内海聖史展 Coriolis -コリオリ- @ Bunkamura Box Gallery

内海さんの個展初日にお邪魔しました!
作品が凄いのは言うまでもないですが、今回も「仕掛け」が凄いです。
入り口入るとキャンバスに描かれた作品と鏡とカラーアクリルが組み合わされたものが壁にずらりと並びます。
鏡の作品は那須の個展で初めて見たけど、今回カラーアクリルと組み合わさられることで、「あらゆる時間」とのリンクも見られました。
そこに映し出される他の作品の在り方も面白かったです。










そしていよいよ大作のお目見え。
作品自体が壁となっていて、観客の動線を作っているという「仕掛け」でした。
タイトルになってる「コリオリ」とは慣性の法則を発見した人の名前だそう。
内海さんは元々かなりの展覧会ウォッチャーなのですが、動線に着目するのはその辺りの観客側の目線もわかっているからこそですよね。
ちなみに内海さんの作品をいつも観ている方が、大作はどうせ裏側しか見せないんでしょって観る前に引き返してきたってエピソード凄い笑
前の三越の時も確かに見えない作品ありましたもんねw
それにしてもこの大作凄い。
色彩もそうですが、いつも以上に荒々しい絵の具の染みみたいなのが見受けられて面白かった。
写真に撮ると床に映る色彩も美しい。。。
色彩に包まれる感覚は内海作品の真骨頂。至福でした。
そして、普通観られない絵画の裏も見えるのがお得。
僕は絵画を見る時淵の部分も見るのが好きなんです。
そこにその絵画の描かれるプロセスが垣間見えるから。
今回更にその先の裏側も見れて楽しかった。
内海さんの作品はまた、この「仕掛け」を作り出すための小道具も凄い。
今回額屋さんに頼んで作ってもらったとのこと。
搬入大変だったろうな。。。








そして、実は「仕掛け」はこれだけではありません。
外にも展示があるんですが、なんと色付き鏡は外の作品の色とサイズが同じ作品があり、同じく外の色付き鏡はギャラリー内の作品と色とサイズが同じなのです。
この補完関係はアートフロントの時の展示とリンクしますね。
プライスリスト見てたら作品と鏡がセットで販売されてた笑




この展覧会は5月5日まで。会期短いので急いで行ってください!こちら。
ちなみにお隣のギャラリーでは金子國義展がやってました。
あまり期待せず観ましたが、版画を中心に大型の油彩画なんかもあってびっくり。
下のミュージアムでもボテロ展が開催されてるのでGW予定ない方は合わせてどうぞー。
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「panorama すべてを見ながら、見えていない私たちへ」@京都芸術センター
内海聖史「ボイジャー」@eN arts
風景ルルル@静岡県立美術館
吉田志穂展 @ Yumiko Chiba Associates/ニコンプラザ東京 THE GALLERY





