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美男におわす @ 埼玉県立近代美術館

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タイトル見た瞬間から何じゃこれ!?と気になってた展覧会。
昨年開催予定でしたがコロナによる延期からいよいよ開催となりました。
この「美男におわす」というタイトルは、与謝野晶子の句から取られた一説。
美人画はあれど美男画がないのはおかしいというところから始まったそうです。素敵!
この企画を起こしたのはこの後巡回する島根県立石見美術館で、この美術館では2014年に「美少女の美術史」という展覧会を企画されたそうで、その続編として立ち上がったとのこと。
この「美少女の美術史」もめっちゃ気になる。。。
言い方悪いですが、こんな超がつくほど地方美術館がこれだけ攻めた内容の展覧会を企画されてることに感動します。
島根に比べるとまだ埼玉近美は首都圏ではあるものの、こちらも東京と比べるとやはり地方美術館。
自らを「インディーズ美術館」と称して、独自の企画をやってます。
特に東京に住むようになってから埼玉近美は結構通ってます。
僕的にはインディーズというよりオルタナティブという言葉がしっくり来ます。
東京では観られないものが観られてそこまで遠くない美術館として稀有な存在。
そして今回の企画は本当にオルタナティブで素晴らしい企画でした。

冒頭は江戸から明治大正にかけて描かれた伝説の「美男子」の肖像。
釈迦から歌舞伎役者まで「美男」の概念を冒頭から考えさせられます。
実際与謝野晶子の句も鎌倉の大仏を見たときの感動を詠んだものだそう。
やや静かな幕開けで始まった本展は、次の「愛しい男」からいきなり爆発します笑
まず江戸期に描かれた「若衆」は、観ていてドキドキする。
この時期「蔭間茶屋」という、若い男が旦那衆に性を売る風習がありまして、この若衆たちは飛ぶように売れたんだとか。
以前何かの本で、彼らがあまりに売れるもんだから、女も若衆の格好をして対抗するという倒錯があったってw
今よりよっぽど自由ですよね。
特に宮川一笑の「色子(大名と若衆)」はめちゃくちゃエロくて好きでした。
そして22歳の若さで亡くなった村山槐多の「二人の少年(二少年図)」
解説に「中学時代、一級下の美少年への片恋に敗れた経験もあり」とサラッと書かれてだけどそうだったの!?
確かに村山槐多の絵って変だなぁとは思ってたけど、そういう嗜好も反映されてたのかな?
あとはやはり高畠華宵の「日本少年」はどう見てもおかしかった。
時は大正に発刊されていたこの少年雑誌の表紙なんだけど、スポーツにあけくれる溌剌とした日本男児を描いてはいるものの、目がどう考えてもエロいw
海で泳いでる少年の目なんて流し目でこっちを誘ってるようにしか見えない。。。
さらにこの章では金子國義やパタリロまで登場していよいよこの展覧会のラディカルさが際立ってきました。
その後も聖闘士星矢や大奥、伝説的BLの元祖となった雑誌「JUNE」も登場していよいよすごい。
その流れで奥の部屋にひっそりと舟越桂が現れるもんだから、もう情緒がおかしなことになりましたw
最後は現代作家のコーナー。
何と言っても目玉は木村了子。
もうこの人のための企画ですよね。
誰もやってこなかった「美男画」をここまで発展させてきた功績は本当に素晴らしいと思います。
何と言っても単純にうまいしね。
最後の最後の部屋は、井原信次、森栄喜、海老原靖、ヨーガン・アクセルバルってKEN NAKAHSHI埼玉分館と化しててびっくりw
いやはや美男、堪能させていただきました。

今回カタログの帯に"「美男」はあなたの心のなかにー。"って書かれてるけど、出品作品群を超えて、各々の美男像を無限に考えられる本当に面白い企画だと思いました。
ポップなんだけど、これまでの家父長制や、描かれてこなかった主題など、様々な問題も考えられるし、なんといってもイズムには回収されない緩さがとってもいいな、と。
今金沢で「フェミニズム」展とかやってるけど、やっぱり何だか怖いもの。
埼玉での展覧会は11月3日まで!ぜひ!こちら
常設展では逆張りの「美人画」を紹介してて、抜かりないので常設展も必ず寄ってください。


「語りの複数性」@ 東京都渋谷公園通りギャラリー
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どこ?と思ったら渋谷区立勤労福祉会館内に去年できたばかりのスペースらしい。
テーマとしては先日京都で観た「それはまなざしか」に近いかも。
外から見えるのは大森克己の大型写真作品。
主人公が全盲である「心眼」を演じる落語家の所作を写していて早速今回のテーマに合ってて興味深い。
中に入ると川内倫子の写真絵本「はじまりのひ」が展示されてて、なんと写真が点字になってる!
全盲の方々との読書会も行われたようで参加者の感想も展示されてる。
奥の展示室に続く廊下には再び大森の写真。
そして百瀬文の「聞こえない木下さんに聞いたいくつかのこと」が展示されてるのだけど、約10年ぶりに観たけど作品のインパクトが衰えてない。
英語訳もついてるけど、特に後半その英訳は意味を成してないのも面白いし、このコロナで皆マスクしてるので、今木下さんはどうやって人々の声を「聞いている」のかも気になりました。
他の作品は今回のテーマとイマイチずれてる気がしました。奥村雄樹とか入ってたら面白そうだったのにな。
この展覧会は12月26日まで。

ピピロッティ・リスト:Your Eye Is My Island -あなたの眼はわたしの島- @ 水戸芸術館

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一時は開催も危ぶまれた水戸芸術館でのピピロッティの展覧会。
なんとか9月20日から開催されたものの、最終日は変わらず10月17日。
1ヶ月足らずと短かったですが、なんとか最終日ギリギリの15日の金曜日に行ってきました。
最終の土日は予約制で早々に完売になっちゃったので本当にギリでした。

にしても水戸やっぱり遠い。。。正直できるだけ行きたくない。。。
でもまあ、今回はなんと友達の担当した企画なので観ないわけにはいかない!
ボイス+パレルモの福元くんといい、皆すごいなぁ。

さて、ピピロッティですが、正直そこまで好きな作家でもありません。
でもやっぱり無視はできない作家なんですよね。そういう作家が何人かいます。
日本での個展はもしや2007年の原美術館以来では。
というわけでやっぱり観に行かざるを得ないのです。
2005年に初めて行ったヴェネツィア・ビエンナーレで教会の天井丸々使った映像インスタレーションは忘れられません。
床に寝そべって観ました。

会場は平日にも関わらず混み合ってました。
冒頭はピピロッティの代名詞作品「永遠は終わった、永遠はあらゆる場所に」。
何度見ても痛快ですね。ビヨンセもMVでオマージュ(パクリ?)ました。こちら(2分あたりから)。

