谷口吉郎・吉生記念 金沢建築館 by 谷口吉生







連休で親友と二人旅。
金沢と白川郷に行ってまいりました。
金沢では何と言ってもこの谷口親子の建築館。7月26日に開館しました。こちら。
建築家の名前を冠した施設は大三島の伊東豊雄ミュージアム、直島のANDO MUSEUMに継ぐ3つ目かな。海外にもあるんだろうか?ズントーミュージアムなら何がなんでも行きたい。隈研吾には作って欲しくない。
それはともかく、今回はなんと親子です。これはすごい。世界で見てもここまで活躍してる建築家親子ってオルジャッティぐらいなのでは。
谷口吉郎氏の生家跡に建てられたこの建物。設計は息子の谷口吉生で館長も吉生氏が務めます。
建物は異素材の組み合わせに凛とした佇まい、そして水盆。どれも谷口吉生の技がぎっしり詰められてるし、中は父親吉郎の歩んだ軌跡がぎっしりと展示されています。
特に2階に設置された谷口吉郎による迎賓館赤坂離宮別館・游心亭(1974)の再現は白眉。
日本の意匠がこれでもかと発揮されています。
トランプが来日した時に鯉に餌やってたのがここ。いつか本物見に行きたい。
そして地下では吉郎の展覧会が開催されてて、特に墓碑の設計が興味深かった。
こういうモニュメンタルな意匠も手がけてたのはとても面白い。
そして何と言っても最近話題になってるのがホテルオークラのリニューアル。
このあまりに有名なロビーも谷口吉郎によるもの。
そして先日、息子吉生によってまた復活しました!
ってことで行ってきました。












あー、美しい!美しすぎる。。。
空に溶けるファサードも、中の和の空間も何もかも。
詳しくはCASAの記事へ。こちら。
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ところで金沢。
21世紀美術館の15周年記念展観にいこうかと思ってたのだけど、連休中日で異常な列の前に断念。。。15年経っても勢いは止まりません。
久々に来たけどすごい美術館だ。。。ってか15年も経ったのか!開館記念展行ったのが懐かしい。。。
学生時代みんなで車で行ってヘトヘトになって行ったなぁ。
ってことで学生時代から続けてるこのブログも今日でちょうど14年目!僕も3x歳になったよ。。。
今後もゆるりと続けてまいります。よろしくお願いします。

「サタンタンゴ」 by タル・ベーラ
上映時間=7時間18分
フィルムの長さ=4万フィート(約12km)
フィルムの重さ=104kg
数字で見ただけでもこの映画の異常さが伝わる。
1994年に公開され、一躍巨匠に祭り上げられたタル・ベーラの伝説的作品。
ハンガリーの作家クラスナホルカイ・ラースローの小説を元に、タンゴのステップ<6歩前に、6歩後ろへ>に呼応して全12章によって織りなされるストーリーライン。
前半6章と後半6章に分けられ、それぞれ同じ話が視点を変えて繰り広げられます。
そして最後はなんと円環を閉じる見事なラストが。
この度300時間以上をかけて4Kデジタル・リマスター版が完成し日本初お披露目となりました。
というわけで、ものすごく楽しみにしていたこの上映。
もはやこの長さは家で鑑賞するのはほぼ不可能。
映画館という映画を観るための装置に入り浸らないと観られません。
とはいえ7時間18分。。。
ものすごい覚悟を決めて行ってきました。
友人は来日トークにも行ってたので、映画館に12時入り、出たのが21時半という。。。
常軌を逸していますが、なんと連日予約で完売してるんですよ。
日本も捨てたもんじゃないな、って思いますね。
さて、上映。
もうね、始まる時の緊張感が半端なかった笑
もう、出発したら戻れない。。。という緊張感が場内を包みます。
この感じ何かに似てるな、と思ったのですが、長距離の飛行機に乗った時の感覚に近いかも。
実際ハワイぐらいは行ける時間ですものね。。。
とはいえ、ここからはめくるめくタル・ベーラワールドへの旅が待ってます。
のっけの牛のシーンからやられた。
「ニーチェの馬」の馬もそうだったけど、これほど動物たちをドラマチックに撮れる監督っていないんじゃないかしら。
この映画には牛・馬・豚・犬・猫・蠅・蜘蛛といろんな動物出てきますが、どれもしっかり演技指導されてるんじゃないかってぐらい完璧な動きをするんですよね。
この映画で話題に上るのが何と言っても猫のシーンですが。。。
猫好きにはもう拷問のようなシーンでした。
正直このシーン見てる間はこの映画マジクソだなと思ってしまいました。。。
本当に壮絶。
その後ちゃんとタル・ベーラが飼ってると聞いて安心しましたが。
あと蠅や蜘蛛もすごい。虫にまで演技指導ができるのか!