第46回木村伊兵衛賞を受賞した吉田志穂さんの2つの個展が新宿でやってたので行ってきました。
彼女の写真は昨年のCHIBA FOTOや新進作家展で観てるのだけど、作品観ただけではよくわからず結構スルーしてしまっていた作家でした。
今回賞を受賞されたことで、改めて解説などを読んでようやくどういう写真なのかなんとなくわかってきた次第です。
賞なんてお飾りではあるものの、やっぱり賞をとることで注目されてその作家のコンセプトを理解されることもあります。
特にコンセプチュアルな作品はパッと見では理解されないので、然るべき審査員たちがしっかり取り上げるのはとても重要。
特にこの木村伊兵衛賞は日本のアート賞の中で最も重要な賞と言っても過言ではないかと。
その辺の詳しい説明は僕のオンライン授業でやってるので気になる人は買ってください笑 こちら。
こういう現代アートの賞も作って欲しい。。。
で、作品です。まずはYumiko Chiba Associatesで開催中の「測量|山」。
改めて観ても難しい笑
彼女の作品はネット上で見つけた「風景」の画像と、実際現地に赴いて撮った写真を組み合わせるといった手法で構成されています。
ただ、その二つの極は等価で並べられてるのでどれがネットの画像でどれが実際彼女が撮った写真なのかよくわからないのです。(しっかり見ればわかるのかな??)
面白いのが、写真そのものの在り方がとても「PROVOKE」的だということ。
「PROVOKE」とは中平卓馬や森山大道が1968年に創刊した伝説的な写真同人誌で、その中の写真がどれも「ブレ・ボケ・アレ」と称される、荒々しく斬新なスタイルで日本写真界に多大なる衝撃と影響を与えたものでした。
彼女の写真もとても荒い粒子でできてるものが多くて、現代の写真とは思えない不思議な存在感を放っています。
そして、ネットで見つけられた画像というのもファウンドフォトの系譜を踏んでます。
それらの伝統的または古典的とも言える写真手法とは裏腹に、ネットと現実の構成というのがとても現代的。
賞の評にも「コロナ時代」とのリンクがフィーチャーされてますが、確かに中々旅をしづらい現在(僕はしまくってるけどw)、グーグルマップとかで行きたい場所の画像を見ては行った気になるヴァーチャルトラベルやってる人も少なくはないのではないでしょうか。
若い人で海外興味ない人が多いという話もよく聞きますが、もはやヴァーチャルで事足りてしまうというのはとても現代的な感覚なのでしょうね。僕は絶対現地行きたいけど。
更に、これだけ画像が溢れてる現在において、改めて写真を撮るというのはどういうことなのかということも、彼女の写真は突きつけています。
続いてニコンプラザの展示。
こちらは新進作家展でやってたようなインスタレーション的な展示。
僕は写真家ではないので、やはりこういった展示が好き。
新進作家の時も独特な光の当て方をする人だなぁと思ってましたが、今回更にエッジが効いています。
写真を床に並べて、一筋の光を当てたり、写真のないところに照明が当たってたり。
こちらの展示ではそもそも「観る」とは何かを突きつけている感じがします。
どこか発掘現場のような雰囲気も漂っていて、彼女の考古学的視点も現していて面白かった。
こうして2つの個展を通して多視点的に観せられるのは素晴らしいです。写真集買おうかな。。。
Yumiko Chibaは5月14日まで。ニコン東京は4月30日まで開催後5月19日から大阪に巡回します。




ちなみに今回の木村伊兵衛賞では同級生の山元彩香もノミネートされてて受賞逃しちゃったんですが、またいつか受賞して欲しい!
安喜万佐子展 「時の海・明日の地層」 @ FEI ART MUSEUM YOKOHAMA


大学の先輩であり大尊敬する作家の一人、安喜万佐子さんの展覧会に行ってきました。
相変わらずの圧倒的な仕事量で凄過ぎた。。。
まず会場入って左手に現れる東北の森を描いたという作品「カオス・フロム・オーダー、オーダー・フロム・カオス (北の森)」(2019-2020)。
光の粒子が立ち昇っているかのように樹々を茫漠と浮かび上がらせています。
彼女の作品の特徴である、「風景」の「景」。
「景」とは本来影のことです。
英語では「Scape」と訳されますが、この言葉では到底測れない射程のある言葉なのです。
彼女はこの「景」をこれまでのキャリアで描き続けてきました。
この森の「景」は眩暈を覚えるほど鑑賞者を眩ませます。
今回東北の森を描いた作品がもう一点出ているので見比べるのも興味深いです。



上記の絵画はテンペラという古典技法で描かれているのですが、同じ技法で都市を鳥瞰図のように眺めた作品群「Obliterated Ground」も彼女の代表シリーズの一つ。
こちらは光というより雪のイメージに近い気がします。
これも近くで観るのと遠くで観るのとで印象がとてつもなく変化する作品。
ただただ都市を俯瞰するのではなく、この絵画の元となるのは地面を擦って描くプロッタージュ。
このプロッタージュを元にして、都市を形成していくのですが、現在の景色もあれば、今はもうない過去の景色をコラージュのようにしてはめていくのだそうです。
時間や記憶といったものもこの作品には込められています。


