石上純也「木陰雲」@ 九段ハウス

会期始まっても完成せず、一週間過ぎてからやっと完成したとか。。。さすが。
そんな石上純也のパビリオン。
正直ドローイングからも、完成してから行った人の写真からも凄さがあまり伝わってきませんでした。
んー、今回はそこまででもないのかな?
と思いつつ出かけたら最高でした。すいませんでした。
写真、撮っても撮っても撮りきれないし、全然魅力が伝わりません。
これぞ空間体験!是非行って見るべし。8月は基本月曜休みなのでお気をつけて。
元々ある木を避けて建つ屋根。
これは那須のアートビオトープもやっぱり行った方がよさそう。。。



















この場所を石上純也に当てがった東京パビリオンもすごい。
そもそも九段ハウスというのは、1927年に建てられた内藤多仲、木子七郎、今井兼次の共同設計により、1927年に建てられたスパニッシュ様式の資産家の山口萬吉の邸宅。
現在は会員制ビジネスサロン(!)らしい... こちら。
このパビリオンの期間中は、一部が山口県宇部市にあるレストラン「メゾン・アウル」がポップアップで出店していて、夜は1⽇3組限定でディナーを提供し、コースは1人あたり2万4000円(税込、サービス料別途)とのこと。余裕のある人はどうぞ。。。
ちなみにメゾン・アウルは、宇部に石上純也設計による洞窟のようなレストランをずーーーーっと前から建設中なんだけど、この秋ようやくオープンするらしい。。。こちら。
この施主の方のTwitterが赤裸々で面白かったんですが、いつの間にやら消えてる。。。
石上純也の初期の代表作の薄い机もこのレストランに作られたものです。
そんなレストランが、実は昼間カフェ営業もやってます!!
行くまで知らなかったんだけど、看板が出てたので入ってみたら最高でした!
カードしか使えないけど、石上純也の作品を模したスイーツなんかも出てきてめちゃうま!
猛暑の中の楽園でした。。。最高!行ったら絶対入るべき!

9月5日まで。都内で見られる石上純也は貴重ですよ!こちら。
<関連記事>
KAIT広場(竣工前) by 石上純也
KAIT工房 by 石上純也
石上純也展ボランティア@豊田市美術館
石上純也展「建築はどこまで小さく、あるいは、どこまで大きくひろがっていくのだろうか?」@SHISEIDO GALLERY
石上純也「建築のあたらしい大きさ」@豊田市美術館
パビリオン・トウキョウ2021展 @ ワタリウム美術館
オリパラに合わせて(?)都内に現れた9つのパビリオン。
それらを総括する展覧会がワタリウムで開催中です。
展覧会と共に、僕はそのうち5つ現地に行って見てきました。
まずは藤森照信の「五庵」。
こちらはワタリウムで当日予約した場合のみ中に入れます。
国立競技場の斜向かいで、階段を上がった茶室から競技場がよく見えます。
最初の躙り口の形が、入る身体の所作まで規定してて面白かった。(右足から入って左足から出る)
茶室はまさかのテーブルでしたw













お次は建築家ではないけど会田誠。
外苑のイチョウ並木入り口に狛犬のように建つ「東京城」。
一方はビニールシート、一方はダンボールで出来てます。
よくもまあこんな風刺な作品に東京都お金出したよねw
それにしても、ダンボール、なんで風雨に耐えてるんだ。すごい。
外苑初めて来たけどオリパラで何もかも閉まってたので終わったらまたゆっくり来たい。










Googleマップでこの位置にピンを落とすと「会田みつお」って表示されるwwww

見る気なかったけど藤本壮介のCloud Pavilion。
この人の建築、いつもだったらもっと写真映えするんですが、写真の時点で既にひどい。。。
目[mé]を見にいったら近くにあったのです。(目[mé]については後日アップ予定)
夕方になったら萎んでて洗濯物みたいでした。。。


最後は妹島和世の「水明」。
浜離宮。クソ暑かった。。。
こちらから入園要予約ですが、暑すぎてほぼ誰もいないので当日でも行けばほぼ入れると思います笑
柵であまり近づけず残念だったけど、パビリオンって頼まれてこんな地を這うようなものを発想するなんてやっぱり天才。。。







といった感じ。
石上純也は凄すぎたので別記事にします。
後の4名のパビリオンは全く興味がないので見てません。。。
興味ある方はこちらで。9月5日まで。
それらを総括する展覧会がワタリウムで開催中です。
展覧会と共に、僕はそのうち5つ現地に行って見てきました。
まずは藤森照信の「五庵」。
こちらはワタリウムで当日予約した場合のみ中に入れます。
国立競技場の斜向かいで、階段を上がった茶室から競技場がよく見えます。
最初の躙り口の形が、入る身体の所作まで規定してて面白かった。(右足から入って左足から出る)
茶室はまさかのテーブルでしたw













お次は建築家ではないけど会田誠。
外苑のイチョウ並木入り口に狛犬のように建つ「東京城」。
一方はビニールシート、一方はダンボールで出来てます。
よくもまあこんな風刺な作品に東京都お金出したよねw
それにしても、ダンボール、なんで風雨に耐えてるんだ。すごい。
外苑初めて来たけどオリパラで何もかも閉まってたので終わったらまたゆっくり来たい。