馬が街を駆け抜けるシーンも圧巻。
街を貸し切って撮ったんだろうか?
自然現象とか物の動きとかも綿密すぎて衝撃。
上の予告編の冒頭の風が吹き付ける映像も圧巻。
映像中雨が降りしきってるんだけど、豪雨じゃなくて小糠雨みたいな感じで、すごく嫌な雨なんです。
以前アレクセイ・ゲルマンの「神々のたそがれ」でも小糠雨が降りしきる世界を描いてましたが、僕はその不快感に初めて映画館を途中で出るという経験をしたんですが、タル・ベーラのそれは心地いい不快感というか、あんまり嫌にならないんですよね。なんでだろ。
それにしても誰も傘をささないのが気になった。陽水的世界。
長回しでよくもここまで綿密な画が撮れるな、と。
タル・ベーラの映画って徹底的に無駄な人物が排除されてるのも特徴。
今回もエキストラ的な人物は全くいなくて、この世界はどうなってるんだろうと思う。
街中にも人っ子一人いないし。
こういう「世界の終わり」を撮らせると本当にすごいですね。
こんな監督ほかに思いつかない。
それだけに前作「ニーチェの馬」で引退してしまったのは残念でならない。
正直、「サタンタンゴ」は素晴らしかったけど、やっぱりその後の「ヴェルクマイスター・ハーモニー」や「ニーチェの馬」に比べると無駄な部分が多い印象。
どんどん研ぎ澄ませていって「ニーチェの馬」に至ったと思うと、まあ引退も仕方ないとは思います。
とはいえ新作のない中、しかもこれだけ長尺の伝説的作品を観られる機会はもうそうそうないと思うので時間ある人は是非観にいったほうがいいと思う。
観終わった後の達成感も半端ないです!
公式HP http://www.bitters.co.jp/satantango/
インタビュー https://www.fashionsnap.com/article/2019-09-17/tarr-bela-interview/
大垣美穂子「immortal moment」@ KEN NAKAHASHI / 手塚愛子「Dear Oblivion 親愛なる忘却へ」@ スパイラルガーデン

昨年東京に出てきてすぐに初めて行ったKEN NAKAHASHI。
真っ暗な中にプラネタリウムのように光る空間。
光源は床に転がった人型の中から発せられてて、それが大垣美穂子の彫刻でした。
そこからこのギャラリーは展示が変わる度にほぼ通わせてもらってるお気に入りのギャラリー。
そんな大垣美穂子の個展がまた開催中です。
正直前述の彫刻にはあまり感心しませんでした。
その光の演出に心打たれることがなかったんですよね。
今回はどうだろうと思いつつ行ったのですが、今回は彫刻ではなくペインティング。
これがものすごく良かった。泣きそうになった。
去る3月、大垣さんのパートナーで、当時KEN NAKAHASHIで個展を開催中だった佐藤雅晴さんがこの世を去りました。
ずっと闘病生活を共にした大垣さん。
その個展の為に佐藤さんが絵を描き始める同じタイミングで大垣さんも絵を描き始めたそうです。
アクリル絵具で打たれた無数の点。
前回の彫刻と通づる部分はあるのですが、この点の一つ一つが物凄い覚悟を持って打たれてるように感じられて、心が動きました。
まるであらゆる感情をその点に込めてるような。
祈りのようでもあり、写経のようでもあり、瞑想のようでもあり、とても神聖なものを感じました。
あまり作家の背景と作品をごっちゃにしてしまうのは良くないと思いつつも、こうした繰り返しの作業を続けることで、大垣さんは自分を保っていたのではないかな、と想像してしまいました。
これまでも生と死をテーマに作品を作ってきた大垣さんだからこそ、この作業は本当に重い。
しかし出来上がった作品が悲しいほど美しいんですよ。
特に上の写真の馬の作品。崇高でした。
他にも手を描いた2点もものすごく感動させるものがありました。
線ではなく点で描かれたそれらのモチーフは、まるで生と死のあわいを描いているようでもあります。
そのまま点が解けて輪郭を失ってしまいそうな危ういモチーフたち。
