「ドライブ・マイ・カー」by 濱口竜介
先週から公開された濱口竜介監督の最新作「ドライブ・マイ・カー」。
公開一週間もしない間に既に2回も観てしまった。。。
想いが詰まりすぎてまだまだ整理できてないんだけど一先ず書きます。
まず、
・僕の人生で最も大切な映画が濱口監督の「ハッピーアワー」であること。こちら。
・その次の初商業映画となった「寝ても覚めても」が僕の中で駄作中の駄作だったこと。
この2点がまず前提としてあります。
特に「寝ても覚めても」のショックは相当なものでした。
これは語りだしたらキリがないのでやめます。
そのショックを引きずりながらの商業映画第二弾。
西島秀俊や岡田将生といった人気俳優を起用してる時点で僕の中の期待値は相当低いものでした。
「ハッピーアワー」の奇跡は演者たちのほとんどが演技経験がないという部分に大分大きな比重があったように思います。
彼らの演技ははっきり言って素人そのものだったのですが、それ故にテクニックには依らない人間の芯の部分を見せられているような生々しさがあって、もう涙が止まらなかったのです。
あと、5時間超というイレギュラーな長さもその奇跡の一端なのかもしれません。
今回も3時間と、商業映画としては長めですが、まあギリギリ範囲内。
そう言った「飛び道具」なしで、どこまでのものができるのか。
こういうアート系映画(ざっくり)撮ってる人って大体商業映画撮るとコケます。
好きだった監督さんがそうなっていくのを幾度として見てきました。誰とは言いませんが。
そんなこんなで濱口さんも。。。と思いながら恐る恐る鑑賞。
カンヌで4冠受賞したのもあってか上映館はなんとTOHOシネマズで新宿は前日には夜の回まで完売でびっくり。
仕方なく日本橋のTOHOシネマズで鑑賞しました。
以下ネタバレを含むので読みたい人だけどうぞ。
休業延長のお知らせ。
The Still Point – まわる世界の静止点 @ kudan house















石上純也の「木陰雲」が展開中のkudan houseで展覧会が開催されてます。
もう少し早くアナウンスしてくれてたら1回で済んだのに。。。
ということで再訪。
前回は中は見られなかったので、絶好の機会です。
それにしてもこの展覧会本当に謎。
応接室の穴の開いたキャンバス、フォンタナみたいじゃんと思ったら本当にフォンタナだったり笑
他にもビュレンや河原温、杉本博司に李禹煥、菅木志雄などなど。。。
あまりに散逸すぎてよくわからなかったけど、九段ハウス自体が美し過ぎてどうでもいいです。
あと上から「木陰雲」観られたのも良かった。
展覧会も木陰雲同様9月5日まで。こちら。
ところで前回最高すぎたカフェが今回はやってなかったんだけど、どういうタイミングでやってるんだろうか。。。
MOTコレクション / MOTアニュアル2021 @ 東京都現代美術館

メインの横尾忠則展は完全スルーしてコレクションとアニュアルへ。
まずはコレクション。
コロナ禍でのコレクション展の在り方に関してこのブログでも散々言ってますが、ついに木場までコレクション展をメイン目的にして行くことになろうとは。。。
1階では「Journals 日々、記す」と題して、コロナやオリンピックに纏わる新しすぎるコレクションたちに加えて河原温や平田実、オノヨーコなども混ぜるなど流石のバランス。
のっけからChim↑Pomでやられました。
昨年の第一回目の緊急事態宣言下で彼らが作ったのは、大久保駅前のビルボードに「TOKYO 2020」と書いた感光液を塗ったカンヴァスを設置して、宣言が終わるまで掲げ続けた作品。
10月から森美術館で始まる彼らの個展も楽しみになっちゃいました。
大岩オスカールも NYロックダウン下で描いた作品も圧巻。
三宅砂織のベルリン・オリンピックに関連した作品群も印象的でした。






そして2階ではなんといっても「特別展示:マーク・マンダース 保管と展示」が開催中。
先日まで開催中だったマンダースの展覧会を、構成を変えて展示してます。
期間中休館や予約制などにより観られなかった人の為に、作品返却までの期間を利用して急遽開催されたという前代未聞の超画期的な企画!コロナ禍を逆手に取った企画ですね。素晴らしすぎる。
僕は前のも観たからいいかと思いつつ、こんな素晴らしい企画をやってくれてるんだから観ないとという謎の義務感に動かされて観に来たわけだけど、展示場所や置き方でここまで変わるのか!という印象で、結果的に来て本当に良かったです。前回観られなかった人はもちろん、前観た人も是非見るべき!