Googleマップでこの位置にピンを落とすと「会田みつお」って表示されるwwww

見る気なかったけど藤本壮介のCloud Pavilion。
この人の建築、いつもだったらもっと写真映えするんですが、写真の時点で既にひどい。。。
目[mé]を見にいったら近くにあったのです。(目[mé]については後日アップ予定)
夕方になったら萎んでて洗濯物みたいでした。。。


最後は妹島和世の「水明」。
浜離宮。クソ暑かった。。。
こちらから入園要予約ですが、暑すぎてほぼ誰もいないので当日でも行けばほぼ入れると思います笑
柵であまり近づけず残念だったけど、パビリオンって頼まれてこんな地を這うようなものを発想するなんてやっぱり天才。。。







といった感じ。
石上純也は凄すぎたので別記事にします。
後の4名のパビリオンは全く興味がないので見てません。。。
興味ある方はこちらで。9月5日まで。
ファッション イン ジャパン1945-2020―流行と社会 @ 国立新美術館

昨年のコロナ延期からようやく開幕。
戦前から今現在の日本のファッションを紐解く壮大な展覧会です。
僕が感銘を受けたのは特に最初の「プロローグ|1920年代-1945年 和装から洋裁へ」と「1章 | 1945-1950年代 戦後、洋裁ブームの到来」、そして最後の「8章 | 未来へ向けられたファッション」です。
前半ほとんど写真撮れなかったので残念でしたが、特に素晴らしかったのは田中千代。
僕は不勉強でこの人のことを今回初めて知ったのですが、1920年代にヨーロッパに渡り、1930年にはスイスでヨハネス・イッテンからデザインの教育を受けるという、当時先鋭的過ぎる経歴。
故に彼女のデザインはバウハウスの構成主義的な影響を受けたデザインで今見てもめちゃくちゃかっこいい。
戦後には現在の東京田中短期大学というのを設立し教育者として従事してたんだとか。
そんな彼女の作品が同校の同窓会ページで見られます。こちら。
あと、この戦前戦後の時代は朝ドラの「カーネーション」だったり「とと姉ちゃん」を思い出して個人的にとてもエモかった。。。
その後の60年代以降は日本の戦後が終わり、好景気からバブルへと突入して、ファッションも浮かれ気味でついていけない。。。
山本寛斎やコシノジュンコ、イッセイミヤケあたりは食傷気味でほぼスルー。
そんな中80年代に登場した川久保玲と山本耀司の存在はやっぱりすごい。
浮かれた時代に冷や水を浴びせかけるようなデザイン笑
ようやく今の時代からも見られるファッションがちらほら。
後、僕個人はロンドン行くまでファッションなんてこれっぽっちも興味なかったので、90年代あたりも全然ピンとこないんですよね。。。エモい人はエモそう。。。
むしろ2000年代以降のsacaiやFINAL HOMEあたりからピンとき始めて、最後のセクションは色々発見もあり楽しかった。
最後のセクションでは、先日長野まで観に行ったMame KurogouchiやANREALAGEなどの試みも紹介されてましたが、その中でも最も素晴らしかったのがiai。
元消防士という異例の職歴を持つ居相大輝が、東日本大震災を機に故郷に近い京都府福知山市大江町の集落に居を移し、妻の愛さんと2014年に始めたブランド。
10代から服が好きだった彼は、消防士になってからも、山縣良和が創立した「ここのがっこう」に通いながら、仕事の傍服作りをしていたそう。
集落では、築100年越えの一軒家を自分たちで改修し、そこで一点一点手作りで服を製作しています。
作っていくうちに、村の人々に一着一着衣服を作り始めて、今回の展覧会でもおばあちゃん達が嬉しそうにi a iの服に身を包んでる姿が映し出されていて、衣服を纏うことの原初的な悦びが改めて伝わりました。
僕は徒らに「スローライフ」だの「サステイナビリティ」だの謳うのは好きではないですが、i a iの活動はとても気になりました。
「生活の花」というプロジェクトではi a iの服を一年間着用してもらえる人を全国から20名募集して、その着古された衣服を、一年後の展示で販売し、また別の人へ引き継ぐというもの。
それは俗に中古と言われるかもしれないけれど、i a iにおいては新たな価値を付与すること。
あくまで生活に根ざした服なので、そのほつれや汚れも価値になるんですよね。
シーズン毎に切り替わるファッションとは真逆のコンセプト。
ウィメンズしかないのかな?一度羽織ってみたいです。
i a i 公式HPはこちら。キナリノの特集記事はこちら。


余談なんだけど、途中で1964年のオリンピック東京大会が出てきて、選手団の制服が日本国旗をイメージした赤いスーツで、当時「男子が赤を着るとは何事か」っていうクレームが入ったって書いてて、時代やなぁと思ってたら、先日「ダイバーシティ」をテーマにしたというボクシング代表のユニフォームが発表されてて吹いた。。。時代は逆行してるようです。

それはともかく展覧会は9月6日まで。こちら。
アイヌの装いとハレの日の着物 @ 松濤美術館

衣服といえばもう一つ、松濤美術館で始まったアイヌの展覧会。
民藝館でいくつか見て以来アイヌの衣装にどっぷりハマってしまいました。
あの独特の模様がかっこよすぎる。
今回改めてじっくり見て、その模様は染めなどではなく、当て布や刺繍によって施されてることをじっくりと見ることができました。
樹皮で作られた衣をアットゥシ、木綿で作られた衣をルウンペということも知りました。
膨大な作業なんだろうけど、本当どれも美しくかっこいい。
興味深かったのが、昔のものだけではなく、現代の作家が作ったものも展示されていること。
こうして「継承」というのもこの展示に組み込まれてるのが面白かったです。
他にもシトキと呼ばれる首飾りなんかもめちゃくちゃかっこいい。
この展覧会は、昨夏北海道は白老町に開館した国立アイヌ民族博物館の開館を記念したもの。
めちゃくちゃ遠いけどいつか行ってみたい。。。
展覧会は8月9日まで。ぜひ!
日本民藝館改修記念 名品展II @ 日本民藝館

