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「想田和弘と世界」 @ イメージフォーラム

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東京に住んで最も大きな恩恵は映画と舞台だと思います。
展覧会と違って映画や舞台は日時がしっかり決まってるのでそんなピンポイントで足を運ぶのは地方に住んでると困難。
ということで、今回は引っ越してきていきなり映画三昧な日々の話。

映画なんてどこでも観れるやんって思う人もいるかと思いますが、僕が観たいマニアックな映画は東京でしかやってないことが多いのです。あと封切りも日本一早いし。
以前のアピチャッポン特集なんかもそうで、映画観るために高い交通費と時間かけるなんて、と思いつつ観に行ったもんです。。。泣
実際その時に観た「トロピカル・マラデー」は日本でDVD化もしていなければ、いまだに東京以外での上映はされてないと思います。
特に渋谷には今回のイメージフォーラムをはじめ、アップリンクやユーロスペースなど、マニアックな映画館が多いのです。
で、今回は想田和弘特集
合計6本、3日間イメージフォーラムに通いました。。。

想田さんの映画を初めて観たのは2015年の「牡蠣工場」という映画。
それまでも作品はなんとなく聞いてたけど実際観たのはその映画が初。
そもそも彼の名前を強く意識したのはTwitterの彼の発言がとても興味深かったから。
当時スイスでTwitterをしていた頃にフォローし始めて、右傾化していく日本を冷静に見つめてらっしゃって、とても参考になる意見が多く、ぜひ作品を観てみたいと思ったものです。
帰国後「牡蠣工場」という映画が封切りされるということで舞台挨拶に合わせて十三の第七藝術劇場まで観に行きました。
彼自身が「観察映画」と称する通り、そこにはナレーションもなければ、特定の人物を追うわけでもない、淡々と尾道の牡蠣工場の日常を「観察」するフィルムでした。
しかしそこにはいろんな問題が孕んでいるのがあぶり出しのように見えてきて、とても興味深かったのです。
それまで僕の中でドキュメンタリー映画というのは、何かしら強い主義主張があって、多少一方的であってもそれを実証するために映像をつなげていくものだという意識がありました。マイケル・ムーアなんかが顕著。
その方が観客も観やすいし、メッセージが明確なのでなるほど、と腑に落ちる。
逆にメッセージが曖昧なドキュメンタリーほど観ていてつまらないものはないのです。
しかし想田作品の場合、それが全く苦にならない。
多分想田さん自身、撮りながらその場その場で事実を発見して驚いたりしながら撮ってるのではと思うんだけど、観客とその時点を撮ってる想田さんの感情が一致してる感じがあって、とても新鮮。
その時のトークで印象的だったのが、彼がそういう映画を撮り始めたきっかけの話。
想田さんは元々テレビ局のドキュメンタリーを撮っていた人なのですが、9.11が起こった時に実際WTCで観た光景ってのが、あのツインタワーの模型がばか売れしてるって場面だったそうで、でもそういう場面は「怒りと悲しみ」というテーマの元製作されてるテレビのドキュメンタリーでは使えないもの。でもそれも現実だよなぁと、フツフツと思い始めて今の「観察映画」というものを作ろうと思われたのだとか。
(なんで「牡蠣工場」の記事を書いてなかったのか自分で謎。。。)

そして2007年、初の「観察映画」が「選挙」。
大学時代の同級生山内和彦さんが小泉政権の自民党推薦で地方議員選挙に出るというのでその模様を映し出した一本。
これがまあ、世界にはとてもお見せしたくないほど幼稚な日本の、というか自民党の選挙活動が残酷なほど露わに映し出されています。
そこに翻弄される山内さんが不憫で不憫でなりません。
その後山内さんは自民党を辞め(辞めさせられ?)、再び無所属で選挙に出ることになります。
それを改めて追ったのが2013年の「選挙2」。
これはぜひセットで観るべきものだと思いました。
1でただただ不憫だった山内さんが2で豹変してます。
というより、元々2の奔放なのが山内さん自身で、いかに1で歪められてたかがはっきりわかる構造。
政局から離れていた山内さんが、再び無所属で選挙に帰ってきたのは東日本大震災後の原発問題がきっかけ。
それを推し進めてきた自民党に一時期でも所属していた自分の責任に立ち上がったのです。
結果としては残念ながら通りませんでしたが、この映画に2があるのはとても素晴らしいと思いました。
2では1で応援していた自民党員がそこを離れた途端に態度を翻してる姿も映し出されます。
いやぁ、マジで自民党。。。
これが日本の政治かと思うと憂鬱になりますが、これが現実。
その後に想田監督と山内さん自身のトークもめっちゃ面白かった。