他にもまるで美術館を家に見立てて、テーブルやソファやらが置かれていて、実際そこに座ったり寝そべりながら映像を体験します。
特に「4階から穏やかさに向かって」はベッドに寝転んで鑑賞する作品で、これは見応えがありました。
それにしてもこれだけ接触の多い、言わばコロナと相性が良すぎる展示をよく実現したなと思います。
触る部分は抗菌しまくったと友達も言ってましたが、凄まじい努力です。

最後に野外のヒップライトが17時から点灯するというので、せっかくなので一旦出て戻ってきて見ました。
バカバカしくて素敵でしたw

ちなみにその間に行ってたのは星乃珈琲店茨城県立図書館店。
これTwitterで話題になってて行ってみたかったんです。実際すごかった。。。
店内の選書のセンスも良くて本好きにはたまらないお店でした。

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ところで水戸芸術館の次回展が、大分で観に行った佐藤雅晴さんなんだけど、チラシが4種類もあってびっくり。
なんでも水戸独自の展示構成もあるらしいんだけど、やっぱ遠いのでパスかな。。。うーん
展覧会は11月13日から来年の1月30日まで。大分で観てない人は是非。こちら

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ホー・ツーニェン《ヴォイス・オブ・ヴォイド—虚無の声》

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この春に、山口情報芸術センターで開催されてたホー・ツーニェンの新作展
山口は無理だぁと諦めたのですが、この度の来京のタイミングでそれが京都芸術センターに回ってきた!ラッキー!!
これはKYOTO EXPERIMENTの一環で開催されました。
KYOTO EXPERIMENTも前記事のKYOTOGRAPHIE同様京都にしては長く続いてますね。
何と言っても2010年の第一回で僕は地点と出会ったので本当にありがたいイベントです。こちら
年々知らない人たちばかりなので参加しなくなったけど、今回も恩恵に与りました。

さて、この展覧会、本当にすごかった!!!!
一昨年のあいちトリエンナーレで話題だった「喜楽亭」の作品にも出ていた京都学派によりフォーカスを絞った内容。
まさにこの京都で、しかも京都芸術センターの特異な施設を見事に使い切ってて、もう最初からここでやるつもりだったのでは、というぐらい場所にぴったりだった。

まず、入口の受付で「VRは体験されます?」と聞かれて、なんかわからないけど「はい」と答え、整理券を渡されるも、実際会場の大広間に行くと客は僕だけ。。。
とても長くてややこしい説明動画を見た後に会場にイン。
VR装置を装着してレディーゴー!
正座で見ていると、まずは京都の料亭「左阿彌」の茶室に誘われます。
ちなみにこの料亭は今も円山公園の中にあります。こちら
ここでは高坂正顕、西谷啓治、高山岩男、鈴木成高らの京都学派四天王と呼ばれた哲学者たちが会談を行なっていて、自分はその会談の速記者という役割。
実際に僕が目の前にある紙に速記を始めると彼らが話し始めるんだけど、やめると彼らの心の声がボソボソ聞こえてくるんだけど、何を言ってるのかよくわからない。
この筆記の作業が結構大変で、中々紙に焦点当てるのがむずく、書いてたら茶室の窓が開いていくんだけど、書くのやめると閉まっちゃうので、全開になるまで筆記してたら腕がつりそうになったw
全開になって満足したので、筆記をやめてその場で立ち上がると、そのまま視点は上昇して空へ。
なぜかザクがたくさん浮かんでて、また誰かの囁くような声が聞こえる。
次第にザクたちは空中分解されていくなんとも不気味な光景に。
さらにその場で横たわると今度は視線が一気に下降。
そこは刑務所で、牢屋では蛆が湧いてて本当に不気味。ここでも声が聞こえる。
この「声」はタイトルにもなっているようにとても重要なファクター。
そんなこんなで気づいたら30分ぐらい経ってた。すごい。

あの「声」の正体はなんだったのか。
それは他の会場で明らかになります。
まずはギャラリー南へ。
ここでは2面スクリーンで囚人らしき人が横たわっっています。
VRで見た「監獄」の映像です。(その時は人はいなかったけど)
裏表でほぼ同じ映像なんだけど、セリフが微妙に違う。
一方の人物は三木清、他方は戸坂潤。
共に京都大学の哲学科出身で、西田幾多郎に師事し京都学派の一員として研究を続ける。
戦時中、治安維持法の思想弾圧により刑務所に拘留されどちらも獄死。
死後に出版された三木清の「人生論ノート」は戦後のベストセラーに。

続いて制作室4へ向かう途中のスロープに様々な資料が置かれていて、作品理解の助けになります。
そのスロープを上がると今度は「空」の世界。あのザクたちのやつ。
ここで語られていた声の主は田邊元のものだとわかります。
西田幾多郎に次ぐ京都学派のドンです。
ここで語られているのは田辺元が1943年に行った公開講座『死生』。
この公開講座は徴兵される若者に向けてのもので、講演の後絶句し涙を流して懺悔の言葉を口にしたという証言もあります。
あの空中でバラバラになっていくザクたちは、特攻で死んでいく若者たちを表していたんですね。

そして最後に茶室ではあの 『左阿彌の茶室』。
2部屋に分かれていて、一つの部屋では4つの座布団だけが置かれた不在の茶室。
ここでは西田幾多郎が1938年に実施した公開講座『日本文化の問題』が紹介されています。
もう一つは4人のみが映されていて、その背景に前述の不在の茶室が被ります。
1941年に雑誌『中央公論』で3回にわたって行った座談会『世界史的立場と日本』の様子。
前者は日米開戦の回避を、後者は大東亜共栄圏を、と一見相矛盾する京都学派の立場が語られているけれど、それらの映像が二重写しになってるのが興味深い。
それが実際に茶室で見られるのは京都芸術センターならでは。

というように、かなりディープな内容で、正直半分も理解したかわからないんだけど、身体と空間全体で京都学派と戦争という過去を声を通して体験するというのは本当に稀有な時間でした。
さらに詳しい説明はこちらが詳しいので是非。
もっとたくさんの人に観てもらいたい作品でした。
これ、今度の豊田市美術館の展示では流石に出ないんだろうか。
ちなみにあの伝説の「旅館アポリア」が会期途中の12月4日からまた喜楽亭で再現されます!
あの作品観てない人は絶対見たほうがいいです!こちら
いやはや、ホー・ツーニェン、本当にすごい作家だ。。。