そして同時開催中の「MOTアニュアル2021 海、リビングルーム、頭蓋骨」。
このタイトルは一体、、、と思ってたら、出品作家3名のモチーフそのままだった。
3作家とも映像で、中々観るのに骨が折れますが、なんといっても冒頭の潘逸舟が素晴らしすぎた。
彼の作品は結構以前から観てるけど、去年の日産アワードのやつとか観てもいまいちピンと来てませんでしたが、今回ようやく彼の作品の素晴らしさを実感しました。
海という大きなものと対峙する小さな作家本人の姿が滑稽でもあり、詩的でもあり、いつまでも観ていられる愛おしさが溢れました。
この作品観るだけでもアニュアル行くべき。
正直他の2名は映像長すぎて観てられませんでした。。。






上記の展示はどれも10月17日まで。
次回のクリスチャン・マークレー展も楽しみすぎる!
Soft Territory かかわりのあわい @ 滋賀県立美術館

この6月にリニューアルオープンした滋賀県立美術館へ。
半分行くつもりで招待券だけ持って行ってたら友達が車出してくれるというので便乗して行ってきました。
以前は滋賀県立近代美術館という名前で、2004年の「コピーの時代」以来だから17年ぶり。。。ヒエェ。。。
一度は長谷川祐子が館長になり、SANAAが建物を手がけるということで2017年に休館となりましたが、その後入札がつかず断念し、新たに館長に据えられたのが東近美の学芸員保坂健二郎さん。ちなみに現在館長ではなくディレクターという肩書きになってます。
(その後長谷川さんは金沢21美の館長に、島敦彦さんが国立国際の館長になり、収まるとこに収まった感)
建物の改修はgrafが手がけ、グラフィックは原田祐馬。
この辺りのことは美術手帖の記事が詳しいです。
ロビーで持ち込みありで飲み食いできたり、県内の作家が館内で作品販売できるとか画期的すぎ!
特に保坂さんのインタビューは必読!
横浜県美の館長になった蔵屋さんといい、東近美から逸材が流れてるのが切ない。。。
生まれ変わった「滋賀県立美術館」の内部が公開。目指したのは「リビングルームのような美術館」
滋賀県立美術館ディレクター・保坂健二朗インタビュー。目指すのは「リビングルーム」としての美術館
なんせ前に来たのが17年前なのであまり覚えてないんだけど、確かにエントランスも開放的になったし、要所要所に地元の信楽焼が使われていてオシャレ!





開館記念として、現在「Soft Territory かかわりのあわい」が開催中。
滋賀ゆかりの若手作家の展示です。
知ってる人もちらほら。
まずは井上唯さん。彼女がこれまで収集してきたものや、新たに滋賀をテーマにしたものまで大きな展示室にたくさん並べられてて圧巻。
作家自身が公開制作をしていて、船を作ってました。



後輩の薬師川千晴。めちゃくちゃかっこよかった!
VOCAでも見てた裏表見せる作品だけど、ちゃんと深化してた。素晴らしい。



石黒健一。今回初めて見た作家だったけど、一番好きな作品でした。(と思ってたら去年駒込倉庫で観てた!)
館収蔵のブランクーシの作品をルアーにして琵琶湖でブラックバス釣るっていう作品笑
ブラックバスを日本に初めて移入したとされる赤星鉄馬が回り回ってブランクーシに繋がってるっていう図も最高でした。