アイヌつながりで民藝館。
4月までの改修を終え、ベストセレクションの名品展の第二回。
第一回は見れなかったけれど、それにしてもやはりここはすごい。
この秋に東近美で開催される民藝展もものすごい楽しみ。
今回の展示に関して、2階の本の装丁とか、器飾ってる漆器とかヨダレ出そうになるぐらい素晴らしかったけれど、白眉は1階にあった舩木研兒のスリップ。
恥ずかしながら存じ上げず、今回初めて知ったのだけれど、本当に素晴らしかった。
絵付けの皿は基本好きじゃないんだけれど、この方の絵はどれも素敵すぎた。。。
作品は買えないので、2017年8月号の民藝の特集号を買ってお勉強。
やはり、リーチに教わっていて、父の舩木道忠も陶芸家でリーチととても仲良かったと。
現在息子さんの伸児さんが舩木窯6代目を継いでおられるとのこと。
島根は出西もあるし、またいつか巡ってみたい。。。
あと、お店で一目惚れして、五十嵐元次さんの小さな蓋物と水滴を買いました。

さて、このエリア、僕が東京で大好きな場所の一つです。
特に民藝館裏の駒場公園は、緑も美しいし、前田侯爵邸や近代文学館も最高。
そして、僕のお気に入りは近代文学館内にあるカフェBUNDAN。
来るたびにここで文学の名前のついたフードと文学者の名前のついたドリンクを頂くのです。
今回は、最近「細雪」を読んでたこともあって、「谷崎潤一郎のトーストサンドイッチ」と「芥川」を頂きました。
なんだか嫌なことも忘れられる最高の空間です。超おすすめ。こちら。


包む-日本の伝統パッケージ @ 目黒区美術館

最後にクッソ地味だけど、とてもいい企画展。
日本は過剰包装とも揶揄されるぐらいラッピング文化。
そんな「包む」を集めたのがこの展覧会。
これぞ現代の民藝という感じがする。宗悦が生きてたら絶対好きだったろうな。
目黒区美術館は、1988年に「5つの卵はいかにして包まれたか―日本の伝統パッケージ」展という展覧会を開催していて、その協働企画をしたのが岡秀行。
これまた僕は存じ上げませんでしたが、彼は日本のデザイン事務所の草分け的存在で、1950年代から日本の伝統パッケージに着目して、全国のパッケージを蒐集し、写真集を出版したり、1975年からは10年以上かけて28ヶ国を巡回する「TSUTSUMU」展を開催したそう。
88年の目黒区美術館の展覧会後、その蒐集品を譲り受け、さらにその後のパッケージも足して2011年に第2回、そしてこれが第3回。
色々凄いのがあったんだけど、ダントツで縁起物のコーナーがすごかった。
こんなの初めて見た!っていう豪華すぎる祝儀袋。写真撮れなくて残念。
あと、やっぱり虎屋は強い。所々に登場してました。
9月5日まで。超絶地味ですがオススメです。
劇団チョコレートケーキ「一九一一年」@ シアタートラム
コロナ禍で多くの芸術活動、特に生身の人間による演劇は、最も犠牲を強いられた活動だったように思います。
そんな中で、この劇団チョコレートケーキは、3作品も発表しています。
もう本当にすごいというか、観客として感謝しかありません。
さて、今回の舞台は2011年初演を迎えた「一九一一年」の再演。
内容は、1911年に起きた大逆事件を基にしています。安定の重さw
歴史の授業でも1、2行でさらっと流されてしまうこの事件を、人の体を使ってしっかりと紡ぎ直します。
しかも、大逆事件といえば幸徳秋水のところ、彼はこの演目にほとんど出てきません。
出てくるのはそのパートナーだった菅野須賀子。
彼女の存在は、最初に出てきた瞬間にこの演目の成功が決まってしまう程の凄みがありました。
堀奈津美さん。彼女の演技というか存在感は素晴らしかった。
そして、彼らを裁く側の人間たちの葛藤がメインとなります。
この頃の刑法には、73条に大逆罪というのがありました。
皇室に危害を加えるのは勿論、企てた時点で起訴され、普段の過程は経ず、いきなり大審院(現在の最高裁判所に相当) にて死刑が言い渡されるという恐ろしい罪。
国家はこの大逆罪を使って、社会主義や無政府主義の人間を捕らえて次々と死刑に送り込みました。
この大逆事件で犠牲になったのは26名。
その内幸徳秋水をはじめ、菅野須賀子を含む計12名が実際に死罪に処されます。
そんな中、自由を希求する須賀子の凛とした姿はやはり凄まじい。
最後、判事役の西尾さんが、須賀子の墓前でつぶやく言葉は今の日本にも繋がります。
私は、私の顔を持っていますか?
私の名前を持っていますか?
私の足で立っていますか?
私の頭で考え、私の言葉で話せていますか?
私は、自由ですか?
自由とは何なのか、考えさせる一節でした。
僕が見た回では、本編終演後、西尾さんによる独演がありました。
あの最後のオチはあれでよかったのかしら笑
それにしても劇チョコすごいです。
何と来年、再演4本と新作1本を発表するそうです。
再演の内二本は近作の「無畏」と「帰還不能点」。
個人的には「追憶のアリラン」と「〇六〇〇猶二人生存ス」は生で観たことないので楽しみ。
後者は短編だけど、どう再演するんだろう。
そして新作は沖縄戦を描く「ガマ」。絶対泣く。。。。
これからもついていきます!!
<関連記事>
劇団チョコレートケーキ「帰還不能点」@ 東京芸術劇場 シアターイースト
劇団チョコレートケーキ「無畏」 @ 下北沢・駅前劇場
劇団チョコレートケーキ「治天ノ君」 @ 東京芸術劇場 シアターイースト
劇団チョコレートケーキ「遺産」@ すみだパークスタジオ倉
ところで先日チェルフィッチュの「三月の5日間」の制作に密着したドキュメンタリー「想像」を観ました。
映画としては相当終わってた。。。これ元々映画にするつもりで撮ってないでしょ?
映像も音も悪いし、編集もひどい。。。これは一体。。。
それはともかく、この舞台以前観たことあると思い込んでたらなくて、コロナの影響なのか文化庁が丸々YouTubeにアップしてくれてたので観たけど素晴らしいですね。
演者の役がどんどん入れ替わり立ち替わりしてて、誰が誰を演じてるのかわからなくなる。
イラク戦争とかの背景は必要なのかな?とは思うけど中々好きな舞台でした。
あと、早稲田大学の演劇博物館でやってる「Lost in Pandemic ――失われた演劇と新たな表現の地平」。
昨年オンラインで開催されてたけど、やっぱりフィジカルな展示はいいですね。
コロナによって中止になってしまった演目や、各劇場やカンパニーの取り組み等網羅。
パンデミックの年表も興味深いし、スペイン風邪やコレラの頃の歴史も含んでいて、とても意義深い展覧会でした。
さらに「COVID-19影響下の舞台芸術と文化政策ー欧米圏の場合」と題された報告冊子が無料で会場で配られていて、とても濃い内容だった。
まだまだ終息とはいかないし、今後も更新されていくオンゴーイングな展覧会。8月6日まで。こちら。