「それはまなざしか」/ 内藤礼 / KYOTOGRAPHIE 2021

京都で観てきた展示3つまとめて。

まずはアトリエみつしまでやってた「それはまなざしか」。
ここは西陣織の工場をリノベーションした場所で、全盲の作家光島貴之さんがオーナーです。
光島さんは以前学生の時にワークショップに来て下さって、目隠しして触りながら絵を描くという内容で今でもその体験を鮮明に覚えています。
この展覧会では光島さんをはじめ、今村遼佑、小池芽英子、児玉靖枝、船井美佐の5人が「まなざし」をテーマに作品を発表しています。
今村くん目当てで行ったわけですが、やはり今村くんはすごい。
2階の畳敷きの大広間に広がるインスタレーションんで、光と音を使った作品です。
畳に埋め込まれた発光ダイオードは点滅していて、その点滅はそれぞれ自身のアトリエ近くの木漏れ日に合わせています。
また、天井にはモーターに洗濯ばさみや枝、石、紙くずといったものが取り付けられてて、まるで家鳴りのようにそこかしこで鳴ります。
これだけミニマルなのに、これだけ広い空間を充満させてる空気感を作り出してるのはやっぱりすごい。
展覧会は10月31日まで。こちら

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続いてMtK Contemporary Artでやってた内藤礼「breath」。
この3月に京都市京セラ美術館近くにできた新しいギャラリー。
マツシマホールディングスが運営し、鬼頭健吾がディレクション、名和晃率いるSandwichがデザインを担当して話題になりました。こちら
ちょっとご縁がないかな、と思ってたらまさかの内藤礼。
どんなもんじゃろと寄ってみましたが、彼女の近年取り組んでるドローイング作品「color beginning」の新作がずらっと並んでました。
この作品個人的にあまり好きじゃないので、へぇって感じでした。。。
11月7日まで。こちら

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最後にKYOTOGRAPHIE
京都ってアートイベント本当に続かないんだけど、このイベントだけは2013年から始まって今回で8回目。(2020年は中止)
毎年恒例のイベントになっててすごいなとは思うものの、京都と写真ってのがよく繋がらないんですよね。
まあ、昔はfoilもあったし、今は何と言っても赤々舎があるのはでかいでしょうね。
今回は京都市内12箇所で展開。
そのうち僕はDELTA琵琶湖疏水記念館京都文化博物館別館HOSOO GALLERY三条両替町ビルの5箇所だけ回りました。
会場がバラバラだし、休みも変則的で、把握しながら周るのは結構難易度高いです。
DELTAも水木休みで、「KYOTOGRAPHIE Permanent Space」って銘打ってるんだからその期間ぐらい無休にしろよって思うんだけど。。。
僕が行った時は二条城や両足院、Sferaが閉まってたり。
特に二条城は毎回他の催事との兼ね合いで休み多すぎ。
しかも展示が結構二条城に固まってるので、観られないのは結構辛い。
とはいえ、今回初めて行った琵琶湖疏水記念館なんかは面白い試みでした。
榮榮と映里による展示で、この2人なんか聞いたことある名前だな、と思ったら、北京の現代写真センター「三影堂撮影芸術中心」を設立した人たちなんですね。北京行った時に行きたかったけど行けなかった。
2015年から京都に移住って書いてあったけどもう関わってないのかな?
それはともかく展示は、寓話的な要素があって、場所の特異性も相まってとても幻想的でした。
文博のアーウィン・ オラフも場所に負けない美しい展示だった。

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ボイス+パレルモ / 1968年展 −新しいパラダイムを求めて− @ 国立国際美術館

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埼玉でも観たんだけど大阪でも観たくなって2回目の「ボイス+パレルモ」
なんてったって友人の福元君が担当学芸をしていて、しかも彼が学芸員を目指したきっかけがボイスで、早くもボイスの展覧会をする夢を叶えたわけで、それをどうしても見届けたく初日にお邪魔しました。
結果的には、こっちの方が空間が広いので圧倒的に埼玉よりよかったです。
展示の順番も微妙に違ってたり、埼玉にはなかった黒板が見れたり。
最後のボイスのレモンの作品と、パレルモの黄色い絵画が並んでる展示も素晴らしかった。
そして、埼玉で初っ端から聞こえてきたボイスのサウンドインスタレーション(?)も、吹き抜けの大きな空間を使ってとても贅沢な展示となっていました。
同じ展覧会を別会場で観ると差異が見えて面白いですね。
これは豊田も観たかったなぁと後悔。
兎に角素晴らしい展示でした。福元くん、本当におめでとう。
にしても、よくもこんなわけのわからないおじさん(ボイス)を研究対象に選んだよなw
8月のZOOMトークでもボイスはみんなの攻撃対象になってて福元くん1人がボイスを庇うっていう地獄のような構図になってたしw
(それにしてもあの直後に林さんが、、、)

そして、コレクション展が僕の大好物すぎる「1968年」!!!
これはおいし過ぎてよだれ出そうな企画でした。
2018年に観た「1968年展」ほどではないものの、こんな作品あったんだ!っていう驚きがいくつか。
特に最初の田中信太朗のライトを使った作品や、新潟のパフォーマンス集団「GUN」とか初めて観ました。
今回は両フロアとも大当たりなので、関西の方はぜひ!!!来年1月16日まで。
(コレクション展は許可を得て撮影しています。)


そしてもう終わっちゃいましたが、お隣のgrafでもボイス関連の企画が。
こちらの企画でも15日に福元くんがゲストとしてトークしてました。
ボイスに纏わる作品とのことでしたが、まあみんな自由にやってましたw
特にインパクトあったのは宮木亜菜のパフォーマンスの記録。
レモンを咥えながらドローイングするというもので、国立国際の最後に展示してあったレモンを彷彿とさせました。
そして小清水斬。岩がワイヤーで吊るされてるんだけど、その吊るされ方が地味にすごくてこれは展示泣かせすぎると思いました。。。
あと昔のドクメンタの資料がたくさん置かれてて貴重すぎました。
特にハロルド・ゼーマンがディレクションしてパレルモも参加したドクメンタ5のカタログはヤバすぎる。
バインダーに収められてて、捲るの怖すぎる。。。白手袋しても緊張した。。。
展覧会の内容はこちらから。

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LOG by STUDIO MUMBAI

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日本で多分唯一のスタジオムンバイの建築。
昭和38年に千光寺山の中腹に建てられた「新道アパート」をカフェやギャラリー、宿泊施設として生まれ変わらせたのが「LOG」です。
尾道に行ったら前記事の「水尾之路」かこちらに泊まりたかったんだけど、こちらは素泊まりでも4万近くするので諦めました。。。
印象的だったのは、余白の多さです。
1階に関してはほとんど何もありません。
2階がカフェとギャラリーで、3階が宿泊。
壁の色も中間色で塗られていて、独特の静けさが漂っていました。
風が所々に抜けて、当時はどんなだったんだろうと想像しました。