松延総司と小宮太郎は安定感がありますね。



外には井上裕加里の彫刻。何気にジャッドもありました。


もう一会場は個人的にグッとくるものがなかったので割愛。
中々行きにくい場所でもあるので行けて良かった!この展覧会は8月22日まで。こちら。
今後保坂さんの手腕が楽しみすぎます。
その後、足を伸ばして信楽まで。
友達が行きたかったNOTA SHOPってとこに行ってきました。
こんなところに店なんかあるの?って場所にあったんだけど、お客さんがひっきりなしに来ててなんかすごかった。
ショップと工房があって、工房ではさっきまでいた滋賀県美で使われてた信楽焼が全部ここで作られてたことが判明。工房もお邪魔したけど素晴らしかったです。




鷹野隆大 毎日写真1999-2021 @国立国際美術館

ほとんど諦めかけてたけど、やっぱり行ってきました鷹野隆大展。
この日、久々に四天王寺の蚤の市に行こうかとも思ってたのだけど、暑さに負けて国立国際を選んだら大正解。次の日行こうと思ってたけど、何とその日は台風で閉館してしまったのです。。。あぶねーー。。。
鷹野さんと言えば、木村伊兵衛賞をとった「IN MY ROOM」や「男の乗り方」など男性ヌードのイメージが強いと思います。
実際自分もそうなんですが、今回はそちらではなく、展覧会タイトルにもなっている、1998年から毎日撮り続けている「毎日写真」がメイン。
というわけで正直期待半分だったわけですが、まあ可もなく不可もなくという感じでした。
「毎日写真」に関して、そんなに毎日撮ってるということは相当な枚数があるはずなのに、それに対して展示数少なすぎるなぁという印象でした。
額装されて一点一点観せるより情報が飽和するぐらい雑多に展示してても良かったのでは、と個人的には思いました。
そんな「毎日写真」よりも近年鷹野さんの興味が「影」に傾倒してるのが面白かったです。
今回「欲望の部屋」という、観客の影が壁に残る体験型展示があったり、そのままストレートに影を撮った写真や、フォトグラムのような写真など、とても興味深かった。
そこまで真剣に追ってるわけではないので、近年の作品がまとめて観られたのは良かったです。





そしてもう一つ地下3階では「Viva Video! 久保田成子展」が同時開催中です。
久保田成子はナムジュン・パイクのパートナーという印象でしたが、近年のジェンダーの動きから彼女もまた改めてスポットが当たったという形です。
これまであまり知られてこなかったというのもあり、彼女の人となりを紹介するコーナーが多かったのが印象的。
そんな中、彼女の真骨頂でもある「ヴィデオ彫刻」の展示は圧巻。
デュシャンへのオマージュ作品シリーズ「デュシャンピアナ」はやっぱいいですね。
あと、上階の鷹野さんの「影」に対し、久保田さんは「光」の印象で好対照なのも面白かった。
ところどころ映像が反射してるのが印象的でした。







鷹野展、久保田展ともに9月23日まで。
さて、向かいの来年2月についに開館する大阪中之島美術館。外観はほぼ完成してました。楽しみ。




目[mé]「まさゆめ」|「ただの世界」@ 代々木公園 | SCAI THE BATHHOUSE

一昨年の千葉市美の個展から快進撃を続ける目[mé]。
そんな彼らがオリパラに合わせておじさんの顔を東京の空に浮かべると聞いたのは一昨年の暮れ。
その後コロナでオリパラ自体が延期に追い込まれ、このプロジェクトはどうなるのかと思ってたら、7月16日の朝、メディアでおじさんの顔が東京の空に浮かんだことを知る。しかもこの日以外未定らしい。
その日の予定をズラして急遽その日は目に捧げる。フリー万歳。
16時頃現場の代々木公園に到着。
ずっと上がってるのかと思いきや、上がっているのは一瞬らしい。
ちょうど何度目かの飛行を試みようとしているところ。
それにしてもただただ怖いwww










この時は風向きが良くなくて敢え無く飛行失敗。。。
夜にワンチャンかけてリベンジカムバック。飛んでくれ!!
19時前に再訪。
まだ飛ぶ気配なし。
なんとなく代々木公園内を散歩してると始まった!


飛べ!

飛んだ!!