「東京自転車節」by 青柳拓
最近観た社会派ドキュメンタリー2本をご紹介。
まずは青柳拓監督の「東京自転車節」。監督はまだ28歳!若い!
以前店に来られたお客様が関わってらっしゃると聞いていた映画。
ちょうど、美術手帖の今年の2月号のニューカマー特集にも載っていて気になっていました。
とはいえ、そこまで期待はせず、緊急事態宣言でまた店閉めちゃったし、ポレポレ東中野近いし観に行ってみるか、と行ってみたら今年最高の映画に出遭ってしまった、という感じです。
まず何が素晴らしいって、この映画のワイドすぎるレンジです。
これは、監督の青柳拓自身がiPhoneとGoProを使って、ほとんどの撮影を自身で行い自分自身を撮るというセルフドキュメンタリーと呼ばれるものです。
こういう映画にありがちなのが、独白とか内省とか、金払わさせられてオ○ニー見せられてしっまた感。
それがこの映画には一切ないんです。
この映画に映っているのは監督の生活そのものなんですが、そこからさらに広い社会というものを見事に映し切ってる。
それはこの映画が、未曾有のパンデミック下に撮影されてるのは大きいでしょう。
監督の青柳は、故郷山梨で職を失い、学校の奨学金と言う名の借金を背負った、どこにでもいる20代の若者。
そんな彼が一大決心をして、東京という焼け野原にウーバー配達員になるべく自転車を漕いで上京します。
その際におばあちゃんが孫のためにマスクを縫うんですが、もう世界観がお伽話。。。
そこからテーマ曲の「東京自転車節」が流れるわけですが、この冒頭から心を鷲掴みにされました。
僕もおばあちゃん子なんで、途中でおばあちゃん心配させないために「大金持ちになった」と電話で嘘をついて、路上で寝転がりながら涙を流すシーンなんて辛すぎた。。。
大雨の中ずぶ濡れになりながら配達したり、やる気が起きずひたすら眠り続けてお金なくなっちゃったり、誕生日に呼んだデリヘルがお金足りずにキャンセル料だけ払わされたりと、青柳はこれでもかというぐらい自身のかっこ悪さをスクリーンに映し続けます。
最後にはヒゲを蓄え、明らかに最初の頃とは違う目をしていて、この映画は青柳拓という一人の人間の成長劇、という面がまずあります。
映画が終わる頃にはすっかり彼のファンになっていました。
しかしそれだけだとやはりセルフドキュメンタリーの域を出ないのです。
この映画のすごいのは、それと同時に、スクリーンの青柳拓は、誰でもあるということ。
彼が鏡となって、このパンデミックで生き抜く全ての人々を代弁していたのが素晴らしかった。
途中でケン・ローチによる労働問題が出てきたり、コロナ禍での人々の分断、戦争、貧困等々、あらゆる問題がこの映画を通して噴出していました。
これだけレンジの広さを、わずか半径2m(奇しくもソーシャルディスタンス)ほどの世界を執拗に撮り続けることで映し出したのは見事としか言いようがない。
彼を通して見える最も深刻な問題は、この時代の若者の生きづらさだったと思います。
「僕たちは1993年生まれで、ゆとり世代と呼ばれる時代のど真ん中に当たる世代だと思います。実感はないのですが、よく言われるのが「ナンバーワンよりオンリーワン」。つまり上の世代よりも個性や主体性を尊重されて育ったのだと、上の世代の人と話をすると気付かされます。それは素直にいいことだなぁと思いますが、社会の土台は上の世代が作ってきたものなので、ナンバーワンになれなくてもナンバーワンを目指す志がなければ生きていけない状況は変わっていないのだと思います。個性を大事にと教育されてきたのに、社会では個性なんて大事にされない時代を目の当たりにして、その矛盾にもがいてる人は少なからずいると思っています。」
パンフレット内のインタビューで語る青柳の言葉はまさに、教育と社会の齟齬を言い当てています。
特に彼が選んだ配達員の仕事は、あくまで個人事業主と突き放されて、なんの保証のないまま、個性どころかただの歯車としてしか人間を見ていない社会の最も顕著な例だと思います。
僕の周りには案外ウーバー配達員がいなくて、僕自身も一回しか利用したことがないのでよくわからなかった実態がこの映画を通して見えました。
3日で70回配達を達成すると「クエスト」と呼ばれる追加報酬が貰えるのも知らなかったです。
その報酬のため、後半青柳はハイエナとなり、雨の中坂道を掛けあげるシーンは本当に息を飲みました。
「システムを掌握する」と宣言した彼の凄みがスクリーンを通して伝わってきた「ジョーカー」のようなシーンでした。
そして、緊急事態宣言を解除した時の安倍元首相の虚しいスピーチ。
「日本ならではのやり方で、わずか1ヶ月半で今回の流行を、ほぼ終息させることができました。まさにニッポンモデルの力を示したと思います。」
こんなこと言ってたんですね。今の状況見せてやりたい。。。
そう、この1年以上後の今、何度目かも忘れた緊急事態宣言下でこの映画を観られたことはとても意義深かったように思います。
映画としても、純粋に面白かった。
自転車の疾走感がそのまま映画になってるのと、特に舞台のほとんどが新宿で、僕も毎日のようにチャリで移動してるので、見慣れた風景がたくさん出てきて楽しかったです。
終わった時は、え、もうおわっちゃったの?と思ったほどでした。
映されてる内容は悲惨なのに、それだけではない前向きな力のある映画でした。
青柳監督は、今もウーバー配達員を続けているようですが、彼はその経験を見事に映画に昇華しました。
まさに「ピンチをチャンスに変えた人」です。
しかし、多くの、特に若い人たちは、ピンチがピンチになったままの人だと思います。