LOG website: https://l-og.jp


この千光寺の頂上には安藤忠雄による尾道市立美術館もあります。
行った時は画家のパレットをテーマにした展覧会がやっててまあまあ面白かった。
鴨居玲のパレットがキモすぎて笑いましたw
他にも椅子のコレクションも素晴らしかった。
ちなみにここは警備員さんとニャンコによる攻防でも有名な場所です。むしろそれが一番見たかったw
そのニャンコは隣のレストランの子だと聞いて、ランチしに行ったんだけどお会いできず。
しかし瀬戸内を見ながら食べたカレーとビールは格別でした。。。

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帰りは「奥の細道」を通って下山。
尾道って、犬も歩けば棒に当たるレベルで猫がいると思ったら全然いなくて、ようやく逢えた猫はほぼ神様でしたw

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水尾之路

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ずっと前から泊まりたかった宿。
東京でアパレルの仕事をしていたお二人が、尾道にひっそりと建つ築80年以上の古民家を改装して3年前に始めたのが「水尾之路」。
お昼はカフェになっていて、夜は1組限定で宿泊が可能です。
1組限定にしては相当良心的なお値段だと思います。
そしてこの宿泊体験は本当に特別なものになりました。
お二人の美学が一分の隙もなく貫かれた空間で時間を贅沢に過ごせる体験は、ほとんどアート体験の質でした。
これをアートと言っちゃうと安っぽくなっちゃうかもしれないけれど、どうしても記録しておきたかったのです。
尾道行ったら是非泊まってみてください。
朝のスコーンも美味すぎたし、庭を横切る猫様も拝めて最高でした。

水尾之路website: https://www.mionomichi.com/index.html
水尾之路instagram: https://www.instagram.com/mionomichi/?hl=ja

田中真吾のこと。

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田中とは出会って丸20年が経ちます。(ヒエェ)
そんなわけで今更彼のことを書くのも照れくさいんですが勢いで書きます。

出会いは美大受験の予備校でした。
高校は一応進学校だったので、僕も周囲と同じように普通大学を目指して予備校も通ってたんですが、勉強もできないし特に行きたい大学もやりたいこともなくダラダラ受験勉強をやってました。
そんな時、高校の80周年の式典で卒業生だった彫刻家の新宮晋さんが講演をされました。
その講演を聞いて僕は涙が止まらなかったのです。
こんな生き方があるんだ!
思い立ったら早くて、次の日には美術の先生のところに行って「美大に行きたい」と告げました。
その時既に10月。
遅すぎるのは承知の上。浪人は覚悟の上でした。
すると先生は美大のいろはから予備校の紹介までしてくれたのです。
なんせデッサンのデの字も知らない状態なので、当初は高2の子達に混じって1人だけ特別課題を与えてもらってました。
そんな中、推薦試験というものが11月だかにあり、僕も一応受けることに。
そこで同じ大学の同じ学科を受ける予定だったのが田中真吾で、同じ課題をすることになったんですが、彼は大学1年生からその予備校に行っていて、高3の10月にして無茶な進路変更をした僕とは絵の技術は雲泥の差。
彼からしたら「舐めとんのか?」って感じだったと思います・・・。
案の定彼は受かり僕はスベりました。
その後1次試験、2次試験と受け、なぜか2次試験で奇跡の合格を果たした僕。
入学式で僕を見かけた田中は何かの間違いかと思ったそうですw
そりゃそうですよね。片や3年、片や5ヶ月の受験期間ですからね。
大学入って半年は口も聞いてくれませんでしたw

大学入ってすぐ自己紹介をテーマにコラージュの課題がありました。
今でもすごく覚えてるのが、田中のコラージュがバーナーで炙られてたんですよね。
そこから彼は一貫して火を使って作品を作っていきました。
1年生の後期になるとようやく話してくれるようになり(笑)、すっかり気が合って、大学3年生ではダブル個展をするまでになりました。
その時のタイトルが僕が「葬送行進」、田中が「文明の二重奏」。
20歳にして相当暗い奴らでしたw
大学卒業して僕はイギリスに行き、田中は同じ大学の院に進み、僕の帰国後は京都でstudio90というアトリエ兼ギャラリーを一緒にやったりしました。
2013年の1月でstudio90は解散しましたが、その後も一緒にNY行ったりして、あれよあれよと20年です。
そりゃお互い歳もとるで。
彼は相変わらず火を使って制作を続けていて、飽き性の僕とは真逆の彼の一貫した態度には本当に驚きしかありません。
そんな彼に改めてうちの店で展示を頼みました。
彼の作品の中でも僕が気に入ってる「ephemeral」という煤を使った作品シリーズ。
今回ドローイングと天井画を制作してもらいました。
特に天井画、マジですごいです。シリーズ最大級。火事にならなくてよかったw
ぜひ、渾身の作品たち観に来てください!!
ドローイングはオンラインストアでも販売しております!

A'holic online store: https://aholic.stores.jp


田中真吾個展「た れ そ か れ」
2021年10月18日(月) - 11月14日(日)
18時オープン 木曜休
*ワンドリンクオーダー制
*感染症対策にご協力下さい。


店内のコーナーが同級生(田中真吾、川北ゆう、山元彩香)の作品で埋められててエモすぎ。
その上には僕の作品もあります。

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BBA定食も復活です!

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田中真吾個展「た れ そ か れ」開催のお知らせ

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7月11日以来休業しておりましたが、来週月曜(10/18)より3ヶ月ぶりに営業再開します!
再開に際しまして、以下の展覧会を開催します。


田中真吾個展「た れ そ か れ」
2021年10月18日(月) - 11月14日(日)
18時オープン 木曜休
*ワンドリンクオーダー制
*感染症対策にご協力下さい。



無事に社会復帰を果たせますように。。。!

Christo and Jeanne-Claude "L'Arc de Triomphe, Wrapped"

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2021年9月18日。
オープンと同時に中へ。
僕の夢が叶った瞬間。
本当に本当に美しい光景でした。
遥々来て本当に良かった。。。
ありがとうクリスト、ジャンヌ。
さようなら。またね。

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Christo and Jeanne-Claude "L'Arc de Triomphe, Wrapped" (work in progress)

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今回の凱旋門プロジェクトでは、3000mのロープと2万5000㎡の布、そして1000人以上のスタッフが関わっています。
7月15日から凱旋門での作業がスタート。
最後は95人の高所技術者によって進められました。
僕は9月10日にパリに着いてその作業を毎日見守っていました。
なので今回はその過程を少しだけ。


2021.09.10
パリ到着。
この時点で内側に布がかけられている状態。
布による損傷を塞ぐための構造体も見えます。
雨が降って凱旋門(Arc de Triomphe)に虹(Arc en ciel)がかかりました。

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2021.09.11
晴れ。特に変化なし。

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2021.09.12
朝外に出たら人だかり。
なんと高所作業員による布の設置が開始!
1時間以上見守って、夕方帰ってきたら四方が布で囲まれてた!!!

