「ソフィ カル ─ 限局性激痛」 @ 原美術館

気づけば1月半ほど更新せず野放しになってました。。。月日が早い。
この間も色々見てました。
中でも2月はソフィ・カル月間かというほどにソフィ・カルが東京を席巻。
原美術館に小柳、ペロタン、そして渋谷の街頭ビジョン。
まずは原美術館。
1999年の展示の再現ってことで、どうなんかな、と思いつつ行ってきました。
当時の展示は観てないので、まあ僕にとっては新作。
これがまた素晴らしかった。
彼女が1984年に奨学金を得て初来日した時の日々と、その後の失恋という彼女お得意の私的ドキュメントなんだけど、まあ見せ方がうまい。うますぎる。
1階では日本に来ることになった経緯からスタート。
なんでも当時「最も行きたくなかった国」だそうで笑
詳しくはインタビューに載ってます。こちら。
行きたくないのでなんとか遠回りして飛行機ではなくシベリア鉄道で日本へ。
この電車の中の出来事も1日1日綴られます。
壁には写真とテキストが入った額が交互に並べられていて、額の大きさはバラバラなんだけど、底辺が揃えられているので展示としてものすごく美しい。
全部で90日以上あるんだけど、どれも見逃せないぐらいの説得力。
写真には「--DAYS TO UNHAPPINESS(不幸まであと--日)というスタンプが押されていて、その後に起きる悲劇を予感させつつ、順に見ていくとその日々が迫ってくる感じもすごい。
最後は0日になり、それは恋人との別れで幕を閉じるのだけれど、ここからどう展開していくのだろうと思いつつ2階へ。
最初の小部屋では、その悲劇の元となった電話を受け取るホテルの部屋が再現されてて、次の部屋へ行くと、彼女の悲劇と他人の悲劇が交互に展示されている。
どうやら「自分が悲劇を語ること」と「他人の悲劇を聞くこと」によって、傷がどんどん癒されていく様が現れているようで、これって本当に人間の本質だな、と思う。
他人の悲劇で自分を癒すなんてとても卑しいとは思うけれど、そういうことってある。
24時間テレビが「感動ポルノ」なんて言われるのに似てる。
中にはうわぁ、っていう辛いのもあったりする。
面白いのが、自分の悲劇も他人に話すことによってどんどん変化していって、最後は「語るまでもない瑣末なこと」になってるので笑った。
これまたうまいなぁ、と思うのが、テキストが全部刺繍で書かれていて、後半にいくにつれて、カルのテキストが最初黒地に白(銀?)糸だったのが、黒地に黒になって読むのも困難になっていくやり方。うまい。
こうして悲劇は瑣末な出来事になりました、ちゃんちゃんで本当に見事だった。
ところで原美術館、今年で閉館と思い込んでる人が多いみたいだけど、来年末だからね。
この展示も読む展示なので、混みすぎるとかなり辛いものになる。。。
行った時は最初のところで渋滞は起こってたけど、そこまでじゃなかった。3/28まで。会期終了間際はまた混みそうなのでご注意を。こちら。
続いてペロタンの展示。これがまたうまかった。びっくり。
母親、父親、猫の死についてのドキュメントで、いつもの写真とテキストなんだけど、最初の「C ki」から度肝抜かれました。。。
額の中にはWifiのマークと父親の写真、そして吹出しに「C ki」の文字。
これはショートメッセージの画面を表してて、父親が送った謎のメッセージ(誤送信?)みたい。
額の中であのスマホ画面をこれほど美しく表すなんて。。。すごい。
奥の部屋の猫の死を悼んだ作品も素晴らしかった。
彼女の十八番でもあるコラボレーションで音楽家たちに猫のための曲を作ってもらってレコードにしてるのは流石にやり過ぎかとは思いましたが笑
この展示の中で最もすごいと思ったのが柱に展示されてる2点。
この柱の使い方が絶妙で、特にガラスの壁面側の方は素晴らしい。
この2点に関してはライトボックスになってて、テキストしかないのかと思いきや、一瞬だけボックスが光って中の写真が浮かび上がるんだけど、それ以外は黒地が鏡面になって、鑑賞者がテキスト上に映ることになる。さらにバックがガラスの壁面なので外の風景とかも写り込んでとても複雑な表情になってしまう。これはうまかった。
小柳の方はちょっとどうかな、っていう展示だった。
写真に全部布がかけられてて、鑑賞者が自分でめくるという、やり方は面白いのだけど、その先の写真とテキストに対してそのやり方が合ってるのかは大分疑問でした。
最後に本当に素晴らしかったのが渋谷での街頭ビジョン。
2/3から9までの一週間の深夜0時から1時までソフィ・カルの代表作でもある「海を見る」がジャックしました。
こんなクソ寒い時期の深夜って嫌がらせかよ、と思いつつ見に行っちゃいました。こんなことが出来るのも東京に住んでるおかげ。ありがたや。
「海を見る」は海に囲まれながら海をまだ見たことのないトルコの人を海に連れていって生まれて初めて海を見た瞬間を捉えるという映像。
4つの街頭ビジョンに1人ずつ映し出されていて、深夜の渋谷の喧騒の中に潮騒が響き渡る様はもう言葉にならないぐらい美しかった。。。寒かったけどひたすら見てられました。
ソフィ・カルなんて知らない人が大半だったとは思うけど、明らかにいつもと違う映像にたくさんの人が見入っていて、もうその光景も美しかった。
美術館とか目的持って観に来てる人たちじゃなくて、たまたまそこに居合わせた人たちが同じ映像を観てるってのがなんだかものすごいいい体験でした。行ってよかった。。。




街灯ビジジョンと言えば、昔池田亮司がNYのタイムズスクエアでやってたやつが凄すぎました。観てみたい!
六本木クロッシング2019展:つないでみる @ 森美術館

六本木クロッシングは2010年の「芸術は可能か?」が素晴らしすぎて、あとはキュレーションと言えるのか曖昧だし、日本人しか出ないし、なんだかなぁと思いつつ観に行きました。
ここ数年足が遠のき気味なのもあるけど、本当に知らない作家がいっぱいいるんだなぁと思いました。
とはいえ、知らない作家でわ!ってなる展示ってやっぱりほとんどなくて、わ!ってなるのは知ってる作家ばかり。。。保守的になってきているのか。。。
以下わ!ってなった作品たち。
青野文昭:前から知ってるけど、何度見てもすごい。

花岡伸宏:マーク・マンダースっぽくなってきた。昔はもっとぶっ飛んでたけど今の方が好き。

川久保ジョイ:為替のグラフはともかく、壁を削る行為が面白い。

佐藤雅晴:先日KEN NAKAHASHIで見たばかり。彼の作品はどこか「怖さ」がある。

土屋信子・ヒスロム:安定感。

5/26まで。次の塩田千春展が楽しみ!