この映画を観れば、何か、肩を押す風になる気がする。
僕は正直「ピンチがチャンスになっちゃった人」だと思うけれど、それでも思うところは多かったです。
本当にいい映画に出会えました。
DVDになったら買おう。
青柳監督の今後も期待してます。
最後に私の敬愛する中島みゆき様の歌詞の一節を。
走り続けていなけりゃ倒れちまう
自転車みたいなこの命転がして
息はきれぎれ それでも走れ
走りやめたら ガラクタと呼ぶだけだ、この世では
(中島みゆき「断崖~親愛なる者へ~」より)
続いて「東京クルド」。
恐くて観に行くのが憚れてたんだけど、日本人としてやっぱり観ておくべきと勇気を持って観に行きました。
これはオザンとラマザンという日本に住むクルド人の二人の若者を中心に、日本の難民問題を捉えたドキュメンタリーです。
映画はこの二人がボーリングを楽しんでるシーンから始まるのですが、早速驚いたのが、二人とも日本語がペラペラなんです。
それもそのはず、彼らは生まれこそトルコだけど、トルコ政府によるクルド人弾圧から、彼らが小さい頃に両親が日本に亡命し、彼らはそのまま日本で高校まで卒業したということでした。
映画が進むにつれ、そんな彼らには日本での滞在許可がないことがわかります。仮放免という状態らしい。
入国管理局で難民申請をしても、そのほとんどがはねられます。
日本の難民認定率は、他国と比べて圧倒的に低いのです。
といわけで彼らには国籍がありません。
よって、高校を出ても働くことが叶わず、オザンは絶望し、解体の仕事でなんとか金を稼ぐもそれも入管に止められ八方塞がり。
ラマザンは、通訳になるべく専門学校を探すも、滞在許可を理由に断られますが、へこたれず第三の道を模索します。
そんな中、入国管理局に収容されていたラマザンの叔父が体調不良を訴え救急車を呼ぶも、入管によって阻止され、救急車は無人のまま入管を後にします。
その後なんとか一命をとりとめた叔父が言います。
「入管の中で死にたくないです」
今年の3月にスリランカ人のウィシュマ・サンダマリさんが33歳の若さで名古屋の入国管理局内の収容所で亡くなりました。
半年前に、パートナーによるDVから助けを求めてきた彼女を、ビザが切れてることからむしろ彼女を犯罪者扱いにし、身柄を拘束した上、体調不良も聞き入れず、最終的に20キロも痩せて死んでしまいました。
この国の入国管理局の酷さは噂には聞いていましたが、いよいよここまで落ちてるのかと驚かずに入られない出来事でした。
その後、5月には入管法改正の名の下に、政府は不法滞在者の排除に躍起になるも、なんとか裁決が見送られました。
不法滞在者と一言で言っても色んな人たちがいて、犯罪がらみの人たちももちろんいるでしょうが、この映画に出てくる人たちのように、事情があって国に帰れない人、日本で家族を持ってしまった人等、一括りにできないのです。
なのに入管は、彼らを全て犯罪者扱いにして、不当な扱いをしているわけです。
そもそもラマザンの叔父も収容されてる理由すら明らかにされてません。
とまあ、ひどい現実なんですが、映画としては質は決して高くなくて残念でした。
もう少し彼らの生活を丁寧に描いて欲しかった。
例えば、彼らには就労の権利がないのにどうして暮らせてるのか?
映画の中では、中流の家に住んで、子供達もスマホ持ってたけど、そのお金はどこから?
途中でオザンは家を出て別の家に住んでるけど、それはどうやって借りたのか?
支援団体の存在とかもそんなに出てこないし、色々疑問でした。
そして、入管についても、入口しか映してないけど、もう少し実態に切り込めなかったのかな?
酷いシーンがあるのかと怯えていたので、そういうシーンはほとんどなく杞憂だったのはいいのだけど。
まあ、改めてこの問題を考えるきっかけにはなりました。
帰りも、周りにいる外国の方のことが気になったりしました。色々知りたいです。
ちなみに現在オペラシティで開催中の加藤翼さん(後日アップ予定)の作品にも、在日クルド人と協働で作った作品があります。
今コロナで移動の制限をかけられた状態が彼らの常態だと思うと本当に苦しいですね。
まずは青柳拓監督の「東京自転車節」。監督はまだ28歳!若い!
以前店に来られたお客様が関わってらっしゃると聞いていた映画。
ちょうど、美術手帖の今年の2月号のニューカマー特集にも載っていて気になっていました。
とはいえ、そこまで期待はせず、緊急事態宣言でまた店閉めちゃったし、ポレポレ東中野近いし観に行ってみるか、と行ってみたら今年最高の映画に出遭ってしまった、という感じです。
まず何が素晴らしいって、この映画のワイドすぎるレンジです。
これは、監督の青柳拓自身がiPhoneとGoProを使って、ほとんどの撮影を自身で行い自分自身を撮るというセルフドキュメンタリーと呼ばれるものです。
こういう映画にありがちなのが、独白とか内省とか、金払わさせられてオ○ニー見せられてしっまた感。
それがこの映画には一切ないんです。
この映画に映っているのは監督の生活そのものなんですが、そこからさらに広い社会というものを見事に映し切ってる。
それはこの映画が、未曾有のパンデミック下に撮影されてるのは大きいでしょう。
監督の青柳は、故郷山梨で職を失い、学校の奨学金と言う名の借金を背負った、どこにでもいる20代の若者。
そんな彼が一大決心をして、東京という焼け野原にウーバー配達員になるべく自転車を漕いで上京します。
その際におばあちゃんが孫のためにマスクを縫うんですが、もう世界観がお伽話。。。
そこからテーマ曲の「東京自転車節」が流れるわけですが、この冒頭から心を鷲掴みにされました。