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2021.09.13
布の継ぎ目をつなぐ作業。

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赤いロープ登場。

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2021.09.15
引き続き作業。クレーンの数が凄い。

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2021.09.17
公開前日。最終調整。

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こうして完成した作品だけでなく作業風景も見られたのは本当に素晴らしかった。
特に高所作業員の方々の尽力には頭が下がります。
いよいよ明日は完成された作品をアップします。パリ報告最終回です。

The Final Christo @ Southerby's Paris

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この度のクリストとジャンヌ=クロードによる「Arc de Triomphe, Wrapped(包まれた凱旋門)」に合わせて、サザビーズで今回のプロジェクトのオリジナル絵画・コラージュ作品を展示していると聞き駆けつけました。こちら
実現した姿を見て、これらの作品を観ると、改めてその精密さに驚きます。
冒頭にはこのプロジェクトのそもそもの着想であった1961年のフォトモンタージュが。
このプロジェクトはまだクリストがNYに渡る前、パリでジャンヌと出会い、凱旋門近くのアトリエで制作をしていたブルガリアからの亡命者であった青年の夢想から始まります。
凱旋門と言えばエッフェル塔に並ぶパリの代名詞。しかもその歴史は1830年から。
そんな建物を布で覆うなんて、不可能極まりない夢が動き出したのが時は進んで2017年。
ポンピドゥーセンターから回顧展の依頼を受け、それに併せて何かパリでやりたいプロジェクトはないかと聞かれたクリストは、このプロジェクトを即答したそうな。
そこからフランス政府とポンピドゥーセンターの後押しを受け、60年前の夢想が突然動き出しました。
とは言えこのプロジェクトもいつも通りその費用(約18億円)は彼のポケットマネーから捻出されます。
そのお金はこれらのドローイングを売ることで賄われるのです。
それもこれも完全に自由な創造を確保するため。
実際このプロジェクトは昨年の4月に開催される予定でしたが、9月に延期となりました。
その理由がコロナではなく、春になるとチョウゲンボウという鳥が凱旋門に巣を作ることを知ったクリストが、それを邪魔するわけにはいかないという理由で延期になったのです!
これはスポンサーがいたらそんな決断は不可能でしょう。
お陰でプロジェクトと同時開催を狙っていたポンピドゥーはそれが叶わず昨年の春にクリストとジャンヌの回顧展を開催しました。こちら
昨年5月に亡くなったクリストでしたが、4月に開催してたら見れてたのにとも思うと、本当に最後まで意志の強い人だな、と感心しまくりです。
クリストの死後、コロナの長期化により今年の9月まで延期となりましたが、生きてたらもしかしたらそのまま去年の9月にやってたかも。。。
兎に角、このプロジェクトは途中までとは言え、彼が生前に文字通り「命を賭して」取り組んだ最後のプロジェクトなわけです。
彼の死後は、甥のウラジミール・ヤヴァチェフが指揮を務めて完成に至りました。
彼はイタリアで実現した「The Floating Piers」のドキュメンタリーでクリストと喧嘩しまくってた人ですね笑
周りの人は大変だったんだろうなぁ。


個人的なお話になりますが、今回の渡仏は100%クリストとジャンヌの凱旋門プロジェクトの為でした。
こんな時期に海外渡航はリスク大ですがそれを押してでも行かなければならなかったのです。
僕のアートホリックの原点は間違いなく彼らです。
このブログでも幾度となく書いてますが、大学三年生の冬、今後もアートを続けるか否かをいろいろ悩んでた時期にたまたま見た日曜美術館で紹介されていたのが、2005年の2月12日から27日の約2週間ニューヨークのセントラルパークで7500ものサフラン色のゲートを設置した「The Gates」プロジェクトでした。
冬枯れの景色の中ではためく鮮やかな布のとゲートの対比の美しさにも感動したのですが、何より感動したのが、このプロジェクトに関わった市井の人々の誇り高い表情でした。
アートにこんなことができるんだ!!とものすごく感動したし、それなら僕ももう少し続けてみようと思えたきっかけでした。
今回改めてポンピドゥーで「The Gates」のDVDを買って見ました。(なぜかこの作品だけ日本語版が出てない。。。)
その中で実現したプロジェクトについてインタビュアーが「9.11以降に実現したということには意味がありますか?」という質問に「ありません。これはあくまで僕たちのやりたいことをやっているだけです」ときっぱり言っていたのが印象的でした。
彼らは自分たちの作品が何かの象徴になることを厳しく回避してきました。
あくまでこれは彼らの夢の実現であって、それ以上でも以下でもないと。
でもね、昨年からのコロナによって、沢山の命を奪われたフランスで、日常をほとんど取り戻したタイミングで現れたこの作品は、やっぱり何かの象徴に見えちゃうんですよね。
凱旋門ってフランス語で「arc de triomphe」なんだけど、直訳すると「勝利の門」。
「勝利」って言葉は確かに違うかもしれないけど、それに近い感覚は抱いてしまいます。


「The Gates」をテレビで見て、彼らの活動を改めて知った時に、あのプロジェクトを実際に見られなかったことは僕の中で大きなトラウマになりました。
実はその前の年の2004年の夏にニューヨークに行ってるんですよ。
その時は全然アートのことをちゃんと知らなくて、とりあえずニューヨークに行きたいという思いで夏休み行ったんだけど、夏ってどこのギャラリーも閉まってるんですよね。
そんなことすら知らずに、ほとんどいい展覧会もやってなかったし、何のために行ったんだろうって感じが拭えず、さらにその半年後にこんな凄いプロジェクトが開催されるなんて知りもしなかった自分が腹立たしくて仕方なかったのです。
そこから絶対彼らのプロジェクトを体験したいと渇望するようになり、次にやる予定だった「Over the River」というプロジェクトは何が何でも絶対に行こうと心に決めていました。
そのプロジェクトは、コロラド州を流れるアルカンザス川の上空に銀色の布を走らせるというもので、その総距離は9.5kmという壮大なもので、実に25年の間、5千万ドル(50億円超)もの資産を使い、そこに住む住人を説得し、地主と交渉し、いくつもの法の制限をクリアしてきました。
クリストが日本に来てその為の講演も聞きに行って、ドローイングの写真を見てめちゃくちゃ興奮したのを今でも覚えています。
しかし2017年、このプロジェクトは突然クリスト自身によってキャンセルされます。
理由はトランプが大統領になったことへの抗議でした。
本当にショックでした。。。
でも、ここでもやはり彼の創造に対する自由の意思は固いものでした。
クリストらしい決断でした。


