞬く間に話題となり、「これはアートなのか」と賛否両論が持ち上がったのです。
展示期間中壁に落書きされるは、ホームレスが中に住み着くは、挙げ句の果てにあるミュージシャンがこの作品に「最悪アート賞」を送ると言い出すはで大変な騒ぎになりました。
結局この年のターナー賞は見事彼女の手に渡りました。当時まだ20代。凄すぎる。
その後もこの一貫したキャスティングという方法で様々な空間を彫刻化してきた彼女。
特に2006年にテートモダンのタービンホールを埋めた1万4千個ものダンボールの型は圧巻でした。。。こちら。
しかし彼女の代表作「house」は現存せず、見てみたかったという思いは尽きません。
オーストリアのウィーンにある「ホロコースト記念碑(無名図書館)」は、まだそれに近いけれど遠いしな、、、と思っていたらまさかの大分県!!!
僕の中で行かない手はないのです。
というわけで行ってきました。
今回は小倉からレンタカーを借りて、約2時間強。
車を停めて、テクテク看板の通り歩いていくと、普通の住宅街の中に突然現れました。。。
積年の想いがありすぎて、こんなにあっさりご対面できるとは思わず焦りました笑
お隣の家の庭でおじいちゃんが普通に庭いじりやってる側にこんなのがあるなんてシュールが過ぎるよ!笑
ロンドンの「house」とは違って、日本家屋がこんなにもくっきりキャスティングされるとは。。。
それにしても存在感がやばすぎる。。。
美術館ではいくつか観てきたホワイトリードだけど、建物をその場所でそのままキャスティングしているので、ここに住んでいたであろう人々の記憶もそのまま封じ込められているようで、眺めながら色んな思いが駆け巡りました。
ディテールを見ていくと、襖の取手やその質感までもコンクリートにくっきり写っていて衝撃。。。
欄間なんかも日本家屋ならではで面白すぎ!!!
こんなものがこんなにひっそりと存在してるなんて。。。
調べても地元の情報しか出ずに、日本のアートメディアはマジで何やってるんだ。。。
ホワイトリード、確かに日本ではそこまで知られてないとは言え。。。
以前、森美術館のターナー賞展の時に来日していて、これは何かプロジェクトか展覧会の布石かと思いきや何もなかったし。。。
遠かったけど来て本当に良かった。。。
本当に貴重な作品なので、ぜひ観に行ってください。こちら。
ところでこの作品は、NPO法人BEPPU PROJECT(以下BP)によるものです。
このBP、以前にも別府市内で目や梅田哲也、塩田千春、そしてなんとアニッシュ・カプーアの展覧会まで実現させてきました。
2014年には国東半島アートプロジェクトという催しを開催しました。
この時に設置された作品が今でも残っていて、その中でもダントツ見てみたかったのがアントニー・ゴームリーの作品です。
五辻不動尊というお寺の近くの崖の上に設置されてる像で、これが本当に大変だった。。。
まず車で、本当にこんなとこっていう森の中をひたすら走ります。
小一時間人っ子一人会わなかった。。。
駐車場に車を停めるとそこからひたすら山を登る登る。
20分くらい登って広場に出たと思ったら、さらに険しい山道を登る。
まさに鳥取にある投入堂を思い出しました。
最終的に、マジで一歩間違ったら滑落しそうな場所に設置されてた。。。
眺めは最高でしたが。
朝に小倉の旦過市場で買ったおはぎを頬張りました。うまし。















それにしてもこんな鉄の塊をどうやってこんな場所に。。。と思ってたら設置の方法まで詳しく書かれてるブログを発見したので貼っておきます。こちら。
そしてついでなので五辻不動尊も見てきたけどそもそもこの建物がクレイジーだったw
アートと宗教ってやっぱり紙一重ですね。。。





国東半島には他にも作品があるんだけど、個人的に観たかったのはこの2つのみ。
他にも気になる方は以下の記事等参考にして是非行ってみてくださいー。
ゴームリーから島袋道浩まで、国東半島でアートを巡る (美術手帖)
北九州市立中央図書館 by 磯崎新