それでも踏ん張って輪郭を保っている。
途方もないエネルギーを持った作品群です。ぜひ。9/21まで。詳しくはこちら。

続いてベルリン在住の手塚愛子さんの展覧会。
現在東京2箇所とドイツで同時開催中。
そのうちスパイラルの個展とMA2ギャラリーの個展に行ってきました。
スパイラルは2007年の展示以来で、当時の作品は実際には観てないのですが、吹き抜け空間をフルに使った大きな作品で、写真で見てとても印象的でした。
またあの大空間をどう使うのか楽しみにしていました。
行ったらちょうどアーティストトーク中で手塚さんが今回の展覧会の解説をされてました。
今回の展覧会は二つ大きなテーマがあって、一つはレンブラントの「夜警」をテーマにしたものと、もう一つは日本の近代化に着目したもの。
説明はこちらを読んでください。
正直これらの新作で僕はほとんど感動できませんでした。
あまりに背景を重視しすぎているというか、これまでの手塚さんの仕事が孕んでいた普遍性が失われている気がしてとても残念でした。
今回他にもこれまでのように織を解体したものがいくつか展示されてましたが、これがとてもいい。
無名の織物が解体されることで新たな生命を吹き込まれる様はとても美しく、今回のように改めて布を一から製作して解体するのとはコンテキストが全く違ってくると思います。
MA2の方もほとんどスパイラルと変わりないですが、オーガンジーの作品は良かったです。
とはいえ日本で手塚さんのこれほど大きな展示があるのは稀なので、ぜひ足を運んでみてください。
スパイラルは9/18まで。MA2は9/27までです。
この日はさらにスパイラルの近所の渋谷ストリームとワタリウムへ。
店のお客様でジュエリー作家のお二人がそれぞれ展示販売をされていました。
一人は「ててて」という展示会にて、itiitiというブランドを展開している田中典子さん。
下の写真のジュエリーなのですが、なんとい草でできてます!
熊本で製作されていて、熊本ならではのジュエリー。
もう一人はMalaNocheというブランドを展開している中田チサさん。
ワタリウムのon sundaysにて販売中です。
お二方ともそれぞれずっと憧れていた場所での展示だったそうです。
こういう瞬間に立ち会えるのは本当に嬉しい。
お二人ともおめでとうございました。今後のご活躍も楽しみにしております!
itiiti https://www.itiitiitiiti.com
MalaNoche http://malanoche.g.dgdg.jp

あとついでに、ワタリウム裏にあるpejite青山さんで展示台を購入してしまいました。
以前買った地球儀を置く台をずっと探していたのですが巡り合ってしまった。。。
少し値は張りましたが、こういうのはご縁なので一度逃すと中々出会えないのです。
実際地球儀置いてみると、マジでぴったりサイズでびっくり。
脚の造形が面白いんです。ぜひお店で見てみてください。


「話しているのは誰? 現代美術に潜む文学」/ クリスチャン・ボルタンスキー展 - Lifetime @ 国立新美術館

2つの展覧会を観に国立新美術館へ。
1つは「話しているのは誰?」という、文学とアートを手掛かりにしたグループ展。
超絶ハイコンテクストな展示です。
最初の田村友一郎から飛ばしてます。
まず壁にはニューハンプシャー州のナンバープレートが展示されています。
ナンバープレートには州のスローガンである「LIVE FREE OR DIE」というメッセージが書かれていて、山の絵もプリントされています。
この山は地元で「オールド・マン・オブ・ザ・マウンテン」と呼ばれていて、岩の形がおじいさんに見えるとのこと。
更に進むとガラス越しに部屋が見えて、机の上にはファストフード店の模型が置かれている。
また進むと、今度はまたガラス越しに、今回の展示を作るために使った廃材やらダンボールやら、でこぼこのナンバープレートやらが置かれていて、まるで美術館のバックヤードのよう。