そして今回新作として出品されていた新作には本当に驚かされました。
コヴェントリーというイギリスの都市を描いた作品なのですが、なんと上部には大聖堂が唐突に描かれていたり、戦争の頃の写真を元にした人々の顔のようなものが挿し込まれていたりと、もはや「風景画」とも言えない不思議な画面となっていました。
特に近代以降、「絵画の死」という言葉が浮き沈みを繰り返していますが、この絵を観る限り絵画は死んでいないと言わざるを得ません。
この作品はどうやっても絵画にしかでません。
遠近法を消失させ、別の時間や空間が同時多発的に一つの画面に発生していて、観れば観るほど大混乱に陥りますが、とても心地いいカオスを形成しています。
ちょっとまだまだ整理つきませんが今はこんなところかな。。。



それからこの10年程取り組んでいる金箔を用いた絵画たち。
これらの作品群は彼女の一つの到達点と言っても過言ではありません。
本来絵画には図と地という概念があるのですが、この絵にはそれらは逆転しています。
ボローニャ石膏で施された地と、金箔で覆われた部分が、従来の絵とは逆転しているのです。
つまり本来図のはずのモチーフ(樹々や烏)が地の部分になり、本来地(背景)の部分が金箔で覆われています。
しかも、モチーフが白い「景」と化すことによって、それらの遠近も失われています。
どちらが前にありどちらが後ろにあるかというのはこの絵の中では大きさで推測するしかなく、しかし実際のモチーフ部分は真っ平らの白い地なのです。
しかも今回の目玉の一つとも言える13枚のパネルで作られた「沈黙の水鏡、暁の烏」(2020) に至っては天地すら逆転しています。
タイトルの水鏡からするとこの場合逆転すらしてるのは水鏡に映った像であって絵画ではないのもさらに混乱を招く仕掛けがあるのが凄い。。。
そして、本来天も地もないはずの烏が舞っている空すら、この絵を観ていると天地逆転している気がするのがもうわけがわかりません。。。。
ずっと彼女の作品は観てきていますが、ここまで来たか。。。という驚きを隠せませんでした。
それにしても烏がカッコよすぎて泣いた。。。
以前シアトル美術館にある「鴉屏風」を指して、こんな絵が描きたいと仰ってたけど完全に自分のモチーフに落とし込んでいました。
金箔ではないけれど、青い画面の「暁の烏」(2020)もカッコよすぎた。。。







最後の部屋には、近年映像作家の前田真二郎氏とコラボレーションしている、金箔の松林図に映像が投射されている作品。
また英語の「Landscacpe」と日本語の「風景」の話に戻ると、この言葉の「Land」と「風」にも大きな違いが現れています。
「Land」。つまり大地は動かないものと「風」、常に動くもの。
「風景」という言葉には常に変化し続けるものという意味も込められているように思います。
なんだったら日本にはおいては大地だって揺れ動いてしまうんですが。
この松林図には、映像が投射されることで「風景」という言葉に込められた動きも加えられています。
ちなみに松林図と聞くと長谷川等伯の作品を思い浮かべますが、あの屏風絵も水墨画によって見事に動きが取り入れられています。

最後に、今回ロックダウン直前にロンドンで制作されたプロッタージュも展示されていました。
一つは木炭で和紙に擦られたロンドンの地面ですが、もう一つは顔料を和紙に着けて、ロンドンの雨によって「描かれた」作品。
なんとここに来て手すら使わない作品が登場しました。
この作品には安喜さんの新たな一手の予兆のようなものを感じてしまって、まだまだ進めるんだ!と震えました。
今後も楽しみで仕方ありません。

この展覧会は4月28日まで。是非!こちら。
池田慎「うつくしい日々」@ gallery noie, noie extent

都立大にあるnoieというギャラリーに初訪問。
ここは額縁屋さんがやってるギャラリーで2会場あります。
ここで今池田慎さんの個展が開催中です。
池田慎さんはうちの店のお客さんが教えてくれた作家さん。
画像で作品を観て一瞬で惚れました。
今回ようやく実物を拝めるというので楽しみで楽しみで初日からお邪魔しました。
百聞は一見に如かず。まあご覧ください。
まずはextentの方から。