進撃みありwww



いやぁ、バカバカし過ぎて最高でした!!!
何と言っても、美術館ではなく、野外で、知らない人同士で同じものを目撃するのはいいですね。
以前渋谷のスクランブル交差点でソフィ・カルの映像観て以来の感動。。。
今後また飛ぶ機会あるのでしょうか?その時はぜひ!!
目[mé]「ただの世界」@ SCAI THE BATHHOUSE
そして、目[mé]初となるコマーシャルギャラリーでの個展も開催中です。
舞台はあのSCAI!
もう期待しかありません。
行ったら外観からこんな感じ。。。期待しかない笑

以降ネタバレになっちゃうので読みたい人だけどうぞ。
ちなみに展覧会は予約制で既に埋まっちゃってます。
大舩真言「Infinite」@ 東長寺 / 宮永愛子「ひかりのことづけ」@ 湯島聖堂
聖域x現代アートの2つの展示をご紹介。
ベンヤミンの唱えた「礼拝的価値」が現代に蘇ります。
まずは日本画家の大舩さんの展示。
最終日の8月9日には、回廊に囲まれた水に作品が設置されるそう。
ちょっと観られるかわからないのだけど、観れたら追記します。




続いて宮永愛子の作品が湯島聖堂に。
富山産のガラスを用いた光のインスタレーションとサヌカイトを用いた音のインスタレーション。
サヌカイトに雨樋からの水が落ちて音が鳴るそうですが、からっからで落ちる気配なく、、、。







宮永愛子の展示は、「東京ビエンナーレ2020/2021」の一環でしたが、それ自体には全く興味なく、もう一つ内藤礼の空蓮房での展示も見たかったけどあっという間に予約でいっぱいに。まあ前に同じところで見たしいいけど。
<関連記事>
Makoto Ofune "Particules en Symphonie" @ Saint-Merry
大舩真言「Voyage Intérieur -旅する内面-」@ gallery サラ
物気色@虎白院
大舩真言「Principle」 @ neutron
大舩真言「Prism」@ neutron tokyo
大舩真言「彼方の風」@天籟宮
宮永愛子:なかそら-空中空- @国立国際美術館
宮永愛子特別公開講義「はるかの眠る舟」@神戸芸術工科大学
宮永愛子「はるかの眠る舟」@MIZUMA ART GALLERY
ARTIST FILE 2009 @国立新美術館
宮永愛子「地中からはなつ島」@資生堂ギャラリー
お釈迦様の掌@ARTCOURT GALLERY
宮永愛子「漕法」@京都芸術センター
ベンヤミンの唱えた「礼拝的価値」が現代に蘇ります。
まずは日本画家の大舩さんの展示。
最終日の8月9日には、回廊に囲まれた水に作品が設置されるそう。
ちょっと観られるかわからないのだけど、観れたら追記します。




続いて宮永愛子の作品が湯島聖堂に。
富山産のガラスを用いた光のインスタレーションとサヌカイトを用いた音のインスタレーション。
サヌカイトに雨樋からの水が落ちて音が鳴るそうですが、からっからで落ちる気配なく、、、。







宮永愛子の展示は、「東京ビエンナーレ2020/2021」の一環でしたが、それ自体には全く興味なく、もう一つ内藤礼の空蓮房での展示も見たかったけどあっという間に予約でいっぱいに。まあ前に同じところで見たしいいけど。
<関連記事>
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宮永愛子:なかそら-空中空- @国立国際美術館
宮永愛子特別公開講義「はるかの眠る舟」@神戸芸術工科大学
宮永愛子「はるかの眠る舟」@MIZUMA ART GALLERY
ARTIST FILE 2009 @国立新美術館
宮永愛子「地中からはなつ島」@資生堂ギャラリー
お釈迦様の掌@ARTCOURT GALLERY
宮永愛子「漕法」@京都芸術センター
水の波紋展2021 消えゆく風景から ー 新たなランドスケープ @ 渋谷・青山エリア