またまた進むと天井から吊るされた4台のテレビ画面にCとOが知恵の輪のようにつながったマークがぐるぐる回っていて(このマークは最後まで謎)、その下にはオールがたくさん並び、壁にはコーヒーとミルクとマドラーが写った写真が2枚展示され、それぞれミルクを入れる前と入れてかき混ぜた後の様子。
と、ここまで書き出してみたはいいけれど、全く伝わらないですよね笑
それぞれ「空目」や「聞き間違い」を表してるんだけど、かなり難解。
インスタレーションとしてはとても優れています。
続いてミヤギフトシの作品。
複数の写真と映像、音声で構成されたインスタレーション。
音声は、多分ミヤギさん本人と友人の会話。とても聞き取りづらいので、3つの画面に出てくる英語字幕を手掛かりに聞いてました。
これ、ミヤギさんが今年出した小説「ディスタント」を読んでいった方が理解が深まると思います。
今回の展覧会が文学xアートだったので、まさに自身の文学作品と絡めての展示だったんだろうけど、読んでないと正直なんのこっちゃかもしれません。展示室で読むのはきついけど、「ディスタント」を展示してても良かったんじゃないかな。。。
本の内容にも触れると、沖縄の離島に住んでいた主人公(ミヤギさん?)が、子供時代に双子と仲良くなり、その後本島に渡った主人公はその二人と疎遠になるんだけど、大人になって兄のジョシュに大阪のクラブで再会し一緒に飲んだ後、ジョシュはアメリカへ。主人公もアメリカに留学することになるんだけど結局ジョシュとは会わずじまい。
今回の展示は、当時大阪でジョシュに会った時に使っていたカメラと同じソヴィエト製のレンズで撮影した沖縄の写真と、ジョシュの弟との会話。
大阪でミヤギに会ったジョシュはアメリカに渡る前に沖縄に寄り、公園で弟に自身のセクシャリティをカミングアウトし、それを受けた弟の心情が語られます。
またミヤギは小説を出したことで両親にカミングアウトするべく帰ってきたが、結局原稿を母親に渡すだけで自身の口から言えなかったことを語る。
会話の中でも小説の中でも出てくる、ミヤギと双子3人の思い出の曲、ヴェートーベンの「ピアノソナタ第32番」のレコードが映像から流れ、また別の画面では弟がたどたどしくもその曲を演奏する。
今回は徹底して、自身の物語を紡いでいました。
そして続く小林エリカの展示が圧巻でした。
現在のチェコにあった聖ヨハヒムの谷から展示(物語)は始まります。
ここは銀の採掘で有名で、ここの銀で作られた貨幣は「ヨハヒムスターラー」と呼ばれ、これは現在のアメリカの貨幣ドル(ダラー)の語源だと言われています。
後に採掘場で黒光りする鉱石が採掘されるようになり、採掘場では坑夫達が原因不明の病にかかり、この石は「不幸の石(ビッチブレンド)」と呼ばれることになるが、実はこれはその後ウランと名付けられる物質だった。
このウランを気化させガラスに混ぜると紫外線で緑の蛍光色に発光することから、ヨーロッパ中でこのガラスが大流行するのだけれど、展示室にはそのガラスで作られたドルの形をしたオブジェが展示されています。
更に、ここから周知の通りウランは核爆弾へと使用されていくのだけれど、それとナチス政権下に開催されたベルリンオリンピックと、幻に終わった1940年の東京オリンピックの聖火をたどる物語へとつながっていきます。
聖火リレーは1936年のベルリン大会から採用されていて、この火はプロメテウスの炎の神話から発生しています。
展示では聖火リレーの炎と、プロメテウスの炎、そして人間が手に入れてしまった最大の炎をテーマに物語が丁寧に紡がれていて、展示も本当に美しい素晴らしいインスタレーションとなっています。
惜しむらくは、聖火を待ち望む女たちのイメージをイラストレーションで表現してしまったこと。
このイラストの癖が結構強くて、せっかくの物語のノイズになってしまってました。。。
イラスト、描きたかったのかな。。。