伝統的な刺繍の施されたダンボールに写真にスルメ、紙幣で作られた家、暖簾のかかった拳銃。。。
かわいい!かわいい!かわいい!
いやはやどれもこれも変態的所業であります(褒めてる)
相当な仕事量なんだけど、見た目がとても軽やかでバランスが素晴らしい。。。
紙幣の作品は実際に使った紙幣分の値段で買えてタイトルもそのまま。
電気コードで編み込まれたマスクと実際に点灯してる電球の作品のタイトルは「ソーシャルディスタンス」w
どれも機知に富んでて素晴らしいです。
そしてもう1会場。
こちらはトロフィーをモチーフにした作品たち。
天井まで届きそうな長いトロフィーは電球を点けるためのスイッチでしたw




そしてこの日はうちの店で永遠にかかってる僕のヒーローとんちピクルスさんのライブが!!
こんな俺得なことがあっていいのでしょうか。。。
この日はアコースティックで普段聴けないような曲が沢山披露されて最高でした。
背後に見えるのも池田さんの作品。

というわけで超超オススメな展覧会なのでぜひ!4月29日まで!こちら。
実はうちの店でも来年あたり池田さんの展示ができないかと計画中です。お楽しみに!!
Nerhol Naturalized Species @ イセタン ザ・スペース









変態的技巧系繋がりでNerholの展示。
特に好きってわけでもないんだけど近くの伊勢丹でやってたので。
今回は植物をモチーフにした作品群。
特に木の年輪みたいな作品は、彼らのやってる地層を掘り出すような作業ととてもマッチしていてとても良かった。
あと石みたいな作品があって、これは珪化木という長年土の中で圧迫されることによって石のようになった木らしい。半分に切られてるんだけど、作品としてどういうものなのかはよくわからなかった。
5月8日まで伊勢丹2階でやってます。
それよか終わっちゃったけど伊勢丹のウインドディスプレイでの展示が滅茶苦茶カッコよかった!
前回もMAKI GALLERYの展示だったけど、ディスプレイx現代アートいいですよね。
折角なので搬入時の写真も。








ヴァーチャル・ボディ:メディアにおける存在と不在 @ 東京藝術大学大学美術館 陳列館









技巧系でもなんでもないけど話題になってた展示。
長谷川祐子監修のアートプロデュース専攻の学生たちが企画した展覧会。
仮想性と身体というのはこのコロナ時代に更に重要になった要素に着目したキュレーション。
でもまあ、ちょっと思考的過ぎて特に2階の展示はわかりにくかった。
僕はヨコトリで観た鄭波のシダ植物と交わる映像を観られるというので行ったのもあって、やっぱりこの作品最高に美しくていつまでも観てられる。。。
会期終了。
ところで久々に不忍池通りかかったんだけど、水鳥たちが囀りまくっててこんなに桃源郷みたいな場所だったのね。。。
東京ってやっぱり奥深い。

4月18日(月)より再開します。

今村くんの作品の搬出も終え、これまでの作品を改めて展示し直しました。
なんだか常設展って感じでとても良いです。
4月18日(月)より再開となります。
企画展示期間以外は水・日曜が休みとなりますのでご注意ください。
新たなコレクションが増えました。
まずは先日まで展示してくれていた今村くんの「境界線上の光(2021/9/9 14:17 アトリエの木漏れ日)」と「ユビキタスと雨宿りのためのドローイング」。
瓶の作品は先日まで展示していたものとは微妙に違います。わかるかな。。。


お次は横村葵さんにお店をイメージして描いて頂いた「窓に、夜に」。
よく見るとお店の風景になってます。見比べてみてください。

最後に稲田明日香さんにこれまたお店をイメージして描いてもらった「scene A」。
柱に窓があったらというイメージで描いてくれたそうです。ずっと見てられる美しさ。。。


新しいお酒も入りました。
辰巳蒸溜所のアブサンと虎ノ門蒸溜所のホーリーバジルジン。

そしてもちろんBBA定食も。
豆ご飯、肉じゃが、しじみ汁、白和え、ほうれん草のお浸し。
豆ご飯の豆は大阪から取り寄せた和歌山のウスイエンドウを使います。
この豆で炊いた豆ご飯が最高なのです。。。


