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『dual』内海聖史展 @ 三越コンテンポラリーギャラリー

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内海さんの日本橋三越での個展に初日からお邪魔してきました。
かなり前に三越で展示されるという話はご本人からお聞きしてて、デパートでどう展開するのかと思っていましたが、いつも通り攻め攻めな展示でした笑
今回作られたパンフレットに僭越ながらテキストを寄稿させて頂きました。
以下テキストです。

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【内海聖史展に寄せて】

「絵画とは何か?」
内海聖史はこの問いに対し、愚直なまでの態度で挑み続けている。
その姿は、絵画という巨人に闘いを挑むドン・キホーテさながらである。
内海自身も昨年行ったインタビューの中でこう発言している。

『発表する前はこんなの世に出してもいいのかな、という恐怖感があるが、絵画という表現自体がとても悪食なので、発表したその瞬間からそういうもんだよねっていう風に絵画の中に取り込まれてしまう。「これは絵画では明確にない」というものはできないので、自分にとっては世にないものを編み出したつもりだったのに、一瞬で収まりよく吸収されてしまう。そういうものにずっと攻撃を仕掛けているみたいな感じ。』(*1)


私が彼の作品と初めて対峙したのは、2005年に大阪のアートコートギャラリーでのことだった。
当時の私は京都の美術大学で洋画科に属する学生だったのだが、絵画への可能性を見出せず、その頃には絵筆も捨て、写真やインスタレーションに移行している時期だった。
そんな中、たまたま見かけたチラシを頼りに訪れたギャラリーで観た「色彩の下」という作品に衝撃を受けた。
横17m、高さ3.8mの巨大な絵画。
「絵を観る」というより「色を浴びる」という体験だった。
絵画にまだこんな体験をさせられる力があるのかと思い知らされた作品で、今でも鮮明に覚えている。
それ以降内海聖史という作家の繰り出す一挙手一投足に目が離せなくなり今に至るが、その間全く妥協することなく絵画に挑み続ける姿に驚嘆するばかりである。
今回の個展でも、視界を覆う色彩の大画面を発表するという。
是非全身で色を浴びてほしいと思う。


また、近年の内海の挑戦は、「観る」という部分にまで及んでいる。
特に2018年ギャラリエ・アンドウで開催した個展「あらゆる時間」以降その挑戦の度合いを高めている。
その個展では、絵画がアクリルボックスの中に収められており、透明なアクリルならまだしも、カラーアクリルによって元の絵画の色がわからなくなってしまっているものや、不透明アクリルによって中の絵画が全く見えないものまで登場した。
昨年末アートフロントギャラリーで開催した個展「squid」においても、いくつかの作品は、実際に展示はされているものの、鑑賞者の目の届かない壁の裏などに展示され、絵画の側面しか見えないという事態になっていた。
さらに、同個展ではギャラリー内の照明が夕方から色とりどりに移り変わり、絵画の元々の色がわからなくなるという仕掛けまで作った。
今回の個展でも、絵画の裏に別の絵画があったり、別の絵画により正面からの鑑賞が妨げられていたり、はたまた別の場所(*2)に展示されていたり、という具合に、「観る」とは何かを鑑賞者に突きつけてくる。
絵画は視覚芸術である。しかし、果たしてそれだけなのだろうか?という内海の声が聞こえてくる。
昨年から続くコロナ禍の中で、作品を実際に観られないという事態が多発し、改めて作品を鑑賞するというのは身体的な行為なのだと思い知らされた。
絵画は単なる画像ではなく、絵の具という物質の載ったオブジェでもある。
画面越しに観るのと実際に観るのとでは情報量が圧倒的に違う。
果たして「作品を観る」とはどういうことなのか。
改めて作者だけでなく鑑賞者にとっても問われ続けている。
今回の個展を通して、内海聖史の飽くなき挑戦を感じてほしい。
そして自身に問いかけてみてほしい。

「観るとは何か?」

「絵画とは何か?」

森川穣

*1 https://aholic.stores.jp/items/5ed5c655cee9ea03897a5d4e
*2一部は森川が運営するA’holicに展示される。(http://aholic.tokyo)
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ずっと観てきた内海さんの展示に寄せてテキストを書く日が来るなんて。。。泣
皆様も是非足を運んで内海さんからの問いを受け止めてみてください。

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ギャラリーは6階ですが、2階の紳士服売り場にも展示があります。
マネキンに持たせてる!笑
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内海聖史 個展「dual」
日時:2021年2月17日(水)-3月1日 (月)
10:00-19:00 / 最終日 17:00閉廊
場所:三越コンテンポラリーギャラリー(日本橋三越 6F)


そして!いよいよ!A'holicの展示も明日から始まります!
ぜひお越しくださいませ!

内海聖史 個展「dual」
日時:2021年2月19日(金)-28日(日)
14:00-19:00 金・土・日・祝日のみ
場所:A'holic
ワンドリンクオーダー制

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<関連記事>
内海聖史「squid」@ ART FRONT GALLERY
内海聖史さんのこと。
内海聖史「あらゆる時間」@ GALLERIE ANDO
「panorama すべてを見ながら、見えていない私たちへ」@京都芸術センター
内海聖史「ボイジャー」@eN arts
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