僕もおばあちゃん子なんで、途中でおばあちゃん心配させないために「大金持ちになった」と電話で嘘をついて、路上で寝転がりながら涙を流すシーンなんて辛すぎた。。。
大雨の中ずぶ濡れになりながら配達したり、やる気が起きずひたすら眠り続けてお金なくなっちゃったり、誕生日に呼んだデリヘルがお金足りずにキャンセル料だけ払わされたりと、青柳はこれでもかというぐらい自身のかっこ悪さをスクリーンに映し続けます。
最後にはヒゲを蓄え、明らかに最初の頃とは違う目をしていて、この映画は青柳拓という一人の人間の成長劇、という面がまずあります。
映画が終わる頃にはすっかり彼のファンになっていました。
しかしそれだけだとやはりセルフドキュメンタリーの域を出ないのです。
この映画のすごいのは、それと同時に、スクリーンの青柳拓は、誰でもあるということ。
彼が鏡となって、このパンデミックで生き抜く全ての人々を代弁していたのが素晴らしかった。
途中でケン・ローチによる労働問題が出てきたり、コロナ禍での人々の分断、戦争、貧困等々、あらゆる問題がこの映画を通して噴出していました。
これだけレンジの広さを、わずか半径2m(奇しくもソーシャルディスタンス)ほどの世界を執拗に撮り続けることで映し出したのは見事としか言いようがない。
彼を通して見える最も深刻な問題は、この時代の若者の生きづらさだったと思います。
「僕たちは1993年生まれで、ゆとり世代と呼ばれる時代のど真ん中に当たる世代だと思います。実感はないのですが、よく言われるのが「ナンバーワンよりオンリーワン」。つまり上の世代よりも個性や主体性を尊重されて育ったのだと、上の世代の人と話をすると気付かされます。それは素直にいいことだなぁと思いますが、社会の土台は上の世代が作ってきたものなので、ナンバーワンになれなくてもナンバーワンを目指す志がなければ生きていけない状況は変わっていないのだと思います。個性を大事にと教育されてきたのに、社会では個性なんて大事にされない時代を目の当たりにして、その矛盾にもがいてる人は少なからずいると思っています。」
パンフレット内のインタビューで語る青柳の言葉はまさに、教育と社会の齟齬を言い当てています。
特に彼が選んだ配達員の仕事は、あくまで個人事業主と突き放されて、なんの保証のないまま、個性どころかただの歯車としてしか人間を見ていない社会の最も顕著な例だと思います。
僕の周りには案外ウーバー配達員がいなくて、僕自身も一回しか利用したことがないのでよくわからなかった実態がこの映画を通して見えました。
3日で70回配達を達成すると「クエスト」と呼ばれる追加報酬が貰えるのも知らなかったです。
その報酬のため、後半青柳はハイエナとなり、雨の中坂道を掛けあげるシーンは本当に息を飲みました。
「システムを掌握する」と宣言した彼の凄みがスクリーンを通して伝わってきた「ジョーカー」のようなシーンでした。
そして、緊急事態宣言を解除した時の安倍元首相の虚しいスピーチ。
「日本ならではのやり方で、わずか1ヶ月半で今回の流行を、ほぼ終息させることができました。まさにニッポンモデルの力を示したと思います。」
こんなこと言ってたんですね。今の状況見せてやりたい。。。
そう、この1年以上後の今、何度目かも忘れた緊急事態宣言下でこの映画を観られたことはとても意義深かったように思います。
映画としても、純粋に面白かった。
自転車の疾走感がそのまま映画になってるのと、特に舞台のほとんどが新宿で、僕も毎日のようにチャリで移動してるので、見慣れた風景がたくさん出てきて楽しかったです。
終わった時は、え、もうおわっちゃったの?と思ったほどでした。
映されてる内容は悲惨なのに、それだけではない前向きな力のある映画でした。
青柳監督は、今もウーバー配達員を続けているようですが、彼はその経験を見事に映画に昇華しました。
まさに「ピンチをチャンスに変えた人」です。
しかし、多くの、特に若い人たちは、ピンチがピンチになったままの人だと思います。
この映画を観れば、何か、肩を押す風になる気がする。
僕は正直「ピンチがチャンスになっちゃった人」だと思うけれど、それでも思うところは多かったです。
本当にいい映画に出会えました。
DVDになったら買おう。
青柳監督の今後も期待してます。
最後に私の敬愛する中島みゆき様の歌詞の一節を。
走り続けていなけりゃ倒れちまう
自転車みたいなこの命転がして
息はきれぎれ それでも走れ
走りやめたら ガラクタと呼ぶだけだ、この世では
(中島みゆき「断崖~親愛なる者へ~」より)
続いて「東京クルド」。
恐くて観に行くのが憚れてたんだけど、日本人としてやっぱり観ておくべきと勇気を持って観に行きました。
これはオザンとラマザンという日本に住むクルド人の二人の若者を中心に、日本の難民問題を捉えたドキュメンタリーです。
映画はこの二人がボーリングを楽しんでるシーンから始まるのですが、早速驚いたのが、二人とも日本語がペラペラなんです。
それもそのはず、彼らは生まれこそトルコだけど、トルコ政府によるクルド人弾圧から、彼らが小さい頃に両親が日本に亡命し、彼らはそのまま日本で高校まで卒業したということでした。
映画が進むにつれ、そんな彼らには日本での滞在許可がないことがわかります。仮放免という状態らしい。
入国管理局で難民申請をしても、そのほとんどがはねられます。
日本の難民認定率は、他国と比べて圧倒的に低いのです。
といわけで彼らには国籍がありません。
よって、高校を出ても働くことが叶わず、オザンは絶望し、解体の仕事でなんとか金を稼ぐもそれも入管に止められ八方塞がり。