ご来店お待ちしてまーす!
「見えるもの、その先に ヒルマ・アフ・クリントの世界」by ハリナ・ディルシュカ
ヒルマ・アフ・クリント。
この名前を最初に知ったのは岡崎乾二郎の「抽象の力」。
p27から30まで4ページに渡って書かれた注釈にヒルマが紹介されていて、さらりと「世界最初の抽象表現」と書かれていて面食らいました。
え、こんな女性がいたなんて美術史で習ったことないよ!!
今改めてこの文章を読むとこの映画の内容がそっくりそのまま書かれていて改めてすごいテキストなので未読の方はぜひ読んで欲しいです。
話題になったグッゲンハイムでの個展より前に書かれてるのが凄い。。。
この文章を読んでからずっと喉に刺さった小骨のように気になっていたものの国内で作品が観られる機会もないまま時は過ぎて、この映画が上映されると知って絶対観に行かねば!!と。
結果、本当に素晴らしい映画だったし、美術に関わってる人は絶対観た方がいい映画でした。
東京ユーロスペースしか上映ないの勿体なさすぎ。。。DVDになったら絶対買う。
最初から最後まで目が見開きっぱなしでした。。。
本当に丁寧に彼女の人生と作品が描かれています。
ヒルマは1862年にスウェーデンの貴族の家に生まれます。
海軍士官学校の教師だった彼女の父親は、女だからといって特別扱いせずに子供の頃から数学や天文学、航海術を学ばせます。
この幼少期に受けた科学的な教育は後々彼女の絵画に大きく影響するようになります。
この頃スウェーデンでは女性に対しても学問への門戸を開いており、1864年には既に王立美術学院が女性の入学を許可しており、ヒルマもこの恩恵に肖り、1882年同校への入学を果たします。
フランスが1897年、ドイツが1919年、日本が1946年まで女性の入学を拒んでいたことを思うと相当進んでいます。
1887年に卒業後、肖像画や風景画でかなりの報酬を得ていて、街の中心にアトリエも与えられています。
このアカデミックな背景が、彼女をアウトサイダーではなく「正当な画家」たらしめていて、今美術史が彼女を無視するのは不可能な理由の一つなのです。
この頃旧ロシアのヘレナ・ペトロヴナ・ブラヴァツキーやドイツのルドルフ・シュタイナーを中心として、神智学という学問が流行っていて、彼女もその流れに乗ります。
1896年には友人ら5人の女性メンバーによる「ザ・ファイブ」を結成して交霊術や自動筆記を行なっています。
この辺りがアート界が彼女を無視してきた理由の一つなのかもしれません。
19世紀には女性特有の病として「ヒステリー」という言葉が精神医学界にしばしば登場します。
そもそもヒステリーという言葉の語源は「子宮」を意味する古典ギリシア語の ὑστέρα が由来。
詳しくはジョルジュ・ディディ=ユベルマンの著書「ヒステリーの発明」にも載っているかと。
時代が時代だったら「魔女」という言葉にも置き換えられたのかも。
1970年代にストックホルム近代美術館の館長がヒルマの作品の所蔵を一瞥もなく断ったとありますが、僕は勝手にこの「ヒステリー」と彼女を結びつけて正当な評価を下さなかったのかな、と想像しました。
ただ、この神智学というのは当時相当流行っていたようで、ヒルマだけではなくかなり多くの芸術家が信奉していた思想だったようです。
なので、交霊術と聞くとオカルトな響きですが、当時はそこまで奇怪なものではなかったのかも。
そんな中1906年にヒルマはついに「天啓」を得ます。
そこで生まれたのが彼女の代表作とも言える「The Ten Largest」。
10点組の高さ3mを超える、「世界最初の抽象表現」の誕生です。
植物やカタツムリを思わせる有機的な形態と色彩豊かな画面構成。
幼年期、青年期、成人期、老年期の四つの構成からなる作品群。
1908年にストックホルムを訪れたルドルフ・シュタイナーはこの絵を見て衝撃を受けます。
但し、彼の反応は芳しいものではなく、「この絵は発表すべきではない」という助言を与えてしまいます。
これが彼女が生前作品をほとんど発表しなかった最大の理由なのかもしれません。
それでも1915年までに「神殿のための絵画」と題したシリーズを193点も制作しています。