宇部から北九州に渡り小倉に行ってきました。
東京来てから何故か北九州出身の人と知り合う機会が多いのですが、彼彼女らから聞く故郷の話が恐ろしすぎて行く前は結構怯えてました笑
やれ現役手榴弾が出てきただのやれロケットランチャーが出てきただの。。。
ブラジルのファベーラかよ!という修羅中の修羅なお話が続々と出てくるのです。
でも行ってみるとめちゃくちゃ都会で最高だった。
旦過市場のおうどんも沁みました。。。
そんな小倉に何しに来たかというと、昨年末に亡くなった磯崎新の建築を見る旅でした。
磯崎新、正直得意な建築家ではないんですが、一昨年大分のアートプラザ見た時に、初期作は凄いのでは、という期待で北九州にある2つの建築を見に来たわけです。
というわけで、まずは北九州中央図書館から。
小倉城のお隣に位置する中央図書館。
1975年の竣工で、これまた磯崎の代表作です。
遠くからでもわかるダブルかまぼこの緑の屋根。
なかなかいいんでないの?と外観からも想像できました。
外観は補修工事が入ってて全てはわからなかったけど、50年近くも経ってるのにものすごく綺麗。
さらに中に入るとびっくり仰天!!!
いやいやめちゃくちゃええやんけ!!!
外観から見ていたかまぼこ屋根がコンクリート剥き出しの状態でアーチを描いていて神々しい空間になってた。
図書室は微妙にスロープになってて、本棚や机の配置も絶妙!
興奮してめちゃくちゃ写真撮ってました。
お受験の時期なので黙々とお勉強してる受験生を尻目におじさんはしゃいじゃいました。ごめんなさい。。。
図書館の奥には子ども図書館もあり、こちらも図書館同様素晴らしい。。。
お隣の文学館は2020年にリニューアルしたようで、ちょっと綺麗になりすぎてたかな。。。
薔薇窓もちょっと狙いすぎでは。。。
とはいえ本当に素晴らしかった。磯崎建築でダントツ一位の建築です。
北九州来られる方はぜひお立ち寄りください。こちら。
ちなみに中の写真撮る際は許可がいるので受付で申し出てください。



































続いてバスに乗って北九州市立美術館へ。
こちらは図書館より一年早い1974年に竣工。
2つの直方体がキャノンのように突き出してる外観が特徴的で「丘の上の双眼鏡」とも呼ばれてるんだとか。
それにしてもデカイ。。。めちゃくちゃデカイ。。。
中はどうなってるんだろうと思ったけど、展示室は3階にしかなくて、このデカさに対して見応え少ない。。。
まあ、コの字型の展示室でシンプルなので順路に迷うことはないしいいっちゃいいのですが。
コレクション展と浮世絵の展示やってたけど、肝心の「双眼鏡」は塞がれてて残念でした。。。
コレクションにはバスキアなんかもあって、珍しくキャプションに収蔵年が記載してたから見てたら、バスキアの1983年の初個展で出した絵で、収蔵したの翌年の1984年ってなってるんだけどマジ!?
確かバスキアって生前黒人ってこともあって中々アメリカの美術館が買わなかったんだけど、それよりもっと前に買ってるって凄すぎる。
あとは石川直樹とか現代もあったので、まあまあ楽しめました。
お隣のアネックスは市民ギャラリーになってて、行った時何もやってなかったけど、中庭とかバブリーすぎておったまげました。。。
1974年って別にバブルでもないと思うんだけど、物凄く贅沢な作り。
2015年には改修工事もあったそうだけど、一部崩落してたり大丈夫なのかな。。。
図書館のついでにどうぞ。こちら。















maison owl by 石上純也

山口県は宇部へ。
宇部ビエンナーレに出品したりその後もワークショップで呼ばれたり、何かと縁のある場所。
多くの人が一生に一度訪れることもないかもしれない場所なのにもう10回は来てるかも。
で、今回は宇部ビエンナーレではなく建築が目的です。
そう、石上純也の手がけた洞窟レストランへ!!!!
このプロジェクトが動き出したのは2013年。もう10年も前のお話。。。
シェフの平田基憲氏が友人の石上純也に「できるだけ重々しい建築を設計してほしい」との依頼したのが
石上純也の出世作の薄いテーブルは平田さんのかつて宇部にあったnoelというレストランのために作ったものなのでした。
「時間と共にその重みを増していくような建物がほしい。ツルツルのものではなく、自然の粗々しさを含むような建物。本格的な料理にはそういう空間が必要なんだ」「昔からずっとここにあるようで、これからもあり続けるようなもの」といった要望を受け始まりました。
そこから設計に3年、2016年に工事が着工しました。
よくもまあこんなものを引き受けてくれた業者がいたもんだな、と思います。
現場はもはや遺跡の発掘現場状態。
石上純也の図面を元に土地を掘っていきます。
そこかしこに開けた穴にコンクリートを流し込んで、その後また土を掻き出していく。
現場の写真見ても「壮絶」としか言いようのない状態。。。
最初の計画では、土は洗い流し、コンクリートの灰色の躯体が現れるイメージだったが、土がこびりついている状態を見てそのまま残すことに決めた、とのこと。最初からそのつもりじゃなかったのが意外です。
なんとか躯体ができたもののそこからが長かった。
3Dスキャンで躯体のギザギザを計測してそこからガラスを切り抜いたり、大きなガラスを嵌めるためにまた地面を掘り返したり。。。
シェフの今はなきツイッターに当時「建築に締め切りはないの?」とか「そうか、サクラダファミリアも蟻鱒鳶ビルもまだできてないんだ!」とか#高校生の自分に教えたいことというハッシュタグをつけて「卒業して上京したら東京芸大の建築学部の人に出逢うけど、深入りするな、、、」とか書いててシェフの苦悩が思いやられました。。。
とは言いつつ、2021年には石上純也の東京パビリオンでも出張レストランやったりなんだかんだで友情はつながっているようです笑
てなわけで宇部新川からタクシーで現地へ。
タクシーの運ちゃんに「maison owl」って言ったら、「ああ、洞窟レストランね!」と返ってきました。
やはり県外から連日沢山のお客様を乗せてらっしゃるそうです。。。すごい。
で、到着って言われて着いたのが上の画像のとこなんですが、え?と戸惑いました。
どこに?と思ったらこの塀を登った先にありました!!!












