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劇団チョコレートケーキ「治天ノ君」 @ 東京芸術劇場 シアターイースト/藤田貴大「蜷の綿(になのわた)- Nina's Cotton - / まなざし」 @ 彩の国さいたま芸術劇場



こんなに泣いた舞台人生で初めてでした。
劇団チョコレートケーキは前回の「遺産」以来2回目。
前回の731部隊に続く今作のテーマは大正天皇。
劇団名とは裏腹に相変わらず重い。
といっても今回の演目は2013年、2016年に続く再再演らしい。
それほど評価された演目なだけあって、本当に素晴らしかった。
まず舞台にはレッドカーペットとそれに続く玉座のみというシンプルな作り。
時代が交錯しながら大正天皇のお妃節子皇后が語り部となり舞台は進む。
大正天皇。はっきり言って全くもってイメージがなかった。
そもそも大正は15年しか歴史がなかったし、人々の忘却の彼方に消えてしまっても仕方ないといえばそうなのだけど、この物語の中ではむしろ積極的に「消された天皇」として描かれている。
というのも、この天皇はお世辞にも優秀なお人ではなかったようで、実際彼は側室の子として生まれ、病弱ゆえ学業も留年し、ついには学習院を中退してしまう。
その後この舞台でも重要な登場人物となる有栖川宮威仁が個人教師となり、彼に大きな影響を与えることになる。
しかしその有栖川も病のために個人教師を退くことになるが、妻節子と仲睦まじく暮らし、彼は一夫一妻を貫いた最初の天皇となる。
彼の元には4人の男の子が生まれ、その長男が後の昭和天皇裕仁。
物語の中で大正天皇嘉仁は父である明治天皇にも息子にも冷たくあしらわれる。
何と言っても肝になるのがこの大正天皇のお人柄。
主演を演じた西尾友樹の演技が素晴らしすぎて、一瞬で虜になってしまった。
先の明治天皇と打って変わって朗らかで友好的。
最後、脳を患いながらも懸命に天皇であろうとする姿には心打たれまくった。
宮内庁はそんな彼を「恥」として、彼の死後、すっかり葬り去ったというのが結末。悲しい。
その姿を見ていて思わず明仁上皇とダブらせてしまった。
この物語がどこまで事実に基づいているのかはわからないけれど、国民のことを慈しむ態度や妻を愛する様子が、ものすごくダブってしまって途中途中で涙が本当に止まらなくて困った。
賛否両論あるだろうけど、僕は明仁上皇と美智子皇太后が本当に好きなんですよね。
あの人達のことを思うだけで涙が溢れてくる。
愛国とか右だとかそういうの関係なく、僕は純粋に天皇というこれまで千年以上も培われてきた制度が好き。
物語の中で、明治天皇と昭和天皇の類似性が垣間見られて、隔世遺伝的に大正と平成がまたリンクしている気がする。
奇しくも明治天皇の誕生日11月3日が文化の日、昭和天皇の誕生日4月29日が昭和の日として祝日なのに対して、大正天皇の誕生日である8月31日は祝日ではなく、平成天皇の誕生日12月23日は今年から祝日ではなくなったこともなんだか色んな思惑があるんじゃないかとすらこの舞台を見ながら思ってしまった。
そもそも「令和」が発表された時にその名に昭和の「和」が入ってることが発表当初から気になっている。
是非令和には大正平成の精神を受け継いで欲しい。
なんだか物凄く考えさせられる内容だし、純粋に悲劇として美しい。
物凄く優れた演目でした。あー泣いた泣いた。
来年は孫文や蒋介石とも親交のあった日本人松井石根がテーマらしい。また重そう笑


藤田貴大「蜷の綿(になのわた)- Nina's Cotton - / まなざし」 @ 彩の国さいたま芸術劇場

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藤田貴之が蜷川幸雄の半生を戯曲化した「蜷の綿」。
蜷川の生前本人が藤田に脚本を依頼し、蜷川本人が演出するはずだった舞台。
しかしその上演は叶わぬまま蜷川は帰らぬ人に。
あれから三年半の後、なんとついに実現することに。

正直僕は蜷川幸雄という人物にほとんど関心がない。
昔ロンドンで彼の演出したシェイクスピアの「コリオレイナス」を観て、もう観なくていいなと思った。
しかし今回はあの藤田貴大。
蜷川本人から依頼されるという大役にどう挑んだのか興味があり、行ってみることに。
ところで公演内容に「リーディング公演」と書かれていて、何のこと?と思いながら、蓋を開けたら皆が台本持ちながら演じていてとても新鮮。
舞台には蜷川幸雄が創設したさいたまゴールド・シアターという55歳以上の俳優のみからなる演劇集団と、さいたまネクスト・シアターという若手演劇集団が登場して、総勢40名ほど。中には車椅子のメンバーも。
まず青年期の蜷川の独白から始まり、舞台の奥の奥からぞろぞろとその集団が歩いてくるシーンは圧巻。(最後は同じく去っていく)
そして階段が現れて、ギリシャ劇のコロスよろしくコーラス隊のようにメンバーが並び、ポリフォニーとなって舞台が形成されていく。
この声の重なりが素晴らしくて、ひたすら酔いしれた。
今回演出は蜷川幸雄の演出助手を務めていた井上尊品なんだけど、藤田演劇お馴染みのチャプターごとに話が進んでいくし、同じシーンの繰り返しリフレインも登場する。
前述の通り僕は蜷川幸雄自身にはほとんど興味ないので、内容はそこまで興味ないんだけど、この演出とメンバーたちの熱気に2時間50分もある舞台もあっという間に感じられた。
何より、蜷川幸雄という一人の人物を愛した人々が繰り広げるのだから、もう舞台には愛しかなかった。
そして客席もほとんどが蜷川のファンであろう人たちで埋め尽くされているのでそこにも愛しかない。
こんなに愛に包まれた舞台は初めての経験。
最後は全員スタンディングオーベーションで、メンバーは堪えきれず泣いてる人もいた。
この日は蜷川幸雄の誕生日。
最後はみんなでバースデーソングを歌っておしまい。泣ける。
その後トークがあったんだけど、もう一つの舞台「まなざし」が別会場であるので、ギリギリまで聞いて会場である第稽古場へ。

こちらはマームのメンバーが繰り広げる藤田の舞台。
蜷川の「まなざし」をテーマに作られた新作。
まあ、いつもの通りで正直なんの新鮮味もなくて蛇足だったように思う。
直前の「蜷の綿」が凄すぎただけに少しがっかり。
それにしても悩んだ末来てよかった。
今回3日間のみの舞台だったので、ぜひ再演して欲しいと思う。
蜷川幸雄に興味ない僕でも感動できる凄まじい舞台でした。

次回の藤田貴大演出の舞台はなんと「ねじまき鳥クロニクル」!
僕の大好きな小説をどう料理するのか楽しみしかない!!!


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