他に面白かったのは「演劇」と「演劇2」。どちらも2012年の作品でそれぞれ3時間近くある。。。
最後のトークも合わせたらイメフォに7時間近くいた気がする。。。
それでもやっぱり見飽きることなく面白いんだよなぁ。
これは平田オリザを追ったドキュメンタリーなんだけど、改めて平田オリザの怪物性が浮き彫りになる。
僕は彼の演劇自体は全然好きじゃないんだけど、彼自身は本当に興味深い人間だと思う。
発言もまともで理路整然としていて誰でも理解できるし、冷静に物事を見ている。
一度映画の中で俳優を怒鳴ってるシーンがあるけど、そこ以外はどんな場面でも冷静沈着。
びっくりするのが稽古中でも15分休憩の間に熟睡する技。
2の最後はそのいびきで終わるのも秀逸。
ただただ平田オリザという人間の巨大さを思い知る映画だけど、そこにしっかり想田さんの観察眼が生きてる。
本当にどこまで映すねんってぐらい執拗にカメラが入って行くんだけど、まるで透明人間みたいに全然気にしない人々。
普通カメラがあると、人って意識しちゃうもんだろうけど、それが全くない。どうやってるのか謎。
多分想田さんが空気になるのが上手い人間なんだろう。
その透明性が、平田オリザを何のノイズもなく6時間近く見ても飽きさせないマジックなんだと思う。

後の2本、「精神」と「Peace」はちょっとイマイチだったので割愛。
なんか普通にインタビューとかしちゃったりしてて、「観察」から離れる場面が多かったので。
上の「選挙」と「演劇」はほとんど想田さん自身が話しかける場面ってないんですよね。
特に「演劇」は、インタビューしてる姿をとったりして、インタビュアーやりにくいだろうな、って笑


で、さらに2本立て続けに新作が上映されました。
一本は「港町」。
「牡蠣工場」を撮ってる時に「たまたま」撮れたおこぼれみたいな映画なんだけど、僕は想田監督作品の中で、これが一番すごい映画だと思います。
というのも、これまでの映画は「観察」と言いながら、まずターゲットを絞らないと撮れない映画。
しかしこれは本当にたまたま撮れちゃったギフトのような奇跡。
はじめ、どこにでもある港町で、その辺のおじいちゃんやおばあちゃんを撮ってるだけかと思って、何を見せられてるんだろう感がすごいんだけど、おばあちゃんがいきなり話し始めた内容がすごすぎて、いきなり時空が歪んじゃう。
どこにでもある風景なんて実はないし、ありふれた人生なんてのもどこにもない。
何の作為もなく撮り始めて結果的にここまで大きなものを撮れたのは、これまで監督が「観察」を続けてきたご褒美なのかもしれない。
こんな作品これから一生撮れないかもしれないけど、積み重ねるって大事だなと思いました。
あと白黒ってのもいい。この現実をしっかり撮ってるのに非現実感のある感じが素晴らしい。

もう一本、「THE BIG HOUSE」は「港町」と真逆の大スペクタクル作品。
アメリカンのミシガン大学にある超巨大スタジアムを「観察」したもので、想田作品初の海外舞台。
とはいえ彼はもうずっとNYに住んでるし、ようやく本場で撮り始めたなっていう感覚。
しかしこれはちょっと非現実すぎて中々気持ちが入っていけなかった。
確かにその舞台裏に色んなレイヤーが見え隠れするんだけど、話が大きすぎた。
次回作はアメリカの冤罪で釈放された人々を追うドキュメンタリーらしいけど、そっちに期待。


とまあ、私の東京映画ライフは想田監督特集で始まりました。
他にも見事パルムドールをとった是枝監督の「万引き家族」や河瀬監督の「Vision」も観ました。
まさか是枝監督が河瀬さんより先にパルムドールとはと思いましたね。
なんか苦手なんですよね、彼の映画。今回もいいんだけど深部にまで刺さらないというか。
むしろ賞は取れなかったけど、同じくカンヌにノミネートしてた濱口監督の「寝ても覚めても」を早く観たい!
河瀬さんの新作は、正直ひどかった。。。ついにファンタジーになってしまったか、という残念感。。。

という感じです。しばらく映画はいいや笑
次回は舞台三昧な日々をお送りします。(予定)






追記

こんな番組を見つけてしまった!



是枝監督と想田監督、なんとも夢の対談。
二人のドキュメンタリー論が面白すぎて何度見ても濃いです。
そんな中是枝さんのこの発言は非常に鋭い。

「現場の方法論的に言うと、フィクションとドキュメンタリーってそんなに違うつもりはなく立ち会ってるけど、作品世界に私がどう立ち会うかってことを考えたら、多分、三人称と相手の気持ちに入っていく一人称が許されるのはフィクションで、神の目線て多分、すごく傲慢な作り手がフィクションをやるんだと僕は思うけど、神の目線を手に入れるのがフィクションだとするとさ、ドキュメンタリーの作り手ってそこからいかに離れているかっていう、私とあなたの関係に留まる、二の関係に留まる、二人称に留まるっていう倫理観をどのくらい保てるかっていう人が多分僕はドキュメンタリーをやるんだと思うんですけど。そこが多分誤解されてるんだよね。三人称がドキュメンタリーだっていう風に。」

想田作品に漂うあの感じはここに根っこがありそう。
あと、「精神」や「港町」で突如として繰り広げられる告白についてもコメントしてて面白い。
やっぱり観客と同じ瞬間を共有してる感ってのはこの観察映画ならでは。
ドキュメンタリーとお金の話もとても興味深いです。NHKの批判合戦みたいになってるけど笑
これはぜひ何度も繰り返し見てみてほしい動画です。どうか消えないで。
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