「Over the River」は頓挫したものの、「The Gates」以降もいくつかのプロジェクトは実現しています。
2013年ドイツのーバーハウゼンでの「BIG AIR PACKAGE」は、僕が初めて見たクリストの大型作品でした。こちら
その次は2016年の6月18日から7月3日までの16日間、イタリアのイゼオ湖に浮かべた3kmの歩道「The Floating Piers」
これは「The Gates」以降最も規模の大きいプロジェクトでした。
そして2018年のロンドンで、ドラム缶を7056個積み上げた「The London Mastaba」
これら3つのプロジェクトは、僕的にどれも満足のいくものではありません。
2013年の「BIG AIR PACKAGE」を見て僕はショックを受けました。
室内ということもありましたが、これは僕が見たい彼らのプロジェクトではない、とはっきり思ったのです。
その後の「The Floating Piers」も、実はフランスにレジデンスしてたので、行こうと思えば行けたんですが、これも何か違うな、という感じが拭えず行きませんでした。
僕が彼らの作品に魅力を感じる理由の一つが、これまであったものを布を使って改めて目を向けさせることにあります。
これら3つのプロジェクトは、元あったものというより、改めて恣意的に形を作ってそれそのものを見せるようなプロジェクトです。
そこじゃなくてもいい。サイト・スペシフィシティがないのです。
「The Floating Piers」に関しては、ドキュメンタリーを見ても、歩道を布で包む意味すらわからない。


クリストとジャンヌはこれまで25のプロジェクトを実現させていますが、その中で僕が横綱クラスとしてる作品が以下の7つ。
Valley Curtain (1970)
Running Fence (1976)
Surrounded Islands (1983)
The Pont Neuf Wrapped (1985)
The Umbrellas (1991)
Wrapped Reichstag (1995)
The Gates (2005)
特にポン・ヌフ、ライヒスターク、ゲートの3つは都市型のプロジェクトです。
興味のない人まで作品に立ち会わせてしまいます。
それらのドキュメンタリーでは、これはアートなのか?、これは美しいのか?という議論が市民の間で勃発します。
今回の凱旋門はまさにそうで、テレビでも街中でも同じような議論が繰り返されていました。
実際仏極右政治家は「我々の最も栄光ある記念碑をごみ袋で包んでいる」と怒っているそうな笑
というわけで、間違いなく今回の「包まれた凱旋門」は僕の中で8つ目の横綱作品になりました。
そんな横綱クラスをポン・ヌフに続き二つも実現させたパリというのは本当に凄い街。
今回は凱旋門の周りの道路も会期中の週末は歩行者天国にしてしまうという、本当に国家プロジェクト。
その横綱作品を体験する、という2005年以来の夢を僕は叶えてしまったのです。


その凱旋門も先日10月3日にその公開が終わりました。
今後彼らの作品はもう見られないのでしょうか。
彼らのウェブサイトの「Work in Progress」のところに「The Mastaba」が載ってます。
これは1977年から取り組んでいる、アブダビに作ろうとしている、41万個のドラム缶を使ったピラミッドのようなもので、出来上がると彼ら初の恒久作品になります。
このプロジェクトは彼らの死後も進んでいるのでしょうか。
先日フランク・ゲーリーによるアブダビ・グッゲンハイムが2026年の開館を予定しているとの発表がありましたが、できたら合わせて行きたいですね。

Anne Imhof "Natures Mortes" @ Palais de Tokyo

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パリ近代美術館行った時に、お隣のパレ・ド・トーキョーは何やってるんだろう?って看板見て「Anne Imhof? 誰?」となって、その時はスルーしました。
パリ滞在最後の方になって、流石にやることもなくなってきたので、そういやパレ・ド・トーキョーの本屋がすごいって話を聞いたの思い出し行ってきました。
展覧会どうしようかなぁ、とレストランでミートボールスパゲティ食べながら考えてて、まあ折角だしと思って見はじめたらすごい展覧会だったことが発覚。。。!!
見逃さなくてよかった。。。
とりあえず写真でどうぞ。

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これだけ大量の写真アップしても何も伝わらないw
まあ、実際うまく説明できないのですが。。。

まず1階では、台の上のマイクスタンドから始まり、ガラスのカーブした回廊、動くスピーカー、犬が走る映像、と取り留めのないものが次々と現れます。
途中でゴードン・マッタ=クラークやティルマンスの作品が出てきて、?となるんだけど、これは何かただ事ではないかも、という気配を漂わせながら大きな映像作品の部屋へ。
ここでは「SEX」と題されたパフォーマンス作品で、テートモダンで2019年に発表されたものらしい。
ファッションショーのように人が行き交うんだけど何か様子がおかしい。
映像の部屋を出て、これで終わりかと思いきや甘かった。
あれ、下もあるのか、と思って降りたらとんでもない大空間が。。。!!!
しかもそんな大空間なのに所狭しと物で埋まっている。。。何なんだこれは!?
混乱しながら見始めると、さっきのガラスが今度は衝立のようになっててまるで迷宮。
そんな中で何とポルケの大作品で囲まれた部屋が出てきたり、トゥオンブリーやマイク・ケリーも出てくるわで、これはすごいぞ!!!と確信に変わりました。
他にも楽器が置かれたステージがあったり。
1階にもあった動くスピーカーからはチェロの音楽が流れてて、これはエリザ・ダグラス(もしかして作家のパートナー?)が作った展覧会のタイトルにもなってる「Natures Mortes」。
この曲は各箇所で流れてるものを全て合わせて一曲になるらしい。
途中で叫び声も聞こえたんだけど、めっちゃカオス空間w
地下一階を見終えてぐったりしてると、何とさらにまだ下の階に展示が続いてることが発覚!!!
さらに地下に降りると劇場みたいなところで、「DEATH WISH」という作家自身のパフォーマンス映像が。
もう何が何やらわからないままようやく見終えて1階へ。ぐっっったり。。。。


さて、このアンネ・イムホフとは何者なのか?です。
なんかどこかで見たことあるなぁ、と思ってたら、美術手帖の2018年8月号「ポスト・パフォーマンス」の表紙になってて、何だかすごく印象に残ってたんですよね。
さらに調べると、1978年ドイツ生まれ。フランクフルトの美大を出た後2013年に初個展。
それからたった4年後に何とヴェネツィア・ビエンナーレドイツ館代表を務めてるのです!!!
ドイツ館は以前2005年にも当時まだ20代のティノ・セーガルを起用したり本当にエッジが効いてる。
そして、アンネはドイツ館で展示した「Faust」という作品で何と金獅子賞を受賞!凄過ぎ!
その時のレポートを長谷川新氏が書いてます。こちら
映像もあります。こちら
その後も勢いは止まらず、2019年には先ほども触れた「SEX」という作品をテート・モダンのパフォーマンス・プログラム「BMW Tate Live」で発表。
昨年2020年にはバーバリーのリカルド・ティッシが2021年春夏ショーでコラボレーションを実現。こちら
そして今回そのバーバリーが全面支援して、ヨーロッパ美術館初の大規模個展が実現!というわけ。
デビューからまだ10年も経ってないのにすごすぎ。。。。