それはともかく今回の展覧会で白眉の展示でした。
その後、豊嶋康子、山城知佳子、北島敬三と続くのですが、最初の3方で繋いできたリレーが完全に断ち切れます。残念極まりない。
多分キュレーターが、このままでは観客が疲れてしまうと危惧したのかと邪推しちゃうほど。
豊嶋さんと北島さんは物語を観客に投げ出しちゃってるし、山城さんに関しては物語を意識しすぎて、超絶中途半端な映画みたいなものを作ってて、あまりに酷いので途中退場しました。無理。
最初の3方のような方向性で最後まで突っ走って欲しかった。他にもいくらでもいい作家いただろうに。
そもそももう田村さんから展示始まってる時点で観客は腹くくりますから。
観客をもっと信じてほしいな、と思いました。
ちなみに自分がキュレーターなら豊嶋さんの代わりに牛島光太郎、山城さんの代わりに荒木悠、北島さんの代わりに木村友紀を、と想像したりして。
とはいえ3方の展示見るだけでも価値はあるのでぜひ。11月11日まで。こちら。
さて、ボルタンスキー。
周囲の評判があまりによくなくて、行きたくねー!と思いつつ、まあ観とくべきだろうとのことで、これを観るためだけに国立新美術館まで行くのも嫌なので、上の「話しているのは誰?」展と会期がかぶる8/28-9/2の5日間のうちに行きたかったのです。
で、感想は「そこまで悪くなかった」です。
前回庭園美術館で見た展示があまりにも酷くてもはやブログにも書いてないほどだったので、かなーりハードル低くしてたのが良かったのかも。
とはいえ初っ端の最初期に作られていた映像がとても良かったのです。
ポール・マッカーシーを思わせる超絶気持ち悪い映像で、そのうちの一つ「咳をする男」は咳どころか、口からなんか茶色い液体吐き散らかしてる映像で、驚きなのが1970年に大阪でテレビ放映されたと解説に書いてて、どういう経緯で!?とめっちゃ気になるんですが笑
「なめる男」もキモくて良かった。
とにかく最初期の小作品たちが中々いいのです。
「罠1970/71」という作品の解説が秀逸。
「1968年から72年にかけて、作家はとても孤独な生活を送り、こうした偏執的な作業をやり遂げたのだった。」
何があってんw
とツッコミどころ満載なのですが、こうした無自覚にガムシャラに作ってた時期の作品がとてもいいんです。
その後、大展示室で展開されてる、この作家を一気にスターダムに伸し上げた、写真に照明を当てた祭壇のような作品群「モニュメント」シリーズまでは本当に良かった。
特に配線の処理が本当に上手くて、唸りました。
新聞記事からランダムで死亡写真を選んでるのもすごい。
しかしこの展示室以降の作品はもはや惰性です。
「孤独な生活」からの跳ね返りなのか、もう自意識半端ない。
解説に一切触れられてないんだけど、「アニミタス(白)」の映像の前にある紙丸めたやつ何なの?
友達と自慰行為の産物かな?とか言ってたんだけどそれだったらすごい。キモいけど。
他は一切特筆すべき作品がないです。
作家の高田冬彦氏が呟いてたツイートがまさに言い当ててる気がします。
先日話した某新進キュレーターH氏が、美術館の巨大化が一因だと言っていて確かにと思った。作家がビッグネームになるにつれ巨大空間を物量でパッと埋める仕事が求められるようになっていく。確かにあんなだだっぴろい空間渡されたら、とりあえず真ん中になんか積んで山でも作るかな、って思うよねぇ。
— 高田冬彦 Fuyuhiko Takata (@fuyumaro) September 1, 2019
こないだの塩田千春展もそうなんだけど、空間が大きいとどうしてもスペクタクルを要求されますよね。
作家自身が作っているのか空間に作らされてるのか。
難しいけど、そこをブレずに作るのは確かに至難の業かもしれません。
まあでも見たことなかった初期作品を見られたので良かったです。
ちなみに順序としては、ボルタンスキーを先に見てたんだけど、この二つの展覧会の差がすごくて、改めて現代美術の奥深さを思い知りましたw