ヤン・フートをご存知でしょうか?
彼は1986年にゲント市内の51の住宅を会場に『友達の部屋[Chambres d’Amis]』展を企画したり、1975年からゲント現代美術館の創設に関わり、2003年までディレクターを務め、1992年にはドクメンタ9のチーフキュレーターを務めたり、と、本当にレジェンドなキュレーター。
そんな彼が来日して、ワタリウムと協働で1995年に開催したのが「水の波紋95」。
ワタリウム美術館の外、青山と原宿の街全体を会場に、街中の40箇所に現代美術作品が設置されました。
そんな「水の波紋」が四半世紀ぶりに復活!
ヤン・フートはもういませんが、その魂を繋げるように渋谷から青山にかけて多様な作品が展開中です。
ワタリウムには先日亡くなったボルタンスキーの作品も展示されてるとか。見てませんが。
笹岡由梨子 @ 渋谷区役所 第二美竹分庁舎



竹川宣彰 @ 渋谷区役所 第二美竹分庁舎


UGO @ 渋谷区役所 第二美竹分庁舎


JR @ 渋谷区役所第二美竹分庁舎 前庭

SIDE CORE @ 神宮前3-35-5の空地






暑すぎて全部は到底回りきれなかった。。。
こういう野外で何箇所か回る系の展示真夏にやるのマジでやめてほしい…。
とはいえ、中でも笹岡由梨子とSIDE COREは最高だった。
笹岡さん、何でこんなにトラウマになるような作品連発できるんだろう。。。
「誰が殺したんや!」というセリフが頭から離れませんw
SIDE COREは場所とマッチしすぎてヤバかった。
都市のポケットのような場所をジャックする感じがめちゃくちゃかっこいい。
メンバーがいて、スプレイで何やらライティングしてたけど怖くて話しかけられなかったw
この展覧会の趣旨に最も近かったと思う。
トモトシも見たかったけど見つけられず。。。
あと、回ってる中でパビリオン残り4つ見れてコンプリートしちゃいました。




それにしてもワタリウムすごいですね。
「パビリオン・トウキョウ」と「水の波紋」。
こんな大型企画を2つも同時に開催するなんてとんでもないエネルギー。
この美術館は、コロナ中も全く閉める事なく動いていて、昨年は存続の危機により開始したクラウドファンディングが、目標額の500万円をたった4時間で達成し、最終的に2千万円以上集めるという。。。こちら。
昨年の原美術館しかり、私立の美術館はいつなくなってもおかしくないのです。
今後も意欲的な展示期待してます。
「パビリオン・トウキョウ」、「水の波紋」共に9月5日まで。お見逃しなく!
加藤翼 縄張りと島 @ 東京オペラシティ・アートギャラリー

「ISEYA Calling」(2012)



「Superstring Secrets: Hong Kong -tai po」(2020)




「Underground Orchestra」(2017)

「F.F.H. (深川, フューチャー, ヒューマニティ)」(2011)


「凸 凹 01」(2007)


「Turningman」(2012/2021)

「Can You Hear Me?」(2015)


「日本列島重力異常図(東京)」(2021)

「Superstring Secrets: Tokyo」(2020)



「H.H.H.A. (ホーム, ホテルズ, 秀吉, アウェイ)」(2011)

「2679」(2019)

「凸凹01/02」(2007/2008)

「Listen to the Same Wall」(2015)