映画の中では、シュタイナーはこの絵の写真を撮っていて、もしかしたらその写真をドイツに帰った後にカンディンスキーやモンドリアンらに見せたのかも、という話まで出てきます。
カンディンスキーの1937年のインタビューでは、自身の抽象画が生まれたのは1910年と言っているので、それに完全に先行しているわけです。
1936年にMoMAでアルフレッド・バーJrがキュレーションした「キュビズムと抽象芸術」展に彼女の姿はありません。
1944年、ヒルマはこの世を去ります。奇しくもカンディンスキーとモンドリアンも同じ年に亡くなってます。
映画の中で、科学史家の「本当にありのままを描こうと思ったら目に見えるように描いてはいけない。創造が必要」とコメントしていますが、彼女の絵画は本当に世界を「ありのまま」描いた結果だったのだと思います。
1906年の彼女の日記に「私が行った実験は、人類を驚嘆させるだろう。」と綴っています。
それはその100年後の現在現実のものになっています。
2013年のストックホルム近代美術館から始まった彼女の展覧会は、欧州を回って100万人以上の動員を記録します。
2018年のグッゲンハイム美術館での回顧展には、同館市場最高動員数の60万人を記録するのです。
特にグッゲンハイムの螺旋状の建物は、彼女の思い描いていた「神殿」の姿にとても似ていて、そこで彼女の回顧展が開かれた意義は大いにあったことだと思います。
それにしてもなぜ死後「20年」発表しないと遺言に残したのか。
そして、誰がどのようにして彼女を「発見」するに至ったのか。
その辺りがあまり詳しく描かれていなくて謎が残りました。
こうした画家は歴史上数多くいるだろうし、ヒルマは氷山の一角なのだと思います。
ただ、甥が彼女の全作品とメモを残していたのは本当に奇跡だし、あんな紙に描かれていたものが、お世辞にも最適とは言えない保存環境でしっかり残っていたのは凄いとしか言いようがないです。
日本でも彼女の展覧会、是非実現して欲しいものです。ハマスホイ以来のヒットになる予感。
他に、イメフォのアピチャッポン特集の「アピチャッポン本人が選ぶ短編集」を鑑賞。
短編10作品が一気に観られるとてもお得な内容だったと思います。
短編になると、より監督の嗜好が凝縮されているようで、しかもこれだけまとめて観るととても濃度の濃い内容でした。
彼は映画を「単なるフィクション」と位置付けていると同時に、「起きている時に見る夢」と捉えているんだろうなぁと思いました。
しばしば出てくる映画を作るメタ構造 (「国家」、「Footprints」、「Worldly Desires」)
夢の中にいるような神秘的な映像 (「La Punta」、「M Hotel」、「エメラルド(Morakot )」「Cactus River」、「燃えている(Ablaze)」)
中々短編は観られる機会がないのでとても貴重な上映だと思います。4/22まで。
あと、ウェス・アンダーソンの「フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊」と、レオス・カラックスの「アネット」を鑑賞。
どちらもクセの強い監督なのでよっぽど好きじゃないと入れないかも。僕はやや無理でした。。。
今村遼佑個展「ユビキタスと雨宿り」終了しました。

昨日をもちまして、今村遼佑個展「ユビキタスと雨宿り」終了しました。
途中中断もありつつなんとか最後まで無事終えることができました。
お越し頂けた方々、また作品ご購入頂いた方々、誠にありがとうございました。
開店以来流し続けていたBGMを消し、作品が奏でる微かな音に耳を傾けながら、普段お店ではこんな音が鳴ってたんだという気づきを改めて頂いた展示でした。
バーの語源は「宿り木」だと言います。
今村くんから「雨宿り」という言葉をもらった時にカチッとハマりました。
またお店にはとんちさんの音楽が戻ってきます。
次の展示は7月を予定してます。お楽しみに!
お店は搬出作業のため4月17日(日)までお休みです。
17日(日)に予定していた静岡おでんPARTYは諸事情により延期となりました。
18日(月)からは水曜と日曜がお休みになります。よしなに!

