ラマザンは、通訳になるべく専門学校を探すも、滞在許可を理由に断られますが、へこたれず第三の道を模索します。
そんな中、入国管理局に収容されていたラマザンの叔父が体調不良を訴え救急車を呼ぶも、入管によって阻止され、救急車は無人のまま入管を後にします。
その後なんとか一命をとりとめた叔父が言います。
「入管の中で死にたくないです」
今年の3月にスリランカ人のウィシュマ・サンダマリさんが33歳の若さで名古屋の入国管理局内の収容所で亡くなりました。
半年前に、パートナーによるDVから助けを求めてきた彼女を、ビザが切れてることからむしろ彼女を犯罪者扱いにし、身柄を拘束した上、体調不良も聞き入れず、最終的に20キロも痩せて死んでしまいました。
この国の入国管理局の酷さは噂には聞いていましたが、いよいよここまで落ちてるのかと驚かずに入られない出来事でした。
その後、5月には入管法改正の名の下に、政府は不法滞在者の排除に躍起になるも、なんとか裁決が見送られました。
不法滞在者と一言で言っても色んな人たちがいて、犯罪がらみの人たちももちろんいるでしょうが、この映画に出てくる人たちのように、事情があって国に帰れない人、日本で家族を持ってしまった人等、一括りにできないのです。
なのに入管は、彼らを全て犯罪者扱いにして、不当な扱いをしているわけです。
そもそもラマザンの叔父も収容されてる理由すら明らかにされてません。
とまあ、ひどい現実なんですが、映画としては質は決して高くなくて残念でした。
もう少し彼らの生活を丁寧に描いて欲しかった。
例えば、彼らには就労の権利がないのにどうして暮らせてるのか?
映画の中では、中流の家に住んで、子供達もスマホ持ってたけど、そのお金はどこから?
途中でオザンは家を出て別の家に住んでるけど、それはどうやって借りたのか?
支援団体の存在とかもそんなに出てこないし、色々疑問でした。
そして、入管についても、入口しか映してないけど、もう少し実態に切り込めなかったのかな?
酷いシーンがあるのかと怯えていたので、そういうシーンはほとんどなく杞憂だったのはいいのだけど。
まあ、改めてこの問題を考えるきっかけにはなりました。
帰りも、周りにいる外国の方のことが気になったりしました。色々知りたいです。
ちなみに現在オペラシティで開催中の加藤翼さん(後日アップ予定)の作品にも、在日クルド人と協働で作った作品があります。
今コロナで移動の制限をかけられた状態が彼らの常態だと思うと本当に苦しいですね。
「片袖の魚」by 東海林毅
文月悠光の同題の詩を元に、トランスジェンダーの女性を描いた34分の短編映画。
東海林監督とは僕が上京してすぐに知り合って、そこから作品を拝見させてもらってます。
特に僕が初めて観た東海林監督の「老ナルキソス」は大好きな作品でして、主演の田村泰二郎さんがこの「片袖の魚」でもチラッと出てて観ながらニヤッとなりました。
そんなことより、この映画の1番の注目は、やはりトランスジェンダー女性を当事者である、モデルのイシヅカユウさんが演じてらっしゃる点でしょうね。
インタビューでも、日本でトランスジェンダーを描くと喜劇か悲劇に偏ったり、マジョリティの人たちの為の娯楽の一環にしかなってない現状と、当事者が演じることの重要さを語ってらっしゃいます。
「なぜ日本ではまだ早いと思うのだろうと考えていたら、やらないから『早い』ままなのだと気が付きました。自分はそれを実現できる立場にある」という監督の言葉は重いですね。
なぜ「トランスジェンダー役は当事者俳優に」なのか?実現した日本映画『片袖の魚』が変えていくこと
(ThinkGender)トランスジェンダー役を当事者に 世界中で動き、日本でも短編映画公開
「片袖の魚」主演イシヅカユウに聞く映画界のトランスジェンダー描写
実際観てみると、周囲からの偏見が生々しくて途中苦しくもあるんですが、最後はハッピーエンドでもないのに爽快な気分になれました。
僕自身ゲイなので、ストレートの無神経さに辟易させられてきたこととか色々思い出しちゃいましたw
特にあの居酒屋のシーン。。。気まづくて何度もグラスに口つけるのとかリアル過ぎる。。。
先日も店に来たお客さんで、飲み仲間にトランス女性がいらっしゃるらしく、聞くともなしに聞いてたら、そのうちの一人の男が「彼女がカミングアウトしてないのはおかしい。そういう生き方を選んだんだからはっきり言えばいいのに」って言い出したところでプチンときてしまって「テメェは女を好きなヘテロのシスジェンダーという生き方選んだんか?選んでないだろ?彼女も選んだんじゃなくてただそうだっただけなの!知らんけど!」と説教してしまいましたww
未だに性的嗜好と趣味を勘違いしてしまってる人も多いし、本当に辟易しますが、こうやって映画や文化が先を見せることで少しでも進めばいいんだけど、やっぱこういう映画も意識のある人しか来ないんだよなぁ。。。
いくら「ホモソーシャルがー」みたいな本が出たって、当事者はまず読まないしね。
難しいですが、やっぱり発信することは大事だな、と改めて思います。
昨年のアカデミー賞取っちゃったなんとかスワンも対比として観たくなりましたw
私の敬愛するCocco様の歌詞の一節をこの映画に捧げます。
Sleeping in the water
また明日
上手く笑えるから
わがままも知らない
深い海の底
(Cocco「コスモロジー」より)
僕が観た日は監督とイシヅカさんのトークもあり満員御礼。
イシヅカさん、大分天然っぽくて面白かった笑
彼女が直前になって切って欲しいとカットしてもらったセリフが気になりました。
ちなみにこの映画はスマホで撮られたそう。すごい時代だ。。。