ちょっと期待しすぎちゃった感はあるけど、それでもやっぱり面白かった加藤翼展。
まずがっかりポイントから言っちゃうと、この資材置き場のようなごちゃごちゃ感やカオスは、このオペラシティ・アートギャラリーでは見慣れたものになりすぎてしまったのがなぁと。
直前に千葉正也展もあったのでちょっと既視感が否めず、挑戦的な展示ではあるけど新鮮味に欠けてしまったのです。これは加藤さんのせいではないんだけど、それだけに残念。
あと、このカオスの為に、キャプションがハンドアウトの為に分かりづらく、しかもそのハンドアウトも展示順ではなく制作年順に書いてあるので展示番号をいちいち探さなきゃいけないのがすごく煩わしかった。
初めて加藤翼を知る人にとってはとても入りづらい展示なんじゃないかな。
それはそれとて、彼がこれまでやってきた作品というよりも「コミュニケーション」と言った方がしっくりくるような、そんな軌跡が辿れたのは本当に良かった。
彼の作品は所謂ソーシャリー・エンゲージド・アートに入ってしまうのかもしれないけど、それだけに回収されない造形的な部分やらが見て取れて楽しかったです。
特に、写真には収まらないけど、今回の展示で最も印象的だったのは音でした。
彼の作品は「引き興し」に代表されるような、祭のような土着的なものを感じてはいたけれど、会場に溢れる音が、どこかプリミティブで改めてこの作家が奏でてきた音を堪能できました。
確かにあいちトリエンナーレで発表した「2679」や、「Listen to the Same Wall」のように、直接的に音(音楽)を取り入れた作品もあるけれど、「Underground Orchestra」のように音楽以前の音を扱ったもの、そして引き興しが起す音なども会場中に溢れかえっていました。
音と言えば、2011年、震災の直後に大阪で行った「H.H.H.A. (ホーム, ホテルズ, 秀吉, アウェイ)」で、出来るだけ音を起こさないようにしたというエピソードがとても印象的でした。
あの時の展示は鮮明に覚えています。
加藤翼「ホーム、ホテルズ、秀吉、アウェイ」@アートエリアB1
あと、僕は初めて見たけど、本を使った小品も所々にあって面白かったです。





最後に好き勝手言ってしまうと、やっぱり「引き興し」以降で、彼の代表作と言えるものが出てないのが改めて。
「引き興し」はやっぱりすごすぎて、以降の作品はその派生に見えてしまう。
まだまだ30代半ば。これから彼の進化が楽しみでもあり、そういう意味でもこの展覧会は未来から見た時にとても重要な展覧会になると思います。
9月20日まで。こちら。
他に観た展示たち>>
佐伯慎亮 「AWAJIMAN」@ スタジオ35分
会田誠展「愛国が止まらない」@ MIZUMA ART GALLERY
袁方州「虚実体 The nonentity within the entity」@ デカメロン
上村洋一 + エレナ・トゥタッチコワ「Land and Beyond|大地の声をたどる」@ ポーラミュージアムアネックス
約束の凝集 vol.4 荒木悠 @ gallery αM
八木良太「浦島太郎の宇宙旅行」@ MUJIN-TO Production
かんらん舎・ 大谷芳久の手探り @ Sprout Curation
one's signal—前期 @ KEN NAKAHASHI