さて、展覧会に戻りますが、実は来月ここで大きなパフォーマンスが繰り広げられるそうなのです。
彼女は基本的にパフォーマーなので、パフォーマンスがメインなのはわかるんですが、この展覧会のすごいのが、そのパフォーマンス抜きでも何かが起こりそうな雰囲気を漂わせながら成立してるところなんです。
そして、前述した何人かの作家の作品も巻き込みながら、展覧会そのものを展示物にしているような、大きなスケールを感じる展覧会となってます。
普通パフォーマンスありきだと、パフォーマンスがない状態って欠落感というか、足りない感じが出ちゃうと思うんですが、それがこの展示では全くと言っていいほどないんですよね。。。
パフォーマンス、もちろん見れたらよかったとは思うんですが、特に見れてなくても満足感がある。
まあ、これだけの物量があれば確かにそれは納得って感じなんですが、逆に展示自体に力がないと、ここまでの物量は観れたもんじゃなくて、ただただ観客を疲れさせるだけになってしまうものです。
実際めちゃくちゃ疲れましたが、同時にすごく爽快感と、凄い物を見た!という感動が押し寄せました。
しかも今これを書いてる瞬間も、じわじわボディブローのように効いてくる展覧会。
これ観られたのは本当にラッキーでした。
ギャラリー以外近代の没後作家の展示ばかり観てたので、現代も現代の作品を観れたのもよかった。
にしても、よくぞここまでのもの作り上げたなぁ。。。本当に凄い。
展覧会は10月24日までで、パフォーマンスは10月14から18日と21から24日の18時から22時の間で行われるそう。ライブビューイングとかあったら観たいな。こちら


で、肝心の本屋ですが、噂に違わず最高でした。
日本のカタログも置いてた!
今回のアンネ・イムホフの図録と、マーティン・クリードの作品集が安くなってたので購入しました。

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Damien Hirst "Cathedrals Built on Sand" @ GAGOSIAN GALLERY PARIS

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近年のダミアン・ハーストは才能の枯渇感が凄くて見てられない。。。
特に今カルティエ財団でやってる桜の絵は本当にひどい。。。こちら
おじいちゃんの趣味やん!ってレベル。。。辛い。。。
ジャコメッティ財団行った時に目と鼻の先だったので目の前まで行ったけどどうしても入る気にはなれず。。。
同時期にガゴーシアンギャラリーでもやってて、こっちはまだ良さそうだったし、パリのガゴーシアン行ったことなかったしってことで行ってみたら最高でした。これ!これ!これぞハースト!!!
薬のキャビネット作品がひたすら続くとんでもない展示。。。
ワンフロアが広いんだけど、2階を見終わえて帰ろうとするとスタッフに呼び止められて上にもあるよ!とのこと。マ!?
3階もひたすら薬キャビネット。
潔いぐらい似たような作品が続いて逆にめっちゃ爽快でした。
カルティエ、逆に観た方がよかったかな。。。


Dominique Gonzalez-Foerster "la chambre humaine & la planète close" @ Galerie Chantal Crousel
ドミニク・ゴンザレス=フォルステルの「人間の部屋」というタイトルの展示。
この人何がいいのか全くわからない。。。
来年にはサーペンタインでも個展があるとか。ふーん。

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Ryan Gander: Wrong Time Paradigm @ gb agency
たまたま通りかかって見つけたライアン・ガンダーの展示。
相変わらずわけがわからない・・・。

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Tacita Dean "Monet Hates Me" @ Librairie Marian Goodman
タシタ・ディーンの展示。
タイトル面白いんだけど全く意味がわからず。。。ってさっきからわからないばっかり書いてますねw
ここはむしろ手前の本屋目的で来たのです。
出版もやってるギャラリーが多いので、そこの本屋に行くのが好き。
あとはYVON LAMBERTの書店行ったり、ペロタンの書店行ったり。
おかげで欲しい本がいくつか見つかってしまった。。。


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Anni et Josef Albers @ Musée d'Art Moderne de Paris

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パリ近代美術館でやってるアニとジョセフ・アルバース展へ。
こちらも地下鉄広告で見つけた展覧会。
もうね、この展覧会本当に最高だった。
今回パリで観た展覧会の中ではダントツでトップ。
来年の1月9日までやってるからみんなパリ行って観た方がいい。
というのは無茶にしてもそれぐらい良かった。泣いた。ありがとう地下鉄広告。
日本に巡回しないかな。。。

とまあ、ちょっとのっけからあれなんですが、本当に良かったんです。
近年巨匠の影に隠れてしまっていた妻の存在にスポット当てる展覧会が増えてきましたが、その最もいいサンプルの一つ。
先日世田谷美術館で開催されてた「アイノとアルヴァ」展も最高だった。
昨日の記事でも2人展について触れたけど、ここまでしないと観客は納得しません!

で、肝心の内容なんですが、まずのっけから2人の作品が並置されてて、はっきりとお互いがお互いに影響しあってる様を見せつけられます。
もうこの時点でこの展覧会ヤバイ。。。ってなりました。
そこからバウハウス時代の2人の作品の紹介。
この辺の作品はあまり紹介されることもないと思うのですごいレアな感じがする。
ジョセフがステンドグラスや家具を作ってたの知らなかった。
そこにアニのテキスタイルがやってくるんですが、もう作品が似すぎ!!
絵画とテキスタイルという違いはあれど、観ていくうちにどっちがどっちの作品かわからなくなっていきます。
こういうの僕大好きなんですよ。
オリジナリティって所詮は砂上の楼閣で、実際は人と人が影響しあった積み重ねが作品であって、こうやって比較していくことで見えてくる差異に本当に感動してしまうのです。
特に組紐のドローイングは、どっちも同時期に取り組んでるのとかめっちゃエモい!!!

あと展示がめちゃくちゃかっこいいんです。
アニの作品を少し斜めに浮かせてるのとかすごい。

さらに、この展覧会の素晴らしいところは、彼ら自身の創造だけではなく、教育者としての2人もしっかりカバーしているところです。
2人ともバウハウスの教師であり、その後アメリカに渡った後も伝説のブラック・マウンテン・カレッジで生徒たちを教えています。
この辺の内容は、ART TERACE PRESS 03に詳しいので是非読んでほしい。
その課題の内容や、実際の生徒の作品まで展示してあってとても興味深かった!