玉井健二個展「UNDER WATER」終了しました。

本日をもちまして、玉井健二個展「UNDER WATER」終了しました。
緊急事態宣言等の影響で、当初計画していた会期に始められなかったり、途中で予約制になったりと、ご不便おかけしてしまいましたが、なんとか終えることができました。
お越し頂けた方々、またご購入頂いた方々、誠にありがとうございました。
店内で微かに揺れる舟たちを眺めながら過ごせたこの1月強はとても幸せな時間でした。
この舟たちがいなくなると思うととても寂しいですが、また次の展示に向けて頑張ります。
それにしても次いつ開けられるのやら。。。
それまで皆様お元気で!!
玉井健二個展「UNDER WATER」
2021年6月21日(月) - 7月11日(日)
18時オープン 木曜休
ワンドリンクオーダー制
7月12日(月)から25日(日)は完全予約制
緊急事態宣言に伴い

展覧会及びお店の営業は7/11(日)迄となります。
お店は一先ず8月22日(日)まで休業となります。
酒販売業社や金融機関に圧力かけてまで酒場をスケープゴートにする日本政府にはもはや不信感しかありません。
次一体いつ開けられるのやら。。。
またおしらせします。
展覧会に関して、7/12(月)から25(日)までは舟購入希望で実物および展示を見たい方のみ前日迄の予約制でご観覧頂けます。
SNSのDMかメール(info@aholic.tokyo)にてお名前と希望日時、当日連絡のつく携帯電話番号を明記の上お申し込みください。
日時によってはご希望に添えない場合がありますので予めご了承ください。
ご不便おかけしますがよろしくお願いします。
舟のオンライン販売も7/25(日)迄です。
https://aholic.stores.jp