ボイス+パレルモ @ 埼玉県立近代美術館

昨年の延期からずっと楽しみにしてた展覧会。
延期になったことで、奇しくもボイス生誕100年の年に開催となりました。
とはいえボイス、やっぱり難しかった。。。
やっぱり彼の場合彼自身が作品だったので、今ある作品はその残余物にしか過ぎず、それらを見てもなぁ、という感じは否めません。
その代わり記録映像がせめてもの彼のアウラを伝えているのでは。
個人的には、映像よりさらに彼のアウラを顕していたのは、この展覧会の最後を飾る作品「ヤー、ヤー、ヤー、ヤー、ヤー、ネー、ネー、ネー、ネー、ネー」でした。
タイトルの通り、ボイス自身が唸ってる声の作品なんだけど、これ実は、1階から2階の会場に上がった時に最初に聞こえてくるんですよね。
最初、変なおじさんがいるんだと思ってやべーと思ってましたw
この作品は、どの作品よりも彼の気配を生々しく漂わせていたように思います。
しかも最後のエピローグが「声と息」と題されていて、ボイスを声、パレルモを息としていてめちゃくちゃ美しいラストなのです。
で、初っ端からエピローグまでいってしまいましたが、今回の展覧会のもう一人の主役パレルモです。
この展覧会の功績は、何と言ってもパレルモの作品をこれだけ日本で紹介したところでしょう。
僕も名前だけは聞いていたけど、これまで数点しか見たことがなかったので、これだけまとめて観られたのは最高でした。
初期の布絵画や、シェイプドキャンバスも素晴らしかったけれど、白眉は彼の壁画の作品群です。
もちろん実物はないんだけど、一点だけ青い三角を実際のステンシルで美術館の壁に転写してるのは素晴らしかった。
パレルモの壁画はこれまでに20点ほど手がけたそうなんだけど、残念ながらどれも残ってません。
資料だけ見るに、空間をかなり意識したものが多くて、めちゃくちゃ僕好み。
所謂壁画って感じではなく、線だけとか、微妙な操作で空間の質をガラリと変えてしまっている。
パレルモのこうした壁画だけをテーマに絞った展覧会も観てみたいなと思いました。
あと晩年の金属絵画も美しかった。
ここまで来たら、ボイスの教え子の代表格、イミ・クネーベルとイミ・ギーぜの展覧会も開いてほしい。
前者は知ってる人まあまあいるかもだけど、後者は中々知らないだろうなぁ。
クネーベルとギーぜは同じイミを名乗るぐらい仲よかったんだけど、ギーゼは32歳の若さで自殺しちゃうんですよね。
ギーゼの死後もクネーベルはイミを名乗り続けて今に至ってるわけです。
彼らがデュッセルドルフへボイスを訪ねて、初めての講評の際に、机に乗った二人の作品を全て無言で叩き落としていったという伝説のエピソードがあります笑
その時に使われていたのが19番教室という場所で、それがそのままタイトルになったクネーベルのインスタレーション「ルーム19」は彼の代表作となり、ディアビーコンで観られます。
クネーベルも日本の美術館ではまだ本格的に紹介されてないだろうから是非観てみたいですね。
埼玉近美のボイス+パレルモ展は9月5日まで。こちら。
その後は大阪の国立国際美術館でも開催されます。できればこっちでも観たい。
宇佐美圭司 よみがえる画家 @ 東京大学 大学院総合文化研究科・教養学部 駒場博物館

緊急事態宣言で、ひたすら学内のみに限られてて、やっと一般公開スタートと思ったらまた緊急事態宣言。。。
閉まる前に行っておかないと!と急いで行ってきました。
(結果的には8月29日まで一般公開は予約制で続けるとのこと)
正直宇佐美圭司自体は全く興味がないんです。
ただ、1977年から食堂にかかっていた彼の大型作品「きずな」を、2017年の改修工事時に廃棄処分してしまったというニュースは美術界に衝撃をもたらしましたし僕もよく覚えてます。
なんでそんなことが起こったんだ。。。
それを反省するべくこの企画が始まったことに興味を覚えました。
この展覧会には、宇佐美氏の作品はもちろんのこと、それだけでなく、この大学が手がけたデュシャンの「大ガラス」のレプリカも展示していたのはとても面白かった。
展覧会中にも「テセウスの船」の例えがありましたが、どこまでが「オリジナル」なのか、どこまで修復すれば「オリジナル」となりうるのか、という問題を提起していました。
そこでこの展覧会の白眉となるのが、「きずな」ではなく、1968年に発表した「Laser: Beam: Joint」の再現。
人型にくりぬかれたいくつかのアクリルの間をレーザー光線が走るというインスタレーションで、木金土のみ実際に再演されます。
発表された当時と違い、強いレーザーを使えないので、分割したり、スモークをドライアイスで焚いたりと、色々変更した上で行っており、僕は木曜に行ったので見れましたが、正直めっちゃしょぼかった。。。
これは多分、ほとんど「再現」できてないんじゃないかな、と思います。
ただし、使われてるアクリルはなんと「オリジナル」。
この展覧会は、宇佐美圭司という一人の個展だけではなく、「オリジナル」と「再現」の問題を考えるのにとても有意義な展覧会だと思います。
もちろん、宇佐美氏の作品も改めて見ると、ジャスパー・ジョーンズやラウシェンバーグの影響もあるのではとか思えて面白かった。
まあ、展覧会はこんなとこなんだけど、そんなことより駒場東大といえば、僕にとって900番教室!
1969年5月13日、三島由紀夫と東大全共党の伝説の討論会が繰り広げられた場所。
震えた。。。




奇しくもボイスの黒板とかぶりますね。。。