最後はジョセフの代名詞である正方形が重なってるペインティングがずらっと並んでる様は圧巻だし、アニが教会に頼まれて制作したコミッションワークとかも初めて観た。
そして最後の最後は、冒頭の展示と同様、ジョセフとアニの同色の作品が並置されて終わってて、最後の最後まで手の込んだ展示に最強に感動しました。
これ企画したキュレーターJulia Garimorthにめちゃくちゃ感謝したい。ありがとう。


さて、パリ近代美術館、実は初めて来ました。
昔初めてパリに来た時に、お隣のパレ・ド・トーキョーには行ったんだけど、夜に行ったので近代美術館は閉まってて(パレ・ド・トーキョーはなんと0時までやってる)、当時やってた企画展も興味なかったのでスルーしてたのです。
そしてその時は夜だったのでよくわからなかったのだけど、今回昼間初めて行ってみて、その神殿のようなとんでもないでかさの建物にびっくり。
これ何の建物だったんだろう?と思って調べたら、1937年のパリ万博の時に実際近代美術館として建てられたんだって。
現在は東翼に近代美術館、西翼にパレ・ド・トーキョーが入ってるんだけど、当時はどっちも近代美術館!どんだけー!
1977年にポンピドゥー・センターが開館すると、当時の近代美術館に収蔵していた現代美術がそっちに行ったことで西翼が空に。
そこから紆余曲折あり、2002年に現代美術センター「パレ・ド・トーキョー」が開館したとのこと。
ちなみにセーヌ川沿いのニューヨーク通りから入ると、川越しにエッフェル塔が見えて素敵ですが、そっちの広場は格好のスケボー練習場になってて通るのめっちゃ危険笑
入口はプレジダン・ウィルソン通りにあるのでそっちから行きましょう。
ちなみに美術館の前の広場はなぜか「Place de Tokyo」と言います。

で、パリ近美。
ここのコレクションの凄まじさにたまげました。
特にマティス室!!この作品ここにあったのか!!!!!
ずっと生で観たかったんです。。。また泣きました。。。
この作品はアメリカの大コレクター・バーンズが、自身のコレクションを展示する美術館を建設するにあたり、その壁を飾るため依頼されたもの。
そこでマティスは「ダンス」を描き始めたんですが、なんと制作途中でマティスが寸法を間違ってしまって美術館のサイズに合わないことが発覚!!
結局一から別に作り直したんだけど、その間違っちゃった作品をパリが買い取ったわけです。
マティス室にはその下書きと実作が展示されてるんだけど、下書きめちゃくちゃいい!!!
しかも同じ部屋にビュレンの大作まであってお腹いっぱい!
最高でした。。。

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あとはデュフィ室もとんでもないし、バゼリッツの大作部屋もすごい。。。作家から譲り受けたんだとか。
あとはナビ派とかフォンタナの謎のライト作品とか、ヘンリー・ダーガーもめっちゃあって意外でした。
ここはちゃんと観ようと思ったら半日かかるかも。。。最高かよ!

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Chaïm Soutine / Willem de Kooning, la peinture incarnée @ Musée de l'Orangerie

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海外に行くと必ず駅の広告をくまなくチェックします。
渡航前にはチェックできなかった生の情報が手に入るからです。
そんな中で見つけたのがオランジュリー美術館スーティンとデ・クーニングの2人展
ということで実に15年ぶりにオランジュリーへ。
で、2人展の内容はというと、正直必然性がよくわからなかった。
多分両者ともポートレートから段々抽象になっていくってストーリーを見せたいんだろうけど、別にこの2人じゃなくてええやろ、ってのが感想。
オランジュリー自慢のスーティンコレクションと誰かを比較したかったんでしょうか。
まあ、そんなことよりデ・クーニングをまとめて観れたのは大変良かった。
改めて絵肌の複雑さが本当にすごい。。。
実際の抽象よりもウーマンシリーズの方が抽象度が高い気がする。
この展覧会は来年の1月10日までで、並行して10月13日からホックニー展もやるらしい!

で、オランジュリーといえばモネルーム。
久々に来たけどやっぱりこの部屋はすごい。
これのためにある美術館といっても過言ではないです。
パリの中でも見過ごされがちだけど、ルノワールの代表作「ピアノを弾く少女たち」とかルソーの「人形を抱く子ども」もあるし、かなり穴場ですよ。
ジョアン・ミッチェルの大作があったのは意外だった。めっちゃいい。。。
ちなみにオランジュリーという名前は元々オレンジ温室(オランジュリー)だったからなんだって!
しかし国の美術館のくせに公式ウェブサイトがフランス語しか見つからない。。。

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Picasso-Rodin @ Musée Picasso

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もういっちょ15年ぶりのピカソ美術館。
カルナヴァレ博物館に寄ったついでに、2015年にリニューアルもしてるしってことで寄ってみました。
展示スペースが2倍になったって聞いてたけど、行った時は3階の常設が閉まってたので、あっさり観れてしまった。
企画展がロダンとピカソで興味ねぇと思いつつ。。。
「形」を模索した二人ってテーマでやってたけど、スーティン/デ・クーニング同様やっぱ無理があるのでは、って内容でした。。。
2人展って結構好きなんだけど、組み合わせむずいね。

Institut-Giacometti

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2018年の開館以来めちゃくちゃ行きたかったジャコメッティ・インスティチュート
ジャコメッティのアトリエが見られる!!!
矢内原の伝記などで出てくるアトリエはカオスそのもの。
ベーコンのアトリエもだけど、なんとなく薄暗い小道の脇にあるイメージでした。
しかし、アトリエはオリジナルの場所なのかと思ったら移設されたもので、なんかがっかり。
すぐそばにあったそうなのですが、そのオリジナルの場所は今どうなってるんだろう。。。
そしてアトリエの再現は入口からすぐなんだけど、ちょっと照明明るすぎじゃない?
なんかアトリエのアウラがかなり薄まってる気がする。。。
それでもまあ、こんな小さかったんだ!とか色んな発見もあったはあったのですが。
この場所は元々ポール・フォロ(1877-1941)という作家のアトリエで、内装がめちゃくちゃ可愛かった。
そんな中で「ジャコメッティとエジプト」という展覧会がやってて、彼の彫刻はこんなにもエジプトと関係があったのか、とびっくり。
エジプトの古代彫刻とジャコメッティの彫刻が一緒に展示してるのはよかっった。
でも、兎に角小ぶりの美術館なので30分もしないうちに見切れちゃいます。
んー、一回行ったらもういいかな。。。
ちょっと期待外れだったけど、ジャコメッティの空気に少しでも触れられたのは良かった。


あと、書くところないのでここに。
9月の18と19日が、「ヨーロッパ文化遺産の日」という普段公開されない建物が一般に開放される日で、友達が「ロベール・マレ=ステヴァンスのアトリエに行きたい」というので、行ったら友達はまさかの寝坊で僕だけで観に行きました笑
正直ステヴァンスってよく知らないんだけど、コルビュジエやペリアンらと同時代のモダニズム建築家なんですね。
そしてアトリエは、確かにバウハウス的要素もあるけど、結構装飾的。
で、今は何かの学校になってて、各部屋も生活感漂いすぎて建物のアウラが。。。
あと、ガイドツアーだったんだけど、全部フランス語で何言ってるのか全くわからずw
普段は見られないということなのでまあ見られて良かったですが。

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