いやはやもうわけがわかりませんが、とりあえず中へ。
















はい、中も意味わかりませんw
ガラスの切り方変態すぎる。。。
ちなみに椅子も机も石上純也デザインです。
我々が到着したのが17時くらいで、17時半からディナースタートだったのですが、18時過ぎくらいに是非夕景もご覧くださいということで再び外へ。






確かに美しい。。。
中も美しいです。






そんなこんなで建築を心ゆくまま堪能。
せっかくなのでお料理の写真も。
馴染み無さすぎて何回説明されてもよくわからなかったけど美味でした!











いやはやすごい体験だった。。。
この日はたまたまこの建築を担当された元石上事務所の中山拓也さんがいらして、詳しく説明していただきとてもありがたかったです。
これボランティアなのかな。。。いちいち心配になります。。。
彼は卒業してすぐこの現場に張り付いてて、今や宇部に移住して自身の設計事務所を立ち上げたんだそう。
苦労多そうだな、、、と思いやられながらお話聞いてました。
うちの店の名刺渡したら来たい!と言って頂けたのでその時にでもじっくり聞いてみます笑
ところでこのレストラン、今の所招待制となっております。
といっても、お店のinstagramをフォローしていれば、専用サイトをストーリーに上げてくださるのでそのタイミングで予約が取れます。こちら。
3ヶ月先までの予約が可能です。
但し、僕がこの日頂いたソフトドリンク付きコースで4万円(税抜き)。
お酒付コースを頼むと7万円になります。。。
で、さっき予約ページ改めてみたらソフトドリンク付のコース5万円になってた。。。
中々のお値段ですが、余裕のある方は是非。こちら。
僕が行った時はまだでしたが、宿泊プランもご用意されてるそうです。
一泊30万ってタクシーの運ちゃんが言ってたけどホンマかいな。。。
工事中の写真やら完成写真やらはarchitecturephoto.netさんに詳しいので見てみてください。
いやはや稀有な体験でした。ご馳走様でした!
ちなみに予約もせずに突然行って写真だけ撮っていく輩(主に建築学生)がいるみたいですが、ここは住宅地の中にある為近隣の方々から苦情が続けば営業ができなくなってしまいます。
気持ちはわからないでもないですが、絶対やめましょう。
<関連記事>
水庭 by 石上純也
石上純也「木陰雲」@ 九段ハウス
KAIT広場(竣工前) by 石上純也
KAIT工房 by 石上純也
石上純也展ボランティア@豊田市美術館
石上純也展「建築はどこまで小さく、あるいは、どこまで大きくひろがっていくのだろうか?」@SHISEIDO GALLERY
石上純也「建築のあたらしい大きさ」@豊田市美術館
どうでもいいんだけど、折角なので某アニメの聖地巡礼もしてきました。







清水裕貴「よみがえりの川」@ スタジオ35分





















現在当店でも開催中の清水裕貴「よみがえりの川」ですが、同タイトルの展覧会が新井薬師はスタジオ35分でも開催中です。
35分は本日最終日!
今日は18時から清水さんによる「ふしぎなワイン会」というイベントもあるみたいです。
この35分については以前店主の酒さんとインタビュー動画撮った時の記事をご拝読いただければと。こちら。
そんな憧れの35分と今回コラボできたのは本当に大きかった。
清水さんをお迎えするにあたり、折角の写真なので、ぜひ酒さんとご一緒したかったのです。
実際快く引き受けてくれて、清水さんを紹介したり、打ち合わせしては忘れる酒さんに何度も確認したり(笑)、今回は展覧会が出来上がるプロセスも本当に楽しかった。
酒さん、一緒に展覧会作ってくれてありがとうございます。
そして清水さんも、2会場も本当に大変だっただろうけど、両会場とも素晴らしい展示でさすがすぎます。
清水さんは本当にできた人なので最初から何の心配もなかったけど、ちょっと無理させてしまったかな、とも反省もありますが、2つの会場、特にどちらもギャラリーバーという特殊な場所が「よみがえりの川」という物語で繋がったのはとても美しい出来事。
ぜひ両会場とも訪れてみてください!
2月25日に開催された山田俊二さんによるピアノの演奏会の時の模様がSpotifyに上がってますのでこちらも是非お聞きください。
第24回ラジオ35分 小さな演奏会 山田俊二
A'holic (東京都新宿区新宿3-11-1 高須ビル3階)
清水裕貴個展「よみがえりの川」
2023年2月16日(木) - 3月21日(火)
18時-24時 水曜休
*ワンドリンクオーダー制
*感染症対策にご協力下さい。
スタジオ35分 (東京都中野区上高田5-47-8)
清水裕貴個展「よみがえりの川」
2023年2月8日(水) - 3月4日(火)
16時-22時 日・月・火曜休